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106の続きです。
でも106読んでなくても読めるようになってます。
涼くんの熱が下がったとはいえ、まだまだ体調はすぐれないはず。
次の日もしっかり休んで、涼くんは本日背筋を伸ばして仕事に行きました。
キリッとしてかっこいい。おれの彼氏、すげーかっこいい。
布団を干してシーツを洗って、ベッドに消臭スプレーを吹きかける。今日は残業がなければいつも通り帰ってきてくれる。ご飯を作るねと、ニコニコしてた。
おれもつられて笑ってしまう。晩御飯、楽しみだなぁ。
いつも作ってもらっているから、おれがお弁当を作っている。最初こそ申し訳なさそうにしていたけど、最近じゃ作り損ねると少し残念そうに笑って仕事に行く。そんなに楽しみだったのか!と嬉しくなって、頑張って作っている。まぁ、玉子焼きとウィンナーに助けられてばっかりだけど。ちまちましたものは作れないし。結局晩御飯の残りを詰めていくことも多いし。でも、作ってくれるのが嬉しいって、言ってた。それはおれも分かる。なんだっていいんだ。好きな人が作ってくれるなら。どんなものだって、嬉しい。涼くんもそう思ってくれていたらいいな。
今日は張り切って玉子焼きとウィンナーに、バターコーンなんて入れてみた。あとは冷凍のミートボール。
早くお迎えの時間にならないかな。早く会いたいな。それで、それで、んふふっ。たっぷりエッチするんだ。
くふふっ。
************************
「ただいまぁ・・・」
まぁね、そんなうまくいくわけないって、分かってました。
もうすぐ日付が変わる。涼くんはくたびれた様子で車に乗り込むと、リュックからお弁当バッグを取り出した。
「え、もしかして食べてないの?」
「うん・・・ごめんね・・・。今日、忙しくて・・・お腹すいたから、食べていい?」
「いや、傷んでたら怖いからやめて」
「冷蔵庫入れてたし、大丈夫。本当にお腹が空いてて・・・」
顔を見ると、少しやつれていた。病み上がりだからっていうのもあるんだろうけど・・・。
「味が変だったらぺってするんだよ?」
「うん。・・・わ、コーンだ。えへへ。好き」
「晩御飯も一応あるんだけど、」
「食べる。お腹すいてるもん。・・・おいしー。えへへ。おにぎりも美味しいよ」
「・・・体、大丈夫?辛くない?」
「うん。大丈夫。・・・少し眠いかな」
「お風呂、すぐ入れるようにしてあるよ」
気張って色々用意したけどやっぱりから回ったかぁ・・・。
あとで枕元に置いたローションとゴム、こっそりしまっておこう。見つけたらきっと無理しちゃうだろうし。
家に帰ってご飯を食べて、お風呂に入ってフカフカのベッドに潜り込む。涼くんは丸まって眠りについた。
可愛い・・・。可愛いけど、うー、触りたかったよ・・・。仕方ないけど。
明日は期待しないで、大人しく待ってよ・・・。
**************************
ねぇ。
もう6日なんですけど。
6日もほったらかしなんですけど。
いや、正確にはほったらかしじゃなくて、激務なだけで、でも、でも、でもさ!!
な、なんか、なんか一言あってもいいじゃん!!
ムスーッとしたまま涼くんを見下ろす。おれがお風呂に入る前はしっかり起きていた。だけど今は、もう、夢の中に入ろうとしている。
トロトロと瞬きをして、とうとう目を閉じた。
可愛い。可愛いけど!!
なんでお風呂、1人で入っちゃうんだよーー!!
いや、おれが、入っておいでって物分かりのいいフリをするのも悪いけど!でもさ、一緒に入ろうとか、言ってくれてもいいじゃん!!
おれ、かなり我慢してるよ?!ご褒美くれてもいいじゃん!!
