下り坂に向けて

                 粗筋


 定年を間近に控えた片倉(かたくら)惣一(そういち)は自宅の和室で爪を切りながら、ふと、前々から禁煙を試みようとしていた事を思い出す。また、その主な理由は定年を機会にして、自分に変化を求めるため……だと思っていた。一方でその定年退職という、人生のある種の節目に対して生じた淡い禁煙宣言が、奇妙な強迫観念に囚われている事にも気づく。
それは友人・御厨純也(みくりやじゅんや)に掛ける回顧。
自分が禁煙を思いついた発端となったのは、一考すると豪放磊落な御厨純也がうつ病を患ったという、意外な事実に起因するのではないか? そんな懐疑にも似た思いが、強迫観念に変わっていったことに。
 片倉は共に青春を生き抜いた御厨純也との記憶を交えながら過去を顧みつつも、自分の第二の人生について思案を巡らし始める。

 



24h.ポイント 0pt
0
小説 193,879 位 / 193,879件 現代文学 8,635 位 / 8,635件

あなたにおすすめの小説

名前のないその感情に愛を込めて

にわ冬莉
現代文学
幼い頃の記憶。 古びた鳥居と、小さな男の子。 その山で出会ったヒトは、ヒトならざる者だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

逆光

まよい
現代文学
―――輪郭をあげられたらよかった ふたりの女の子とそれを取り巻くちいさな世界について 完結しています。

感謝の気持ち

春秋花壇
現代文学
感謝の気持ち

処理中です...