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小話
ホワイトデー、とは【前編】
しおりを挟む「俺の国には、ホワイトデーってやつがあってさ。ヨトもやってみたら?ルークに」
カエラム王宮、ルークの執務室。
本日は近隣諸国の王子が集まっての会合が、ここカエラムで行われている。
ルークの参加はもちろん、姉妹国のルードヴィクからは第3王子のレアンがこの会合に参加している。
付き添いでやって来た、異世界の「ニホン」出身のハルが、出された紅茶に口を付けながらそんな話を教えてくれた。
「ほわいとでー?⋯それは何をする日なので?」
「んー。ホントは1ヶ月前のバレンタインデーって日のお返しをする日なんだけどさ⋯好きな人にお菓子を渡したりして、感謝と愛を伝える日だね」
「ふむ⋯」
ハルの座るソファの向かいに腰掛けながら、ヨトは自らも出された紅茶を1口飲む。
「そのお菓子は、手づくりだと尚良し」
「⋯て、手作り⋯」
紅茶をソーサーに戻しながら、ヨトは何やら難しそうな顔をする。
(手⋯作り⋯。それはつまり料理⋯)
もちろん、ヨトは料理などした事がない。
チェイラにいた頃は料理人が日々の食事を用意してくれていたし、ちょっとした夜食などはルハオが作ってくれていた。
腕を組んで唸るヨトを面白そうな顔で見つめるハルは、紅茶を置きながら彼にある提案をしてみる。
「一緒に作ってみるか?俺もレアンに何か作ってやろうと思ってたし⋯」
「良いのですか!!」
ハルが言い終わる前に、ヨトは嬉々とした声を上げる。「おかしい⋯なんか、頭部にピンッと立ち上がった猫耳が見える⋯」と幻覚に悩まされるハルを尻目に、ヨトはその大きな猫目をキラキラと輝かせる。
(今まで、そのような事をルークにしたことは無かったが⋯いい機会だ)
日頃から自分の事を愛し、この世界の何よりも大切にしてくれるルークに何かしたいとは思っていたが、具体的に何をすればいいか分からず今日に至っていた。
「⋯因みにだけど⋯料理経験は⋯?」
「ないです」
「ですよねぇ」
即答するヨトにハルは苦笑いを浮かべながら、まだまだ終わる様子の無い会合に「じゃぁちょっとキッチン借りようか」とその場を立ち上がった。
メイドに頼み、借りた広い広いキッチンの片隅でハルが手際よく食材を並べる。
「これで何を作るので?」
「プリンだよ。これならそう難しくはないし、ヨトでも作れるんじゃないかなって」
「ほう⋯」
「じゃぁ、俺の言う通りにやってみて」
「承知した」
この後、ハルは思い知らされるのである。
料理下手の実力をナメてはいけなかった、と。
「大変です、ハル殿。卵を粉砕しました」
「片手で⋯握り潰した???優しく、優しくだよヨト」
「ハル殿、牛乳が豆腐と化しました」
「どうして?????どうしてなの????」
そんなこんなでどうにか作り上げ「ドウシテ⋯」と脱力状態のハルを横目に、ヨトは蒸し器に手を掛ける。
「⋯大変です、ハル殿」
「まだ何か⋯」
「プリンが、逃げたがっています」
「は⋯⋯?」
おそるおそるハルが、蒸し器の中に目を遣ると⋯容器から逃げ出さんと溢れ出す、生き物のような黄色い液体がそこに居た。
「⋯⋯なにを、仕込んだ⋯」
暫く頭を抱えたハルが「ちょ、違う作り方を考えてくるわ」とため息混じりに零したので、今日のところはそこで解散となった。
「随分、ハルと仲良さそうだったじゃないか」
会合が終わり、ルークとレアンが執務室に戻ってくるのと、ハルとヨトがキッチンからそこへ戻るのはほぼ同時だった。
「2人で何処かに行っていた?」と、ルークの眉が釣り上がるのを、その時ヨトは気が付いてはいなかった。
ハルとレアンが自国のルードヴィク王国に戻るのを見送り、自分たちも私室へと戻るやいなや、ヨトはルークに腕を掴まれ壁へとその体を押し付けられた。
「そんな、特別仲が良いという訳では」
「⋯2人きりでどこで何してた?」
「それ、は⋯」
ルークの問にヨトの目が泳ぐ。
(せっかくなら、ルークを驚かせたい)
まさか自分が料理をするなんて⋯そんな事夢にも思わないであろうルークにサプライズで手料理を渡したい。
