Evergreen

和栗

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最近、寝バックが好き。大好き。
涼くんのこと押さえつけられるし、足を踏ん張れば逃げ出せないし、手も握れるし、キスもできる。耳もたくさん攻めて、お尻も叩けるし、何より奥まで入れるのが嬉しい。
「んぁ、あ、ちゅぶれちゃ、」
「潰したいなぁ」
「ら、めぇ・・・ゔぅー・・・」
ゆさゆさと揺れながらしっかりと押さえつける。潰れちゃうのは涼くんの可愛いペニス。きっともう潮と精液でびしゃびしゃ。
後でシーツを見て楽しむんだ。
「あん、あ、んぁ、おくらめ、おく、おく、」
「トントンと、ぎゅーと、どっちがいいかな?」
「ひぅう!!お゛っ・・・奥、き、た、・・・!」
「ぎゅー、だねぇ?気持ちいいねぇ」
「ゔぅっ、ゔ、」
声も出ないみたいだ。
中がきゅーっと締まった。いってるな。
シーツを掴んで締め付けに耐える。危うく持っていかれるところだった。まだしたいから、我慢我慢。
「んはぁっ、はぁっ、うぅう・・・!」
息を荒くして、ぽとぽとと涙をこぼした。生理的な涙はさらに興奮する。
悲しい涙は苦しくなる。嬉しい涙はもらい泣きしそうになる。涙って不思議。
「もっとだよね?」
「はぅうっ・・・!ぇうっ、う、ん、んぅう、」
「ほら、いっちゃえ」
「も、むり、むりだよぉ、いく、い、んゔぅっ!」
「ほら、もう一回」
「あ゛ゔぅっ・・・!!たすけ、て、たすけてぇ・・・!」
手が宙を彷徨って、ベッドの棚を掴んだ。ガリガリと爪を立てるので、そっと握って引き戻す。
「たす、んぶっ!」
「きもちーねぇ」
唇を塞いで腰を強く叩きつける。
獣のような喘ぎ声にさらに興奮して、細い腰を押さえつけてひたすら動いた。



