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黒龍編
9.
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ヨトが心の中でルークに助けを求めた…
その時、アレックスの喉元に鋭い剣先が押し当てられる。
「続けていいぞ。動くとお前の首が飛ぶだけだ」
その場が凍りつくような、冷たい声が2人の鼓膜を震わせる。
「……エット…アノ…オハヤイオカエリデスネルークサン」
喉元に当たるひんやりとした感覚にアレックスはその場で硬直し、カタコトな言葉を発しながら目だけ動かしてその剣を握る相手を確認した。
そこには…瞳孔が開ききった…まるで人殺しのような顔をしたこの国の王子様が立っていた。
「「ひっ…」」っと、アレックスとヨトは思わず声を上げて背筋を凍らせる。
「なんだ、続けろと言っているだろ。やらないのか?…つまらない男だな」
「いや!?もう!殺る気じゃん確実に!!!」
「は?俺の大事なものに手を出そうとしたんだ…当然の報いだよなァ?」
ドスの効いた声がその場に響き、剣身が更にアレックスの喉元に近付く。
それはもう、少しでも動けばそれが食込みそうなところまで来ていた。
「……っ…!じょ、冗談だって冗談!!!!ごめんって…幼馴染に免じて許して?」
「アハハ…」と乾いた笑い声を上げながらアレックスはヨトからパッと手を離すと、両手を上げたままそそくさと距離を取る。
その様子に溜息を吐きながら、ルークは剣を仕舞った。
「そうだな…まぁ、幼馴染に免じて、今日で騎士団解雇、爵位剥奪、領地の没収…この位で済ませてやろうか」
「そういう所で権力使うの良くないってボク思うなぁ!??」
「あ………?どの口が言ってんだ」
「ゴメンナサイ」
「……ふっ…」
しばらく2人のやり取りを、ぽかんとした顔で見つめていたヨトが、思わず吹き出す。
「ちょ……2人…面白すぎる…」
…そこには、これまで見たことの無い…腹を抱えて笑うヨトの姿があった。
「……ヨト…」
その笑顔のあまりの可愛らしさに…ルークは目を奪われる。
「え、かっわいー!!なにヨト、笑うとすっげー可愛いじゃん!!」
「テメェ……」
懲りた様子の無いアレックスの胸ぐらをルークは掴みあげる。
「も…涙でる……」
はー、と肩で息をしながら笑い、目尻に滲んだ涙を指で拭うヨトが視界に入ると、ぽいっとアレックスを床に投げ棄て、ルークは彼に手を伸ばしてその身を抱き締めて一緒にソファに沈む。
「ヨト…その顔見せるの、俺だけにしてくれないか…」
耳元でそう囁かれると、途端にヨトの顔は真っ赤になった。
「あ、あの主…すいません、顔の布…」
「あぁ、どうせあのバカが取ったんだろ…お前の顔は俺だけが知っていたかったが、ヨトが謝ることじゃない」
「は、はい…」
そっと肩に置かれたヨトの左手に、ルークは自分の手を重ねて撫で、指輪を確認するかの様に指でなぞると、ヨトは恥ずかしそうに俯いた。
「あのー……」
床に捨てられたままの姿でアレックスが片手を上げて、すっかり二人の世界に行ってしまった彼らに声をかける。
「テメェまだ居たのか。早く帰れ」
ヨトの手で遊びながら、ルークはアレックスを睨み付ける。
「一応用事があって来たんだよね!?俺も!!!」
アレックスはコホンと咳払いをし襟元を正すと、すっかり抱き合っている2人の前に立った。
「…悪いけど今日、この後少し時間もらえるか?皆に話しておきたいことがある。場所は軍の俺の部屋ね、ゼノにも来るように言ってあるからさ~」
「は?ゼノにも…?」
「ほんじゃ、また後でなー。2人でちゃんと来いよー」
言いたい事を言ったアレックスは風のように去っていき…2人はそんな彼を呆然と見送る。
(……さっきは咄嗟とはいえ、…主に助けを求めてしまった…)
ふと、先刻の事を思い出したヨトは、横目でルークの顔を盗み見る。すると彼と目が合い、慌てて視線を背けた。
