Evergreen

和栗

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これは、少し、まずいんじゃないか?
鏡でマジマジと自分の胸を見る。
・・・乳首、大きく、なってる・・・?
つん、と突くと腰が少し反応した。すぐさま膨らんでくる。やっぱ、大きいよ、ね・・・?
和多流くん、結構吸うし摘むしつねるもんな・・・。
シャワーを浴びて体を拭きながら携帯で調べる。
やっぱり、触ると大きくなるんだ・・・。小さくする手術もある・・・。
でもそこまでする必要は・・・怖いし・・・。今は冬だからいいけど、夏場、どうしよう。多分透けるし目立つよね。
えー!今年、どうだったんだろう!?あ、でも和多流くんには何も言われてないから多分大丈夫だったのかな。すぐ気づくからなぁ、和多流くん。
・・・大きくなってるのも気づいてるのかな。
そういえばエッチの時、大きくなったとか言われた気がする!!
気にならなかったけど今は気になる!!
ていうかシャツに擦れて痒い気がするし、あんまり触って欲しくないかも。
今日、したいって言うかなぁ・・・。
最近仕事が忙しくてお迎えもないし、今日はないかな・・・。
気になり始めると止まらなくて、そっと自分の部屋に入って電話をかける。
珍しくワンコールで繋がった。
『久しぶりー。今連絡しようと思ってたんだよ』
「あ、ぐ、軍司くん。あのー、ちょっと聞きたいことが・・・」
『え?何?珍しい。話長くなるならこっちからいい?あのさ、今度しゃぶしゃぶ行かない?近所にできたんだよ』
「あ、うん、行く。豚肉好き・・・。ランチやってるの?」
『ランチの方が安いし食べたらどっか飲みに行きたいなーって。春日部だけだからさ、付き合ってくれんの』
「うん。行こう。予定、あとで連絡するね。あの、さぁ・・・ちょっとセンシティブなことかもしれないんだけど、・・・ち、乳首が、大きくなったこと、ある?」
どう聞けばいいか分からず、ど直球な質問をしてしまう。
軍司くんは、あー、乳首ねぇ、と言いながら少し沈黙すると、ビデオ通話にできるか、と聞いてきた。切り替えると、なぜかシールがうつっていた。
「な、なにこれ?肩こりの時に貼るやつ?」
『違う。ニップルシールド』
「・・・えと、乳首に貼るの?」
『そう。これ便利。透けないし擦れないし蒸れづらいよ。おすすめ』
「へ、へぇえ・・・。使ってるの?」
『うん。擦れて痛いし。おれも前より大きくなってきたから買ったんだよ。結構安いし、後でサイト送っておくよ』
「ありがとう・・・。ごめん、変なこと聞いて」
『いや、ネコの宿命でしょ。乳首が大きくなるなんて。愛されてんじゃん』
「軍司くんはどうなのさ。山田くんの話し、最近聞かないけど」
『あー、うーん、・・・。オタクってすごいなーって改めて感じた』
「は?」
『・・・したんだけどさ』
「えぇ!そ、そうなの?どうだった?」
『いや、あいつ童貞だからなんっっにも期待してなかったんだけどさ。2回目から凄かった。もー、根掘り葉掘りおれに質問攻めだよ。おれのこと知ろうととにかく集中してて、目つきが全然違うんだ。パソコンとバイクいじってる時の目、してんの』
「えー。惚気じゃん」
『・・・絶倫は疲れるだろ』
あ、ちょっと同情。おれも初めて朝までした時はお尻が痛かったし、疲れ果てて倒れたもんなぁ。