でも、でも、あんまり爆発させると涼くんが大変になるし・・・もう少し、気持ちを落ち着かせないと。
仕事部屋に入って温かいお茶を飲む。
落ち着け。涼くんが熱を出して、看病して、仕事に行けるようになった。
何度もお礼を言ってくれたし、休憩時間に食べてねって、わざわざコンビニでお菓子を買ってきてくれたし、おれの作った微妙なご飯だって残さず食べてくれるし・・・。
嬉しい、けど。違うんだよ・・・。涼くんに、触りたいんだよ・・・。触って欲しいんだよ。
求めて欲しいんだよ。
「さみしーな・・・」
タバコを吸ってから寝ようかな。
いつまで経っても禁煙ができなくて、困る。涼くんはとっくにやめたのに。
駐車場で吸おうかな。
部屋のドアを開けてサンダルを履いて、玄関を開けようとドアノブに手をかけた。
「どこ行くの!?」
「うわっ!?」
いきなり大きな声がして飛び跳ねる。心臓がバクバクした。
振り返ると涼くんがグラスを持って立っていた。
手が震えて、グラスが落ちて、パンっと音を立てて割れた。ガラスと水が飛び散る。
「どこ行くの!?やだ、おいていかないでよ!」
「わ、ちょ、」
暗い廊下を走ってきて、おれの腕を掴んだ。
すごい力だった。
「一緒に行く!どこ行くの?!こんな夜中に、どうして、」
「た、たばこ!たばこ吸おうと、思って・・・」
「・・・嘘だもん」
「え?」
「・・・どっか行っちゃうんだ。みんなそうだもん・・・和多流くんも、行っちゃうんだ・・・」
ずるずるとしゃがみ込んで、顔を隠して泣き始めた。ただ事じゃないぞ。いったい何があったんだ。
ていうか、みんなって、元彼のこと・・・?
「涼くん、ごめんね。外でたばこ吸おうと思って・・・」
「う、んっ・・・ひ、」
「どこにも行かないよ。ここにいるよ。足、怪我してない?ガラス踏んでない?ねぇ、泣かないで。どうしたの?」
「隣、」
「うん」
「い、いなくて、びっくり、した・・・!一緒に寝よって、言ったのに・・・」
「ごめん」
「探しに、来たら、外、行こうとしてて、置いていかれたく、なかったもっ・・・!連れてって、」
「行かないよ。ごめんね」
「ん、ひっ、・・・!寂しいよぉ・・・」
「え?」
「触りたいよ・・・触って・・・!キスして・・・!おれ、ずっと、準備してた・・・!」
「う、うそ!え、でも、疲れてるから・・・」
「お、起こして、」
「・・・涼くん、」
「なんで、隣、いて、くれなっ・・・!ずっと、立って、おれのこと、見るだけで、なんで、」
「ごめん。ちょ、ちょっと拗ねてました」
「・・・ばかっ、ばか!」
「・・・おれだって寂しかったんだから、慰めてよ」
しゃくりあげながら顔が上がった。
涙を指先で拭うと、勢いよく抱きついてきた。尻餅をつくけど、抱き止める。
うー、ちゃんと、抱きしめられた・・・!幸せだぁ・・・!
「行かないで、」
「行かないよ」
「一緒にいて、」
「いる。涼くんも、いてね」
「さっき、行っちゃったも・・・!置いてったじゃん、バイバイって、言った・・・!」
いや、言ってねぇし。
んなこと言わねーし。
置いていくわけねぇし。
何を言ってるんだ?と思ったけど、もしかしてもしかしなくてもさ。
「・・・寝ぼけてる?」
「・・・え?」
「夢見た?おれに置いてかれる夢?」
顔を覗き込むと、ズビッと鼻を啜って考えて、またブワーッと涙をこぼした。慌てて袖で拭うと、手を握られた。
「夢?夢?和多流く、よかったぁ・・・」
「そんな夢見て、こんなに泣いて・・・疲れてるんだよ」
「う、う、」
「・・・どこにも行かないよ。本当だよ。安心して?」
「ん、ん、・・・ぎゅって、して、」
か細く震える体を抱きしめて立ち上がる。
抱え上げてガラスを避けて寝室に入り、そっとベッドに寝かせて隣に滑り込む。
不安そうにおれを見ていたのに、安心したように笑った。可愛い・・・。笑った顔、大好きだよ。
「・・・抱いてもいい?」
「うんっ」
「・・・たくさんするのは、休みの日にするね」
「たくさん抱いて欲しいよ・・・。ギュッて、したいよ。おれも抱きたいよ」
「え、ぅわっ、」
覆い被さってきて、可愛い唇が噛み付くようにキスをしてきた。
お尻を揉みながら堪能する。触れ合えるのが嬉しかった。
*************************
「昨日、本当にパニックになった」
朝ごはんを食べて、一緒にいたくて、車で送ることにした。
素直に頷いた涼くんは車に乗り込むと、窓の外を見ながらポツリとつぶやいた。
「どこか行っちゃうんだと思って」
「ごめんね、紛らわしかったね」
「・・・今日、お風呂、一緒に入りたいな」
「すいません、おれもめちゃくちゃ入りたいです。物分かりのいい大人ぶってました」
「・・・ふふっ。何でそんな事するの?一緒に入ろうよ。ゆっくりしておいでって言われたら、おねだりしづらいもん」
「そうなの?」
「そうだよ。おれのこと考えてくれてるんだなって思うもん。だから、言いづらい」
