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かさぶた
しおりを挟む「お前、俺の体に何しやがった!!」
春日部は凄く怒っていた。
ノックもせずに僕の部屋に勢いよく入ってきて、今にも胸ぐらを掴みそうなくらいに肩を怒らせている。
帰ってきてくれたことは嬉しかったが「おかえり」などとはとても言えそうにない。
ベッドで半身を起こした状態だった僕は、取り敢えず「リビングで話そっか」と提案しベッドから這い出ようとした。
春日部の説教を受けたり、今後の話し合いをしようと思ったのだが、春日部には僕がどこかへ逃げ出すようにでも見えたのか「逃げんなよ」と凄まれた。
春日部は、ドアの近くからドスドスと怒りも露に歩いてきて、ベッドサイドに立った。
そして、着ていたシャツの裾に手をかけ、捲り上げた。
薄く割れた腹と胸が見える。
「これ、どーしてくれんだよ!」
これ、と春日部は言いながら、しゅっとした形のいい顎で右乳首の方向を指した。
僕が齧ってしまった右乳首は、まだ少しだけ赤みが残っているが、腫れなどはすっかり引いているように見えた。
しかしまだ痛むのだろう。
「ご、ごめん。医者に診てもらった方がいいね。一緒に病院行こ?……ほんとごめん。」
春日部は悪くないのに苛ついて流血させてしまうなんて最低だ。あの時の僕はどうかしていた。今まで誰かを切れ痔にだってさせたことがないのに。
酷いことをしてしまった。
この数日間、ずっと反省していた。
「謝って済む問題じゃねぇ。」
「だよね。でも、取り敢えずは病院に行こ?診断書も書いてもらった方がいいね。」
「病院はいい。痛くはねぇから。」
「じゃあ痒いの?かさぶたは、ないみたいだけど。」
「っ、そうだよっ、そのかさぶただよ!昨日いじ……掻いてたら、ぽろっと剥がれて、そっからずっとおかしいんだよ!!」
「おかしいって?」
「っ。」
言葉に詰まった春日部は、凄く怒っていたはずなのに今度は泣きそうな顔をして、フイと横を向いた。頬は心なしか赤い気がする。
シャツを捲り上げたままそんな顔をされたら、チンポが反応してしまう。
反省モードが続行不可能になりそうだった。
「リビングで話そ?」
気を取り直す為にそう言うと春日部は僅かに首を横に振り、ポツリととても小さな声で何かを呟いた。
「ごめん、よく聞こえなかった。何?」
「――るんだ。」
「え?」
「っ、たからっ、か、感じるんだよッ、乳首が!かさぶたが取れてから、服に擦れるだけでうっかり声が出そうなくらい!!」
「えー。」
「えー、じゃねぇよ!」
にわかには信じられなかった。
あのチンポ以外不感症の春日部が、布が擦れただけで感じて声を出すなんて。
本当なら演技じゃない声を今すぐ聞いてみたい。
この状況からどうやってエロい方向へ持っていこうか考えたけど、多分小細工は必要ない。
「確かめたいから、触らせて?」
シャツを捲り上げている手とは別の腕を引っ張り、ベッドへ引き込む。
「わっ、オイッ、やめろって。俺は苦情を言いにきたんだっ。」
と言う割には、これといった抵抗もなく、すんなりとベッドに押し倒されてくれた。
自覚があるのかないのか分からないが、怒り心頭の口調と違い、少なくとも体の方は触ってほしそうだ。
なんだこれ。
誘い受けか。
最高すぎる。
「春日部、ごめん。もう痛いことしないから。だから、触ってみてもいい?」
「っ、お前のせいだからな。」
触られて乱れてしまっても俺のせいじゃない、という意味の弁明は遠回しな『イエス』なのだと解釈した。
押し倒された状態の春日部だが、こちらを見ようとしない。横を向き、きゅっと唇を噛み締めてその時を待っている。