『つーかさ、言葉攻めなんて想像してなかったからマジで恥ずかしいんだよ!しかもおれが教えたら次はちゃんとその通りに動くし触るしなんかもー!もー!って!』
「愛されてるんだー。へぇえー。ふふっ」
『・・・で、さぁ・・・おれに不快な思いさせたくないからって、アイツ、髪切ったんだよ』
「そうなんだ」
『そりゃ、さぁ?髪の毛が体にくっついたり顔に落ちてきたりするの、くすぐったいからやだって言ったのはおれなんだけど、まさかいきなり切ってくるとは思わないじゃん。・・・すげーかっこよくて、ちょっと心配になる』
「今度会った時に見せてよ。写真撮ったでしょ」
『・・・うん。つーか、惚気たいからご飯誘った』
わー!もう、恋してるなーって感じだ。
楽しみにしてる、と伝えて通話を終える。すぐにURLが送られてきたので、サイトに飛んでみた。
結構いろんな種類があるんだ。定番っていうのを買ってみるか。
購入して寝室に行こうと立ち上がると、ドアがノックされた。
電気を消してドアを開けると、タオルを被った和多流くん。シャワーを浴びたみたいだった。
「仕事終わったよ」
「お疲れ様。大変だったね」
「お迎え行けなくてごめんね。明日からは行けるから。あのさ、んっ」
目を閉じて、顔を近づける。和多流くんてキス、好きだよね。おれも好きだけど。
ふわふわの唇にキスをすると、腰を抱かれた。
首に腕を回すと、嬉しそうに抱きしめられた。ちゅ、ちゅ、と何度も音を立てて唇が重なって離れていく。
「んー・・・涼くん・・・」
「和多流くんいい匂いする」
「うん・・・」
首筋に鼻先をつけて、和多流くんは匂いを嗅いできた。舌でつん、と突いてからねっとりと舐める。あ、これは、するのかな。
「涼くんもいい匂い・・・」
わぁ、お尻、揉んでる。これは、スイッチが入ったな。
「和多流くん、あのね」
「んー?ダメー?」
うぅっ、この甘えた声、弱いんだよなー。可愛いし、何でもしてあげたくなる。
「おれ頑張ったよ。仕事・・・涼くんのお迎え我慢したよ?」
「う、うん、お疲れ様・・・」
「明日遅番でしょ?無理させないから・・・一回だけ。それとも体調悪いの?大丈夫?」
うぅうっ・・・!こんな風におねだりされると、無理なんて言えない。
そりゃ、おれだってしたいけどさ・・・。
するのかなーと思って準備はしたけどさ・・・。
「涼くん?・・・もしかして、お風呂で1人でした?賢者タイム?」
「ち、違うよ。そゆこと聞かないでよ・・・。あの、んと、したい、けど・・・」
「けど?」
「・・・乳首、痛いから、ちょっと、ノータッチで・・・」
触らないでって言うと傷つきそうだから、意味は同じだけど英語で伝えてみる。和多流くんはじーっとおれを見ると、少し心配そうな顔をした。あれ?残念そうな顔、じゃ、ないんだ?
「痛いの?腫れた?大丈夫?」
「うん、あの、しばらく控えてもらえると、ありがたいなぁって・・・。他は平気だから。ね?」
「あ、うん・・・。胸、触らないようにするね。あ、シャツ着たまましよう。つい触っちゃうかもしれないし・・・」
少し安心したようで、寝室に誘導された。
アンダーシャツを着たままその日は3回ほどした。
乳首がシャツに擦れて、なんだか生殺しだったけど・・・しばらく触らなきゃ収まる、よね?


