Black and White

和栗

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シロくんと和多流くんのちょっとしたお話

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「もー、ほんっと良かったねー」
「ありがとう」
がちゃん、とグラスをぶつけ合う。
長ーい片想いが実ったわたくんを呼び出して、久々に2人で会うことにした。
普段と変わらない態度でカクテルを一気飲みした。
ほんっと化け物。絶対酔わないんだもん。
美喜ちゃんよりザル。
わたくんと連絡が取れなくなったのは、かれこれ半年くらい前。
取れなくなったというのは、厳密に言うと違うかもしれない。
一度、オーダーメイドスーツを作っている職人さんを紹介してもらった時に、本命を落とすために連絡を返せなくなる、と言われていた。
ようやく本気を出したのね、とホッとしたのを思い出した。
わたくんの片想いの相手を知ったのは本当に最近。まさか美喜ちゃんの後輩とは思わなかった。
本当に本気だったようで、どこかで会ってもわたくんの好みとか好きなプレイとか絶対に話すなと口止めされてたし、他の友達やゲイバーのママにも同じことをしていた。
「ね、どうやって落としたの。あんな可愛い子」
「・・・秘密」
「・・・やっだー。こわーい。やばいの雇って追い詰めて吊橋効果で落としたんじゃないの?」
「・・・おれ、シロくんのそういうところ大好きだよ」
それ以上口を開くな、と言わんばかりに睨まれる。
これこれ。この狂気がすっごく楽しいのよ、わたくんは。
人間の黒い部分が丸見えになる瞬間が、僕はたまらなく大好きだった。
初めて会った時、それが垣間見えた。
普段はあまり人に踏み込んだりしないけど、この人は面白そうって思ったんだ。
あと、自分に似ていた。
自分の好きな人を手に入れるために惜しみなくあの手この手を使うところが、共感できた。
居心地もいい。
わたくんの目がふっと優しく微笑んだ。
「雇ってないけど、ストーカーが運よく出てきた。吊橋効果は正解」
「前もなかった?そんなこと」
「前は女の子にストーキングされて参ってたけど、今回は男」
「あら。大変だったね」
「うん。中々姿現さなくてね。ようやく捕まえた時、殺してやろうかなって思ったよ。あはは」
「なーんだ、呼んでくれたらすぐ手伝いに行ったのに。僕も恋人が変な男に付き纏われた時、殺しはしなかったけど、手が出ちゃったよ」
大学生の頃、先輩風ふかせて美喜ちゃんを連れ回していたやつを思い出す。
美喜ちゃんは気づいてなかったけど、あいつ美喜ちゃんのこと狙ってたのよね。
ボコボコにしてやったけど、まだ、たまに思い出してイライラする。
「・・・殺しときゃよかったなー。あいつねぇ、涼くんの体、触ろうとしたんだよ」
パンっとグラスの割れる音がした。
手の中でグラスがぐちゃぐちゃに割れていた。びしゃびしゃになったテーブルもスラックスもそのままに、微笑みながら言う。
「おれのだってのに・・・わかんねぇのかなー・・・。見てわかるだろ普通さー・・・」
「普通じゃないからストーカーになるのよ」
「あー・・・ぐっちゃぐちゃになるまでボコればよかったなぁ・・・。でも、涼くんをさ、1人にしておくわけにいかないじゃん・・・」
「そうねぇ。だって、前にも被害にあってるんだし。わたくんの判断は正しかったよ」
「でも、首くらいは絞めておくべきだった」
「うーん、住所知ってるなら、行ってきたら?」
「そうしようかなぁ・・・。あいたっ!」
「いったーい!」
「あんたらゲイバーで物騒な話し、してんじゃないわよ」
頭を叩かれてつい叫ぶ。わたくんも頭を撫でながらママを見上げていた。