(……好きって、何なんだろう…)
その時、アレックスの喉元に鋭い剣先が押し当てられる。
「続けていいぞ。動くとお前の首が飛ぶだけだ」
その場が凍りつくような、冷たい声が2人の鼓膜を震わせる。
「……エット…アノ…オハヤイオカエリデスネルークサン」
喉元に当たるひんやりとした感覚にアレックスはその場で硬直し、カタコトな言葉を発しながら目だけ動かしてその剣を握る相手を確認した。
そこには…瞳孔が開ききった…まるで人殺しのような顔をしたこの国の王子様が立っていた。
「「ひっ…」」っと、アレックスとヨトは思わず声を上げて背筋を凍らせる。
「なんだ、続けろと言っているだろ。やらないのか?…つまらない男だな」
「いや!?もう!殺る気じゃん確実に!!!」
「は?俺の大事なものに手を出そうとしたんだ…当然の報いだよなァ?」
ドスの効いた声がその場に響き、剣身が更にアレックスの喉元に近付く。
それはもう、少しでも動けばそれが食込みそうなところまで来ていた。
「……っ…!じょ、冗談だって冗談!!!!ごめんって…幼馴染に免じて許して?」
「アハハ…」と乾いた笑い声を上げながらアレックスはヨトからパッと手を離すと、両手を上げたままそそくさと距離を取る。
その様子に溜息を吐きながら、ルークは剣を仕舞った。
「そうだな…まぁ、幼馴染に免じて、今日で騎士団解雇、爵位剥奪、領地の没収…この位で済ませてやろうか」
「そういう所で権力使うの良くないってボク思うなぁ!??」
「あ………?どの口が言ってんだ」
「ゴメンナサイ」
「……ふっ…」
しばらく2人のやり取りを、ぽかんとした顔で見つめていたヨトが、思わず吹き出す。
「ちょ……2人…面白すぎる…」
…そこには、これまで見たことの無い…腹を抱えて笑うヨトの姿があった。
「……ヨト…」
その笑顔のあまりの可愛らしさに…ルークは目を奪われる。
「え、かっわいー!!なにヨト、笑うとすっげー可愛いじゃん!!」
「テメェ……」
懲りた様子の無いアレックスの胸ぐらをルークは掴みあげる。
「も…涙でる……」
はー、と肩で息をしながら笑い、目尻に滲んだ涙を指で拭うヨトが視界に入ると、ぽいっとアレックスを床に投げ棄て、ルークは彼に手を伸ばしてその身を抱き締めて一緒にソファに沈む。
「ヨト…その顔見せるの、俺だけにしてくれないか…」
耳元でそう囁かれると、途端にヨトの顔は真っ赤になった。
「あ、あの主…すいません、顔の布…」
「あぁ、どうせあのバカが取ったんだろ…お前の顔は俺だけが知っていたかったが、ヨトが謝ることじゃない」
「は、はい…」
そっと肩に置かれたヨトの左手に、ルークは自分の手を重ねて撫で、指輪を確認するかの様に指でなぞると、ヨトは恥ずかしそうに俯いた。
「あのー……」
床に捨てられたままの姿でアレックスが片手を上げて、すっかり二人の世界に行ってしまった彼らに声をかける。
「テメェまだ居たのか。早く帰れ」
ヨトの手で遊びながら、ルークはアレックスを睨み付ける。
「一応用事があって来たんだよね!?俺も!!!」
アレックスはコホンと咳払いをし襟元を正すと、すっかり抱き合っている2人の前に立った。
「…悪いけど今日、この後少し時間もらえるか?皆に話しておきたいことがある。場所は軍の俺の部屋ね、ゼノにも来るように言ってあるからさ~」
「は?ゼノにも…?」
「ほんじゃ、また後でなー。2人でちゃんと来いよー」
言いたい事を言ったアレックスは風のように去っていき…2人はそんな彼を呆然と見送る。
(……さっきは咄嗟とはいえ、…主に助けを求めてしまった…)
ふと、先刻の事を思い出したヨトは、横目でルークの顔を盗み見る。すると彼と目が合い、慌てて視線を背けた。
(……好きって、何なんだろう…)
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