******************


「で、使ってみたの?」
「うん。すごく便利だよ。ありがとう」
ニップルシールドはすぐに届いた。
和多流くんがお迎えに来てくれている時にポストに投函されたらしく、帰宅してから自分で受け取ることができた。
和多流くんが受け取っちゃうと送り主が怪しいところじゃないかすぐ調べるんだもん。
前にストーカーから変な荷物が来た時に、気が動転して和多流くんを呼びつけてしまったのがそもそも悪いんだけどさ・・・。
「気にならなくなったし、蒸れてきたかなーと思ったら帰りにトイレで外せばいいし、今のところ和多流くんにもバレてないし」
「次からアマゾンで買えば?売ってるよ」
「そうする」
「うーん、確かに藤堂さんが知ったらマニアックなプレイとか要求されそう」
驚いて軍司くんを見つめる。
性的な話はあまりしたことがなかったし、あれ以来2人は会ってないはず。何でそんなこと言うんだろう。
「あの人、春日部に無限の可能性があると思ってそうだよね」
「な、なんで?」
「春日部って従順じゃん。おれみたいにフラフラしてないし、一途だろ。藤堂さんだってそれくらい分かってるからさ、色々要求されるだろ?」
「・・・要求って、そんな、お金のこととかは、」
「あーもうバカだなー。お前すぐ金銭的な話するの、やめなよ。そうじゃなくって。そんな要求はしないだろ?藤堂さんは。じゃなきゃここまで長く付き合ってないだろ。夜の方だよ、夜」
しゃぶしゃぶを食べながらする話かな。
というか、軍司くんのことだからもっとオシャレなお店かと思ったら、普通のファミレスだった。
軍司くんは昔からよく気がつくんだよな。
おれがオシャレなお店や高級店が苦手なことも、絶対に割り勘じゃないと嫌な事も、言ったことないけどちゃんと分かってる。一回愛人に手切れ金として大金を渡されて、持っておきたくないから回らない寿司で散財したいって言われた時くらいだな、奢ってもらったの。多分美味しかった気がするんだけど、覚えてないや。
「アブノーマルな事とかさ、そーゆー意味だよ」
「・・・あ、う、まぁ、」
お尻におもちゃを突っ込んだまま、夜中の公園を散歩したことは、流石に言えなかった。
「ま、バレないように頑張んなよ」
「う、うん。・・・ていうか、嫌じゃないのかな、和多流くん」
「ん?」
「・・・お、おっきくなってるの、・・・おれ自身は恥ずかしいから嫌なんだけど」
「嫌じゃないだろ。おれが育てました!くらい思ってそう」
うぅうぅう!思いそう!何でここまで理解してんだろ!
「何でわかるの?」
「多分タイプ的に同じだから」
「は?」
「おれも藤一のこと育てるの楽しいし」
あ、そーゆー・・・。
そういえば、まだ写真を見せてもらってなかった。
催促すると、少しだけ照れながら携帯を渡された。
そこにはメガネもなく、あのトレードマークのようなロングヘアーもなく、爽やかに微笑む短髪の青年がいた。
「・・・誰?」
「な、思うよな・・・。初夜を終えて次の日帰ったと思ったら夜にまた来て、それになってた」
「短いのも似合うけど・・・なにこの笑顔」
「なんとかショートって髪型の練習台になってきたって言ってた。近所の美容室でカットモデルとかやったんだろ。・・・そのサイトに、藤一、載っちゃったんだよ」
「えぇっ!」
「しかもさ、メガネだと、してる時邪魔だからコンタクトにしたって・・・でも仕事中はメガネなんだぜ!?わざわざ夜に、付け替えて来るんだよ!」
「・・・愛じゃん」
「・・・慣れない。照れる。毎回心臓やられる」
あ、これは本当に照れてるな。
首まで真っ赤だ。
テーブルの下で足を蹴る。蹴り返された。地味な攻防を続け、飽きるとまたしゃぶしゃぶに手をつける。満腹になったところでお店を出て、少し散歩をしてから商店街に行き、昼間からやっている居酒屋に入って少し飲んだ。
昼間に飲むお酒は背徳感があっていいな。あんまり飲みすぎると晩御飯作れなくなるから、ほどほどに。
軍司くんと別れて電車に乗っていると、携帯が短く震えた。確認すると和多流くんから。お迎え行こうか、と来ていたので、駅まで来て欲しいと返事をすると、スタンプが返ってきた。
改札を出る。小さなロータリーのベンチで待っていると、和多流くんが小走りでやってきた。
「ごめん、歩いてきちゃった」
「ありがとう。嬉しい」
「あれ?お酒飲んだの?」
和多流くんが少し顔をしかめた。え、ダメだったのかな。
「あ、うん、あの、少しだけ・・・。ご飯は作れるよ。酔ってないから」
「え?いや、ご飯は別に・・・。飲んで大丈夫だったの?」
「ん?うん・・・。大丈夫・・・。少し、だから」
あれ?あれ?なんか、怒ってる?違う。不審がってる?え?なに?
