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第1部・序章/出会い編
36.答え合わせ2
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一際強い風が吹いた。
2人はその場で動かずにいる。
先に静寂を破ったのは、エミリカの方だった。
「……なんの事かしら、その物騒な物はしまって頂けます?」
「……第3騎士団団長を捕らえました。彼は全て吐きましたよ。」
その言葉に、エミリカの体は大きく震え紅潮していた頬はみるみる青くなって言った。
「第3団長に取り入った貴女はまず、敵国にロキの素性が怪しいと噂を流すよう命じた。女っ気のない第3団長の事だ、貴女からすれば赤子の手を捻るより簡単だったでしょう。……まさか、騎士団内部……それも幹部に裏切り者が居る、なんて事誰も思いもしない……とでも思ったのでしょう。」
まぁ……ファウスト総帥は気付いていたけれども。
>>>
━━ロキ帰還の緊急招集が行われた、あの日。
第3騎士団団長、ローガンは部屋を出て行ってしまった。
「……これから、話の本題に移る。」
全員がドアの方を見ている中、ファウストが静かにそう言った。
「本題……とは。ロキの話ではないので?」
訝しげな顔で、最初に声を上げたのはマクシミリアンだ。
「あぁ、ここからが本題だ。ローガンが自分の意思でこの場を離れ、残りの3人でロキの対策を練る……というこの構図が欲しかった。」
「そりゃ……どういう事だよ。」
アルバーノも眉間に皺を寄せ、怪訝そうにファウストを見ている。
「ロキに関して、敵国に間者だと噂を流した人物。それこそがローガンだと私は見ている。」
場が静まり返った。
「は……?何が目的で……?」
目を見開いたリアが問う。
「ローガンはこの所、ある公爵家へ出入りをしている……と言う報告が私の元に上がっている。その公爵家というのが……これだ。」
ファウストが机の上に1枚の紙を置いた。
皆がその紙を見つめる。
声を上げたのは、リアだった。
「エレミーツ…………エミリカの……」
「そう、ここ最近君へ強いアプローチを掛けているエレミーツ家のご令嬢。どうやらこのエミリカと言う女と、ローガンは繋がっているようだ。」
「……リアの痴情のもつれだと言うことは分かりました。だからと言ってロキを自由にしたところで、このご令嬢の敵が増えるだけでしょう。目的が見えません。」
マクシミリアンは溜息混じりにそう言った。
痴情のもつれ、その言葉にアルバーノはケラケラ笑い、リアは額に手をやって項垂れた。
「リアの痴情のもつれは、まぁ……我々にはどうでもいいのは確かだが」
「痴情、痴情言い過ぎです。私だって迷惑なんです。」
ファウストの言葉に、もううんざりだと言うようにリアが零す。
「そうだな。悪いのは全て……リアが美しいという事なんだが」
…………これは、ファウスト渾身のボケなのか。
(おい、マクシミリアン。ツッコめよ。おめーしかいねぇだろ)
(は?……いや、こういう事に、バカじゃねーのかって言うのがお前の仕事だろアルバーノ)
(あ?……じゃぁ、リア。おめーの事だろテメェがどうにかしろ)
(これ以上私を苦しめないでくれ……)
と、三騎士が目で会話をしていると、コホン……とファウストが咳払いをした。
「エミリカ嬢の目的は定かでは無い。ローガンを使い、ロキを解放し……それで何をするのか。一つだけ言えるのは……」
そう言ってファウストはリアの方を真っ直ぐ見た。
「リア。君は最近、内勤にすると言って男を連れて来ていたな。」
「えっ……あぁ、ユキの事でしょうか。」
「君がとても懇意にしていると聞いている。エミリカ嬢にとっては……邪魔な存在でしかないだろうな。」
「……そんなまさか……」
それまで静かな声で話していたリアだったが、否応なく声が大きくなる。
「あくまで、ここまでの話は私の憶測だ。だが、何か大きな事が起こるような……そんな気がしてならない。一先ず、この件は調べる必要があると考える。マクシミリアン。」
「……私の役目は、ローガンの監視と身辺調査というところでしょうか。」
ファウストから令が下されると、マクシミリアンは胸に手を当て軽く頭を下げる。
「話が早いな。アルバーノはそのユキと言う男の警護とロキの監視だ。くれぐれも気付かれぬようにな。」
「はー、わかりましたよ。」
気だるそうに頭を掻きながら返事をするアルバーノ。
「リアよ。」
「はい。」
「お前は自分の身は自分で守れる……だがあの子はどうだ。……しっかりと守ってやれ。」
