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ちょんまげ ★真木

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親友の行動はショックだった。

正直、秘密を見せられてしまって混乱もしてる。

『手続き記憶』になるほど、ルイは腸内洗浄を日常的にしていたらしい。

結果、黙って見守る形になってしまったが、途中、何度か止めるように言おうかと思った。

でも、ルイがどういった事情でそんなことをするようになったのかわからない。
今のルイに聞いてもわからないだろうし、俺も想像することしか出来ない。
だから無理に止めてよいものか判断がつかない。

ルイは昔、やむを得ない理由で風呂に入れない時期があって不潔だった。その時のことが心因で、過度な清潔への拘りが出来ていったのかもしれない。もしくはこういった健康法があるとか。

世の中には色々な人がいる。

家の中に外の雑菌を持ち込みたくなくて玄関で全裸になる人だっているらしい。

そんなことはやりたいとは思わないけど、理解することは出来る。

目の前で排泄を見せられたわけでもないし、洗浄が済んだ後のホース口もルイはきちんと綺麗に洗っていた。
聞けば病院の風呂ではやってないと言われたから、記憶はなくても慣れた自分の部屋の風呂でリラックスして『手続き記憶』がたまたま発動しただけのようだ。

肝心なことは、ルイはこの行為で誰にも迷惑は掛けていないということ。

だからなのか、ショックではあったけど、嫌悪感は無かった。


「腸内洗浄、俺はやったことがないな」

否定はせずに、このことだけを伝えた。

ルイ少年は物は知らないが地頭は良い。自分が少数派なことを俺の言葉で理解したようだ。

「え、真木君、してないの?……なんで僕はしてるんだろ?……これからは、しないようにする」
「……まぁ、しなくちゃいけないとか、綺麗にしたいって気持ちになったらしてもいいと俺は思うよ」
「うん。わかった」

素直ないい子で助かる。


ルイは、それから口数が少なくなった。少しだけ落ち込んでいるようにも見える。
俺がしないことを自分がしてしまって、不安になったのかもしれない。

俺は「大丈夫だよ、気にすんな」って意味でルイの頭に触れた。

もう包帯は取れて、小さな傷跡はかさぶたになっている。そこに触れないように優しく撫でるとルイは擽ったそうに目を細めた。洗いたての髪の毛はまだ水分を少し含んでいる。

「前髪、邪魔じゃないか?」
「ん……すごく、じゃま。ずっと、思ってた」

俺はルイに部屋で待ってるように言ってコンビニでヘアゴムを買ってきた。
それで前髪を結ってやると、形のいい額と琥珀色の瞳が現れた。

久々にルイの顔全体を見た気がする。

大学に入った辺りからルイは髪型を変えた。
目や顔の輪郭が隠れるような長めのウルフカットに。

『意識高い系に見せる為』とかなんとか言ってたけど、俺はせっかく綺麗な顔してんのに隠すのは勿体ないって思ってた。
それに、ウルフカットと言えば聞こえがいいかもしれないけど、悪い意味でのボサボサ感と目の隠れ具合が中二病感を醸し出してた。
まぁ、本人の自由だし、非モテの俺のアドバイスなんて的外れかもしれないから黙ってたけど、今のルイには、その髪型はただ邪魔臭いだけのようだった。
さすがに勝手に切ったら記憶が戻った時、ルイになんと言われるかわからない。だから結うだけにしておいた。


ルイは頭頂部と前頭部の中間にぴょこんと立った"ちょんまげ"の感覚が気になるのか何度も自分で触っていた。

「嫌か? 取る?」
「ううん。でも、ヘンじゃない?」
「その方がいいと思う。可愛いし」
「えっ、かわいい? ……僕が?」
「ああ」
「えへへへ」

大人のルイにこんなことは言えない。言う方も恥ずかしいし、言われた方も気持ち悪いだろうから。
でも、今のルイは俺に褒められるとどんな言葉でも凄く嬉しそうに笑うから。素直な感想が言葉に出てしまう。


予期せぬことはあったけど、それでも穏やかに、共同生活一日目は過ぎていった。



翌朝。

隣からごそごそと音がして目が覚めた。

カーテンから覗く光は強烈で、どうやら寝坊をしたようだったけど、昨晩は快眠には程遠かったから仕方ない。

ルイの希望でロフトに寝たものの凄く寝苦しかった。

寝る前にエアコンを25度に設定したけど、ただでさえ熱気のこもる天井部に近く暑いのに、大人二人が無理やり布団を二組敷いて寝たせいもあって暑かった。

一方のルイは寝返りばかり打つ俺と違って、涼しい顔で熟睡してた。だから設定温度を下げる訳にもいかなかった。
俺が暑がりなのもあるけど、ルイの方が痩せてるから、体感気温に差が出たんだろう。
俺とルイは身長はそれほど変わらない(俺178センチ、ルイは177センチ)けど、体重は10キロ近く違う。念のために言っておくと俺が太ってる訳じゃなくて、ルイが痩せ過ぎなだけだ。


もうロフトでは寝ない。

隣で寝たままごそごそしてるルイにそう言おうとして起き上がると、気配を感じたのかルイはビクリと体を震わせた。

「おはよ」
「っ」
「ルイ?」
「……真木君……僕、どうしよ」
「どうした?」
「……ぼ、僕の、おちんちん、が、起きたら腫れてて、ヘンで、触ったらムズムズして……擦ったら手が止まらなくて。とにかく、ヘンなの。……これ、病気?   僕、また入院しなきゃダメ?」

今にも泣きそうな顔でタオルケットを捲り、勃起したチンコを俺に見せつけてくるルイ。

……デカさは俺と同じくらいか。
……先端がピンクで根元は肌色で、まるで未使用みたいな綺麗なチンコだな。

こんな状況でも自分のイチモツと比較してしまうのは男のさがによるものなのか。

大丈夫。
昨日の風呂での出来事よりは想定の範囲内だ。

落ち着け。

今、一番パニックなのはルイだ。

ルイは風呂に入ってる時もなるべく自分の体を見ないようにしていたし、まだ心が成長した体を受け入れられない段階なんだろう。

そんな時に(多分)初めての勃起。
不安になって当たり前だ。

俺はルイに「大丈夫だから」と声をかけ、深呼吸をさせ九九を数えながらトイレで用を足すことを勧めた。

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