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唾液
しおりを挟むキスマークなんてものは、春日部が言ったように皮下出血だ。
分類するなら軽傷のケガだが、痛くもなんともない。
なのに、何故こんなに気になってしまうのか。
春日部とは学部が違い、履修科目も被っておらず、大学では昼しか顔を合わせることはない。
だから昼以外は春日部を意識することなど、ほぼなかった。しかし今日は授業のふとした合間に春日部のことを考えてしまっている。
鎖骨のすぐ下につけられたキスマークは、服を脱がなくても襟ぐりを引っ張ればすぐ見える。
しかし、見なくとも"そこにある"という事実だけで、春日部の存在を意識してしまう。
そんなことを思っているのが、僕だけだろうことが少し悔しい。
春日部は僕への仕返しの為にこれを付けた。深い意味なんて何もない『ただの皮下出血』だ。
じゃあ、僕はあの時、どんな思いで春日部の胸にキスマークを付けたのか。
好奇心。
場の雰囲気。
いたずら心。
言い訳なら何個でも思い付く。
春日部には「練習」と言った。
しかし最適解を示せと言われたらこう答えるしかない。
作者が作品にサインをした。
僕の愛撫によって身悶え、全身が性感帯のようになった春日部が、自分の作り上げた美術品のようで愛着が湧き、"僕のもの"という印を付けたくなってしまった。
馬鹿げた理由だが、衝動を抑えられずにやってしまった。
まさか仕返しで同じことをされるなど思ってもなくて、動揺したけど、その時はかなり興奮もした。
春日部の行為に『仕返し』以外の感情を勝手に見出だして。
けど、春日部に「ただの内出血」だと言われて正気に戻った。今朝もいつも通り「おはよう」と挨拶し合って春日部が作ってくれた半熟加減が絶妙なベーコンエッグを食べて、昼だって普通に堀田の惚気話を聞きながら一緒に飯を食べた。
キスマークのことは無かったことになっていた。
僕もそれでいいと思っているのに、ふとした瞬間に鎖骨の下に熱を感じてしまう。
キスマークが消えるまで、居心地の良くないこの感情と付き合っていかなければならないらしい。
自分だけがそんな感情をもて余している。そう思っていた。が、少し違ったようだ。
その日の夜に春日部はいつもと違うことをした。
大学の帰り、もやもやとした気分を晴らすために、スポーツジムに行き汗を流した。マンションに戻ると春日部は帰宅しており、夕食を作ってくれている最中だった。
「ただいま」と「おかえり」のやり取りをして、手を洗って着替えて僕も夕食作りを手伝おうと、キッチンに並んで立った。
「何をすればいい?これ、洗っていい?」
腕捲りをして指示を待っていると、春日部は、味噌汁用だと思われる豆腐を切る手を止めた。
「……えっと、夕食の前に、いいか?」
こちらを見ないで、ぼそっと呟かれて一瞬だけ戸惑ったが、「いいか?」は二人の間ではエロい行為の開始を意味している。
行為はほとんどか夜寝る前に行われていたので、珍しいこともあるもんだ、とは思ったが、断る理由もないのでその場に膝を着いた。
しかし、股間に手を伸ばすと止められた。
「あ、ここじゃアレだよね。リビングでする?それともバスルーム?」
取り敢えず、一発だけ抜いてほしいということなのかと思っていたが、じっくりやるつもりだったのか。
「あ、……いや、そうじゃなくて。俺が……。」
俺が、の続きは聞けなかったが、僕を立たせ代わりに春日部が跪いたことで、何をしたいかは分かった。
今までも何度となくしゃぶられてはいるが、そのほとんどは僕にいかされて理性がぶっ飛んでいる状態でのこと。
最初から、というのは初めてだ。
どういった心境なのか分からない。分からないが、何かが影響を与えたのだとすると昨日の事か。
なんにせよ、嬉しい変化だと思った。
春日部は、ベルトを外しファスナーを開け下着ごと足首まで引き下げた。僕は足を片方ずつ上げ、下半身はカバーソックスだけ、という格好になった。
勃起していないチンポをまじまじと見られ、少し恥ずかしくなる。
触るなら早く触って欲しいと思っていると、チンポを指で摘ままれ先端を舐められた。
ぞくりとして体を震わせると、春日部は僕の顔を見上げた。
早く、という思いを込めて見つめ返すと、春日部は少しだけ口許を緩めて、その後、また僕のチンポを舐めた。
先端、カリ首、裏スジ、玉袋。
全部丁寧に唾液をまぶすように舌を這わせている。
チンポはすぐに硬くなった。
「っ、ヤバイ、よ、春日部。」
ヤバイなんてもんじゃない。
春日部のフェラは、いつもは『いかせること』を目的にしたもので、気持ちいいとこを重点的に強めにしゃぶってくるのだが、今日は全然違う。
まるで味わうように、ゆっくりとチンポを追い詰めている。
舐めて、キスするように軽く吸い上げて、出てきた先走り汁を舌で掬い、糸を引いているのを見せつけてくる。
いかせるのが目的じゃない。
僕を煽るのが目的のフェラ。
――僕を煽って何をされたがってる?
今までの経験が、答えを出す。
「春日部、もっと、唾液、まぶしてよ。」
掠れた声で「でないと擦る時あんまり気持ち良くないかもよ?」と続けると、春日部は一瞬だけ躊躇したようだったが、僕のチンポを口に含んだ。
どんな顔をしているのか見たいが、前髪に隠れ表情が見えない。
それでも興奮しすぎて、血管が焼き切れそうだった。
ぬるぬるになるくらいに唾液をまぶされたチンポ。
春日部は口に入らなかった部分も丁寧に舌を這わせ濡らしている。
僕が肩に手を置き「もういいよ」と伝えると、春日部は潤んだ瞳をこちらに向けた。
腕を引いて立ち上がらせて、後ろに回り強く抱き締めると、春日部の体から力が抜けた。
操り人形のように、僕の意のままに動く春日部はシンクに両手をつけ、腰を突き出した。
春日部のスキニーを引き下ろし中のボクサーパンツも下げる。
形良い尻が晒されると、春日部は小さく震えた。
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