和多流くんはそれ以上なにも言わず、コンビニでお茶を2本買ってから家に向かって歩き始めた。
1本渡してくれる。温かい。
「ありがとう。これ、好き」
「うん。知ってるよ。・・・あの、ゆっくり歩こうか」
「うん。散歩、好き」
キョロキョロと辺りを見渡して、そっと手を握る。すると、強く握り返された。少し痛い。顔を見ると、何か考え込んでいるみたいだった。
「あの、ごめんね」
「え?何が?」
「お昼・・・あ、今度一緒に行こう!安かったんだよ、しゃぶしゃぶ。美味しかったし、たくさん食べられたよ」
「うん。行こ」
ニコッと微笑まれる。なんか、ぎこちない。
どうしたんだろう。
原因がわからないままその日は終わってしまった。
和多流くんは考え込むことが増えた。仕事が忙しいのかもと思ってお迎えも何度か断った。
家に帰れば笑顔で出迎えてくれるけど、少し、表情が暗い。
でもご飯の時に向かい合わせになると優しく笑い、美味しいね、と言ってくれる。
ベッドに入ると存在を確かめるように抱きしめて、眠った。
セックスが減り、何となく寂しい夜が続いたけど、和多流くんが心配だった。
何かできないかな、と思って考えに考えた末、恥ずかしかったけど通販でコスプレ衣装を買った。
好きそうだと思って、膝丈くらいのスカートの、メイド服・・・。
着るのが恥ずかしいけど、和多流くんに元気になってもらいたいし。背に腹は変えられない。
でも一応、一応ね、確認は必要って、言いますか。コスプレに目覚めたとか言ってたけど、好みもあるしね・・・。
夕食の後部屋に篭った和多流くんに声をかけてドアを開けると、ノートパソコンをパタンと閉めた。
仮眠用のベッドに腰掛けて和多流くんを見つめる。
「どうしたの?」
「あの、和多流くん、元気ないよね」
「えー?そう?」
「何か、あったの?話くらいなら聞けるなーって、思ってて」
和多流くんが無表情になる。じっと大きなモニターを見つめて、動かなくなった。
あれ、なんか、まずかったかな・・・。
「・・・和多流くん、何か、あったの?嫌な事とか?話してほしいなって、思ってて・・・。解決策とか出せるか分からないけどさ!でも、」
「じゃあ涼くんが話してよ」
「え?」
「何も言わないのはそっちじゃん!」
急に大きな声で叫ばれて、驚いて少し後退る。
怒ったような、悲しそうな表情でおれを見て、歯を食いしばった。
「・・・何も言われないから、不安で仕方ないよ・・・!」
「え・・・不安なの?どうして?」
「不安に決まってるじゃん!一緒に暮らしてんだよ!?何でおれのこと置いてきぼりにするの?信用してないの?他人だから?」
「た、他人じゃないよ!何それ、急にそんな・・・!ひどいよ・・・!そんな言い方、しないでよ・・・なに、いきなり、怒って・・・」
「じゃあちゃんと話してよ!」
「たくさん話してるよ!毎日、毎日、話してるのに、和多流くんがぼんやりしてるから・・・心配で・・・!」
和多流くんは肩で息をしながら目を逸らすと、立ち上がって乱暴に隣に腰を下ろした。ぐしゃぐしゃと頭をかいて、おれの肩を掴んで顔を近づけた。目が、涙で潤んでいた。
「和多流くん?」
「病気、なの?」
「・・・・・・え?」
「男でも、・・・乳がんに、なるって、書いてあった・・・。胸が痛いって、言ってた、から・・・!すごく、たくさん、調べたら・・・男でも、なるって、書いてあって、だから、だから・・・」
「・・・は!?がん!?」
「お迎えも断ったし・・・!GPS見たら、病院にいるって出てたから・・・!」
和多流くんは俯くと、ポタポタ、と涙をこぼした。
はっと我に返って慌てて抱きしめる。
「違う違う!!病気じゃないよ!」
「病院に行ってた!」
「行ったけど整形外科!!右腕が少し変だったから行っただけ!」
「じゃぁ、胸は、何で・・・?」
ガバッと顔が上がる。わ、レア。涙でボロボロ・・・。
手で拭ってあげると、乱暴に袖で顔を擦り、じっと見つめられた。
