不本意にも隠密から婚約者(仮)にハイスピード出世をキメた俺は、最強執着王子に溺愛されています

鳴音 伊織

文字の大きさ
上 下
7 / 36
出会い編

6.

しおりを挟む
ルークと入れ替わりでシャワーを浴び全身を清め、用意されていた着替えを手に取ると、ヨトは思わず息を飲んだ。
「………えっ……」
昨日は確か、黒くて長いリネンの寝間着が用意されていた。
ところが今日は……
「嘘だろ…」
辺りを見回してもそれ以外の着衣は見当たらない。当然下着も然り。
着るか、素っ裸か。

究極の選択を今、ヨトは迫られていた。


「おかえりヨト。さっぱりしたか?」
部屋の真ん中に置かれた大きなソファで紅茶を嗜むルークが、ドアが開いた音に気付いてこちらに顔を向ける。
ルークの私室と浴室はドア1枚で繋がっている。
その扉からヨトは顔だけを覗かせた。
「…………あの、主……これはどういう……」
「ん?ほら、湯冷めするといけないから早くこっちにおいで」
ヨトの心境を知ってか知らずか…ルークの口元はニヤケが止まらない。
「いや…、でもこれ……」
「……ヨト。おいで」
拒否権など無い…そう言わんばかりのルークの圧のある低い声が向けられ、ヨトはおずおずと私室に足を踏み入れる。

恥ずかしそうに前を隠しながら出てきたヨトは…お尻がなんとかギリギリ隠れる丈の、白いバスローブを身に纏っていた。
もちろん、生地はしっかりと透け感のあるオーガンジーである。
(これ絶対女物だろ……!?)
ヨトは心の中で大絶叫しながら、顔を真っ赤にし…うっかり露になりそうな大事な部分を隠すよう、片手で裾を抑えながら部屋に入る。
ヨトの白い肌に白い夜着…そしてそこから覗く首に刻まれた茨の紋様がよく映えるその姿はとても官能的で、ルークの本能を刺激した。
「な、なんですかコレ……昨日と同じ夜着がいいんですが…」
「よく似合ってるよ。まるでヨトの為に作られた物だな」
そう言いながらご機嫌で近寄ってくるルークは、真っ黒で光沢のあるシルクのバスローブに同じ色のガウンを羽織っており…その姿は彼が持ち得る妖艶さを助長させていた。
「絶対変ですから…似合ってないですから……も、普通の服ください……」
眉を下げて困り果て、必死に局部を隠そうとするその姿は、ルークにとっては余りにも扇情的だった。
ルークは無言でヨトを抱え上げると、そのまま彼をベッドまで運び、ゆっくりとそこへ降ろした。
「ちょ、ちょっと主…!?」
「かわいい…かわいい、俺のヨト……」
譫言のように呟きながら、ルークはヨトの身体を押し倒し、その上に覆い被さると額、頬、最後に震える唇へと口付けを落とす。
(ま、まって……こ、これは……この雰囲気は……)
恋愛経験皆無のヨトにでも、これから始まるであろう事は難なく予想がついた。
「やっ……や、やめてください…主……」
すっかりと定着した困り顔をするヨトの、遥か後ろにある壁をルークは指差す。
「そこの壁に飾ってある剣…あれは模造では無い、本物だ。嫌ならアレを使って俺を刺して逃げればいい。出来るだろ?」
「そ、そんな……」
ヨトは後ろを振り返ってみる。
そこには綺麗な細工と宝石が嵌め込まれた銀色の剣が鈍い光を放っていた。
「あれはそこそこ値の張るものだ。俺を刺した後、換金でもすれば故郷に帰る足しにでもなろう」
「っ……」
ヨトの目が泳ぐ。
(主を刺して、里に帰る)
里に帰る…それは、ヨトが当初の目的として置いていた事だ。
隙を見て逃げる。
捕縛され何十人の目を掻い潜って逃げるより、この王子1人の元から逃げる方が容易いと考えて専属になると誓った。
今、ヨトは…その絶好の機会を得ていると言っても過言では無い。
『コイツの言う通り、今ここで逃げれば里に帰れるんじゃないか?』
━頭の中でもう1人の自分がそう語りかける
(そうだけど…でも……)
いつものように壁に瞬時に移動して、そこに飾られている剣を手に取って……身軽なヨトにとって、それは難なくこなせる事だ。
目の前の男は「どうする?」と言わんばかりの瞳でじっとこっちを見つめている。
不意に耳へ吐息が掛けられれば、ヨトの体がビクッと跳ねて甘い吐息が漏れる。
「……っっ…」
「逃げないのか?」
「……えっ、と…」
動く様子のないヨトの耳元でルークそう囁き、そこに舌が這いずる。
ぴちゃっじゅるっ…と内耳に水音が響き、熱い吐息がかかると、それから逃げようとヨトは顔を背ける、が…大きなルークの手がそれを許さなかった。
「……ん、ぁ……だめ、って……ある、じ……」
「だから、嫌なら行動しろって。…しないなら、俺を受け入れるって理解するが?」
耳元で愉しそうに笑うルークは、片手を動かしバスローブの上からヨトの胸元を弄るように動かす。
胸の小さな突起部に手が擦れ、その手が往復する度にツンっ、と硬さが増す。
ヨトはふるふると首を横に振るが、それが何を意味するのかルークには判断がつかない。
「……ぁ、っ……そこ、だ、め……っ……」
ゾクゾクっと腰の辺りから、知らない感覚がヨト体を襲う。動く様子のないヨトの体を、立て続けにルークは責め立てた。
「ここ、こんなに硬くなって…かわい……」
布越しに自己主張してきた胸の突起を、ルークが指先で捏ねるように動かすと、ヨトの顔は見たことの無いくらい赤くなる。
「ぁっ、あるじ…俺、男だか、ら……そんなとこ……」
「気持ちよくない?こんなになってるのに?」
恥ずかしそうに腰を捩ってヨトは快楽から逃げようとする。
が...それを許さないルークは、その硬くなった突起の形を分からせるかのように指で摘んで、膨らんだそのピンク色のそれを舌先で啄く。
「ゃあっ……あっ、ぁあん……っ」
「ヨトの乳首、綺麗なピンク色してるんだな」
何度か舌で双方の突起を舐めてやると、白い布から2つのピンク色が浮かび上がる。
その可愛らしい膨らみにルークの唇は吸い付いた。
「やっ……ぁ、っんん……んふ……あんっ……」
(やばい……も、なにこれ……頭、おかしくなる……)
耳に届く自分の甘ったるい声が、まるで知らない人間の様で…羞恥心に耐えられずヨトは己の口元を手で塞いだ。しかし、すぐにそれはルークによって阻止される。
「隠すなよ」
「……やっ、だって、…こんな声、おれ知らな……」
言い終わる前に震えながらそう訴える唇は、ルークの唇によって塞がれた。
親指を口角に掛けられ、無理やり開かれたヨトの口内にルークの舌が潜り込んでくる。
レロレロと何度か舌の表面を舐められ、そこから執拗いくらいに根元から舌を絡められる。
更に今までは布越しに弄ばれていた胸の突起は、胸元から侵入してきたルークの手によって、直接の刺激を与えられている。
「は、……ふぁ……ぁん、ぁ……」
彼の指が動く度にヨトの身体は震え、呼吸の合間に鼻にかかるような甘い声を漏らした。
「ヨト……ヨト……かわい……」
唇を離すとそこには、真っ赤な顔でだらしなく口を開き、眉を下げトロンとした表情なヨトがいた。
初めて与えられた快楽は、ヨトには激し過ぎたのか…いまにも泣きそうな潤んだ瞳でこちらを見つめる様が、ルークの加虐心を煽った。

