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第1部・序章/出会い編
31.親友
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「地上を這いずるのはめんどくせえ、空から行くぞ。落ちんなよ。」
どうにかこうにか馬に跨り、一息付いている俺にアルバーノはそう言った。
「…空…!?え、空って…!?」
「空は空だろ。…飛ぶんだよ!」
そう言ってアルバーノは馬ごとふわっと浮き上がり、そのまま天高く登って行った。
続いて、ガラハッドの胴体も浮き上がる。
「わっ、…わ、ちょっとまって……」
どうにか振り落とされまいと、ガラハッドにしがみつく。
「ったく…情けねぇなぁ……。さっきまでの勢いはどうしたよ。」
やれやれ…と首を振りながらも、怯える由貴の乗る馬に自身の馬を並走させる。
「……何だかんだで優しいですよね…」
「あ?…悪ぃがオメーは俺の好みじゃねぇからな。」
「……なんで昨日から皆そう言うんだろ…」
ははは…と自傷気味に笑うと、そんな由貴を見てアルバーノはケラケラ笑った。
「……アルバーノは、リアと親友なんですか?」
せっかくの機会だ、気になることを聞いておこうと思い、意を決して聞いてみたが……当然のように睨まれた。
「あぁ?…なんでそうなんだよ。…あのなぁ、俺は別にあの馬鹿を助けに行こうってわけじゃねーんだぞ。テメェの部下のケツ拭きにいくんだよ。」
「いや、まぁ…そうなんですけど……」
不意にアルバーノは遠くに目線をやり、ふっと笑った。
続いて、何かを思い出したようにぽつりぽつりと話し始める。
「……騎士団の模擬戦で、己の剣技のみで戦うっつー競技があるんだよ。」
「剣技のみ…魔法は使用禁止ってことですか?」
「そういうこった。…俺は剣も強い。…だけどよぉ、そんな俺が1度だけ星を取りこぼしたことがある。」
「……まさか、その相手が…リア?」
アルバーノは、否定も肯定もせず黙っている。
「俺は勝ち逃げは許さねぇ。…俺以外に殺られるなんて、許さねえんだよ。」
……やっぱり、親友じゃん…
声に出そうかと思ったけれど、止めておいた。
リアを、助ける。
今まで助けられてばっかりだった。
俺には、助けられる力がちゃんとあるんだ…
それを過去のせいにして逃げて……向き合おうとしなかった。
でも、もう大丈夫。
胸元に光る、青い宝石をぎゅっと握る。
絶対に、リアと一緒に帰るんだ。
暗い雰囲気の森の中に、その隠れ家だというレンガ造りの洋館は立っていた。
木が生い茂り過ぎて光が入らないのか、辺りは薄暗い。
洋館にも蔦まみれで、おまけに今にも崩れそうなくらい朽ちている。
4階建て…だろうか、少し高さがある様子がまた不気味さを醸し出している。
建物から少し距離を取った所に、由貴とアルバーノは馬を降ろした。
「あそこだな。」
「…リア…待ってて」
1歩踏み出そうとした由貴を、アルバーノの手が制する。
「待て。…お前何もできねぇだろ。とりあえず俺の後ろに…」
「いや、……大丈夫。」
「は?」
━━もう、大丈夫。つらくない。怖くない。
まずは、場の浄化。
それから……
あぁ、体はしっかり手順を覚えているもんだな。
「元柱固具、八隅八気、五陽五神、陽動二衝厳神、害気を攘払し、四柱神を鎮護し、五神開衢、悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹し、元柱固具、安鎮を得んことを、慎みて五陽霊神に願い奉る。」
由貴がそう口にすると、彼の体を中心に風が巻き起こる。
━あの声は、もう…聞こえてこない。
「……お前…」
隣でアルバーノは、言葉を失っていた。
「…力を貸して欲しい。」