ほうきとちりとりがカウンターから差し出される。
「弁償よ。それ、高いんだから。さっさと破片片して」
「あ、はい。すいません」
「ママー。わたくんとうとう彼氏できたんだよ」
「あそー。狙ってた子?おめでと。あんまり無理させんじゃないわよ。あの子なーんにも知らなそうじゃない」
「まぁ、ろくな奴と付き合ってなかったしね」
「処女でもおかしくないわよね。絶対童貞だとは思うけど」
「女の子との経験くらいはあるんじゃないかな。試しに寝てみた、とか。聞いたことないけど。あ、処女ではないよ」
「どーせあんた好みに開発すんでしょ?やめなさいよ、変なこと教えんの。あんたの話に付き合えるの、あたしかシロちゃんくらいよ」
「そーかも。だから2人の前でしか本性出してないよ。あはは」
「ぜーったいボロ出すよね。ママ、賭けようよ。どのくらいで出すか」
「じゃーあと1ヶ月」
「僕は半年くらい」
「うわー。2人ともサイテー。絶対ださないです。泣いちゃうもん、あの子」
わたくんはいつもの調子で笑ってた。
まぁいい大人だし、そりゃ上手に隠すでしょうよって思ってた。
だから、珍しく真っ昼間に会おうよって言われてびっくりしたのよねー。
「珍しいよね。どうしたの?」
「・・・やっちまったんだよねー・・・マジで最低最悪なこと」
「・・・えーっと、事によっちゃ慰めらんないわよ」
「・・・レイプ」
つい顔をしかめた。しかも、思い切り、露骨に。
平日の昼下がりに聞く単語でもなかったし。
わたくんは口元を隠して窓の外を見ながら、少しだけ、ほんの少しだけ、声を震わせた。
「好かれてるのか、分からなくて・・・しかもさ、涼くん、あの子、絶対にいい恋愛、してない」
「それはわたくんの主観で、あの子にとっては違うかもしれないじゃない。それに、どうしてそれがレイプにつなが、」
「成瀬さんと車で知らないところ行って、喧嘩になったらどうする?どう思う?」
「何、喧嘩したの?・・・まぁ、喧嘩はするだけして話し合いして、仲直りしたいって言うかな」
「あの子ね、まず先に、放り投げるのかって、聞いてきたんだ」
「・・・放り投げる?」
「自分のこと、車から引き摺り出して置いてくと思ったんだよ。どうしてそう思うんだろうって思うじゃん。どうしても何も、過去にやられてるんだよ、多分」
何、それ。
あんなにいい子が、そんなこと言っちゃうの?優しいわたくんに?
美喜ちゃんから聞く春日部くんはひどく人懐っこくて、真面目で、でも少し自分に自信がないって印象があった。
僕はあの子と話をしていて、美喜ちゃんがちゃんと面倒を見るのも分かるなって思った。気遣いもできるし余計なことも言わないし、人のことをよく見て会話をしている。少しだけ、本人は窮屈じゃないのかなって思ったくらい。
人当たりも良さそうな彼が、放り投げられたことがあるのだろうか。
「・・・コンビニとか行くでしょ。涼くん、必ず携帯と充電器とお財布と、少しだけお菓子、カバンに入れて持っていくんだ」
「コンビニに行くのに?その場で買えばいいじゃない、お菓子なんか」
「ね。そう思うよね。で、聞いたんだ。なんでそこのコンビニ行くだけでそんなに持っていくのって。おれなんかさ、お札一枚だけポケットに突っ込んでるだけなのに。そしたらね、困った顔して、癖だからなんでなのかは分からないって言うんだ。どこ行くにも、絶対に携帯は離さない。でも、ずっといじってるわけじゃなくて、鞄かポケットに入れてるんだよね。おれから見たら、置いてかれた時のことを想定してるとしか思えないんだけど、涼くんは、分からないんだって」
「・・・置いて行かれたこと、あるのかな」
「たぶん。・・・おれ、自分が不安で仕方なくて、そんなことされてたあの子に、乱暴して・・・めちゃくちゃ、最低だ・・・」
わたくんの目が不自然に光った。
涙を堪えているのだ。
