【本編完結済】ヤリチンノンケをメス堕ちさせてみた

さかい 濱

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観覧車

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    フードコートで夕食を摂った後は、ちょうど打ち上がった花火を見て、それから謎解き体験型のゲームをした。

    絶叫系とホラー系を除くとここの遊園地では、小さな子供向けのアトラクションしか無く、消去法で選んだものだった。が、なかなか面白かった。
    遊園地の各所に点在するヒントを元に『お宝』を探して歩き回ったのだが、謎解きが思ったよりも難しく、気づいたらあーでも無いこーでも無いと真剣に話し合っていた。
    やっと謎が解けた時は思わず4人でハイタッチをしてしまった。
    ユキさんも、日は落ちたといえ暑い中歩き回らせたのにも関わらず終始ニコニコ楽しそうにしていていたし、一人だけ素面しらふの春日部も「やっぱり俺って天才じゃね?」って子どもみたいに笑ってた。堀田は、ゴールに辿り着けた証の景品を受け取ると「おお、この宝は伝説の……!」と、トレジャーハンターに成りきってはしゃいでいた。もちろん僕も楽しくてゲラゲラ笑ってた。


    そして、閉園時間まであと40分となり、そろそろ帰ろうか、という話になった。
しかし春日部が「は? まだ観覧車に乗ってねぇじゃん」と言い出した。

    観覧車の中は風通しも悪そうで多分暑い。場所的に夜景が見れるわけでもない。つまり夏期の夜間では不人気のアトラクションだ。
    でも、確かにこのまま帰るのは名残惜しく、春日部もどうしても乗りたいようだったので、じゃあ、最後に、ということになった。


    観覧車の前まで来たが、やはり誰も並んではおらずこれから乗っても閉園時間には間に合いそうだった。

    しかし、近くで見ると思ったより大きい。結構な高さがある為、春日部は大丈夫なのだろうかと視線を送った。

    若干緊張しているような固い表情の春日部。

    やはり恐いのではないか。
    春日部は高所恐怖症なのではなく、絶叫系が苦手なだけ、と言っていたが明らかに表情がおかしかった。
    あまり無理をしないでほしいと思い、何かうまい理由をつけて止めようとした矢先、春日部に腕を引っ張られた。

「二人ずつ乗ろうぜ。」

    堀田たちにそれだけ言って、観覧車に乗り込んだ。

    正面ではなく、横並びに座った。大人の男二人で並ぶと多少窮屈に感じるが、春日部との距離感が心地いいドキドキを生み出した。

    観覧車のドアが閉まると、二人だけの世界。
    それが嬉しくてむっとする暑ささえも心地良くなる。

    掴まれていた腕が外れたので、代わりに指を絡ませるように手を繋いでみた。
    春日部の手はしっとりと汗で濡れていた。

「手に汗かいてるよ。恐い? 大丈夫? 」

    確か一周15分くらいはかかったはず。その間目を瞑っていた方がいいだろうと、僕は空いている方の手で春日部の後頭部に触れ、自分へと引き寄せた。
    春日部の額が僕の肩ぽすんと当たって、おまけに膝もがっつり触れ合って体温が伝わってくる。

    「大丈夫だって」と言いつつも、されるがままの春日部が可愛くて思わずにんまりしてしまう。

「ほら、目、瞑ってなよ。」

    返事は無かったが、春日部は瞳を閉じた。
    ふわっとした髪の毛の感触を暫く楽しんでいると、ふいに春日部は顔を上げた。

「うん? やっぱり辛い?」
「違う。マジで恐いとかじゃねぇから。」
「じゃ、どしたの?」
「……町屋、……俺さ……。」
「うん。」
「俺、その……。」

    口を開いては閉じを何度か繰り返す春日部。表情は固いが頬は少しピンク色になっている。

    以前、僕に「恋人になって」と言ってきた時の春日部の様子とほぼ一緒。
    だから何か甘い展開になるんじゃないかと期待して、胸がドキドキした。

    『好き』とか『キスしたい』って言われるのかもしれない。
    もどかしい時間は嫌いでは無いが、一周15分しかないから、もうこっちから好きって言ってキスをしてしまおうと思った。

    頭を撫でていた手を、頬へと滑らせると春日部は一瞬目を細めた。
    僕に縋ってくるような表情で凄くそそられる。
    顔を寄せると、唇が合わさる瞬間に春日部は声を発した。


「町屋っ、おっ、俺とっ、っ、け、……結婚してくれっ。」


――けっこん。


    時が止まったかと思った。

    無音になって、暑さも感じなくなって、目の前の春日部は微動だにしない。
    さっきの声だけが頭の中に響いてる。

    予想外のことに驚かされたが、じわじわと「結婚してくれ」という言葉が胸に染み込んできた。

    堀田とユキさんのことを羨ましいと思う僕の気持ちが透けてしまったのだろうか。だから、気を使ってくれた?
    でも、正直な春日部よりも更に正直な春日部の瞳が僕に本気度を伝えてくれた。

    瞳は少しの不安を滲ませているけど真っ直ぐ僕を捉えて、すごく僕が欲しいって言ってる。

    胸の奥がきゅっとなった。


    もちろん、男同士で結婚なんて出来ないけど、春日部の「結婚したい」って気持ちが凄く嬉しくて。
    涙が出そうだ。


「っ、ありがとう春日部。嬉しいよ。」

    思わず抱きつくと、春日部の体はガチガチに固まっていた。
    肩に相当力が入っていたらしい。

    背中を撫でて「ホントに嬉しい」ともう一度伝えると力が抜け、だらんと僕に身を任せてきた。
    ぴたりと体が合わさって、強くて早い脈が伝わってきた、

「ハァ、良かった。お前何言ってんのって思われちまったらどうしようかと思ってた。」
「そんなことあるわけ無いよ。僕がどれだけ春日部を好きか知ってるでしょ。」


    観覧車の中でのプロポーズ。

    プロポーズの言葉は?なんて聞かれることは多分一生無いけど、誰が聞いてもロマンチックだね、と言われそうなシチュエーション。

    きっと一生に一度のこと。

    それを春日部は、僕相手にしてくれた。
    本当には結婚できない男の僕に。

   光栄すぎて 観覧車の窓をぶち破って、そのまま空を飛びたいくらいの高揚感に包まれた。


    おまけに春日部は観覧車から降りる直前に僕にキスをくれた。

    下心の無いキス。
    まるで教会でする誓いのキスのようで、顔も胸も熱くなる。

    春日部のくれるものは何でも温かくて、もしくは熱くて、僕を幸せにしてくれる。

    この温かい人と家族になれるんだって実感が湧いて、ひたすら嬉しかった。

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