Evergreen

和栗

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40の続きになります。すっかり載せ忘れてました。
時系列前後してますがご容赦ください。


  














「涼くん、いい?」
「ん?よくない」

「涼くん、今日は?」
「ううん」
「明日休みだよ?」
「うん。掃除と洗濯しまくるよ」
「・・・じゃぁ、そのあとは?」
「なんで?」

「・・・ドラマ観てないでエッチしようよ。涼くんとしたいよ」
「気分じゃない」

「・・・やっぱりおれとするの嫌なの?」
「2週間お預けって自分で言ったから」
和多流くんはポカンとすると、がく、と肩を落とした。
「・・・あと何日?」
「あと1週間かな」
「・・・キスは?」
「キスならいいよ」
目を閉じると、ゆっくりと唇が重なった。
舌が滑り込んで、絡まった。
逃げようとしたけどがっちりと肩を掴まれ、顔を押しつけられた。
うっすら目を開けるとバチッと視線が合った。
「ん、」
「拒まないで」
「これ以上は、んぅ、」
舌と唾液が絡んで、吸いつかれる。
頭、痺れそう。
やばい、イカされるかも。
「わ、たるくん!」
「もう少し」
「おれのことイカせたら延長するからっ」
「えー!酷いよ・・・」
「だって、絶対にセックスするって決意を感じる」
「そりゃ、したいです、よ?・・・涼くんは?」
「しません」
ぎゅーっと抱き寄せられた。
あ、不安になっちゃうかな。
「和多流くん、言ったこと守ろうよ」
「・・・仲直りのエッチもしてない」
「うん、そうだけど・・・。だって結局仕事詰まっててずっと電話鳴ってたじゃん。無視してるから怒られてたし」
「つまり、仲直りはまだしてないってことなの?」
「いやいや、したよ?したけどそれとこれとは別だよ」
「・・・いいなぁ、涼くんは性欲が少なくて」
「は?」
「性欲がありすぎても損する・・・。涼くんと目が合うだけでムラムラするし、笑った顔を見て勃起するし、断られるたびにプレイかなって期待して完全に臨戦体制に入るし・・・」
「・・・それさ、性欲が強いんじゃなくて思春期のまま成長しただけじゃないの?」
小馬鹿にすれば萎えるかと思って口にすると、和多流くんは少し考え込んでからニヤニヤとし始めた。
気味が悪くて少し距離をとると、ガシッと手を掴まれる。
「涼くん、高校の制服はブレザーだったよね?今度制服プレイしない?」
「延長!!」