「・・・そか。うん。やべー、また裏目に出た」
「・・・明日、ね?」
「ん?」
「・・・休み、だから・・・」
つん、つん、と手の甲に指を這わせる。ギュッと握ると、ピクンと跳ねた。
「それ以上は言わなくていいよ」
「え、」
「全部、用意して待ってる。お風呂も食事もベッドも、全部」
「・・・」
「だから涼くん、覚悟して」
「わ、わ、和多流くんも、覚悟してよ?」
「うん」
「・・・これ、渡しておくね」
手の中に冷たいものを握らされた。
見ると、小さな鍵だった。何度も見た。貞操帯の鍵だ。
パッと涼くんを見ると、そっとジャケットをずらしてワイシャツのボタンを数個はずし、チラッと肌を見せた。白のフリルが涼くんの胸を覆っていた。
「え、」
「メ、メンズ、ブラ・・・ちょっと、その、ニップルシールばっかりだと、良くないから・・・買ってみた・・・」
「・・・覚悟してよ?」
「・・・和多流くんもね」
「いいね、挑発的なのも大好きだよ。めっちゃエロい。玄関で襲ってやる」
「・・・」
「エロ講師め。そんなもん着て学生に勉強教えるとか、情操教育どうなってんの?」
「和多流くんのせいで、めちゃくちゃになった」
「もっとめちゃくちゃにしてあげる。さっさと仕事して帰ってきてよ?寄り道はダメ。残業もダメ。分かったね?」
「ん」
「はい、でしょ?」
「はい・・・」
「はい、ついたよ。行かせたくないけどさ。早く帰ってきてよ?」
「うん。・・・あ、あのね、」
「何?遅くなるのは許さないよ」
「・・・うん。あのね、大好きだよ」
急に照れながら言うから、ギャップが凄すぎてハンドルに項垂れた。
行かせたくないな。家に連れ帰ってぐちゃぐちゃに抱きたいよ。
助手席から飛び降りると、手を振って小走りでかけて行った。
手を振り返して何度も深呼吸をする。あー、下半身がイライラする。
早く抱きたい。
でも106読んでなくても読めるようになってます。
涼くんの熱が下がったとはいえ、まだまだ体調はすぐれないはず。
次の日もしっかり休んで、涼くんは本日背筋を伸ばして仕事に行きました。
キリッとしてかっこいい。おれの彼氏、すげーかっこいい。
布団を干してシーツを洗って、ベッドに消臭スプレーを吹きかける。今日は残業がなければいつも通り帰ってきてくれる。ご飯を作るねと、ニコニコしてた。
おれもつられて笑ってしまう。晩御飯、楽しみだなぁ。
いつも作ってもらっているから、おれがお弁当を作っている。最初こそ申し訳なさそうにしていたけど、最近じゃ作り損ねると少し残念そうに笑って仕事に行く。そんなに楽しみだったのか!と嬉しくなって、頑張って作っている。まぁ、玉子焼きとウィンナーに助けられてばっかりだけど。ちまちましたものは作れないし。結局晩御飯の残りを詰めていくことも多いし。でも、作ってくれるのが嬉しいって、言ってた。それはおれも分かる。なんだっていいんだ。好きな人が作ってくれるなら。どんなものだって、嬉しい。涼くんもそう思ってくれていたらいいな。
今日は張り切って玉子焼きとウィンナーに、バターコーンなんて入れてみた。あとは冷凍のミートボール。
早くお迎えの時間にならないかな。早く会いたいな。それで、それで、んふふっ。たっぷりエッチするんだ。
くふふっ。
************************
「ただいまぁ・・・」
まぁね、そんなうまくいくわけないって、分かってました。
もうすぐ日付が変わる。涼くんはくたびれた様子で車に乗り込むと、リュックからお弁当バッグを取り出した。
「え、もしかして食べてないの?」
「うん・・・ごめんね・・・。今日、忙しくて・・・お腹すいたから、食べていい?」
「いや、傷んでたら怖いからやめて」
「冷蔵庫入れてたし、大丈夫。本当にお腹が空いてて・・・」
顔を見ると、少しやつれていた。病み上がりだからっていうのもあるんだろうけど・・・。
「味が変だったらぺってするんだよ?」
「うん。・・・わ、コーンだ。えへへ。好き」
「晩御飯も一応あるんだけど、」
「食べる。お腹すいてるもん。・・・おいしー。えへへ。おにぎりも美味しいよ」
「・・・体、大丈夫?辛くない?」
「うん。大丈夫。・・・少し眠いかな」
「お風呂、すぐ入れるようにしてあるよ」
気張って色々用意したけどやっぱりから回ったかぁ・・・。
あとで枕元に置いたローションとゴム、こっそりしまっておこう。見つけたらきっと無理しちゃうだろうし。
家に帰ってご飯を食べて、お風呂に入ってフカフカのベッドに潜り込む。涼くんは丸まって眠りについた。
可愛い・・・。可愛いけど、うー、触りたかったよ・・・。仕方ないけど。
明日は期待しないで、大人しく待ってよ・・・。
**************************
ねぇ。
もう6日なんですけど。
6日もほったらかしなんですけど。
いや、正確にはほったらかしじゃなくて、激務なだけで、でも、でも、でもさ!!
