【本編完結済】ヤリチンノンケをメス堕ちさせてみた

さかい 濱

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春日部 40

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    実家で町屋を紹介して、夏休みは終わり大学は再開した。

    俺も町屋も、もうそんなに授業に出なくても良いから、ゆとりある生活を送ってた。
    就職も決まったし、卒業論文もまぁまぁ順調。

    バイトも今はほとんど入れてねぇから、イチャイチャし放題。

    年末年始は町屋と一緒に温泉旅館で泊まり込みのバイトをすることに決まったから、敢えて今は働くのをセーブしてる。
    親の扶養から外れちまわないように。
    温泉旅館のバイト代は結構高額らしいし、夏休み中も結構稼いじまったから一応念のため。
バイトをセーブしても、ありがたいことに金には余裕があった。

    もうすぐやってくる町屋の誕生日も存分に祝ってやれるくらい。

    町屋の希望で今年もキャンプ。

    プレゼントも用意してある。
    結構前に軍用のミリタリーオイルランタンが欲しいって町屋が言ってたから、それとなく探りを入れて購入した。ヴィンテージもの。
    それともう一つ用意してるものがある。
    アウトドア専門店でキャンプ用品見てたら見つけた。俺が欲しくなっちまって町屋の誕生日にかこつけてこっそり購入した。

    町屋は喜んでくれっかな。
    想像すると顔がニヤける。

    今の俺の頭ん中は町屋の誕生日一色だった。
    ちょっと前までは町屋の家のことですげぇムカついてたのに。

    町屋は性犯罪の冤罪をかけられて家族に見放された。
    家族が信じて庇ってやらないどころか、首謀者の可能性まであるみてぇだ。

    一時期は町屋を陥れた奴、全員半殺しにしてやりてぇ、とまで思ってた。
    それに町屋に対しても何でもっと無罪を主張しねぇんだって歯痒い気持ちにもなってた。

    けど今は、自暴自棄になってたとはいえ町屋本人が選んだ道だし、それを町屋が今も納得してんなら、って気を落ち着かせることが出来てる。

    それに町屋の言葉に俺も考えさせられた。

    『あのことが無ければ、春日部と僕は出会うことさえなかったかもしれない。そんなの絶対に嫌だ。僕は春日部と一緒に、穏やかに生きていきたいんだ』

    出会えなかったかもしれないなんて、俺だって、嫌だ。

    町屋の隣に俺じゃない誰かが立ってる可能性。
    それを考えると胸が苦しくて胃もキリキリして頭痛がする。
    でも、町屋が当時受けたであろう屈辱を思えば『俺に出会うために必要なこと』だなんて能天気なことも思えない。

    『でも、でも』って思考は堂々巡りになっちまう。

    だからせめて、未来のことを考えることにした。

    これからは俺が町屋を守る。
    俺だけはいつでも町屋の味方でいる。

    俺と町屋は家族だから。





「あのさ、春日部。」
「なんだ?」

    夕飯後のリラックスタイム。
    リビングのソファーで、俺は町屋に膝枕をしてやってた。

    寝転んだ状態から俺を見上げてる町屋。俺は意味もなく町屋の頬をつんつん突いてた。

「お願いがあるんだけど。」
「ああ。言ってみろ。」

    雰囲気的にエロいことか?って思ったけど違った。


「春日部に、紹介したい人がいるんだ。それで、一緒に行ってもらいたい場所があるんだけど、いい?」
「ああ。どこだ?」
「僕の、地元。墓参りに付き合ってほしい。」
「……俺を、誰に紹介してくれんだ?」
「父方の祖母なんだけど――」

    例の『男色など気持ちの悪い孫』って町屋に酷ぇこと言ったじいさんの奥さんらしい。
  
    お祖母さんは町屋が小さい頃亡くなったらしいが、血縁関係者では町屋に一番優しく接してくれた人のようだ。
    その人に町屋は俺を紹介したいらしい。

「だめ?」
「ダメなワケあるかよ。嬉しいに決まってんじゃん。で、いつ行く?」

    ぱっと花が咲くみてぇに喜んだ町屋。
    俺も嬉しくて町屋にキスした。背中丸めて覆い被さるようにして、軽く触れるだけのキスを何回か。

「んっ、……結構距離あるし何で行こう。飛行機? 新幹線?」
「んー、どうせなら車で行くか?」

    こっから町屋の地元まで約500キロ。
    時間もあるし高速使えば片道7時間もあれば着くだろう。運転は交代しながら行けば問題ない。

「あー、いいかも。なんか楽しそう。車なら一泊だね。……あ、じゃあさ、僕の誕生日キャンプの場所、そこら辺にしちゃう?」
「お、いいな。」


    墓参りとキャンプ。
    町屋の誕生日当日にキャンプをするから、墓参りはその日の朝。
    それに間に合うように前日の夜に出発する。

    さっそくキャンプ場の予約をした。
    前回の誕生日は『サバイバルっぽい感じがいいから、キャンプ場は嫌だ』と言った町屋だったが、今回は温泉施設まで併設してあるキャンプ場を選んた。
    前日の夜に出発すっから、風呂には絶対入りたくなるし、それが温泉なら体も休まるだろうし最高だ。
    多分町屋は俺の為にもそういう場所を選んでくれたんだと思う。



