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和栗

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「これ、エッチなことには使えないって言ってたけど、どうしても使えない?」
首を傾げて尋ねられた。
前に勢いで渡した、何でもしてあげる券。
冗談のつもりだったのに、和多流くんはしっかりとカードケースに入れて保管していた。
「何を考えてるの?」
「え?・・・でへへっ」
「・・・」
「・・・コスプレエッチがしたいです」
「・・・いつも無理やり着せるじゃん」
「えへっ」
「・・・まぁ、一回なら、いいけど」
変わり映えのないお願いだなと思って券を一枚受け取る。和多流くんはニヤニヤしながら寝室に入り手招きをした。
ついていくと、クローゼットに収められた収納ボックスを開ける。
「これ着てほしい」
「・・・えっ」
「自分で、着てほしい」
「・・・えぇー・・・」
差し出されたのはセーラー服。しかも、ミニスカート。
前に無理やり着せられた時はぐちゃぐちゃに乱れてそれが逆にそそると大興奮で、あれよあれよと瞬く間に抱かれた。
あんまり好きじゃないのに、言ったのに、これをおねだりしてくるんだ・・・。
「撮影したい」
「やだよ!」
「券渡したもん」
「いいよなんて、」
「何でもしてくれるって書いてあったもん。お願い。ね??見たいよ」
「変態!」
「褒め言葉!」
「バカ!」
「早く、ほら」
ぐいぐいと押し付けられる。
分かってる。分かってるよ。ここで断ったら後が面倒臭い。
でも、女の子の格好は・・・。
「・・・からかわない?」
「は?何でからかうの?誰がからかうの?」
「・・・」
「可愛いから見たいんだよ」
「女の子、苦手なのに?」
「涼くんは女の子じゃないもん」
「前にがっつり女装した時、パニックになってたくせに」
「そりゃなるよ。あれは完全に女性だったもん」
「これは違うの?」
「違うよ。ほら、着て?」
「何が違うの」
「涼くんが目の前で恥じらいながら着てくれるんだもん、全然違う」
むかーっとしてセーラー服を投げ捨てる。
「絶対に着ない!!」
大声で拒否すると目を丸くした。
絶対に着るもんか!!


******************************


「券、返してよ」
朝起きて開口一番、言われた。
ムーッとした顔。
おれに渡した券を返せと手を差し出された。
「何も聞いてくれなかったんだから、返して」
「はいどーぞ」
「・・・じゃあ、はい」
「え?」
また券を握らされた。
「何?」
「仲直り」
「・・・」
「したい」
「・・・なくてもするよ」
「怒ってない?」
「・・・セーラー服はイヤ」
「ごめん」
「・・・うん」
「してくれる?」
「仲直り?」
「うん」
「・・・ん」
目を閉じると、すぐにキスをしてくれた。
仕事に行く支度をして、家を出る。
いつものように仕事をして、休憩に入り屋上へ出た。
作ってもらったおにぎりを食べながらスマホを見つめる。映し出されているのは柔道着を着た和多流くん。
コスプレ、着るのは微妙だけど・・・和多流くんが着るのは、かっこいいよねぇ・・・。
すごく似合ってたし格好良かったし、もっと色んな姿の和多流くんが見たいと思ったし・・・。
和多流くんもおれに対してそう思うんだろうけど、セーラー服はイヤだな。
他のなら、まぁ・・・うーん・・・。
ボンテージバニーもイマイチだよね・・・ていうか、似合わないのに何であんなに興奮するんだろ。
猫耳・・・は、まぁ頭につけるだけだからいいけど・・・尻尾をつけたがるんだよね・・・。
そもそもなんでコスプレなんてさせたがるんだろう。
非日常的で興奮するのかな。
欲望が叶えられるとか?
脱がせるのが楽しいの?
よく分かんないけど・・・。
少し考えてみたけど、イマイチピンと来ない。
もっとまともなコスプレをさせてくれたらまだ楽しめるのに、と思う。
ふと気づいて、1番近くの格安の服屋を調べる。確かここにあったよね。これなら着てもいいよ。うん。