******************************



「セーフワードの意味、ないじゃん」
太陽が真上に登った頃、涼くんはまだベッドにいた。起きた瞬間からムッとしていたので、いそいそと洗濯、掃除をして隣に腰掛ける。そして一言ピシャリと言った。
「次止まらなかったら、しばらく禁止」
「・・・えっ、」
「何?不満なの?」
「・・・ごめんなさい」
不満ですとも、と答えようとしたら睨まれた。そして反射的に出た謝罪。
この睨み方はきっと、反論してもダメだ。じゃあせめて、せめて!
「あの、た、助けてじゃないのに、しようよ!助けてだとなんか、逆に燃えちゃうっていうかさ!」
「嫌い」
「ひ!?」
「嫌いにしよう。ね?」
「・・・や、それは、」
「最悪」
「う、」
「最低」
「ぐ、」
「人でなし、下手くそ」
「いや、最後のはちょっと、なんか、傷つく・・・全部傷つくけどさ!?」
「セーフワードって本来タチがちゃんと自我をコントロールできて成立するものだよね?でもできてないんだもんね?だから興奮するし止まんないんだよね?じゃあ下手くそでもいいじゃん」
「ひ、ひどいよ!おれはただ、あの、たくさんしたいだけ!」
「だから?おれはもうやめてって言ってるの」
「し、しつこい?」
「お尻痛い」
「え!?」
「ヒリヒリするし、腰も痛い。いかされすぎて最後は辛かったし」
「・・・ご、ごめんね・・・」
「・・・なんかさ、忘れてない?」
「え?」
「そもそもさ、受け入れる側の方が負担が大きいんだよ。したいって言われて嬉しいけど・・・ケアってさ、シーツ洗ったり掃除したり、そういうことじゃないよね」
「・・・あ、ご、ごめん・・・」
「・・・いいよ別に。どうせ分かんないもん」
あ、や、やばい・・・。
確かに、受け入れる側の負担が、最近頭から抜けていたと思う。
涼くんは体力もあるし大丈夫って、勝手に思ってたし。
大丈夫なわけないよね。
本来そういうための場所じゃないし。
痛い思いも、苦しい思いも、受け身じゃないおれには分からないことだ。分からないからって放っておいていい問題じゃない。分からないから寄り添わないといけないのに。
「ごめんね。ちゃんとセーフワード、守ります。挽回させてください」
「・・・挽回?」
「うん。ちゃんと自分のことコントロールします。最近欲に忠実すぎたね。涼くんとの何気ない穏やかな時間も大事なんだ。一緒に過ごしてくれる?」
「・・・うん」
少し頬を緩めて、うなずいてくれる。
ほっとした。
体調を確認して、散歩に出かけた。
少しでも身体が辛そうならすぐに家に帰る予定で、近場でのんびりと過ごした。
夕飯は2人で作って、おしゃべりしながらゆっくり食べて、お風呂に浸かった。
「お尻平気?」
「まだ少しヒリヒリするかな」
「ごめんね。切れちゃったかな・・・見てもいい?」
「そ、それは嫌だよ。恥ずかしいもん」
「ん。分かった・・・」
「わっ、」
ビクンと身体が跳ねた。
涼くんは少し困ったように笑って、もぉ、と呟いた。
いや、まぁ、その、はい。
「ごめん、生理現象なので放っておけば収まります」
「うん・・・」
「・・・脊髄反射です」
「ふふ、うん」
少し安心したように笑って、また前を向いた。
結構、負担をかけちゃってたのかな。
そ、そりゃそうか。ここ最近週に4.5日はしてたし・・・やりすぎだよな・・・。1回が長いしね・・・。
断りづらかっただろうなぁ。
おれ、ぐいぐいいっちゃってたし。セーフワードだって無視して・・・最低だよなぁ・・・。好きだからってなんだってしていい訳じゃないのに。
好きだから、一緒にいてくれるから、大事にしなきゃならないのに。
涼くんは何も言わないけど、おれに理解させてくれるんだよね。話し合いも大事だけど・・・1人で考えるのも同じくらい大事。
ギュッと抱きしめると、頬に唇が触れた。嬉しいな。


******************************



「これ美味しいねぇ」
「ねー。クマが教えてくれたんだよ」
「んふふ、美味しい」
2人でのんびりと手作りプリンを食べる。商店街の先にあるケーキ屋のプリン。
硬めのプリンで、涼くん好みだから買ってみた。
予想通りニコニコしながら食べてくれる。うん、この顔、大好き。もっと見ていたくて動画を撮ると、恥ずかしそうに目を細めた。
「すぐ撮るんだから」
「可愛いんだもん。今度一緒に買いに行こ」
「うん」
「ゼリーもあったんだよ」
「オレンジゼリー?」
「うん。あとはレモンとか。あとね、ケーキもシンプルでよかった」
「チーズケーキはあった?」
「え?」
「ん?好きでしょ?あった?」
優しい笑顔。動画をやめてまっすぐ見つめ返すと、首を傾げた。
「ん、あったよ」
「じゃあ、近いうちに行こう?」
「うん」
「へへ、本当に美味しいね、これ」
「・・・なんか、」
「え?」
「・・・ずーっと、セックスばっかりで、ごめんね・・・」
こんなに穏やかな時間は久々で。
涼くんがおれの好きなものを覚えていて、今度買いに行こうって言ってくれるのが嬉しくてたまらなかった。
おれは涼くんが怒ったり、機嫌を損ねたりした時だけこんなふうにお土産を買ってきて、すごく、浅ましいな。
自分から嫌われるようなことばっかりしている。
「おれ、和多流くんとするの、大好きだよ」
「えっ」
「もぉ、当たり前じゃん。ただ、ルールを守って欲しかっただけだよ。お尻も痛かったし」
「・・・ごめんね。まだ痛い?」
「朝は痛かったけど、今は平気」
「よかった・・・」
「和多流くんは極端だなぁ。・・・もしかしてお詫びだった?プリン」
「少し、そういう気持ちも入ってたかも・・・でも、クマに聞いて、すぐに涼くんに食べてもらいたいなって思った。好きだもんね、プリン」
「うん。ありがと。真っ先にそう思ってくれるのが嬉しいんだ。・・・あ、ん、その、好かれてるんだなって、嬉しい、」
「・・・愛してるよ」
火を吹いたように真っ赤になって、目を逸らした。
「愛してる」
「や、も・・・」
「・・・キスしたい」
「・・・し、して?」
プリンをテーブルに置いて、そっとソファに押し倒す。
触れるだけのキスを繰り返して、そっと唇を舐める。甘い味がした。
「涼くん・・・」
「・・・もう少し、」
「少し?やだよ。たくさんがいい」
覆い被さってキスを繰り返した。
手を繋いで、足を絡めて、体を密着させて、隙間なくくっついて、キスだけを繰り返す。気持ちよくて離れがたかった。



