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余裕のない彼

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私は封印していた彼との交際期間中の記憶を呼び覚ました。黒歴史過ぎて、思い出す度にしんどくなるので普段は、ぼんやりとしか思い出さないようにしていたのだ。

高校時代の私は、股間を盛り上げ、今のように臨戦態勢になっている彼氏に何をしたか…。

もちろんナニはした。
一日に、何回も。
浮気や気移りをする気も起きないように、精液を全て絞り取りたかったのだ。
彼が『もう何も出ないから』と半泣きで言ってきても、後ろの穴に指を入れ、前立腺を刺激しながら陰茎を無理やり起たせて性行為をした。

……振られて当然だ。
そう考えると、卒業式に言われた言葉はまだ生ぬるく、あれでも私に気を使ったものだったのだと分かる。

「祥子と、したい。」

自分がしでかしてきた行為に恐怖と羞恥で震えていると、焦れたように彼は話し掛けてきた。

その切羽詰まったような切ない声にキュンとしたけれど、勘違いをしてはいけない。私そのものが求められているわけじゃない。鬼のように嫉妬し、異常な執着を見せ、ガチガチに束縛する女と彼はセックスがしたいのだ。

私は一つ深呼吸をした。
そして床に座る彼を押し倒し上に乗った。
正孝くん自身が私の足の間に触れて、ヒクリと体が反応した。

「ま、正孝くんの、せっ、せ、精液、全部貰う、から。今日から、…おぉっ、オナニー…、禁止、ね。」

6年前にはスラスラと言えていたはずの言葉を口に出すのは勇気がいった。
つっかえてしどろもどろになってしまった。でも正孝くんの顔を見ると興奮して瞳を潤ませていたので取り敢えず、彼的には合格点だったようだ。

正孝くんの手が私の頭の後ろに回され、優しく引き寄せられて、またキスをされた。
温かくて柔らかい唇が触れる。
啄むように始まったキスは段々と熱を帯びてきて、互いの唾液を交換する激しいものになっていった。

「もっとちょうだい。」
言われるままに、私は彼の中に唾液を送り込んだ。

それだけで、自分の中心が疼き、下着が張り付いてしまうほど愛液を漏らしてしまっていた。

キスをしただけでこんなに気持ちいいのはいつ振りだろう。そう考えて、ああ、6年振りだ、と気が付いて苦笑いをした。
好きな人とのキスは気持ちがいい。

自分と彼の境界線をなくしたくて私は彼の口内に舌を入れる。

やがて彼の手が私のジャケットにかかり、剥ぎ取られるように脱がされた。中のシャツにも手が伸びてきて、もどかしそうにボタンを外される。ブラのホックも外され、はらり、とそれは落ちていって裸の胸を彼の目前に晒した。

彼は目を見開いた。戸惑いのようなものがそこには見て取れた。

胸の大きさに驚いたのだろうと思った。

高校の時の私の胸のサイズは、見栄パット込みでBカップだった。今はDカップだ。当時はかなり痩せていたせいで胸も寂しいことになっていたけど、今はいいのか悪いのか肉付きが良くなって胸も大きくなった。
それに下から見上げれば、更に大きく見えていることだろう。

胸を見つめたまま何もしてこない正孝くんに私は微笑んだ。そして手を取り自分の胸に持っていった。

「触って。」
そう言うと、彼の瞳からは戸惑いが消えてギラギラとした雄の顔になった。

大きさを確認するように胸を鷲掴みにされ、少し乱暴に揉まれて背中が仰け反る。
それを追うように、彼は上半身を起こし私の胸に口をつけた。

強く揉まれている乳房とは逆に、口に含まれた乳首はやわやわと舌で撫でるように優しく舐められている。
堪らず声を上げると、彼は私のスカートをまくり上げ足の間に手を入れてきた。
私の中心を撫でるように優しく触られた。

「凄い濡れてる。」
乳首に吸いつきながら、掠れた低い声で彼は私に告げた。

愛液はショーツから染み出し、ストッキングまで濡らしていたようだった。

恥ずかしさに下唇を噛む。

彼は『ごめん』と呟くと私のストッキングを破った。
一足千円の、伝線しにくいストッキングは正孝くんの手によって股間部分から破けた。丸見えになったショーツの脇から彼の指が侵入してきた。ぐずぐずに蕩けていた私の中は彼の指を容易く飲み込んだ。指を二本入れられ、ぐちゅぐちゅと音をたてながら中を解される。

その性急な行為に私は興奮した。昔の彼はセックスの時、どこか受け身だった。私に何度も求められて呆れていたのかもしれない。けれど今は、興奮で目の下を赤くしながら余裕なく私を求めている。

