突如として国外追放された騎士の俺は、イケメンへとフルモデルチェンジした愛剣から偏愛されています。

一火

文字の大きさ
7 / 36

7.

しおりを挟む
 それは爽やかな朝だった。

この、腰の鈍い痛みさえ無ければ。

「そろそろ準備始めろよ、ロア。今日はギルドに行ってみるんだろ」
 毛布の中から動こうとしない俺を、おそらく支度を終えたであろうアーサーが声を掛ける。
「んー……」
 正直、別に動けない程の痛みではない。
 ただ……この腰の鈍痛が、彼とことの証明のようで……

 シンプルに、恥ずかしいのだ。

 どんな顔をアーサーに向ければいいのか分からない。てか、なんで抵抗しないんだよ……なんで受け入れたんだよ俺。
 その答えはただ1つ、
 快楽に負けてしまった。
 そんな動物のような理由で、あの男に身体を許してしまった。

 まぁたしかに、アーサーは一緒に居て楽しいし、頼りになるし、異常な程顔が良いし、色気の権化だし、笑顔は綺麗だし、何か面倒見いい気がするし、少し意地悪だが優しいところはあるし、何故か気が許せるし、夜の……こ、行為も、えげつない快楽だった。……だっ、だけど別に惚れたとか好きになったとか、……

 腰だけでなく頭まで痛くなってきた。
 ああ、動きたくない。だが、手元の資金は先立つもののおかげで枯渇状態。
 意を決して毛布から動き出そうとした、その時だった。
「仕方ないな」
 バサッとアーサーが勢いよく、頭から被っていた毛布を剥ぎ取ってしまった為、一気に視界が白み反射的に目をぎゅっと閉じてしまう。
 そんな俺の唇に覚えのある感触と、それとは違う感触を同時に感じた。慌てて目を開くと、何やら甘酸っぱい味が口の中いっぱいに広がる。
「!?」
 それが、昨日の果実だと認識出来たのは、彼の右手にひと口齧った跡のついたそれが握られていたから。
 口内に入ったその固形物が、ゴクリと音を立て食道へと流れていく。
 もしかしなくてもこれ……あの……く、口移しで…食べさせられた……?
「何か口に入れれば目も覚めるだろ」
 そんなアーサーの言葉が「大正解」と告げている。
 途端に顔から湯気が噴き出した。どうやらそんな様子に気を良くした彼は、俺の顎に指を掛け、ニヤけが止まらない自分の顔の方へ向かせる
「もう一口、食べさせてやろうか?」
 カァァと全身が熱くなるのがわかる。
「じ、自分で食べます!」
 それ隠すよう、乱暴にアーサーの手から果実を奪うと、そっぽを向きそれに口をつけた。
「くくっ……」と笑い声を漏らしながら、アーサーはポンポンと俺の頭を撫でると、自分の身支度を整える為テーブルの方へと向かっていった。
 そんなアーサーを横目で見ながら、その果実に齧り付く。
 ……その果実は、昨日食べた時よりも……遥かに甘く感じた。



>>>

「ようこそ! ベルデ王国公認ギルド、スレインへ!! 新規の登録で宜しいですか?」
 石造りの大きな建物に入った俺たちは、奥のカウンターへと向かった。
 愛想の良い、三つ編みの若い女性が元気にそう言うので「お願いします」と2人分の登録を済ませる。
 当初アーサーの登録をするかしないかを2人で話し合ったが、まぁもらえる報酬は多いに越したことはないだろうという事で、彼も人間の姿で登録をする事にした。
「どのような任務がお好みですか? モンスター討伐、薬草採取から街の警備まで、スレインは数多くの案件を取り揃えております!」
 バァン! と見たことも無いほどの大量の紙束がカウンターに置かれ、「まさかこれ全部から選ぶのか」と1度頭を抱えた。
「討伐系で構わない。2人で出来る、割のいいモノはあるか? 多少難しい物でも良い」
 ありえない書類量に軽くパニックを起こしている俺の隣で、アーサーは淡々と事を進めていく。
「そうですねぇ……むむむ、金髪のお兄さんは甲冑からして騎士、黒いローブのお兄さんは魔術師でしょうか? 闇のオーラが見えます。お二人の実力が分からない状態なので、ハイクラス級のものを除くと……あ! これなんかどうでしょう」
 受付嬢が景気よくバァン!と1枚の紙を俺たちの前に置いたので、思わずアーサーと顔を見合わせた。



>>>

「ドラゴン討伐…ねぇ」

 渡された地図通りに、国の西側に位置する森へと俺たちは立ち入った。
「ワイバーンに近い下級クラスの物だと、あの受付嬢は話していたが。まぁ、そのくらいなら、騎士団の頃に嫌という程戦っているだろう」
「まぁ、ね。それで小金貨3枚は確かに割がいいな」
 下級モンスターの討伐なんて、良くて大銀貨5枚。
それがこれは小金貨3枚という大盤振る舞い。なにか裏がある気がしなくもないが、早急に金が要る俺達にはありがたい話でしかない。

 鬱蒼とした森の中、落ちた小枝を踏み鳴らしながら奥へと進んでいく。
 森の中は、しんと静まり返っていた。
「おかしいな、他に生き物の姿が見当たらない……」
 それなりに大きな森。幾らドラゴンが蹂躙しているからといえど、小鳥の1匹もいないのは流石に妙だ。
 不意に何かとてつもない気配を背後に感じ、反射で振り返り体勢を整える。
 アーサーも何かを察したようで、すぐさま剣の姿へと戻り、俺の背中へと移動した。
 森の奥から何かが発射され、勢い良く飛んでくるそれを横に飛びながら避ける。
 ベタっと黒く緑がかった粘液のようなものが、先程まで立っていた場所の木々に飛び散っている。
「毒性の、粘液……?」
 粘液が付着したその樹皮がみるみるウチに腐り始める所を見るに、間違いなく毒性のものだろう。

『来るぞ、ロア。奥からだ』
 ドスンドスンと大地を踏み締める音が森中に響き渡る。
俺はアーサーをそちらに向けて構え、そいつが顔を覗かせるのを待った。
「……なぁ、アーサー。ワイバーンクラスの、言ってしまえば雑魚ドラゴンって言ってたよな」
『受付嬢の話では、そうだったな』
 木々の間から、玉虫色に光る甲殻を纏った…一体の大きなドラゴンが顔を覗かせる。
 俺たちの姿をみるやいなや、空気を劈く咆哮を上げるそのドラゴンは、記憶しているものが間違っていなければ雑魚なんかではない。
「……俺の記憶が正しければ、これ……ファフニールじゃないか? あの、伝説級のドラゴンの……1発でもその吐く毒液に当たれば即死だって噂のさぁ」
『そうだな……俺の目にもそう映っているな』
再び吐かれようとする毒液を、慌てて草むらへ転がり回避する。
「いや、一個小隊どころか、騎士団全軍挙げて討伐するレベルのドラゴンじゃねーか!!」

心の中で泣いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました

未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。 皆さまありがとうございます。 「ねえ、私だけを見て」 これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。 エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。 「この恋、早く諦めなくちゃ……」 本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。 この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。 番外編。 リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。 ――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない

上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。 フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。 前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。 声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。 気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――? 周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。 ※最終的に固定カプ

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

処理中です...