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しおりを挟む別に、施しとか受けなくても気持ちよかった。
好き勝手腰を動かして自分の快楽を得られるなら、それでよかった。
大人になってから気づいたけど、根本的には寂しがりで人恋しくて、できれば嘘でもいいから好きって言ってもらいたくて、その一瞬でもいいから愛されたくて、だから、好意を持ってそうな人に近づいて抱いて、満たされたように振る舞った。
『もー。和多流くんは寂しがりだなぁ』
そうやって笑ってくれたのは、今までで涼くんだけだった。
たくさんの人と出会ってきたけど、おれが寂しがりで、甘えたで、時々感情のコントロールが効かなくなるところを受け入れて笑ってくれたのは、この子だけ。
それが分かってからおれは、欲望の塊だった。こうしたい、あれがしたい、してほしい、言ってほしい、言いたい。全部、叶えたい。
受け入れて求めてくれて、2人で笑って、幸せで。
「和多流くーん。ご飯できたよー。暴力チャーハン」
「え、何それ」
「あはは。見てー」
メガネを外してダイニングへ向かうと、大盛りのチャーハンの上にチャーシューと餃子が乗っていた。驚いて笑うと、はい、とレンゲを差し出された。
「これ、ヤバいね」
「反対側見た?」
「えー?うわ!!あはははは!小籠包まで乗ってるし!」
「なんか、全部食べたくなって」
「うまそー。いただきます」
当たり前のように食べているけど、これが当たり前じゃないことくらい知っている。
人間なんていつかパッと消えてしまうんだ。
目の前で見たんだ。だから、だから、今は。
「和多流くん、夜は何がいい?」
「え?」
「ほら、今日は和多流くんが仕事だからおれも家にいるし。食べたいものあったら言ってね。ついでに明日の食材も買ってきちゃうけど」
「・・・じゃあ、夜は、あの、煮物、」
「煮物?」
「いろんなの入ってるやつ・・・ちくわぶとか」
「あ、あれ美味しかった?ちくわぶ入れると美味しいよね。作るね。あとは魚か、それか揚げ物でいい?」
「うん・・・」
「明日は寒いみたいだから豚汁にしようか。豚バラ買ってこなくちゃ」
「・・・明後日は、オムレツがいい、」
「いいよ。デミグラスソースがいいんだっけ」
「・・・絶対作ってくれる?」
涼くんは不思議そうな顔をした。
そして吹き出して笑うと、作るよ?と首を傾げた。
「あ、ごめんね。先週帰りが遅くてハヤシライス、作れなかったもんね。今週どこかで作ろうか」
「え、あ、」
「約束してたのにね。ごめんね」
約束、覚えていてくれたんだ。
次の約束も、してくれるんだ。
『和多流、今日はカレーにしようか』
『うん!お母さんのカレー、世界で1番好き!』
あの約束が果たされることはなかった。
いなくなってしまったから。
でも、きっと涼くんは。
「そういえばカレーも食べたいって言ってたけど、おれのでいいの?和多流くんが作った方が絶対美味しいのに」
「・・・涼くんのがいい」
「そう?あ!じゃあネットで見たやつ作ろうかなー。無水カレー。バターチキンにしよう」
「なにそれ、絶対おいしいやつじゃん」
「あっ、チャーシュー落ちた、」
「おれが貰った!」
「あー!おれの!」
「わーい」
「・・・もー。子供みたいだな」
「涼くん」
「んー?」
「もうすぐ仕事終わる」
「ほんと?お疲れ様」
「ベッド、行きたいな」
口の端にお米をつけたまま、涼くんは固まった。
そしてふにゃりと笑ったかと思ったら、急に引き締めた。
お?なんだ?今の。可愛いぞ。
「あ、んと、ここ最近忙しかったんだし、少し、ゆっくりした方が・・・」
「んー?・・・うん、じゃあそうしようかな。一緒にゴロゴロしてくれる?」
「う、うん。うん。えへっ」
照れくさそうに笑う。
2人でベッドに寝転がりながら、ぼんやりとテレビを観る。あんまり面白くはない。でも涼くんがおれにくっついてくれるから、いいや。
幸せだな。こんなに穏やかに過ごせるものなんだ。感謝しなくちゃ。