な、なんか、なんか一言あってもいいじゃん!!
ムスーッとしたまま涼くんを見下ろす。おれがお風呂に入る前はしっかり起きていた。だけど今は、もう、夢の中に入ろうとしている。
トロトロと瞬きをして、とうとう目を閉じた。
可愛い。可愛いけど!!
なんでお風呂、1人で入っちゃうんだよーー!!
いや、おれが、入っておいでって物分かりのいいフリをするのも悪いけど!でもさ、一緒に入ろうとか、言ってくれてもいいじゃん!!
おれ、かなり我慢してるよ?!ご褒美くれてもいいじゃん!!
でも、でも、あんまり爆発させると涼くんが大変になるし・・・もう少し、気持ちを落ち着かせないと。
仕事部屋に入って温かいお茶を飲む。
落ち着け。涼くんが熱を出して、看病して、仕事に行けるようになった。
何度もお礼を言ってくれたし、休憩時間に食べてねって、わざわざコンビニでお菓子を買ってきてくれたし、おれの作った微妙なご飯だって残さず食べてくれるし・・・。
嬉しい、けど。違うんだよ・・・。涼くんに、触りたいんだよ・・・。触って欲しいんだよ。
求めて欲しいんだよ。
「さみしーな・・・」
タバコを吸ってから寝ようかな。
いつまで経っても禁煙ができなくて、困る。涼くんはとっくにやめたのに。
駐車場で吸おうかな。
部屋のドアを開けてサンダルを履いて、玄関を開けようとドアノブに手をかけた。
「どこ行くの!?」
「うわっ!?」
いきなり大きな声がして飛び跳ねる。心臓がバクバクした。
振り返ると涼くんがグラスを持って立っていた。
手が震えて、グラスが落ちて、パンっと音を立てて割れた。ガラスと水が飛び散る。
「どこ行くの!?やだ、おいていかないでよ!」
「わ、ちょ、」
暗い廊下を走ってきて、おれの腕を掴んだ。
すごい力だった。
「一緒に行く!どこ行くの?!こんな夜中に、どうして、」
「た、たばこ!たばこ吸おうと、思って・・・」
「・・・嘘だもん」
「え?」
「・・・どっか行っちゃうんだ。みんなそうだもん・・・和多流くんも、行っちゃうんだ・・・」
ずるずるとしゃがみ込んで、顔を隠して泣き始めた。ただ事じゃないぞ。いったい何があったんだ。
ていうか、みんなって、元彼のこと・・・?
「涼くん、ごめんね。外でたばこ吸おうと思って・・・」
「う、んっ・・・ひ、」
「どこにも行かないよ。ここにいるよ。足、怪我してない?ガラス踏んでない?ねぇ、泣かないで。どうしたの?」
「隣、」
「うん」
「い、いなくて、びっくり、した・・・!一緒に寝よって、言ったのに・・・」
「ごめん」
「探しに、来たら、外、行こうとしてて、置いていかれたく、なかったもっ・・・!連れてって、」
「行かないよ。ごめんね」
「ん、ひっ、・・・!寂しいよぉ・・・」
「え?」
「触りたいよ・・・触って・・・!キスして・・・!おれ、ずっと、準備してた・・・!」
「う、うそ!え、でも、疲れてるから・・・」
「お、起こして、」
「・・・涼くん、」
「なんで、隣、いて、くれなっ・・・!ずっと、立って、おれのこと、見るだけで、なんで、」
「ごめん。ちょ、ちょっと拗ねてました」
「・・・ばかっ、ばか!」
「・・・おれだって寂しかったんだから、慰めてよ」
しゃくりあげながら顔が上がった。
涙を指先で拭うと、勢いよく抱きついてきた。尻餅をつくけど、抱き止める。
うー、ちゃんと、抱きしめられた・・・!幸せだぁ・・・!
