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和栗

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おれのスマホのロック画面はもちろんのこと、涼くんである。ホーム画面も。
ノートパソコンのデスクトップも涼くん。
ちなみに撮影用のスマホもしっかり涼くん。
タブレットは2人で写ってる写真。
全部違う涼くん。
ノートパソコンは持ち歩くこともあるので、外出時は渋々変更している。
で、涼くんのスマホはと言いますと。



猫です。


えぇ、猫の写真です。



悔しい!!


仕方ない。職場で出す時におれの写真だったら気まずいもんね。
でも涼くん、職場ではあまりいじらないって言ってたよね。じゃあおれでもいいじゃんって思ったけど、自意識過剰か・・・。おれをロック画面に設定してほしいなんて、普通言わないか・・・。
「ただいまぁ」
「おかえり」
車に乗り込んだ涼くんの頭を撫でると、嬉しそうに笑った。
「雨、続くね」
「だね。肌寒い?エアコンつけようか」
「うん。あ、なんか来た」
スマホを出して、画面を見ていた。通知が来たみたいだ。ロック画面はやけに暗かった。
え、なに?なんの写真?猫じゃないの?
「玲ちゃんからだ。・・・和多流くんて、メロン食べられる?」
「え?あ、メロン?うん、食べられるよ」
「お客さんにもらったんだって。送っていいかだって。もらおうか」
「うん」
「メロンなんて久々だなー。楽しみだね」
「そうだね。うちで食べたことないね」
「高いからね」
今度買ってこよう。
フルーツパーラーにも連れて行って、パフェとかプリンアラモードとか食べさせたい。
メロンパフェとかきっとあるはず。
調べなくちゃ。
涼くんはスマホをしまうと、ニコニコしながら今日あったことを話してくれた。気になる。気になって仕方がない。
涼くんのスマホのロック画面が、気になって仕方がない!!
あの暗い写真はなんだったんだ!!
知りたい!!
「あー、終わっちゃった。難しい」
帰宅して、ご飯を食べて、お風呂に入って、ベッドで寝転がりながらゲームをする。幸せだ・・・。
さっきチラチラとロック画面を見たけど、やっぱり画面が暗すぎて確認できなかった。こうなってくると意地でも知りたくなる。でも聞いて答えてくれるんだろうか。
おれは堂々と見せているから涼くんにはバレバレなんだけども。ていうか変えろって散々言われてちょっと喧嘩にもなりましたけど。
「おれのライフ送ろうか?」
「ううん。結構たくさんやったから、もういいかな。ありがとう」
「次の休みの日にたくさんやったら?タブレットでもダウンロードしといたよ」
「えー!?いいのに!もぉ、すぐ甘やかそうとする」
「いいじゃん。甘やかしたいの。それに、見るのも楽しいし。・・・んと、寝る?」
「うん。おやすみ」
「おやすみ」
抱きしめて目を閉じる。
あぁ・・・ソワソワする・・・。
気になって仕方がない・・・。
涼くんが寝入った後に見るかな・・・。いやいや、そんな、盗み見みたいなことできない!バレた時が恐ろしい!ていうか人としてダメだろ!!
「わーたるくん」
名前を呼ばれて慌てて顔を覗き込む。涼くんがじーっとおれを見ていた。
ふふ、と柔らかく笑うと腰を優しく撫でてくれる。
「意地悪しちゃった」
「え?」
「ん?えへへ、・・・んっ」
「あ、」
むちゅ、とキスをされる。うわ、わ、わぁ・・・!!可愛い・・・!!
意地悪って、あ、そ、そっちかぁ・・・!!
「涼くん~・・・!」
「えへへ。明日、遅い日だから・・・。いつも甘えてくれるもんね。意地悪してごめんね」
「ぜ、全然!嬉しい!構って!」
ガバーッと覆い被さってひたすらキスをして、肌に触れて、つながった。
スマホなんてどうでも良くなった。涼くんが1番だもん。



******************************



「メロン届いたー」
嬉しそうな顔。ニッコニコじゃん。
小さな箱を大事そうに抱えてダイニングテーブルに置くと、そっと箱を開けた。まん丸のメロンが収まっていた。
「冷やして食べようね。一口大にするね」
「えー?普通に8当分とかでいいよ、手間でしょ」
「そう?えへへ。とりあえず冷やそ」
宝物をしまうように冷蔵庫へ収める。
ぼーっと見つめていると、涼くんのスマホがパッと明るくなった。通知が来たみたいだ。
ロック画面は相変わらず暗いけど、でも、少し、見えてしまった。
「え、」
「あ、玲ちゃんかな。さっきお礼のメッセージ送ったから」
「・・・涼くん、」
「ん?」
「ロ、ロック画面・・・」
「え?あぁ、これ?」
すっと差し出されたので凝視する。夜だろうか。シーツの上に力無く置かれたおれの手だった。
指輪が二つ付けられた、左手。
涼くんは照れたように笑うと、綺麗だったから、と言った。
「涼くん・・・!」
「これなら暗いし、変に詮索されないかなって思って」
「可愛い・・・!」
「和多流くんはそろそろおれの写真、やめてね」
「なんで?やめないよ?ずっと涼くんだよ」
嬉しい。嬉しいなぁ。
涼くんも、おれのこと、好きなんだぁ・・・。
ついつい顔が緩んでしまう。
涼くんは不思議そうに首を傾げたけど、少しだけ笑って後で切ろうね、と言った。
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