******************************



「あー、この店久々に来たよ。じいさんの入院着とか買うときに」
「安くていいよね」
仕事帰りに連れてきてもらった格安の洋服屋に入り、スポーツコーナーに向かう。
あ、あったあった。
「和多流くんさ、こーゆーのどう?」
「んー?・・・スポーツウェア?半袖の?」
「と、ハーフパンツ」
「うん、いいんじゃない?涼くんは水色が似合うと思うけど」
「セーラー服は抵抗があるけど、これならいいよ」
「・・・ん?」
「おれ、元テニス部」
「・・・」
目が見開かれる。
少し悩むと、着てくれるの?と首を傾げた。
「元テニス部のおれがスポーツウェアを着てもあんまり興奮しない?」
「正直いつもと変わらないなって思うけど、でもそれ似合いそうだし」
「おれ、ヘアバンドつけてたタイプなんだけど」
「へ、ヘアバンド??つけてたの?おでこ丸出し?」
「そう。リストバンドもつけてた。・・・おれはハーフパンツ派なんだけど、和多流くんには特別にさ、こっちのショートパンツ履いてあげよっか?基本女子が履くみたいだけどさ」
「ショ、ショートパンツ・・・?!え、あ、」
「サンバイザーとかもつけてほしい?それとも、」
「待って待って?・・・あの、コ、コスプレ、」
「元テニス部のおれとエッチしたくない?」
耳元で囁くと、和多流くんは目を輝かせた。
「したい。する。するするする!!く、靴下もこだわりたいです・・・!」
「えっ。家にあるので、」
「こだわりたいの!待って、ショートパンツ、黒か白か・・・ネイビーもあるのか・・・」
「・・・ショートパンツ履く時ってブリーフだったなぁ」
「へ・・・?」
「昔体操着がショートパンツだったから、丈の長いパンツ履いてると見えちゃうんだよね。だからブリーフ履いたりしてたんだ。まぁボクサーブリーフっていうのを知ってからずっとそっち、」
「白?」
「え?」
「白?何色?買おう?」
「買わないよ?」
「なんで?」
「いや、家にあるでしょ?その、ジョックストラップとか・・・」
「白ブリーフってのが・・・エロいです」
「・・・あ、そ、そうですか?」
和多流くんは無言でウェアを選び、今回はこれにする、と水色のシャツと黒のショートパンツ、白に青のラインが入ったソックスを選んだ。ヘアバンドは1種類しかなかったのでそれを手に取りカゴに入れていた。今回は、とわざわざ言っていたのできっとネットで改めて吟味するんだろう(あまり嬉しくはないけど)。
「パンツ・・・うーん、ビキニもいいかもな・・・」
「だから、家にあるのでいーって」
「おへそが出るやつがいいな。これにしよう。買ってくるね」
「え、おれが、」
「いやこれ、おれのだから。おれが買う」
早足でレジへ向かい、ささっと会計を済ませて外に出る。
和多流くんはニコニコしながら車を運転して帰宅した。
「晩御飯食べたらお風呂済ませてすぐに着替えてね」
「う、うん」
「ご飯できてるから」
「ありがとう」
ご飯はトンカツだった。スーパーで均一セールをやっていたらしい。
あそこのスーパーはたまにすごく大安売りをするよね、と話をしながら食べて、お風呂は別に入った。
寝室に入るとベッドの上にウェアが広げてあった。
「着てくれる?」
「うん。まぁこれくらいなら・・・」
部屋着を脱いでシャツに袖を通す。
あ、しまった。いつもの下着履いたままだった。
ちらっと見ると、ニヤニヤしながらブリーフを差し出された。
「あっち向いてて」
「やだ」
「・・・ふん」
「あ!」
タオルを腰に巻いてさっさとパンツを脱いで履き替える。
和多流くんはむすっとしていたけど、ショートパンツ姿を見せると目を見開いた。
靴下を履いてヘアバンドをつけて完成。
おぉっ。懐かしい。嫌な思い出が先行するけど、試合は楽しかったなぁ。地区大会だけど、個人で決勝まで行ったんだもん。負けちゃったけど、準優勝だし賞状はもらったもんね。・・・燃やされちゃったけど。
「かっこいい~・・・」
「え?」
「すっごいかっこいいね・・・。わぁー・・・」
「そ、そう?」
あれ?思った反応と違うぞ?
一眼レフカメラを構えると、パシャパシャと撮影し始めた。
何度もおれとカメラを見て、納得したように頷く。
「めちゃくちゃ似合うね。あー、現役の頃のも見たかったなぁ。もうテニスはやらないの?」
「テニスを始めたらデートできなくなるよ?」
「じゃあおれもやればいいんだよ。テニスデートしよう」
「・・・でも、右手がなぁ」
「え?待って待って?おれ初心者だから本気出されると困るんですけど。ハンデくださいよ。左手でお願いします」
「左はおれも、ほぼ初心者だよ」
「試合とかは置いといて、楽しくラリーしようよ。はー、かっこいい」
ギュムッと抱きしめられる。
かっこいいって言われるの、嬉しいかも。人生であまり言われたことがないし、和多流くんもいつも可愛いを連呼するから、今回もそうかなって思っていたけど・・・。嬉しいなぁ。
「絶対にモテてたでしょ、中学の頃」
「ううん。ゲイって知れ渡ってたからモテなかった」
「密かに思いを寄せてる奴は絶対にいたはずだ」
「ふふ、いないって。・・・おれのことそうやって言うの、和多流くんだけだよ」
「・・・ダメだ!やっぱテニスは行かない!モテちゃう!」
いきなり抱き抱えられ、ベッドに倒された。
サラサラのシャツの上から乳首を摘まれる。
「うひゃ!」
「うー、テニス部コスプレやべぇかも。すっげ興奮する」
「え、わ、わ、!」
「先輩レシーブのコツ教えてください」
「コ、コツッて、んわ、あ、あ、あ、っ」
「ねー、いろんな部活コスプレしよ?サッカー部とか似合うと思う・・・んー」
むちゅむちゅとキスをして、あれよあれよと抱きしめて、いつのまにやら沢山抱かれて、気づけば日付が変わっていた。
和多流くんは満足げ。新しい扉を開けた、と嬉しそうに言うから、しばらくセーラー服を着てと言われなくて済むかなーなんて思った。

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