******************************



自制心を働かせ始めてから数日。涼くんとの時間は穏やかそのもの。
セックスも大事だけど、大好きだけど、こんな時間も大切で愛おしいと再確認した。
ニコニコ笑いながらおれを見て、おしゃべりをしてくれる。
いつも忘れそうになるんだ。セックスだけで繋ぎ止められる相手じゃないって、一緒に穏やかな時間を過ごしてくれる相手だって。
料理を作る涼くんにペタリとくっつくと、甘えん坊だねとくすくす笑われた。
涼くんからの愛が伝わる。胸が熱くなって、頬が緩む。更にくっつくと、可愛い顔が振り返った。
「どうしたの?」
「んー?好きなの」
「ふふっ。ご飯?」
「涼くん。・・・今日はなぁに?」
「もやしとニラと豚肉炒めた。あとはピクルス」
「んー。好き」
「よかった」
「デザートある?」
「えぇ?ふふ、どうしたの、急に。甘いものとかはないや。あとで買いに行く?」
「うん」
「・・・それとも、おれにする?」
バッと体を離す。
涼くんは驚いたように振り返ると、困った顔をした。
おれは身体が熱くなって、胸がドキドキと脈打って、生唾を飲み込んだ。間違えないようにしないと、また涼くんに嫌な思いをさせてしまう。
考えていると、くるっとおれに向き直って抱きしめてくれた。
「緊張しすぎ。バカ」
「う、うん、あの、」
「したくないなんて、言ってないよ」
「でも、あの、負担が大きいのに、涼くんなら大丈夫って勝手に思ってて、おれ、その、反省しなくちゃって、」
「うん」
「・・・」
「・・・」
「・・・涼くんのこと、抱いて、いいの?」
絞り出すように問いかける。
抱きたい。愛したい。全部注ぎたい。
必死に抑えていた欲が湧き出てきて止まらない。
「和多流くんはさ」
「うん、」
「お、おれのこと、好きで、いてくれるんだね」
「え?!何言ってんの?好き以外ないよ?」
「うん。身体だけじゃないって、分かるよ。だからね、毎日でもしたいって思ってるよ」
「・・・ほ、ほんとぉ?」
「でもお尻が、その、まぁ、限界を迎える時はある・・・ていうか大きすぎるんだよ」
「褒めてるの?怒ってるの?」
「・・・どっちも。だからね、セーフワードを作ったわけで・・・ちゃんと、聞いてほしい。お願いします」
「ごめんなさい。ちゃんと、聞きます。り、理性飛んでたら、叩いてね・・・」
「あ、そっか。それもルールにしようか。どうしても和多流くんが言うこと聞いてくれなかったら、思い切り叩くね」
「・・・はい、」
「・・・怖い?」
「そりゃ、はい。だって振り切る時の腕が!テニスのラケットを振る時と同じって言うか!」
「あ、うん・・・ごめんね」
「・・・いや、おれがちゃんとルールを守れば良い話だね。ちゃんとします。だから、ん、・・・抱いて、いい?」
「・・・うん」
「・・・照れちゃう」
「何で?」
「・・・可愛いやら嬉しいやら・・・」
「優しくしてね」
「う、うんっ」
か、可愛いなぁ・・・。
火照る顔を押さえて、腰を撫でる。細くてしなやか。
こうやって触れられるだけで嬉しいし幸せだけど、体を合わせるのも、やっぱり大好きだ。
少しそわそわしながら食事をして、お風呂は別で入り、ベッドに腰掛けて涼くんを待った。
お風呂上がりの涼くんって、ホカホカしてていい香りがするんだよな・・・。
抱きしめられるともっと包み込まれたくなる。柔らかでしっとりとしてて、ずっとくっついていたくなる。
いっぱい触ろう。手のひらで、指先で、全身に触れるんだ。
「お待たせー」
まだしっとりとした髪の毛を触りながら、涼くんがやってきた。
おれのシャツを着て、すらっと伸びた生足があまりにも綺麗で。
ぼんやり見つめていると、そっとおれの横に腰掛けた。ボディークリームのいい香りがする。足に触れると、吸い付くようにしっとりとしていた。
「・・・綺麗、」
「えっ、あ、あははっ・・・だって、ケア、頑張ってるし・・・」
「うん。知ってる。いつもありがとう。おれにも一緒にケアさせてね」
「うん・・・ふふ、久しぶりだから照れちゃうね」
「うん。可愛い。大好き」
そっと押し倒す。涼くんは抵抗せずに倒れてくれた。
理性を失わないように必死だった。抱き潰さないように自制した。なのに。
「もっと、しよ?」
汗だくで、涙目で、でも微笑んでくれて、きゅっと締め付けられて。
夢中で抱いた。
涼くんを食べ尽くしたくて、自分の気持ちを知って欲しくて、必死になった。
セーフワードは出なかった。涼くんもおれを求めてくれて、嬉しかった。



