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謝罪

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    今日は春日部のバイトは休みで、夕方から二人分の食事を作ってくれた。
    美味しそうな料理が、二人用のダイニングテーブルに並んでいるのは、何度見ても頬が緩んでしまう。
    盛り付け方は大雑把だが、ご飯が進みそうな見た目をしていて、実際食べるとやっぱりめちゃくちゃうまい。春日部の料理に、僕はすっかり胃袋を掴まれてしまっていた。

    いただきますと手を合わせて、向かい合って食事を摂るが、今日の春日部はいつもより言葉が少ない。これ美味しい、と話しかけても返事はどこか上の空だ。いつもなら自慢げに作り方を教えてくれるのに。

    昼間の学食での話のせいだろうか。
    堀田のことで気を使ったのと、僕のゲイがバレないかとヒヤヒヤさせたこと辺りが原因か。

    静かな食卓に耐えられず、僕は口を開いた。

「昼は色々フォローありがと。でも、堀田のことは大丈夫だから気にしないで。もう完全に吹っ切れてるから。」
「……ホントか?」
「うん。来週にはセックスしたっていう報告もされるだろうけど、めでたいなって気持ちにしかならないと思う。」
「……そうか。」
「信じてない顔してる。ホントだから。昼だって堀田のことより春日部が挙動不審過ぎてハラハラしたくらいだよ。」
「だってあれはお前っ……あんな際どい話すんじゃねぇよ。焦ったなんてもんじゃなかったんだぞ。バレてもいいのかよ。」
「バレてもいいって言うか、堀田にはいつかカミングアウトしなきゃいけないかもしれないから、あんまり嘘は吐かない方がいいかと思って。あ、でも、春日部との関係のことは絶対バレないようにするから、そこは安心して。」
「あぁ、そうか……そうだな、頼む。」

    一通りわだかまりは取り去ったはず、と思ったが春日部はまだ何かが引っ掛かっているのか、食事を再開せず左手に持ったままの茶碗を見つめている。

「どうしたの?」
「……お前に、ちゃんと謝ってないな、と思って。」
「謝る?何を?」

    春日部は茶碗を置いて視線を上げ、僕をじっと見つめた。瞳は真剣で何を話されるのか恐くてドキドキした。

「俺、ゲイに偏見があるわけじゃねぇ、って前に言ったけど、やっぱりどこか偏った目では見てたんだと思う。それを謝りたくて。」
「気にしないでいいよ。春日部は理解ある方だよ。」

    話の流れが大体読めて、春日部以上の罪悪感に苛まれた僕は、謝罪をさせてはいけないと、話を終わらせたかった。しかし、春日部の気は済まないようで首を横に振り話を続けた。

「いや、偏った目で見てたんだよ。最近それに気付いちまって。そんなんだからあん時、お前に簡単に堀田を諦めろって言えたんだと思う。堀田の夢を高尚なモンみてぇに思っちまってて、お前の想いを下に見てたっつーか……。」
「いやいや、普通の価値観だよ。実際、ゲイばっかりだと地球が滅亡しちゃうし。」

    なけなしの良心が痛む。心臓が雑巾のようにぎゅうぎゅうに絞られているようだ。
    話を切り上げたくて、冗談っぽく言ってみても、やはり春日部の話は止まらない。
    変な汗が出てきた。

「堀田を諦めてほしいって俺が言ったとき、理由として堀田の夢のこと言っただろ?童貞と処女で、ってやつ。」
「あ、うん。」
「でも、堀田の彼女は多分処女じゃなくて、堀田もそれを分かってる。今はそんなの全然堀田には関係なかったみたいで、好きになれば何でもいいんだってアイツ言っててさ。俺、それを聞いてから、ずっと考えてて。」
「うん。」
「恋にランクとか、間違ってるとかそういうのは関係ねぇんだろうなって。気付いた。だから、今さらかもしんねぇけど、謝りたい。……ごめんな、町屋、お前の想いをないがしろにして。」

    僕に向かって頭を下げる春日部。人間としての成長を見せられているようで、多分友人ならば喜ぶべきところなのかもしれない。
    でも僕にとっては自分の小狡さを再確認させられたというか、とても複雑な気分だった。

    そんな僕の心情を知る由もない春日部は、謝ってすっきりしたのか「飯が冷めるな」と言って食事を再開した。
    おかずを口にし、自画自賛する様はすっかりいつも通りの春日部だ。

    二人で食器を洗い片付けをして「じゃ、シャワー浴びるか」というのも通常通り。


    そして、体を洗う名目で僕が春日部の全身を愛撫してアナルに触ろうとして、警戒されるのも通常通り。それでも春日部のエロい気分がノッてくると「まぁいいか」と諦めて触らせてくれるのもまた然り。

    いくら良心が痛んでも、エロい春日部を前にすれば僕の手は止まらない。

    調子に乗った僕がボディソープでぬめった指をアナルに入れて、逃げられる、もしくは怒られるのもいつも通りのはず……あれ?今日はちょっと様子が違う。

    春日部のアナルは指をしっかりと受け入れている。しかも、ぎゅっと耐えるように僕の体に抱きついて、抵抗してこない。体は微かに震えているが、どうやら恐怖からではないようだった。

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