いつも飄々として、嫌なことがあっても嫌いな人と居ても顔に出さないで適当に笑っているわたくんが、心の中で大声をあげて泣いている。
付き合うのは面倒臭い、したい時はその辺で適当に済ます、と常々話していたわたくんが、実は結構長い片想いをしていたことを知ったのは、ここ2年くらい前の話。
こんな姿初めて見た。そもそも僕に連絡をしてきた時点で、もう、泣いていたのかもしれない。
少しだけ笑ってしまった。多分、嬉しくて。
「何?ざまーみろって思ってる?」
「まさか。嬉しいの。だってさ、恋が実ったし、わたくんが本性剥き出しにしちゃうくらい素敵な子なんでしょ?良かったなって。だって窮屈じゃない?ずっといい子でいるの。わたくんがそうやって本音で話したら、あの子も本音出してくると思うよ。あの子結構警戒心強そうだもん」
「・・・前にね、色々話してくれて、おれの知らないことばっかりだった。頑張って話してくれて、嬉しかったよ。・・・あ、これか、あの子が感じたのって」
「え?」
「・・・乱暴したのに、許してくれたんだ。話をしてたら、可愛いって、嬉しいって言われて、気を遣ってるのかなと思ったけど、あれ、本心なのかな・・・」
「状況がわからないしなんの話をしたのかも知らないけど、わたくんに可愛いって思うんだから本心以外何があんのよ。て、いうか!あの子わたくんにベタ惚れじゃん」
「・・・え、そう?そう?」
「はぁ?そうじゃん。好き好きオーラダダ漏れじゃん。わたくんの話しとか一言一句聞き逃さないようにしっかり聞いてるし」
「・・・そ、そう、なんだ」
「・・・ねぇ、片想い長すぎて感覚鈍ってんじゃないの?どう見ても、ベタ惚れでしょうが。本気の可愛いってさ、本気で惚れてる相手にしか言わなくない?」
赤い絵の具をぶちまけたみたいに、一気にわたくんの顔が赤くなった。ていうか、耳も首も手も赤い。
顔を手で覆うと、声にならない声を出し、深いため息をついた。
「あー、・・・尊い・・・」
「なに、神様かなんかなの?」
「うん・・・。だって、許してくれて、絶対別れてって言われると思ってたから覚悟してたのに、逆に、離せなくてごめんとか、言われて・・・尊すぎて抱けなくなっちゃった・・・」
「う、嘘!?絶倫の名が泣くわね!それはざまーみろだわ!あはははは!」
「もう、絶対絶対離せない・・・将来が怖い」
「あーははははは!苦しめ苦しめ!おっほっほ!本気の相手と付き合うって苦労するしすごーく楽しいもんよ!本当によかったね。これからのわたくんが楽しみ!」
「・・・まぁ、成瀬さんよりマシかな。あの人が彼氏だと気苦労が絶えないだろうし」
「美喜ちゃんを悪く言わないでよ」
「でも実際そうじゃん?あの人天然だし」
「そこが好きなの!」
「強がり」
「うるっさいわねー!惚れた方が負けなの!我慢すんの!してるの!」
もー。
でもほんと、惚れた方が負けってよく言ったもんだわ。
実際そうだし。
コーヒーを飲むと、メニューを差し出された。首を傾げると、奢るよ、と嬉しい申し出。
「あらいいの?」
「嬉しいこと言ってくれたからね。やっぱシロくんに話してよかった。自分だけじゃ気付けないこともあるしね」
「他にもお友達いるのに?」
「うーん・・・やっぱ違うかな。・・・殺したいくらい大好きって、そういうの理解できる人、少ないし」
ニコッと微笑んでみせる。僕もそれに応えた。
ケーキを2つ注文して、1つは箱に入れてもらった。
美喜ちゃんにあげよ。


******************


「いいのか、飲んで」
「うん。いーよー。運転は任せて」
「まぁ、死ぬなら気持ちいい状態で死にたいからな。遠慮なく飲ませてもらう」
「ぶはっ!ぐ、げほっ、げほっ、」
目の前にいたわたくんがむせこむ。
笑うのを必死に堪えていた。
