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こっそり ★真木
しおりを挟む初オナニーの日の夜、ルイは「また出したいかも」と股間を押さえながら俺に訴えてきた。
気持ちは理解できる。
オナニーを覚えたてのガキはそれはもう頭の中がそれしかないのか、ってくらいチンコを扱くことしか考えられなくなる。
ルイには一人だけの時間が必要かもしれない。
俺みたいに、「買い物に行ってくる」って言って自分の部屋にこっそり戻って抜くことも出来ないんだし。
「じゃあ、今日からは別々に寝ようぜ。夜だけ俺は自分の部屋に戻るから思う存分やっとけ」
すぐに部屋を出ようとしたけどルイに引き留められた。
「え……それは、駄目だよ」
「もう一人で寝るのは怖くないだろ?」
「怖くはない、けど……真木君が一緒じゃないと、寂しい」
本当に寂しそうに肩を落としてそう言われると、心が痛む。
けど、また『応援』させられたら堪ったもんじゃない。……色んな意味で。
「朝にはちゃんと戻ってくるから。一人の方がやりやすいだろ。エロ画像の探し方も教えてやるからさ」
「一人の方がやりやすい、ってことはないと思う。……真木君が近くにいた方が出しやすい気がする」
「……マジで? 気恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしい、のかな。わからないけど、女の人の画像を見ながらだと全然出そうになくて、でも、真木君の声、聞きながら擦ったら、すごく気持ち良くて」
頬をピンクに染め、唇をきゅっと噛み締めて俺にそんなことを言うルイ。俺は頭がクラクラした。
ルイの性癖が歪んでる。
どうにかしなきゃ。
このままじゃ、俺の性癖も歪みそうだ。
断固『ノー』を突き付けるつもりだったけど、ルイが次に言った言葉に少し考えさせられた。
「それに、もし夜中に突然記憶が戻ったらどうすればいいの?」
そういう場合は確かに俺がいた方がいいかもしれない。
ルイの場合、記憶の戻り方として二つのパターンが考えられるらしい。
小さなエピソード毎にまだらに記憶を取り戻していくパターンと、一気にすべての記憶が戻るパターン。
後者の場合は、もしかしたらパニックになるかもしれない。
一気に記憶が甦った反動で『記憶喪失中の記憶』が失くなってしまうこともあるらしい。
そうなると、ルイは陸橋の階段で足を滑らせ転び、そこで記憶は途切れ、次の瞬間には自分の部屋に移動していることになる。
混乱することは間違いない。
事情がわかる人が傍にいたら安心かもしれない。
でも、この1ヶ月でルイは何も思い出してない。
記憶が戻ることを祈ってるし、諦めたわけじゃない。けど、日常生活を普通に送れるようになる手助けを優先した方がいいんじゃないかと思ってる。
一人でこっそりオナニーが出来るようになる、ってのは若い男の日常生活として重要なことだ。
悩む俺にルイは畳み掛けるように懇願してきた。
「真木君お願い。一緒にいて。僕が真木君と生活出来るのは後1ヶ月だけなんだよ? ちょっとの時間でも離れたくない……真木君は迷惑かもしれないけど」
「は? 迷惑だなんて思ってねーし」
「ほんと? じゃあ、別々に寝るのは無しでいいよね」
「……ん、まぁ、ルイがそう言うなら」
「良かった。ありがとう真木君。大好き」
「お、おう」
迷惑だなんて思ってないことを言われてムッとして反論したら、ルイの勢いに流されてしまった。
確かにこの生活を続けられるのはルイの言う通りあと半分。1ヶ月しかない。
例えばルイの精神年齢や生活能力がもっと上がったとしても、記憶が全部戻らない限りは1ヶ月後には、ここを出て母親と暮らすことに決まっている。
ルイは大学を休学して家庭教師をつけてもらって元の学力まで戻し復学を目指す。
ルイの母親は大卒に拘っているし、今のルイは『俺と同じ』大学へ通うことに執着してる。
俺と離れ不仲の母親と暮らすことも、大学へ復学するまでのことだと今は割り切ってはいるようだ。
それでも、離れたくないって気持ちを俺に伝えてきたんだから、俺としてはルイの言う通りに今は寄り添うべきだろう。
とは言え、オナニー事情は改善しなくてはいけない。
「あのな、ルイ、オナニーは本来、こっそりするもんなんだ」
「恥ずかしいから?」
「ああ。そうだ。みんなやってるけど、おおっぴらにはしないで、こっそりとするんだ」
「真木君もこっそりしてるの?」
「まあ、そうだな」
「いつ?」
「えっ、いつって………ルイが寝た後とか? コンビニ行ってる時とか? 自分の部屋に戻ってやってる」
「そうだったんだ。知らなかった」
「まぁ、ばれないようにしてたからな。だからルイも俺にばれないように、こっそり抜いとけ。わかったか?」
「……うん」
ルイは少し難しい顔をしていたが、頷いた。
あとは、ルイに合った、おかず探しだ。
ルイに本人のスマホを渡して、ソフト目なセクシー画像サイトを開かせ検索方法を教えた。
これで自由に自分のタイプの女の子の画像を探せるはず。
あとは実践のみ。
俺は「スーパーに行ってくる。一時間くらいかかるかも」とわざとらしく告げてアパートを出た。
そして余裕を持って遅めに戻り、玄関で「ただいま」と声を掛けた。
返事がない。買い物袋の中身を冷蔵庫に入れてから、再び居室の扉の前で「ただいま」と声を掛けた。
やっぱり返事は無い。
寝てるのかもしれない。
「入るぞ」
ルイはいた。
三つ折りにした敷布団の上に腰を掛けてスマホ画面を見つめてた。集中しすぎてんのかまだ俺に気が付いてないみたいだ。
チンコが丸出しでも右手が動いても無いから、事は済んだようだ。それなのに熱を孕んだ眼差しで食い入るように画面を見てる。
「るーい? よっぽど好みの女の子、見つけたんだな。どれどれ、お兄さんにも見せてみろよ」
「……え、あ、真木君、あっ」
至近距離で話しかけられやっと俺に気付いたルイは驚いて、持ってたスマホを手から落とした。
「あ、悪い」
フローリングに落ちたスマホは、ルイより先に俺が拾った。
大丈夫。液晶は割れてない。
「ほれ」とルイにスマホを返そうとして、手が止まった。
液晶に写ってたのは俺の写真だった。
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