「……当然です。」
リアは、ぐっと拳を握った。
私のせいで……ユキが……。
絶対に、守らなければ。
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2人はその場で動かずにいる。
先に静寂を破ったのは、エミリカの方だった。
「……なんの事かしら、その物騒な物はしまって頂けます?」
「……第3騎士団団長を捕らえました。彼は全て吐きましたよ。」
その言葉に、エミリカの体は大きく震え紅潮していた頬はみるみる青くなって言った。
「第3団長に取り入った貴女はまず、敵国にロキの素性が怪しいと噂を流すよう命じた。女っ気のない第3団長の事だ、貴女からすれば赤子の手を捻るより簡単だったでしょう。……まさか、騎士団内部……それも幹部に裏切り者が居る、なんて事誰も思いもしない……とでも思ったのでしょう。」
まぁ……ファウスト総帥は気付いていたけれども。
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━━ロキ帰還の緊急招集が行われた、あの日。
第3騎士団団長、ローガンは部屋を出て行ってしまった。
「……これから、話の本題に移る。」
全員がドアの方を見ている中、ファウストが静かにそう言った。
「本題……とは。ロキの話ではないので?」
訝しげな顔で、最初に声を上げたのはマクシミリアンだ。
「あぁ、ここからが本題だ。ローガンが自分の意思でこの場を離れ、残りの3人でロキの対策を練る……というこの構図が欲しかった。」
「そりゃ……どういう事だよ。」
アルバーノも眉間に皺を寄せ、怪訝そうにファウストを見ている。
「ロキに関して、敵国に間者だと噂を流した人物。それこそがローガンだと私は見ている。」
場が静まり返った。
「は……?何が目的で……?」
目を見開いたリアが問う。
「ローガンはこの所、ある公爵家へ出入りをしている……と言う報告が私の元に上がっている。その公爵家というのが……これだ。」
ファウストが机の上に1枚の紙を置いた。
皆がその紙を見つめる。
声を上げたのは、リアだった。
「エレミーツ…………エミリカの……」
「そう、ここ最近君へ強いアプローチを掛けているエレミーツ家のご令嬢。どうやらこのエミリカと言う女と、ローガンは繋がっているようだ。」
「……リアの痴情のもつれだと言うことは分かりました。だからと言ってロキを自由にしたところで、このご令嬢の敵が増えるだけでしょう。目的が見えません。」
マクシミリアンは溜息混じりにそう言った。
痴情のもつれ、その言葉にアルバーノはケラケラ笑い、リアは額に手をやって項垂れた。
「リアの痴情のもつれは、まぁ……我々にはどうでもいいのは確かだが」
「痴情、痴情言い過ぎです。私だって迷惑なんです。」
ファウストの言葉に、もううんざりだと言うようにリアが零す。
「そうだな。悪いのは全て……リアが美しいという事なんだが」
…………これは、ファウスト渾身のボケなのか。
(おい、マクシミリアン。ツッコめよ。おめーしかいねぇだろ)
(は?……いや、こういう事に、バカじゃねーのかって言うのがお前の仕事だろアルバーノ)
(あ?……じゃぁ、リア。おめーの事だろテメェがどうにかしろ)
(これ以上私を苦しめないでくれ……)
と、三騎士が目で会話をしていると、コホン……とファウストが咳払いをした。
「エミリカ嬢の目的は定かでは無い。ローガンを使い、ロキを解放し……それで何をするのか。一つだけ言えるのは……」
そう言ってファウストはリアの方を真っ直ぐ見た。
「リア。君は最近、内勤にすると言って男を連れて来ていたな。」
「えっ……あぁ、ユキの事でしょうか。」
「君がとても懇意にしていると聞いている。エミリカ嬢にとっては……邪魔な存在でしかないだろうな。」
「……そんなまさか……」
それまで静かな声で話していたリアだったが、否応なく声が大きくなる。
「あくまで、ここまでの話は私の憶測だ。だが、何か大きな事が起こるような……そんな気がしてならない。一先ず、この件は調べる必要があると考える。マクシミリアン。」
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「リアよ。」
「はい。」
「お前は自分の身は自分で守れる……だがあの子はどうだ。……しっかりと守ってやれ。」
「……当然です。」
リアは、ぐっと拳を握った。
私のせいで……ユキが……。
絶対に、守らなければ。
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