【本編完結済】ヤリチンノンケをメス堕ちさせてみた

さかい 濱

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春日部 25

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「やっぱり、これ、トモのシャツだ。」

    トモが町屋のことだって、すぐにピンときたのは一週間前の3Pの日、俺もそう呼ぶように言われたばかりだから。

    それに、シャツ。

    今日俺が着てんのは、町屋から借りたシャツで、洗濯した時にこれ格好いいなって褒めたら「あげる」って言われたヤツだった。高ぇブランドのヤツだし限定品らしいから遠慮したら「じゃあ貸してあげる」って言われて、さっそく借りたんだけどまさかこれのせいで変な男に絡まれることになろうとは。


    このシャツにまで気が付いて、マンションの前でうろうろしてたってことは、女絡みじゃなくて町屋絡みだってことで間違いない。

    一体誰なんだよコイツ。
    兄弟じゃ、ねぇよな。

    大学生には見えねぇけど、町屋は顔が広いから知り合いか?
    でも、町屋に用があんなら、部屋を訪ねるよな。俺に絡んでくる意味分かんねぇ。
    構わない方がいいのか?でももしコイツが町屋に害を為す人間だったら「近づくな」って釘刺しておいた方がいいのか。

    万が一、家族だったりしたら、やべぇからコイツが誰なのかを確認するのが先か。

「アンタ、誰っすか。」
「……キミこそ、誰なんだよ。こんな朝っぱらからトモのシャツ着てトモのマンションから出てくるなんて。……キミが新しい男なのか?」

    ――新しい男。

    言葉の響きにイラッとした。
    俺と町屋はそんな安い関係じゃねぇよ、って。
    言い返そうとしたけど、目の前の男はすげぇ辛そうな顔してて、なんか怒りのぶつけどころが無くなっちまった。

    おまけに、なんとなくコイツが誰なのか分かっちまった。

    コイツは町屋がゲイだってことを知ってる。だからかなり親しい仲。でも親しいんならマンションの前で張るような真似しねぇで部屋を訪ねりゃいいんだから過去に親しかった人間ってことになる。
    それでこんな情けねぇツラして、俺を捕まえて「新しい男か?」なんて言うってことは、自分は町屋の『過去の男』です、って自己紹介してるようなもんだ。

    町屋の、過去の、男。

    胃がずしりと重くなる。

    また、嫉妬だ。

    そりゃ、町屋は俺と違ってちゃんと恋愛だってしてきたんだろうから、恋人だっていただろうけどよ、目の前に現れることねぇだろ。俺の知らねぇ町屋を知ってる人間がいるのがすっげー悔しい。
    コイツにも、さっきしたみてぇに頬にキスして「いってらっしゃい」ってやってたのか。
    想像するだけでムカつく。

    大体よ、いつからどんな関係になって、何があって別れたんだか知らねぇけど、コイツは今さら町屋に何の用があんだよ。

    まさか復縁でも狙ってんのか?
    それはぜってー駄目だ。
    町屋は俺と一生親友でいるって誓ったんだから、邪魔者はいらねぇ、俺だけのもんだ。

    町屋には近づくな。
    これだけはちゃんと言っとかねぇと。


「俺は、新しい男なんかじゃねぇけど、町屋の友達だ。アンタは町屋の昔の男、なんだよな? 復縁でも狙ってんのか? もしそうなら無理だから諦めろ。それにこれはストーカーだからな?」

    俺の話聞いて、辛そうな顔した男は更に悲しげに瞳を伏せてポロポロと泣き出した。
    すげぇギョッとした。
    閑静な住宅街の路地で大の男が泣いてるのは異様な光景だ。泣かせたのは俺ってことだよな、……やべぇ。

「あの、えっと、……アンタなら男でも女でも選び放題だろ。早く昔の恋なんて忘れた方がいいっすよ。」

    泣き止ませなきゃって焦ったのもあったけど、ちょっとだけ同情もしちまって、ありきたりな言葉だけど慰めてみた。
    男は顔を上げたけど、まだ涙は溢れてた。

「……そんなこと、ただのオトモダチに言われなくても分かってるよ。」

    あ?
    ただのオトモダチ?
    聞き捨てならねぇこと言われてムカッとした。

「俺と町屋はただの友達じゃねぇよ。一生を誓った大親友なんだよ。」
「……一生を誓った大親友?」
「そうだよ。」
「ふはははっ。何だよそれ、」

    泣き止んだのは助かったけど、笑われたのは気に入らねぇ。
    いい年こいて『親友』なんて、俺だって言いたかなかったけど、ただの友達じゃねぇってことはハッキリ伝えておきたかった。

「うるせぇ、笑うな。」
「笑うよ。親友ごっこなんて、小学生じゃないんだから。」
「ごっこじゃねぇよ。」
「ヤバイ、笑い止まんない。ぷ…っ、ごめんね?……じゃあさ、大親友君は知ってる? トモの好きなヤツのこと。」
「……好きな、ヤツ?」

    胸がザワザワする。

「うん。俺、ちょっと前にトモに振られたんだけどさ、好きなヤツがいるから、俺との未来は1%も無いって断られたんだよ。次に顔見せたら警察に相談するとも言われてて。でも、気付いたら飛行機乗ってまたここまで来ちゃっててさ。……このままじゃ俺捕まっちゃうしマズイから諦めたいんだけど、さすがに四年も想い続けてきたから諦め悪くてさ。それでも、トモが好きなヤツと一緒にいるとこ見たら踏ん切りは付くかな、って。だから、遠くからでいいから、二人でいるとこを見たい。大親友君ならどうにか出来ないかな?」


    町屋に好きな奴がいるなんて聞いてねぇ。堀田のことはもう諦めたはず。俺が知らねぇ誰かを好きになってんのか?

    足元がグラグラする。

    ――大好きだよ、春日部。
    ――何回でも言いたいんだ。春日部、大好き。

    でも、俺だって毎日大好きだって言われてる。親友に対するものだけど。でも――


「見たいんなら見せてやるよ。」
「……え? ほんとに?」

「ああ。だって、町屋の好きな相手つーのは、実は俺だから。」


    町屋に好きな奴がいるなんて、認めねぇ。

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