「・・・ごめん、あの・・・乳首、が、大きくなって・・・」
「・・・は?」
「だから、乳首が大きくなって、擦れて痛いし、これ以上大きくなったら嫌で、その・・・!恥ずかしい、から、ニップルシールド、貼ったり、してて・・・!」
「・・・それだけ?」
「・・・余計な心配かけて、ごめん・・・。言うのが恥ずかしくて、しばらく触らないでって、言っちゃって・・・」
和多流くんはポカンとしながら、目を泳がせると、一気に脱力して壁に頭を打ちつけた。
ごん!とものすごい音。
「わ!大丈夫!?」
「・・・1人にして」
「え?」
「1人にして!!出て行って!!」
怒鳴られて、体が固まる。怖くて声が出なくなった。
和多流くんはぎゅっと拳を握って怒りを抑えていた。
弾かれたように立ち上がり、ごめんなさい、と謝って部屋から飛び出す。自分の部屋に入って布団を被り、激しい鼓動を抑えるためにぎゅーっと服を掴む。
怒られたのが怖くてつい、押し入れに隠れる。何度も何度も目を閉じて深呼吸をしていると、部屋のドアが開いた。とす、とす、と控えめに押し入れのドアが叩かれる。
「涼くん、ここにいるの?」
「っ、は、ぅ、・・・」
「・・・ごめん。出てきてほしい。ごめん・・・」
ズビッと鼻を啜って恐る恐るふすまを開けると、和多流くんが目を腫らして心配そうに覗き込んできた。
「ごめんなさい、和多流くん、ごめんなさい、」
「いや、おれも・・・その、大袈裟に捉えて、ごめんね・・・。でも、ちゃんと言って欲しかった・・・。めちゃくちゃ怖かったよ・・・。若いと進行も早いしさ・・・」
「・・・恥ずかしくて、言えなくて、ごめんなさい・・・」
「そりゃ、そうだよねぇ・・・。ごめんね。痛くなったのも、おれが原因っていうか・・・しつこく触っちゃってたし・・・」
「・・・お、怒らないで、ください・・・!もう、しない、から、」
「・・・怖がらせてごめん。怒鳴ってごめん。・・・ちゃんと仲直りしよう。あ、み、見て。ほら、見て」
手のひらが差し出された。隙間から覗くように見ると、握ったり開いたり、動かした。
「絶対に、叩かない。叩かないよ。おれの手は、そんなことするためにあるんじゃないから」
知ってる。
いつも背中と頭を撫でてくれる。手を繋いでくれる。優しく引っ張ってくれる手だから。
「・・・涼くん、出てきてくれないかな・・・。おれも怖かったよ・・・」
見ると、泣きそうな顔だった。こんな顔させたくなかったのに。してほしくないのに。
そっとふすまを開けると、ホッとした顔になった。
布団を被ったままジリジリと近づく。
つん、と手を突くと、きゅっと握られた。あっかい。気持ちいい。
「涼くん・・・ありがとう・・・」
「・・・わた、んぶぅ!!」
「本当に本当に、病気じゃないんだよね!?何ともないんだよね!?腕も、良くなるんだよね!?」
いきなり抱きしめられ、切羽詰まったように叫んだ。
あぁ、本当に、本気で、おれのこと心配してくれてたんだ。
じゅわっと目頭が熱くなる。
「ち、ちがうよぉ・・・!病気だったらおれ、すぐ、言うもん・・・!おれビビリだから、1人でなんて、抱えてらんないもん・・・!」
「涼くん、涼くん・・・!」
「ご、ごめんね!ごめんなさい!心配かけてごめんなさい!」
「よかったぁ・・・!何ともないなら、よかったよぉ・・・!」
和多流くんが泣いた。おれも堪えきれなくて泣いた。
2人でわーわー泣いて、抱きしめ合った。


******************


「・・・昨日は、すみませんでした」
「あ、ん、ううん」
昨日はあのままおれの狭いベッドで2人で抱きしめ合ったまま眠った。
ていうか、泣き疲れて寝てしまった。
朝起きて、2人で目を腫らして、冷静になって、寝癖でぐちゃぐちゃの髪のままカフェラテを飲む。
和多流くんはため息をつきながら顔を擦ると、また、いやほんと、すみませんでした、と呟いた。