くしゃくしゃと頭を撫でると、そっと起き上がった。目元にキスをされる。涼くんはトロンと目をとろけさせて、何もしなくていいからね、と小さく言った。
意図が読めなかったけど、涼くんがおれの下半身に顔を埋めて理解した。
「・・・いーの?」
「んっ。いつもおれ、してもらってばかりだから・・・余裕なくて、なにもできないから。あの、返したいんじゃなくて、与えたいの。気持ちいいって思ってほしい」
スウェットをゆっくり下ろし、まだ柔らかなおれのペニスにキスをする。
やわらけ・・・。温かいんだよね、唇。
「与えたいの?」
「うん。したいの。おれが、したい」
「・・・嬉しい」
素直に受け入れて、天井を仰ぐ。
チロチロと舌が這い、シャツをたくし上げた。
ツン、と乳首に触れる。
「っ」
「キスしよ?」
「して・・・ん、」
くん、と顎を持ち上げてキスをしてくれる。
やらしくて大きな水音を立てて、おれの舌を吸う。
前は音を恥ずかしがっていたけど、今はもう音に興奮するみたい。とろりと溶けた瞳は必死におれを捉えていた。
「んへへ、じゅぼって、音、したね」
「ん。気持ちいい」
「和多流くん、手、だらんてしててね。おれがしたいんだから」
「うん・・・」
「素直で可愛いね。お仕事疲れたでしょ。待って、一回うつ伏せになって」
素直にうつ伏せになると、肩を揉んでくれた。
ぐーっと肩を押されてつい、声が漏れる。
「うー・・・」
「す、ご!肩パンパンだよ。ん、しょっ、」
「きもちー・・・」
「あ、そうだ!今度マッサージガン、買お?あれがあれば、いつでも、できる!んしょ、でもおれがいる時は使っちゃダメだよ。おれがするんだもん」
「うー・・・腰も、」
「うん。ここ?」
「あー・・・それそれ・・・やべー・・・」
しばらくマッサージを堪能し、楽になった頃に仰向けに戻ると、涼くんは額にうっすらと汗をかいて肩を上下させていた。
嬉しそうに頷くと、手のひらも揉んでくれる。
「またするからね、いつでも言ってね」
「ん・・・」
「眠い?」
「大丈夫・・・。あ、」
喉仏を舐められた。尖った舌先で突いて、舌全体で舐めとる。そのまま上に登って顎を撫でると、唇を舐めた。
「あ・・・」
「・・・可愛い」
「んー・・・」
「ここもね」
「んぁっ、」
乳首を摘まれた。
胸が上下する。
細い指先は乳首を優しくこねて、時折引っ張った。
「あ、やばっ、」
「キス、」
「んっ、む、」
知らなかった。
乳首をいじられながらのキスって、すげー気持ちいい。
夢中になってキスをして涼くんの背中に手を回すと、頭を撫でられた。
昔は頭を撫でられるの、嫌いだったな。舐められてる感じがして。でも今は、涼くんに撫でられるのは、大好き。もっとしてほしくなる。
「和多流、可愛い」
「んー・・・」
「もっと甘えて」
「舐めて、」
「乳首?」
「ん・・・」
「嬉しい」
「やばいな、涼くんがおれのでよかった」
「え?」
「かっこいい姿、他の人が見てたら発狂する」
「こんなことしたいって思ったの、和多流くんだけだよ」
「ふふ。喜ばすのがうまいよね」
「・・・??本当のことだけど・・・。和多流くん可愛いから、甘やかしたいって思うもん」
「可愛いって言われて嬉しいなんてさ、おれ、だいぶ毒されたなぁ」
「毒?」
「涼くんっていう、あまーいあまーい、毒」
「いや?」
「嫌じゃなくて、気持ちいい」
「ねぇ、撫でてあげる」
柔らかな手のひらでゆっくりと腕を撫でられた。
目を閉じて感じる。首を撫で、また腕を撫で、脇腹に滑ったところで腰が跳ねた。
「あー・・・やばいなぁ」
「可愛い。もっとしてあげるね」
「いや、もう、あぁっ」
背中に手が潜り込み、強く揉まれた。
あったけー・・・。腰、浮いちまう。
無意識に手が上がり、涼くんの服の上から背中に強く爪を立てる。
「待って。脱ぐね」
「え?」
「和多流くんも脱いで」
言われた通りに服を脱ぐ。ぺたりと素肌を重ねると、また脇腹を撫でた。
「爪ね、立てていいよ。たまには欲しいな」
「んー・・・あ、やべっ、」
ペニスが跳ねた。
素直に背中に手を置いて、爪を立てる。涼くんは少し眉を寄せたけど、ニコッと笑った。