******************************



「わぁ、美味しそう」
休みの日にケーキ屋にやってきた。
涼くんはかじりつくようにケースを見つめて、ぶつぶつ言いながら吟味した。
色とりどりのケーキが宝石のように見えているのだろう。
おれにとっちゃ、そんな涼くんが宝石以上に綺麗なものなのだけど。
「好きなの買おう」
「和多流くんはチーズタルトだよね。おれ、フルーツタルトにしようかな。分けっこして、それから、マドレーヌとフィナンシェ買って、公園で食べよ」
「うん、うん」
「あ、パンもある。パン食べたいね。生食パンある」
「うん。あ、あん食パンあるじゃん」
ケーキとパンと焼き菓子を買って、お店を出る。
涼くんはルンルンで公園に入ると、広場でシートを広げた。
なるほど、やけに大きなカバンを持ってると思ったら、レジャーシートを入れてたんだ。
腰掛けて真ん中に広げると、箱からケーキを出してかぶりついた。
「あはは、贅沢」
「おいしい?」
「うん!ここね、一番フルーツ多いとこ。食べて」
「ん、ありがと。・・・ん!うまい!」
「ね」
「チーズタルトも食べてごらん」
「ありがとう。わ、濃厚で美味しいねぇ」
「涼くんってケーキは作らないの?」
「え!?無理無理!できないよ。難しいもん」
「食べてみたいなー」
「んー、うーん、・・・無理かも。ごめん」
「全然。今度また、ここの、買おう?」
「うん。・・・ね、ここ最近の、楽しいね」
「え?」
「・・・くっつくの」
ぽそ、と耳元で囁かれた。
楽しいと言われて、顔が熱くなる。
確かに、その、なんだ、楽しい。うん。
いっぱい話をしながらお互いを見つめ合ってするのは楽しいし、心が温かくなる。
最近、後ろからしてばかりだったもんな。
おれだけが満足していたのかも。
ちゃんと向き合ってするのが、涼くんは好きなんだな。おれも、大好きだよ。
「うん。楽しいし、嬉しいし、気持ちーね」
「ね」
「・・・夜、したいよ」
「・・・へへへ」
「もー、照れてるの?」
「んふっ」
「・・・だめだー、我慢できなくなるー」
「ふひひっ」
「・・・いっぱいしていい?」
「うんっ」
「・・・大好きって、したいよ」
「おれも」
指を絡めてそっと握る。
涼くんの手は熱かった。


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