さらに愛液が溢れ彼の手首まで濡らしている。

早くほしい。

そう思って正孝くんを見つめると、彼はごくり、と喉を鳴らして唾を飲み込んだ。

カチャカチャとベルトを外す音がした後、彼の陰茎がそこから取り出される。すぐにそれは私の膣口にあてがわれた。
彼はボトムスも下着も下げただけで脱いではいない。

服を脱ぐ間も惜しいほど、私と繋がりたかったのかと嬉しくなった。

でも彼がコンドームを着けていないことに気が付いた私は咄嗟に彼を止めた。

「ご、ゴムっ!」
私はそう言うと自分のバッグから"大人の嗜み"として忍ばせていたコンドームを取り出し、彼の陰茎に被せた。
そして、何か言いたげな彼を制すように押し倒した。

今日は安全日とは言えない。もし子どもが出来てしまったら、彼の人生計画を狂わせてしまうかもしれない。それによって正孝くんから『無理』とまた言われてしまったら、私は立ち直れなくなるだろう

彼の陰茎を掴み、腰を浮かせ私の中心にそれをあてがう。ゆっくりと腰をおろすと、少しの抵抗と共に、彼の長く硬い性器が私の中に割り入ってきた。

「っ、…く。」
「あっ、んんんっ。」
互いに声を上げた。

彼の先端が私の最奥にたどり着いた。

大好きな正孝くんが私の中にいる。
そう実感すると、喜びと快感によって私の目の奥で火花が散った。

「はぁ、ぁあんっ。」

正孝くんに腰を掴まれ、下から激しく突き上げられる。それによってだらだらと溢れ出ていた愛液が飛び散り、彼のアンダーヘアを濡らした。

「まっ、正孝くんっ、あっ…、気持ちっいいっ?いっぱい、っ、出してくれるっ?」
「っ…。」
返事は聞けなかった。

彼は中に入れたまま私の腰を抱え、体勢を入れ換えた。

下になり、今まで突かれていた角度と違う場所を攻められ、何かが中から溢れそうになる。
出してはいけないと中に力を入れれば、より一層出そうになった。

「あっ、だっ、だめっ、んっ、一旦、やめっ、て。出そう、っ、なのっ。」

彼は私を見つめ、笑うように唇を歪ませた。

「出せよ。」

こんな意地悪な表情をした彼を、私は今まで見たことがなかった。
新たな彼の一面を見て、胸が甘く締めつけられた。

正孝くんは私をガツガツと攻めたまま、指で私の陰核を撫でた。中の刺激によって頭を出したそれをぬるぬると触られると、私は呆気なく達した。
サラサラとした温かい液体を吹き出しながら。

カッと体が熱くなり、血管が焼き切れるほどの快感に襲われた。びくり、びくりと震える体の痙攣はなかなか収まってくれない。何故なら正孝くんが抽挿を更に速めたから。

私の中で彼のものが膨らみ、限界が近いことを知る。
私も一度いってから、快感の波が引いて行かず、また達した。私の中は彼を締め付け吐精を促す。彼は堪らず吐息を漏らした。

「あっ、っ、…しょう、こっ。っ、出るっ。…うっ、くっ。」

ぎゅっと抱きしめられ、耳もとで熱い吐息を感じ、なかではぴくり、ぴくりと震える彼のものを感じて、幸せだった。

このまま眠ってしまいたい。
まどろみ掛けて、ハッとする。

いけない。一回で終わらせることなんて出来ないんだった。
昔は最低でも3回はしていた。
ちなみに最高記録は5回だ。
だからあと2回は無理やりにでも彼を起たせてセックスをしなくてはいけない。

正孝くんの陰茎がずるりと引き出された。その快感で体がまた震えた。
彼は立ち上がると、たっぷりと中身の入った避妊具を外した。そして棚から小箱を出してきた。パッケージの大きさと色からそれがコンドームだということが分かった。
透明フィルムを剥がし箱を開け中身を一つ取り出した。
それを硬く大きいままの陰茎に着けた。

「もう一回、していい?」

私の返事を待たずに彼は覆い被さってきた。

結局、新記録を作ってしまった。
確か7回目をしている時に股関節がつり、止めてもらった。
それでも、最後の力を振り絞り口でいかせようとした。けれど途中までしたところで止められた。

それでその日は打ち止めになった。
私は不本意だった。
6年の間にそれなりに経験を積み、フェラもうまくなったと自分では思っていた。高校の時のつたない口淫とは雲泥の差のはずだった。

でも、正孝くんに抱き締められて目を瞑るとすぐに睡魔が襲ってきたので、私自身も限界だったのだと思う。



それから暫くは、順調な付き合いが続いた。彼は優しくセクシーな理想の恋人だった。そんな彼にどろどろに愛されて私は幸せだった。だから慢心してしまったのだと思う。
私は束縛を緩めてしまったのだ。
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