それのお陰で、曖昧になるヨトの態度にルークのイラつきは増す。
「どうして言えない?」
ルークはヨトの顔を掴み自分の方に向かせると、その唇を乱暴に貪る。
「⋯っは、ふ⋯べつ、に⋯っんんぅ⋯!!」
無理矢理口内に舌を捩じ込まれ、ヨトの弱い上顎をゴリゴリと擦る。
「俺以外がこの身体に触れるのは、絶対に許さない」
崩れ落ちそうになるヨトの身体だが、壁に押し付けられた片腕はそれを許さない。いつもより数段力のこもった腕は、彼の言葉を体現しているかのようだっだ。
「⋯ぷ、はっ⋯はっ、は⋯それは、当然⋯おれ、ルーク以外⋯いらな⋯いし、何か勘違いを⋯⋯」
漸く酸素を取り込む事を許されたその口は、涎を垂らし上がりきった息を整えている。
「勘違い?何がだ。それに⋯お前は俺のものだと分かってるのにやったんだな?⋯ヨト、今日はお仕置だ」
いつもは綺麗な真紅の両眼が、今日は赤黒い闇の光を帯びている。
そんな眼にヨトの身体はゾクッ⋯と、恐怖とは違う震えが走り、身体の奥底が何故か疼いた。
「はっ、⋯、んぁ⋯もぉ、⋯やぁ⋯ル、ク⋯イキたい⋯」
ベッドの上で大股を開かされているヨトをルークは後ろから抱き締め、そのぐちゅぐちゅに熟れた秘部を指で掻き回される。
「ダメだ。今日はお仕置だって言っただろ?」
そう耳元で愉しげに囁くルークは、「はぁ⋯」と甘い吐息を吐きながら、真っ赤な顔で首を振るヨトの下腹部に視線を落とす。
腹に付きそうな程に勃ち上がったソレの根元は、黒い紐で縛られている。
「も、⋯とって、⋯やぁっ⋯んぅ、⋯やだ、やだ、ルーク⋯」
痛々しく腫れたソレは、先端から涙を零しながらも堰き止められては押し返される熱に震えている。
「⋯ココ、そろそろいいか⋯?」
眉を下げ、泣きながらルークに懇願したヨトの願いが無言で却下されたかと思えば、秘部に充てがわれていた指が抜かれ、代わりに熱く猛った彼自身のモノがぐちゅ、じゅぶじゅぶっと音を立てながら一気に蕩けたナカを貫く。
「⋯っっ!!!!んんんんぁぁあぁあっっ!!!!」
一気に奥まで押し寄せるその質量に、ヨトの身体と内部が痙攣する。
「⋯っ、柔らかいな⋯。まさかココ、使った⋯?」
「んな、わけっ⋯ルークがっ、ぁっん⋯毎日、おっきいの、入れる⋯から⋯んんっっ⋯!!」
ルークはヨトの細い腰を掴み、自分の上に乗せた彼の身体の奥底を、ぐぽぐぽ音を立てながら乱暴に突き上げる。
グリグリと凝り部分を何度も擦ると、ヨトは背を反らし爪先に力を入れその快楽にどうにか耐えた。
「本当か?⋯ヨトは俺の。俺だけのものだ⋯」
そう呟きながら、顕になったヨトの白い首筋に思い切り噛み付く。
「んぁぁぁ!!!⋯ルークの、ルークのだから⋯おねがいです、⋯んぁっ⋯は、も、これ⋯と、って⋯」
真っ赤な印を首に遺しながら、ヨトは狂ったように頭を振る。
(イキたい、イキたい⋯気持ちいい、むり⋯出したい)
はち切れん程に膨れた局部に巻かれた紐が食い込む。吐き出すことの出来ない熱が下腹部で爆発せんとばかりに渦巻く。首を捻り、涙を溜めた目でルークを見上げながら、彼の片手を掴みドクンドクンと脈打つ自分のソレを触らせる。
「ヨト⋯、俺の事好きか?」
突き上げる腰はそのままに、耳孔に舌を挿入しながらルークはそう囁く。
「す、き⋯。ルーク⋯だいすき、⋯おれには、ルークだけ⋯」
気持ちを問われると、その溢れ出さん愛の言葉をルークに贈る。
「俺もだよ、ヨト。お前が居ないと俺は生きていけない」
「おれ、も⋯っんぅ⋯、すき、すき⋯ルーク⋯」
「約束出来る?俺以外の人間に触らないって」
「できる⋯やくそく、する⋯からっ⋯っっん⋯!!」
「いい子だヨト。⋯じゃぁ、これは外そうか」
漸くルークの指が、ヨトの局部を支配する紐に手を掛けソコを解放する。
「んぁぁぁっっ!!!ぁん、あっ⋯いっ、くっっ⋯んんん!!」
その瞬間、ヨトのソレからは大量の精液が吐き出され同時にナカを遠慮なくギチギチに締め上げる。
奥に吐き出された熱いモノを感じながら、ヨトはその強すぎる快楽から意識を手放した。
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