    そして、当日。

    夜の9時に出発。
    運転は二時間交代。
    出発前に仮眠は取ったが、眠くなったら途中のサービスエリアで休むことにする。

    準備も万端。
    もともと積んであるキャンプ用品の間に、町屋へのプレゼントもバレねぇように紛れ込ませておいた。


「よし、行こうぜ。」
「はい、隊長!」
「二等兵は交代に備えて休憩せよ。」
「了解であります!」

    敬礼のポーズを取る町屋に笑いながら、車のエンジンをかけた。

    俺が隊長で町屋が二等兵って設定の、キャンプの時限定のごっこ遊び。
    まだキャンプ場にさえ着いてねぇのに、町屋のテンションは高くてガキみてぇにはしゃいでる。
    でも、俺だって人のこと言えねぇ。町屋との旅行は楽しみだし、町屋のお祖母さんに紹介して貰えんのもすげぇ嬉しい。





    寺に着いたのは朝の8時半過ぎだった。

    思ったより時間がかかったのは、途中で仮眠やらトイレ休憩やら、コーヒータイムなんかを取り過ぎたから。
    夜のサービスエリアは楽しかった。真夜中でもガンガンに照明が点いてる建物は、なんとなく非日常的でワクワクした。
    それに、そばやうどんの出汁の匂いは、やたらと空腹を刺激してきて……おかげで、平日の朝のラッシュに軽く引っ掛かっちまった。



    お祖母さんが眠ってる墓地は市街地にあった。
    24時間やってる花屋へ行って花を買い、スーツに着替えて寺の近くの有料駐車場に車を止めそこから少し歩いた。

    でけぇ寺。
    多分、重要文化財に指定されてんじゃねぇかと思う。それくらい歴史がありそうだ。
そこを素通りして、町屋の後をついて行くと墓地に着いた。
    町屋が立ち止まり「ここだよ」と見つめた先には真斎藤家、と彫られた墓石があった。

    それ見て、マジで町屋は真斎藤家の人間だったんだな、って思った。
    町屋の言ったことを信じてなかったワケじゃねぇ。
    ただ、墓を見たら、その事実がすっと頭の中に入ってきた。

「水、汲んでくるね。」

    町屋にそう言われて、一人残った俺は花を透明フィルムから出したり、ろうそくや線香の準備をしてた。
    でも町屋はなかなか戻って来ねぇ。
    見回しても町屋の姿ははねぇし、結構遠い場所に水汲み場があんのかもしれねぇ。

    俺はすることもなくなって、墓をぼんやりと見てた。

「町屋のばあさん。」

    なんとなしに口にして、どんな人だったのかを想像した。

    町屋に一番優しくしてくれた人。
    町屋はこのお祖母さんにランドセルを買ってもらったらしい。本来ならデパートの外商部に来てもらうところを、わざわざ二人で一緒にデパートまで行ってランドセルを注文し、レストランでお子さまランチを食べ『お父さんとお母さんには内緒ね』とおもちゃも買ってもらったらしい。
    楽しかった、と懐かしむような顔で町屋は言っていた。

    でも、実際にランドセルを背負って小学校に通う姿は見せられなかったらしい。入学式直前にお祖母さんは亡くなったから。

    お祖母さんは、息子夫婦の仲が良くないことで町屋のことを不憫に思ってたんだろうか。


「……俺は、春日部京、って言います。町屋……朝晴さんとお付き合いをさせてもらってます。」

    俺は墓に向かって頭を下げた。
    声に出して挨拶したのは、天国に届くように。

    うちのじいちゃんの両親(曾祖父母)は俺が生まれる前に亡くなってる。だからなのかじいちゃんは墓参りの時には声を出して語りかけろって俺たち兄弟に言いきかせた。
    しっかり声まで聞かせてやれって、天国まで届くくらいでけぇ声で、って。

    さすがに大人になった今はそんなことしねぇけど、昔は弟たちと競うようにでけぇ声で墓石に話しかけてた。

    そん時のこと思い出して、ちょっとでかめの声で自己紹介をさせてもらった。

    顔も見たことねぇ人だけど、町屋が大好きだったお祖母さんなら、俺にとっても大事な人だ。
    伝えたいことはいっぱいある。

「まち、朝晴さんはゲイで、おれは男で。男同士でなんだって思うかもしれねぇけど、……でも、真剣に想い合ってます。……だから、お祖母さんは安心してください。町屋は今、すっげぇ幸せです。誕生日の今日は、これからキャンプ場に行って二人で祝うんです。豚肉のしょうが焼き食いながら。……誕生日っぽくねぇけど、町屋は俺の作ったしょうが焼きが好きだから、毎年誕生日にはそれを食いたいって、言ってくれてるんです。……来年も再来年も、ずっと、ずっと、俺たちは一緒にいる約束をしてます。……その未来も俺が町屋を守ってくんで、なんも心配しないで、安らかに眠ってください。」

    もう一回頭を下げて、頭を上げた時に人の気配に気づいた。

    少しだけ視線を向けるとスーツを着た年配の男が見えた。
    手には白い花束を持ってる。

    思ったより近い場所にいて、通り道を塞いじまってたかと、会釈をして通路の端に寄った。

    てもソイツは足を止めたままだ。

    まぁまぁな大声出してたし、ひょっとして注意でもされんのか、と警戒しながらソイツの顔をじっと見つめた。


    年配の男は気難しそうな顔をして、俺の顔を見つめ返してきた。

    仕立てのいいスーツに、磨かれた革靴。花束を抱えた腕からチラッと見える時計はすげぇ高そうだ。
    あと、とにかく威圧感がやべぇ。
    多分俺より身長は10センチ以上低い。でも存在感が凄くて、すっげぇ貫禄がある。

    少なくともやべぇ人間ではなさそうだが、面倒臭いタイプな気がする。
    うるさくして悪かったってこっちから謝るべきか?

    迷ってると俺の後ろからこっちに近付いてくる足音が聞こえた。
    振り返ると水の入った桶を持った町屋がいた。
    町屋は歩みを止め、驚いたような顔をしてこっちを、――いや、俺を通り越した背後を見ていた。

「お祖父様。」

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