2枚の霊符を指に挟めば、その札から光が溢れ出す。
「…白虎、朱雀。此処に顕現せよ。」
彼を取り囲む風がより一層大きくなったかと思えば、火を纏った大きな鳥と、白い体に緑色の光を纏った虎が姿を現す。
「……ははっ…おもしれーじゃねーか。」
暫く呆けていたアルバーノがふと我に返り、片手を開いて何かを唱えた。
どこからとも無く剣が現れ、その剣が放っている稲光がアルバーノの体にまとわりつく。
「行くぞ!!!!気合い入れろォォ!!!」
アルバーノの声と共に、2人は洋館へと駆け出した。
その勢いのまま扉を蹴り破り、中に入る。
そこに居る何十人といる男たちの視線が、入口の2人に集まった。
全員、黒ローブ姿の異様な光景だ。
「……なるほどね。」
アルバーノは何かに納得したかのように笑いながら呟いた。
「……めちゃくちゃ居るじゃん…」
「よぉ、ユキ。ここが崩れ落ちようが、燃えようが、何人殺ろうが、俺が全責任とってやる。だから……思い切り暴れろや!!!」
言い終わると同時にアルバーノは飛び出し、雷を纏った剣を振る。
あっという間に何人かがその場に崩れ落ちた。
「…そんな物騒な……。まぁでも、そのつもりでいくよ……白虎!!朱雀!!」
由貴が手で合図すると、白虎は風を凝縮した刃で敵を切り刻み、朱雀は羽ばたきながら一帯に炎を振り撒く。
「……へえ、やるじゃん?」
黒ローブたちは、雷・風・炎の攻撃を受け瞬く間にその場に崩れ落ちて行った。
「おい。……テメェ……」
いつの間にか背後から、今まさに由貴にナイフを振り下ろそうとしている敵にアルバーノは手を翳して電撃を加える。
「……ひっ………あ、ありがとうアルバーノ……」
由貴が手を翳して合図を送る。
その動きに合わせて白虎が咆哮をすれば、空気がビリビリと震え、黒ローブの男たちが一斉に怯んだ。
「はっ、……案外いいコンビなんじゃね?俺ら。まーお前は好みでは無いけどな。」
「それ今言う!?……俺にはリアが居るから結構ですーー!!」
リア……絶対助けるから……!!!
どうにかこうにか馬に跨り、一息付いている俺にアルバーノはそう言った。
「…空…!?え、空って…!?」
「空は空だろ。…飛ぶんだよ!」
そう言ってアルバーノは馬ごとふわっと浮き上がり、そのまま天高く登って行った。
続いて、ガラハッドの胴体も浮き上がる。
「わっ、…わ、ちょっとまって……」
どうにか振り落とされまいと、ガラハッドにしがみつく。
「ったく…情けねぇなぁ……。さっきまでの勢いはどうしたよ。」
やれやれ…と首を振りながらも、怯える由貴の乗る馬に自身の馬を並走させる。
「……何だかんだで優しいですよね…」
「あ?…悪ぃがオメーは俺の好みじゃねぇからな。」
「……なんで昨日から皆そう言うんだろ…」
ははは…と自傷気味に笑うと、そんな由貴を見てアルバーノはケラケラ笑った。
「……アルバーノは、リアと親友なんですか?」
せっかくの機会だ、気になることを聞いておこうと思い、意を決して聞いてみたが……当然のように睨まれた。
「あぁ?…なんでそうなんだよ。…あのなぁ、俺は別にあの馬鹿を助けに行こうってわけじゃねーんだぞ。テメェの部下のケツ拭きにいくんだよ。」
「いや、まぁ…そうなんですけど……」
不意にアルバーノは遠くに目線をやり、ふっと笑った。
続いて、何かを思い出したようにぽつりぽつりと話し始める。
「……騎士団の模擬戦で、己の剣技のみで戦うっつー競技があるんだよ。」
「剣技のみ…魔法は使用禁止ってことですか?」
「そういうこった。…俺は剣も強い。…だけどよぉ、そんな俺が1度だけ星を取りこぼしたことがある。」
「……まさか、その相手が…リア?」
アルバーノは、否定も肯定もせず黙っている。
「俺は勝ち逃げは許さねぇ。…俺以外に殺られるなんて、許さねえんだよ。」
