カルブレイス・ラプソディ

            梗概

 時代は一八五三年七月八日(嘉永六年六月三日)。
舞台は浦賀。
突如としてやって来た、日本の歴史上名高いペリー率いる四隻の黒船来航。
異国船の出没は度々ここ浦賀沖でも見られた事だが、今回における来航はその船の物々しさや威嚇など、前例には無い規格外さが際立っていた。
慌てふためく浦賀奉行の一行。どうやってこの状況を打開するか? どのようにして交渉していくか? 度重なり急襲する危機に対して、浦賀奉行は時間の猶予も無いまま対応する事を迫られる。そして、その交渉役全般を一任されたのは浦賀奉行の与力である香山栄左衛門(かやまえいざえもん)。
香山はその身をもってして黒船連中との交渉に奮闘するも、なかなか埒が明かず苦戦を強いられる。さらに寝耳に水と思っていた黒船来航だったのだが、黒船側からは今回の訪問は既に通達してあった事だと言う。
まさか幕府や浦賀奉行がそんな大事な通知を隠しているわけがない。
香山はそう思う一方で怪訝な気持ちも捨て切れない。
そして、事実、浦賀奉行の上層部や幕府の方では実は事前予告があり、それが周知だった事を香山は知る羽目になる。今まで与力として長年身を粉にして幕府や浦賀奉行に尽くしてきた香山にとっては、その隠蔽はひどい裏切りに感じた。だが、一方でやはり一人の与力として、ここまでやって来た黒船との交渉を辞めるわけにはいかない、と使命感を燃やし最後まで忠実に任務をこなす。

黒船来航における史実を通して、異国間の文化観や渉外観の違い。そして、一人の男が一つの仕事をやり遂げる事が、いかに困難であり重要であるかをテーマに描いたペリー襲来のもう一つの物語。
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