胸は深呼吸しているかのように動いていて、触る前から興奮状態なのが分かる。
「よく見ると、右乳首だけ勃起しちゃってる。ねぇ、自分で、いじってみた?それとも女の子に触ってもらった?」
「っ、女には、触らせられねぇ。」
「そんなに恥ずかしい声が出ちゃうの?だったら、自分で触った?」
「……触った。」
胸に指を置いて、乳輪の回りをクルクルとなぞり焦らしてみた。
春日部の体はプルプルと震えている。
よっぽど刺激が欲しいのか、言葉攻めのような質問にも答えてくれる。
「乳首触ってオナニーしたの?」
「っ、何回か。でも収まりつかねぇし。」
「あははー、やらしー。」
お前のせいだろうが!、と噛みついて来られそうな話をしているというのに、僕の指がいつそこに触れるかの方が春日部は気になるらしい。
小さいがツンと勃起している乳首。薄茶色の左乳首と比べれば、若干赤い。かさぶたが剥がれて皮膚が少し薄くなっているのかもしれない。
人差し指でそっと、一瞬だけ触れてみると、春日部はビクッと体を震わせた。
「つぁ。」
ヤバイ。
漏れた吐息はかなりの熱を帯びていて、感じている演技なんかじゃないと一瞬で理解できた。
今度は、指の腹ですりすりと撫でてやると、子犬のような喘ぎを漏らした。
ぎゅっと閉じられている春日部の目からは涙も溢れている。
最高。
もっと乱れてほしい。
親指と人差し指でくりくりと強めに摘まむ。
「ん、ああっ、町屋ぁ。」
春日部は背中を反らせ、快感に身悶えた。
そして目を開け、もう一度「町屋」と僕を呼んだ。
もっと、と言われている気がした。
理性が飛びそうになったが、こんな機会はなかなかない。どうせなら、言葉遊びを楽しみたい。
昂る気持ちを抑え、いつも通りの僕を装う。
「うーん、確かにこんなに乱れた姿、女の子に見せるのは恥ずかしいかもね。」
「っ、だ、誰のせいだよっ。」
「うん。ごめん。ちゃんと責任取って気持ちよくさせてあげるからね。取り敢えず今日は、いっぱい舐めてあげるね。」
舌先でちょん、ちょん、と触れ、春日部を見上げると、春日部も僕を見ていた。
せっかくなので、今度は春日部の目を見ながら舐めてやる。
「あ、あ、あ、こっち、見んなっ、っ、あっ、もう、いいっ、やめっ。」
「え?やめて、いいの?」
舐めるのを止めると、春日部は、はぁはぁと乱れた息を吐き物欲しそうに僕を見た。
「してほしいの?」
「……っ。」
「答えられない?じゃあ、止めるね。」
「い、いやだっ。」
子どものように首をブンブンと振る春日部。可愛いが、勘弁してやれない。
「誰に舐めてほしいのか、ちゃんと言って。」
「っ、なんでっ。」
「大事なことだからだよ。春日部、言えたら乳首舐めながらチンポも扱いてあげるよ?」
「っ、」
「それとも、今から女の子のとこに行って慰めてもらう?夏休み前に、次は私を抱いてくださいって、連絡先書かれた紙、いっぱいもらってたよね?僕が代わりに電話してあげるよ。ここに迎えに来てって。いっぱい乳首舐めてあげてって女の子にアドバイスもしてあげるし、女の子みたいに啼いちゃっても引かないようにも言ってあげるよ?」
春日部が僕の部屋に来た時、怒っていたのは、どうにもならない疼きがあったから。
その欲を満たすことができるのが僕しかいないことに気付き、打ちのめされた怒り。それを僕にぶつけた。
誰かで事足りるようなことなら、今頃春日部はここにいない。
わかっているけど、言わせたい。
「……まっ、町屋でっ、町屋で、いいっ。」
「僕でいいの?」
「っ、町屋が、……町屋じゃなきゃ、ダメ、だ」
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