「行かないで、」
「行かないよ」
「一緒にいて、」
「いる。涼くんも、いてね」
「さっき、行っちゃったも・・・!置いてったじゃん、バイバイって、言った・・・!」
いや、言ってねぇし。
んなこと言わねーし。
置いていくわけねぇし。
何を言ってるんだ?と思ったけど、もしかしてもしかしなくてもさ。
「・・・寝ぼけてる?」
「・・・え?」
「夢見た?おれに置いてかれる夢?」
顔を覗き込むと、ズビッと鼻を啜って考えて、またブワーッと涙をこぼした。慌てて袖で拭うと、手を握られた。
「夢?夢?和多流く、よかったぁ・・・」
「そんな夢見て、こんなに泣いて・・・疲れてるんだよ」
「う、う、」
「・・・どこにも行かないよ。本当だよ。安心して?」
「ん、ん、・・・ぎゅって、して、」
か細く震える体を抱きしめて立ち上がる。
抱え上げてガラスを避けて寝室に入り、そっとベッドに寝かせて隣に滑り込む。
不安そうにおれを見ていたのに、安心したように笑った。可愛い・・・。笑った顔、大好きだよ。
「・・・抱いてもいい?」
「うんっ」
「・・・たくさんするのは、休みの日にするね」
「たくさん抱いて欲しいよ・・・。ギュッて、したいよ。おれも抱きたいよ」
「え、ぅわっ、」
覆い被さってきて、可愛い唇が噛み付くようにキスをしてきた。
お尻を揉みながら堪能する。触れ合えるのが嬉しかった。
*************************
「昨日、本当にパニックになった」
朝ごはんを食べて、一緒にいたくて、車で送ることにした。
素直に頷いた涼くんは車に乗り込むと、窓の外を見ながらポツリとつぶやいた。
「どこか行っちゃうんだと思って」
「ごめんね、紛らわしかったね」
「・・・今日、お風呂、一緒に入りたいな」
「すいません、おれもめちゃくちゃ入りたいです。物分かりのいい大人ぶってました」
「・・・ふふっ。何でそんな事するの?一緒に入ろうよ。ゆっくりしておいでって言われたら、おねだりしづらいもん」
「そうなの?」
「そうだよ。おれのこと考えてくれてるんだなって思うもん。だから、言いづらい」
「・・・そか。うん。やべー、また裏目に出た」
「・・・明日、ね?」
「ん?」
「・・・休み、だから・・・」
つん、つん、と手の甲に指を這わせる。ギュッと握ると、ピクンと跳ねた。
「それ以上は言わなくていいよ」
「え、」
「全部、用意して待ってる。お風呂も食事もベッドも、全部」
「・・・」
「だから涼くん、覚悟して」
「わ、わ、和多流くんも、覚悟してよ?」
「うん」
「・・・これ、渡しておくね」
手の中に冷たいものを握らされた。
見ると、小さな鍵だった。何度も見た。貞操帯の鍵だ。
パッと涼くんを見ると、そっとジャケットをずらしてワイシャツのボタンを数個はずし、チラッと肌を見せた。白のフリルが涼くんの胸を覆っていた。
「え、」
「メ、メンズ、ブラ・・・ちょっと、その、ニップルシールばっかりだと、良くないから・・・買ってみた・・・」
「・・・覚悟してよ?」
「・・・和多流くんもね」
「いいね、挑発的なのも大好きだよ。めっちゃエロい。玄関で襲ってやる」
「・・・」
「エロ講師め。そんなもん着て学生に勉強教えるとか、情操教育どうなってんの?」
「和多流くんのせいで、めちゃくちゃになった」
「もっとめちゃくちゃにしてあげる。さっさと仕事して帰ってきてよ?寄り道はダメ。残業もダメ。分かったね?」
「ん」
「はい、でしょ?」
「はい・・・」
「はい、ついたよ。行かせたくないけどさ。早く帰ってきてよ?」
「うん。・・・あ、あのね、」
「何?遅くなるのは許さないよ」
「・・・うん。あのね、大好きだよ」
急に照れながら言うから、ギャップが凄すぎてハンドルに項垂れた。
行かせたくないな。家に連れ帰ってぐちゃぐちゃに抱きたいよ。
助手席から飛び降りると、手を振って小走りでかけて行った。
手を振り返して何度も深呼吸をする。あー、下半身がイライラする。
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