「いや、あの、おれが悪いから・・・!もう謝らないで・・・!」
「・・・大の男が泣きじゃくって情けねぇ・・・!しかも勘違い・・・!本当に申し訳ない・・・!」
「おれだって泣いたし!ちゃんと説明しなかったし!」
「もっと冷静に話をしようと!思ってたの!」
「お、おれだって!和多流くんが元気ないから・・・!少しでも元気になって欲しくて、聞きに行って・・・!」
「おれは必死に、病気なのか聞いてもいいのかネットで調べてて・・・聞き方とか、話の切り出し方とか・・・」
「・・・あのさ、もしかして、おれが薬を飲んでると思ったの?だからお酒飲んだ時に少し怒ってたの?」
「うん・・・。でも、症状によっては良いのかなって・・・その、それもめちゃくちゃ調べてて・・・」
「心配してくれて、ありがとう・・・。でも、おれ、ちゃんと話すからね。・・・他人なんかじゃ、ないから・・・」
和多流くんははっとすると、おれの隣に移動してきてぐっと顔を近づけた。真剣な顔。
「おれも、他人なんて思ってない。大事だよ。大事な、・・・その、か、か、かぞ、」
顔が真っ赤に染まっていく。急に恥ずかしくなって何度も頷く。
お、おれと同じこと思ってくれてた・・・。よかった・・・。
「と、ところでさ。まだ痛いの?」
「え?あ、ううん。最近触ってないから平気・・・」
「・・・ニップルシールドつけてるって?」
「うん。あ!剥がすの忘れてた・・・」
昨日帰ってきてから外すの忘れてた。
お風呂入る時に外さないと。
「涼くん」
「ん?」
「おれが剥がしたい」
「え!?」
「いい?」
目がキラキラしている。
昨日のことがあるから断りづらい。悩みに悩んで、黙って頷く。
和多流くんはパッと顔を明るくさせると、パーカーをたくし上げて、そっとアンダーシャツを捲った。
うぅ・・・!恥ずかしい!
「剥がすね」
「う、ん・・・ふ、」
ぺり、ぺり、とゆっくりゆっくり剥がしていく。
ぷくっと膨れた乳首が現れた。
うぅう・・・!いつもこんなんじゃないのに・・・!和多流くんのせいだ・・・!
「・・・へへ!可愛い・・・。ん」
「ひゃぅ!?」
いきなり乳首にキスをされて、体が跳ねる。
「き、汚いよ!」
「じゃぁ一緒にお風呂入ろ」
「う、う、・・・!」
反対側も剥がされる。もー!早く剥がしてよー!
「あー、可愛い。こっちもぷっくりだ」
「い、いちいち言わないでよ・・・!」
「んふふっ。前はすごく小さかったのに・・・なんか優越感。大きくしたの、おれなんだよね。もう一生おれ以外の男は見られないんだよ。んふふふふっ!」
あ、本当に喜んでる・・・。
ついつい頭を撫でると、胸に顔を埋めてきた。
グリグリと押し付けられる。
「胸も柔らかくほぐれてるし、お尻だって・・・ふふふっ」
「や、やわらかい?胸・・・」
「うん。ほら、むにむに」
大きな手に包まれて、揉みほぐされる。ピクッと腰が揺れる。昔はこんなことで感じなかったのになぁ・・・。体が作り替えられていく・・・。
「あ、ちょ、」
「ねぇ、もう、触ってもいい・・・?おれ、かなり我慢したよ?吸って、舐めて、・・・摘んで、転がして、いいよね?」
「も、揉むのやめて、」
「気持ちいい?」
「あの、優しく、して、」
「うん。まずはお風呂でしっかり洗って、あとはベッドで・・・仲直りもしよう?ね?」
ちゅ、ちゅ、と軽い口付けを何度も繰り返す。
思考がふにゃふにゃしてきて、こくこくと頷いてしまう。
ガバっと抱え上げられて、お風呂場に向かう。
しっかりとお風呂でほぐされて、ベッドでもまるで赤ちゃんみたいに乳首を吸い、舐め、ローションをつけてこねられ、何度もイカされた。
久しぶりの行為に、おれもついつい求めてしまって・・・。
結局また乳首がヒリヒリしてしばらくお預けにしたのは、別の話。
和多流くんは必死に謝ってきたけど、痛いんだもん。
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