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和栗

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「・・・変なところから毛が生えてきた」
「は?」
お風呂から戻ってきた和多流くんが落ち込んだ顔で言った。
パンツのゴムをずらしてお臍の下を指差す。
うっすらと生えている毛。おぉっ!
「あ、そこに生えるんだ」
「・・・足の指も生えてきた・・・最悪だ・・・」
足元を見ると、確かに親指にちょろっと生えている。
おれからしたら羨ましい限りなんだけどな。体毛が薄いのもなかなかコンプレックスだし。
ヒゲも剃ったことないし、脇だって剃ったことないし、足も産毛だし。陰毛もびっくりするくらい量が少なかったし。
和多流くんは毛を触りながらため息をつき、おれの隣に腰掛けた。
お臍の下を触る。
「あのさ」
「んー?」
「剃ってみたい」
「・・・ん?!」
「剃ってもいい?」
「・・・え、腹毛?剃りたいの?」
「剃るものなら、剃ってみたい」
「・・・いいけど・・・今剃る?」
「いいの!?わぁい」
服を脱ぎ捨ててお風呂場へ向かう。
和多流くんは全裸になると、シャワーを出した。
カミソリをおれに差し出す。
「石鹸泡立てればいい?」
「うん。なるべく多めに」
「分かった!」
もこもこに泡立ててお腹にぺと、とくっつける。さわさわと満遍なく塗りたくってカミソリを出すと、ピクッと体が揺れた。
「怖い?」
「まぁ、人にやられるの初めてだし・・・」
ちょっと複雑そうな顔。
嫌そうではないけど・・・何となく、分かってしまった。和多流くんって考えてることが顔に出るよね。昔は隠すのが上手だったのに。
「和多流くん」
「ん?」
「・・・間違ってたら悪いんだけど、おれに剃毛プレイしたかったなーって思って機嫌悪い?」
「・・・間違ってません」
やっぱりね。
和多流くんはおれの肩を掴むと、血走った目で見つめてきた。
「パイパンもそりゃもうとても魅力的だよ?でもさ、でもさ、片想い期間中に幾度となく想像したの!剃毛を!パイパンの想像はしてなかったわけ!できればやりたかったです!」
「あんまりパイパンって言わないでよ・・・気にしてるんだから・・・」
「めちゃくちゃ可愛いし舐めるとすごく良さそうだし全部丸見えで興奮しまくりだけど、一度はしてみたかったな・・・」
「でもおれ、ほんっとうに生えてこないしなぁ・・・。あ!じゃあさ・・・」
思いついた。
バリカンを持ってきて差し出すと、キョトンとした顔。ヘアバンドで髪を上げて横を向き、ここ、と指差す。
「ここ剃って」
「・・・ここ?ツーブロックのところ?いいの?」
「うん。ごめんね、ここくらいしかなくて」
「・・・えー、結構嬉しいかも・・・。目立つ場所なのに、いいの?」
「うん。伸びちゃって境目が分からないからお願い」
「6ミリでいい?」
「うん」
スイッチを入れ、そっとバリカンが当てられた。パラパラと髪が落ちていく。丁寧に丁寧に剃っていく和多流くんは真剣だった。
「うん、できた。反対向いて」
「ん」
「ふふっ」
低く笑う。なに?と聞くと、可愛い、と言われた。
「何もしてないのに?」
「バリカン苦手?腰が跳ねたね」
「う、・・・バレた?音が苦手」
「分かる。おれもたまにビクってなる。涼くん、今度おれが行ってる美容院行こうよ。後ろも刈り込んでもらってさ、伸びてきたらおれがまたこうやって剃ってあげる」
「うーん、美容院苦手。おしゃれなんだもん」
「おれがいれば緊張しないでしょ。はい、できたよ」
「ありがとう。うん、サリサリになった」
「サリサリ?しょりしょりじゃなくて?」
「サリサリー」
「んー、サリサリ?うん、似合う」
「くへへっ」
「笑い方がさ、いつも思うけど、面白いよね」
2人でくすくす笑いながらもう一度カミソリを持ってバスタブの縁に座る。和多流くんはもう一度泡を塗りたくって、どーぞと言った。
優しく撫でるように剃る。硬いし太いのかな。剃っている手応えがある。ザリザリって感じだ。
「おぉー・・・」
「あのー」
「なに?」
「・・・ちんちん持たなくても大丈夫だよ?」
「え?あ!ごめん!無意識に持ってた!」
「ぶはっ!!無意識にちんちん持つって、んはは!」
「切れたら危ないなーって・・・切らないけどさ」
「勃っちゃう」
「オキャクサン、ゲンキデスネー」
「あはははは!」
「剃れたかなぁ。シャワーで流すね」
「ん。うん。ツルツル」
「・・・ねぇ、本当に勃ってない?」
「・・・いや、そりゃまぁ、位置的に・・・ねぇ?」
そういうや否や、むくむくと立ち上がって反り返った。
ふっと息を吹きかけると、ぺと、と顔に押し付けられた。
「涼くんー」
「おれ明日朝からだよ」
「送迎します」
「そーゆー話じゃないよ」
「でもさー、でもさー、涼くんが触るからこーなっちゃったわけだしー」
「やらしい持ち方はしてないもん」
「してました!してた!ねー、剃らせてあげたんだから・・・いいでしょ?ね?」
「交換条件なら満たされてるでしょ。おれはここ剃らせてあげたよ」
「・・・ゔー。いつならいいの」
両手で顔を覆って泣く真似をする。
立ち上がって片付けをしていると、後ろから抱きつかれた。そのまま抱き上げてベッドに連行される。
「ぎゃー!」
「責任とってね。ね?」
ぐ、ぐ、と腰を押し付けられる。
「ちょ、っとぉ!痛いのはやだ!」
「絶対に痛くしないもん」
「今無理やりしようとした!」
「してないー!おれの意志を感じて欲しかったの!前戯なしでことに運べるかってんだぃ!前戯こそ、セックスです!」
「しないよ!一回で終わらないもん!」
「終わるから!絶対!」
「信じない!嘘だ!いつもそう言って長いこと腰動かしてるもん!」
「だって気持ちいいんだもん!涼くんがトロトロでキューキュー締め付けてくるんだもん!好き!」
「ぁぶっ!?」
無理やりキスをされて、あれよあれよと絆されて、いつの間にか合体していた。
もう絶対に毛の処理なんてするもんか。
ぜーったいにしないんだから!




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