「…いいのか?ヨト、逃げなくても」
「……っ、はっ、は……ん……」
肩で息をしながら上手く言葉を紡げず、その言葉に更に困った表情でふるふると首を振るヨトの姿に、ルークは人の悪そうな笑みを浮かべた。
「まぁ…無理だよな?ココ、こんなになってるし」
ココ…、と指で突かれた場所は……短い裾が乱れ、そこから既に頭を擡げて勃ちあがったヨトの局部が露になっていた。
「……ゃっ、…ぇ、…ぁ、う、うそ……」
「嘘じゃない…ほら、勃ってる。しかも先っぽはぬるぬるだな」
「ほら……」と、ルークはヨトの手を持つと、完全に勃ちあがったそこを握らせ、己の手で彼の手ごとそのモノを握ると上下に軽く擦ってやる。
「っっ……!!ゃ、……これ、は、……ちが……」
「何が違うんだ?……ほら、こうやると糸引くくらい漏らしてるけど」
今度は彼の指を、先端の蜜が溢れる場所へ誘い何度か擦らせ指を持ち上げさせる。そこはグズグズに蕩け、溢れた液体が指で掬える程になっていた。
「ひっ、…ぁ、なん、で……」
「キスと乳首触っただけでこんなになってる。本当に可愛いな、お前」
ヨトの手を自分の口元に運び、その指に付いた彼の体液を舐めながらルークは恍惚な表情で彼を見下ろした。
余りにも色気がありすぎるその姿にヨトの顔はもう発熱したかのように真っ赤になり、ドクンドクンと心臓が高鳴る。

「さてヨト、ここで選択肢をやる」

ルークはヨトの上に跨ったまま、彼の頭部が置かれている枕の下に手を伸ばし、そこから小さなナイフを取り出した。そしてそれを、もう充分煽られて力の入らない彼のダランと投げられた手に握らせ、己の首元へと押し当てる。

「これで俺の喉を掻き切って里に帰るか、このまま俺にぐちゃぐちゃに愛されるか……どちらがいい?」

そう言ったルークの顔は、これまで見たどんな表情よりも…悪そうな顔で笑っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

側近候補を外されて覚醒したら旦那ができた話をしよう。

とうや
BL
【6/10最終話です】 「お前を側近候補から外す。良くない噂がたっているし、正直鬱陶しいんだ」 王太子殿下のために10年捧げてきた生活だった。側近候補から外され、公爵家を除籍された。死のうと思った時に思い出したのは、ふわっとした前世の記憶。 あれ?俺ってあいつに尽くして尽くして、自分のための努力ってした事あったっけ?! 自分のために努力して、自分のために生きていく。そう決めたら友達がいっぱいできた。親友もできた。すぐ旦那になったけど。 ***********************   ATTENTION *********************** ※オリジンシリーズ、魔王シリーズとは世界線が違います。単発の短い話です。『新居に旦那の幼馴染〜』と多分同じ世界線です。 ※朝6時くらいに更新です。

番だと言われて囲われました。

BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。 死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。 そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。

不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました

織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...