ほんっと、車の運転に関してはムカつく。
マシになってきたのにまだこう言うんだもん。
今日は4人でお酒を飲む日にした。
楽しいもん。でも僕はあまり飲めないから運転手。
わたくんも車で来ているのに、ビールを飲んでいた。
「春日部くん、運転できるの?」
「うん。涼くんは運転上手なんだ」
「その言い方なんっか腹立つんですけど?喧嘩売ってる?」
「売ってないよ。勝てないもん」
美喜ちゃんが咳き込む。
笑うの堪えたわね。後でお仕置きしちゃうんだから。
シャッと鋭い音を立てて引き戸が開いた。
ぜーぜーと呼吸を荒くした春日部くんが立っていた。
「お、遅れました!」
「涼くん、お疲れ様。授業遅くまであったのにごめんね。大丈夫?」
「お疲れ」
「ごめんね。春日部くん。忙しいのに誘っちゃって」
「あ、いや、楽しみにしてたので!あ、成瀬さんこれ」
大きなカバンから、いつも美喜ちゃんが使っているペンケースを取り出した。
結構ボロボロなんだけど、これは僕がプレゼントしたものだから大事に使ってくれてるの。多分。
「机に置いてあったから、一応持ってきました」
「ありがとう。ほら、なんか飲め」
「あ、ジャスミン茶で。和多流くん、おれ運転するからいっぱい飲んでいいよ。いつも遠慮してたでしょ」
ニコニコ笑ってメニューを一緒に覗き込む。
わたくんは飼い猫でも愛でるように春日部くんを見つめていた。
ビールを追加すると、ハンカチを差し出す。
「汗すごいよ。どこから走ってきたの」
「駅。待たせてると悪いから・・・」
「もー。健気ねぇ、春日部くん。気を遣わないでいいんだからね」
「急いで正解だな。この2人でお前の話しかしてなかったからな。先輩として聞きたくない話まで」
春日部くんの顔が真っ赤に染まる。
藤堂さんは意地の悪い笑顔で、そんな事ないよ、と笑いかけていた。
もー。美喜ちゃんってば余計なことを。
わたくんが、すっごく楽しそうに意地悪し始めたじゃない。
テーブルの下で足を蹴ると、ムッとした顔になったけど、藤堂さんをチラリと見てなるほど、という顔をした。
「あんま、話しとかしないでよ・・・」
「何も話してないよ」
「成瀬さんが困ってたじゃん」
「えー?そう?全然普通じゃない?」
「はい、イチャコラストーップ!改めて、乾杯」
グラスを4つぶつけ合う。
くだらない雑談で盛り上がっていると、美喜ちゃんが携帯を取り出した。
失礼、と小さく言ってスクロールする。
普段あまり携帯はいじらないタイプなので、つい聞いてしまう。
「どしたの?」
「あぁ・・・。非常勤の先生が1人、インフルエンザにかかったとメールがきた。この時期に珍しいな。まぁ、関わりがないからおれは平気だけど」
「あれ?おれの携帯なんも音してないな・・・」
春日部くんがポケットを探り、鞄を漁り始めた。ないない、と呟きながら顔を上げる。少し焦った顔。
わたくんがさっと表情を変えた。
あ、この子、携帯がないと不安な子なんだった。
大丈夫かしら・・・。
取りに行くとか、言うかしら・・・。
「和多流くんごめん、おれ、携帯忘れてきた・・・」
「うん、大丈夫?とりに、」
「和多流くんのタブレットか携帯、借りてもいい?」
「へ?あ?おれの?いいけど・・・大丈夫?」
「え?何が?あ、メールのアカウント、ログインしても大丈夫?ちゃんとログアウトするから」
「うん・・・おれは全然・・・。はい」
タブレットを受け取ると、素早くタッチしてメールを確認した。
ブツブツ言いながら返信しているようで、終わるとわたくんに差し出した。
「ごめん、ありがとう。返事しなきゃいけないやつだった」
「・・・ん、いいんだよ。好きに使って」
「ありがとう。あの、成瀬さん・・・」
「ん?」
やっぱり取りに行くのかしら。
内心そわそわしてしまう。
美喜ちゃんは鍵を持っているから、一緒に行けば取ってこれるけど、時間も時間だし・・・。