******************


「あーはっはっはっ!!それでお預けしてるの!?いい気味よ!!あーおかしい!ビール奢ってあげるわ」
どん、とジョッキでビールが出された。
いつもならグラスで出されるのに、よほど気分がいいのだろう。
ママは和多流くんが苦しめられていると異常に喜ぶのだ。
「ママは彼氏と喧嘩とかしないの?」
「昔はしたわよ。今はもうお互い熟知してるから喧嘩にもならないかしら」
「何年くらい一緒にいるの?」
「・・・20年?いやねー、もうっ!自分の年齢が思い出せなかったわ!」
「な、長い・・・!」
「シロちゃんのところも長いわよねー。あの子たち10代の頃からでしょ?一番遊びたい時期にしっかり手篭めにするなんて、見ていて感心したわ」
「若い頃から知ってるんですか?」
「このビル、あの子のお母さんの会社のビルだから」
そうだったんだ。
シロさんのお母さんって、不動産屋さんなんだ。
「で、今日はあのバカ、まだ仕事なの?」
「はい。細かい修正が入ったって言ってて。また髭も髪もボサボサになってます」
「あの子全部髭剃っちゃえばそこそこ若く見られるのに、なんで生やしてんのかしら」
「・・・おれが昔褒めたから」
「は?」
「おれ、昔和多流くんに髭かっこいいねって褒めたらしいんですけど・・・覚えてなくて」
「え、それだけ?それだけでずーっと生やしてんの?」
「・・・そう」
ゲラゲラと笑い、手やテーブルを叩きながらむせこんだ。
そうなるのも分かるけど、そのことを知った時おれは少し驚いた。
だっておれは覚えてなかったし。多分、自分にないものが格好良く見えてポロッと言っちゃったくらいの、ほんっとに何の気なしに言った言葉だし。
一緒に暮らし始めてから何かの拍子に髭がかっこいいねと言ったらすごく嬉しそうで、また褒めてくれたって目尻を下げていた。
出会って間もない頃に一度褒めたことがあったらしく、それが嬉しくてずっと綺麗に整えていると言われた時は不覚にもときめいたし、思い出すとなんか、いい子いい子したくなる。
ほんの少しだけムラッとする。
言わないけど。
でも、なんだろうこの気持ち。お預けしてるのが結構楽しい。
触っていいよって言ったらどんな顔をするんだろう。
喜ぶのか、目をぎらつかせるのか、どっちだろう。
あまり長引かせると臍を曲げて頑固になるからなぁ。線引きが難しいな。でも、それも楽しいかも。
「やーだぁ。春日部くん、意地悪でやらしい顔してる」
「えっ」
「何考えてたのよ」
「・・・あ、いや、んと、」
「いい顔してたわー。楽しそうだった」
「少し、楽しいかも」
なんか、会いたくなってきたかも。
お店を出て電車で帰ると、駅に和多流くんがいた。
前と似たようなシチュエーション。でも今日は連絡してないんだけどな。
「おかえり」
「ただいま。アプリ使ったの?」
「だって連絡してんのに返事がないから」
「あれ・・・あ、ごめん。携帯見てなかった」
「・・・普通見るよね」
あ、機嫌悪い。
でもお迎えは来てくれるんだ。
「成瀬さんとシロくんと犬飼さんには即レスするくせに」
「ごめんね。つい気が緩んで」
「おれのこと雑に扱ってる」
「違うよ。和多流くんはおれのこと熟知してるからさ・・・安心して甘えちゃってた。ごめんね。そんなことないよね」
「いや?してますけど」
あ、得意げ。
単純でかわいいなぁ、もう。
「でも嫌だったよね。ごめん」
「まぁ、そりゃーね・・・」
「寒い中待たせてごめんね」
そっと指先を握ると、即座に指を絡められてしっかり握られた。
満足そうにおれを見て夜道を歩く。
最近急に寒くなってきたな。
今くっついたら喜ぶかな。
ぺた、と体を寄せるとビクンッと体が跳ねた。驚いて少し高い位置にある顔を見上げると、目を丸くしておれを見ていた。
「え、嫌だった?」
「違う。くっついてくれて嬉しい」
「ほんとに?」
「ほんと。いや、お預け中だからスキンシップもお預けかなって思ってて・・・」
「それはさすがにないよ。スキンシップは大事だし、おれもしたいもん」
パーっと顔が明るくなる。
おれも大概だけど、和多流くんもだいぶ極端に考えちゃうタイプだよなぁ。
「おれね、セックスしなくてもこういう時間とか、好き」
「おれも好き。・・・でもセックスも好き。おれだけに集中してくれるから」
「あ、気持ちいいからじゃないんだ?」
「それは大前提だけど、涼くんが絶対におれだけに集中してくれる時間だから、好き」
う、心臓が鷲掴みにされた気分。
もう少し意地悪してお預けしようかと思ってたけど、こんなこと言われたら許したくなっちゃう。
おれ、チョロいな。知ってたけど。
家に着くとお風呂の準備がしてあって、入りなよと促された。手を握ったままでいると首輪傾げられる。
「どうしたの?」
「一緒に入る?」
「・・・今ので勃起した・・・」
細ーい声で言うので、つい大笑いしてしまった。
お腹を抱えてしゃがみ込むとぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。
「ちょっと、笑わないでよ」
「あは、あはっ、はっ!だって、反応が、」
「童貞臭くて悪かったね」
「ほ、本当に勃ってるし!」
「勃つでしょ。涼くんの洗い立てのパンツを見ただけでも勃つんだから」
「もー、やめて、苦しい」
「・・・あの、本当に反省してるんだけど・・・せめて延長は勘弁してほしい・・・」
まるで叱られた犬のように落ち込むので、ついつい絆されてしまう。
「お風呂誘ってるんだから、もういいよって事だよ」
「・・・本当に?」
「うん。それに、おれだってお預けされてるようなもんなんだよ」
「じゃぁ、満足させます」
目を輝かせるから、胸が熱くなって痒くなる。
入ろうよ、ともう一度声をかけると今度は黙って何度も頷いた。ほんっと可愛いな。
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