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春日部⑭
しおりを挟む変わる、と決意してから俺は、やべぇ数の女に謝った。
紙持ってきた女と、好きだって告白してきた女に、合わせて多分百回くらい「ごめん」って頭を下げた。
そん中には、俺が謝る姿を見たいだけの為に告白してくる女もいて、動画を撮られて『春日部 京、謝罪動画』なんてモンが拡散されたりもした。
それを俺は甘んじて受け入れた。
贖罪ってワケじゃねーけど、別に減るもんでもねぇし、それ見て笑ったり気が晴れたりするんだったら、いいかって。
動画は、告白されて「ごめん」って断ってるだけのよくあるフツーの光景だけど、以前の態度からするとまさに青天の霹靂って感じで一部で大ウケしたようだ。
町屋は心配してくれたから「大丈夫だ」って言って安心させてやって、堀田には「ざまあ」って笑われたからデコピンをお見舞いしておいた。
そんな騒動も、冬休みに入ったから取り敢えず一段落。
冬休みは12/24から1/7まで約二週間。
俺はバイトだったり教習所に通ったり、年末年始は実家に帰ったりと忙しい。
町屋も泊まり込みのバイト――金に困ってるわけじゃねぇのにバイトすんのは社会勉強の為らしい。確かに就職活動もあるし、社会勉強つーのは必要だ――をするみてぇだし、堀田もバイトや彼女さんの実家に行ったりと、それぞれ予定が詰まってる。
冬休みの初日の今日も、俺は夜11時までバイトで、町屋は知人主催のクリスマスパーティーに参加してる。
バイトを終えて、マンションに帰ったら部屋は真っ暗で、町屋はまだパーティーから帰ってきてねぇみたいだった。
クラブでやるって言ってたから、帰りは遅いのかもしれない。
町屋は温泉旅館に泊まり込みのバイトで、明日から年明けの6日までいなくなる。
このままだと昨日やったのが、今年最後のセックスってことになんのか。
毎日のようにやってんのに、これから二週間もやれなくなる。
我慢できるんだろうか。
でも、町屋以外としたいとは思わねぇから、オナニーで凌ぐしかねぇ。
そんなことを思いながらシャワー浴びて寝る準備し終えたけど、1時近くになっても町屋は帰ってこなかった。
付き合いで行くだけで、あんまり行きたくねぇようなこと言ってたけど、意外と楽しかったのかもしれない。
楽しいことは何よりだ。
とは思うけど、ちょっと寂しいと感じちまうのは、バイト先でクリスマスイブを楽しむ奴らを散々見せ付けられたからなのか。
それに冬休みに入ったから今日は、一緒に寝るんだと思い込んでた。
一月ぐらい前から、俺と町屋は一緒に寝てる。休みの前の日だけだけど。
町屋の側は温かいし、デカイベッドは寝心地がいい。
ぐっすり眠れるから毎日だって一緒に寝てもいいくらいなんだけど、一緒に寝ちまうと生活の切り替えが難しくなる。
朝から盛っちまうから。休みの前の日だけってのが暗黙の了解になってる。
――町屋の部屋で寝て待ってたらドン引きされちまうかな。
そう思いつつも、足は町屋の部屋に向いちまってた。
キングサイズのベッドにダイブすると、柔軟剤の香りがした。
それに混じって町屋の匂いもする。
普段はしねぇけど汗かいた時とかに、ふわって香ってくる、香辛料みたいなスパイシーな香り。
それがベッドに少しだけ染み付いてる。
ムラムラする。
チンチンに血が集まってきて、ケツまで疼いてきた。
でも、オナニーはしたくねぇ。勝手に人のベッドですんのもどうかと思うし、出来れば町屋に触ってもらいてぇし、チンチンも入れてもらいてぇ。
枕を抱き締めて、ムラムラが収まるのを待った。
枕はひんやりとしてて味気ない。
百歩譲って、やんなくてもいいから、枕じゃなくて温かい町屋に腕枕をしてやって、眠りてぇ。
――腕枕。
リビングにテント張ってそこで一緒に寝た日。
そこから俺は町屋に腕枕をしてやるようになった。
その日は話の流れで、腕枕を試してみようってことになって互いにやってみることになった。
最初は町屋が俺に腕枕してきて、されながら頭も撫でられて気持ち良くて、思ったより悪くねぇかもって思った。
でも、町屋の手つきが妙に馴れてんのが気になった。なんか無性に悔しくなっちまったから「こんなもんか」って言った。
多分、対抗意識を燃やしちまったんだと思う。
そんで交代して自分がやってみると、うん、しっくりきた。
もっと寝づらいもんかと思ってたのに、自分の腕にかかる町屋の頭の重みが心地良かった。
「帰って来ねぇなぁ。」
ため息吐きながら、真っ白いカバーのかかった枕に話しかけて、またぎゅっと抱き締めた。
そして俺は目を瞑った。
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