「すごい。気持ちいい。えへへ」
「ふっ・・・汗やばい。焦らされるの、たまんねぇ」
「気持ちいい?」
「あーっ・・・やばいやばい、・・・」
乳首がこねられた。くすぐったいけど、気持ちいい。
声が出てしまう。
とまんねぇ。
「う、あぁっ、あ、」
「可愛い・・・ん、」
「んぁっ!」
ぢゅるっと吸い付かれる。
はーはーと呼吸を乱すと、唇を塞がれた。
「あー・・・ん、あぁ、」
「わたぅ、」
「ま、って、やばいやばい。焦らさないで、」
「もっとキスしたい」
「涼くんに出したい」
「顔?口?」
「中」
「ほぐすから待ってね」
「ごめん、早くして」
「待ってね。口でするね」
「ぐ、」
ズルッと口内に招き入れられる。頭を押さえると、えずいた。
気持ちいい・・・。快楽に溺れていく。
「ゔぶ、お、」
「あー、だめだ、だめだめ、やばい、出したくねぇ、」
「ゔぅん゛っ!おぶっ、」
「いきてぇ、・・・だめ、いやだ、涼の中、中・・・」
「んあ゛!も、い、よっ!いれるね?ね?」
「早く、」
「だめ。ゆっくり・・・」
おれにまたがり、腰を下ろす。ズブズブと柔らかな肉に包まれていく。細い腰を掴み、天井に向かって吠えた。
「あ゛ー・・・!」
「あ、あ、しゅご、すごい・・・」
「ぐっ・・・!ゔぅっ!」
「た、たたいて、いいよっ。好きにしていいよ、あ゛んっ!!」
お尻を叩く。もっと。もっと締めて。搾り取ってほしい。
バチン、バチン、と鈍い音が響く。
「あぁっ!あぁん!あーっ!」
「はぁ!あぁっ!くっそぉ・・・!気持ちいい!締まる!」
「も、も、お尻、」
「あ?もっと?ほら、」
「あっ!あ!」
「腰動かしてっ、」
「和多流、くん!気持ちいい!?気持ちいい?!」
「うんっ、最高・・・!」
「好きっ、えへへ、好きぃ・・・!お、おれ、あ、あぁっ、あ!和多流く、好き!」
施しなんて、要らなかったはずなのに。
一瞬でよかったはずなのに。
この子が現れて、変わってしまった。
構ってほしいし、一瞬なんて絶対に嫌だ。
ずっと、そばにいて。
笑っていて。
「・・・結局がっついちゃってごめんね」
「ううん。えへへ。和多流くんの可愛い声たくさん聞けたから、気持ちよかった」
「いや、もうさぁ、テクニシャンすぎるんだよ」
「和多流くんがやってくれたこと、しただけだよ」
ベッドで並んで寝転がり、頬を触る。
たくさんした。
そりゃもう、これでもかってくらい。
涼くんの背中には引っ掻き傷。お尻は真っ赤っかで、腰なんておれの手形がついてしまった。
「軟膏塗ったけど大丈夫そう?」
「うん。ふふ。いつもおれが引っ掻くと嬉しそうなの、理由がわかった」
「なぁに?」
「和多流くんが必死にしがみついてくれたなーって、いつでも思い出せるね」
「・・・えいっ」
「いたーー!」
傷を撫でると、飛び跳ねた。バシッとお尻を叩かれる。
「あぃって!」
「おれの方が痛いよ!」
「恥ずかしいこと言うからでしょ」
「和多流くんも言うじゃん」
「もーしないもーん」
「えー?しがみついてくれないの?嬉しかったのに」
「涼くんがしがみついてよ」
「言われなくても、いつもしてるじゃん。・・・気持ちいいから、離れたら怖いし」
「えー?快楽漬けが怖いの?可愛い」
「バカー」
こういう時間、好き。
誰にも分からない、入れない会話。
おれと涼くんだけの、内緒話。
引っ張り寄せると倒れ込み、腕の中に潜り込んできた。
「仕事、お疲れ様ね」
「ありがと。色々考えながら仕事してたら、ちょっと疲れたな」
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「やべー。神じゃん」
「デザートはみかん」
「あははっ!可愛い。デザートなんだ?」
「皮剥いてあげます」
「やったぁ」
「ねーねー、食べたらさ、録画したお笑い観よう?面白かったみたいだよ」
「いいね」
ちゅっとキスをして、くすくす笑う。
この笑顔がずーっとそばにあれば、もう、何も要らない。
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