わたくんを見ると、少し悲しそうに春日部くんを見ていた。
すると、ペコリと頭を下げた。
「あの、連絡網とか回ってきたら、和多流くんの携帯に電話もらってもいいですか?お願いします」
「分かった。おれのペンケース持ってきて、携帯忘れたんだろ。悪かった。大丈夫か」
「はい。おれ和多流くんくらいしか連絡とる人いないし・・・。成瀬さんとシロさんから万が一来てても、和多流くんにも連絡してくれてると思うし。あとは仕事関係だけ電話のやりとりできたら、それで全然。あの、面倒かけてすみません」
「いや、大丈夫だ。まぁ連絡は来ないと思うから・・・メールだけ確認できればいいんじゃないか」
「あ、はい。和多流くん、ごめん・・・やっぱり後で、また、ログインしていいかな。パソコン、職場に置きっぱなしなんだ。あ、電話も、頼んでも、わ、ぁあ!?」
いきなりわたくんが春日部くんに飛びついた。バランスを崩してひっくり返る2人を、僕も美喜ちゃんも目を大きくして見つめてしまった。
「ちょ、和多流くん?酔ったの?」
「・・・うん、酔ったかも」
「ええ!?嘘でしょ?何飲んだら酔うの?」
「あ、ごめんごめん!2人が来る前にふざけてウィスキーだのテキーラだのばかばか飲ませちゃったのよ!全然酔わないからつまんないなーって思って!」
嘘だけどね。
嬉しかったのよね。頼ってもらえて。
もう、わたくんに警戒してないって分かって。
信じてもらえて、安心してもらえて、嬉しかったんだよね。よかったね。
わたくんは覆いかぶさったまま動こうとしなかった。本当に酔い潰れてしまったのかと、春日部くんが焦り始める。
美喜ちゃんが支払いは済ませておくから帰れと促した。
「じゃぁ、あの、すいません・・・。先帰ります。明日もよろしくお願いします。和多流くん、歩ける?」
「歩けるよ。帰ろ」
あーあ。感情が振り切ってる。
春日部くんの指を絡め取ると、僕をチラッと見て微笑んで扉を閉めた。
美喜ちゃんが残ったおつまみを綺麗に胃に収めていく。
「この店にテキーラなんぞないだろ。しかも、藤堂さんは全く酔ってなかったぞ」
「んもー。いちいち言わないの」
「なんだったんだ。一体」
「うーん・・・。飼ってる猫がさ、警戒しまくりで、ようやく慣れてくれて安心して膝の上で寝てくれるようになったら嬉しくなぁい?」
「・・・なんだそりゃ」
「まぁつまりそういうことだったのよ。ね、居酒屋のご飯だけで足りる?」
「・・・足りないな」
「コンビニで買ってく?」
「いや、牛丼が食べたい」
あらやだ可愛い。
すーぐ僕をキュンキュンさせるんだから。
それにしても、あんだけ飲んでおいてまだご飯が食べたいって、凄すぎる。僕は無理。すぐ太っちゃうもの。
「あの2人は」
「え?」
「仲がいいな。前は少しギクシャクしていたようだから、仲違いしなくてよかった」
あ・・・。ちゃんと、後輩として、心配してるんだ。
美喜ちゃんも何か色々知ってるのかな。
ま、いいか聞かなくて。
お店を出て牛丼を買って帰る。
車の中がいい香りに包まれる。
「ねー、美喜ちゃん」
「なに」
「また4人で飲もうね」
「焼き肉がいい」
「もー!僕が太るものばっか好きなんだから」
「太ればいいだろ」
「やーよ!」
「なんで。可愛いと思うけど。太ったお前」
「えっ、あ?ちょっと、・・・なんでそうやって、僕を夢中にさせるの?」
「どうやったら夢中になるのか知らないが、本当のことを言っただけだろ」
「それが夢中にさせるのー!早く帰って抱きたい!」
「じゃーさっさと帰れ」
あの2人もこれからお楽しみかしら。
ふふっと笑って、心の底から、おめでとうって思った。

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