……やっぱり、親友じゃん…
声に出そうかと思ったけれど、止めておいた。
リアを、助ける。
今まで助けられてばっかりだった。
俺には、助けられる力がちゃんとあるんだ…
それを過去のせいにして逃げて……向き合おうとしなかった。
でも、もう大丈夫。
胸元に光る、青い宝石をぎゅっと握る。
絶対に、リアと一緒に帰るんだ。
暗い雰囲気の森の中に、その隠れ家だというレンガ造りの洋館は立っていた。
木が生い茂り過ぎて光が入らないのか、辺りは薄暗い。
洋館にも蔦まみれで、おまけに今にも崩れそうなくらい朽ちている。
4階建て…だろうか、少し高さがある様子がまた不気味さを醸し出している。
建物から少し距離を取った所に、由貴とアルバーノは馬を降ろした。
「あそこだな。」
「…リア…待ってて」
1歩踏み出そうとした由貴を、アルバーノの手が制する。
「待て。…お前何もできねぇだろ。とりあえず俺の後ろに…」
「いや、……大丈夫。」
「は?」
━━もう、大丈夫。つらくない。怖くない。
まずは、場の浄化。
それから……
あぁ、体はしっかり手順を覚えているもんだな。
「元柱固具、八隅八気、五陽五神、陽動二衝厳神、害気を攘払し、四柱神を鎮護し、五神開衢、悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹し、元柱固具、安鎮を得んことを、慎みて五陽霊神に願い奉る。」
由貴がそう口にすると、彼の体を中心に風が巻き起こる。
━あの声は、もう…聞こえてこない。
「……お前…」
隣でアルバーノは、言葉を失っていた。
「…力を貸して欲しい。」
2枚の霊符を指に挟めば、その札から光が溢れ出す。
「…白虎、朱雀。此処に顕現せよ。」
彼を取り囲む風がより一層大きくなったかと思えば、火を纏った大きな鳥と、白い体に緑色の光を纏った虎が姿を現す。
「……ははっ…おもしれーじゃねーか。」
暫く呆けていたアルバーノがふと我に返り、片手を開いて何かを唱えた。
どこからとも無く剣が現れ、その剣が放っている稲光がアルバーノの体にまとわりつく。
「行くぞ!!!!気合い入れろォォ!!!」
アルバーノの声と共に、2人は洋館へと駆け出した。
その勢いのまま扉を蹴り破り、中に入る。
そこに居る何十人といる男たちの視線が、入口の2人に集まった。
全員、黒ローブ姿の異様な光景だ。
「……なるほどね。」
アルバーノは何かに納得したかのように笑いながら呟いた。
「……めちゃくちゃ居るじゃん…」
「よぉ、ユキ。ここが崩れ落ちようが、燃えようが、何人殺ろうが、俺が全責任とってやる。だから……思い切り暴れろや!!!」
言い終わると同時にアルバーノは飛び出し、雷を纏った剣を振る。
あっという間に何人かがその場に崩れ落ちた。
「…そんな物騒な……。まぁでも、そのつもりでいくよ……白虎!!朱雀!!」
由貴が手で合図すると、白虎は風を凝縮した刃で敵を切り刻み、朱雀は羽ばたきながら一帯に炎を振り撒く。
「……へえ、やるじゃん?」
黒ローブたちは、雷・風・炎の攻撃を受け瞬く間にその場に崩れ落ちて行った。
「おい。……テメェ……」
いつの間にか背後から、今まさに由貴にナイフを振り下ろそうとしている敵にアルバーノは手を翳して電撃を加える。
「……ひっ………あ、ありがとうアルバーノ……」
由貴が手を翳して合図を送る。
その動きに合わせて白虎が咆哮をすれば、空気がビリビリと震え、黒ローブの男たちが一斉に怯んだ。
「はっ、……案外いいコンビなんじゃね?俺ら。まーお前は好みでは無いけどな。」
「それ今言う!?……俺にはリアが居るから結構ですーー!!」
リア……絶対助けるから……!!!
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