Evergreen

和栗

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「・・・あのさ、」
「ん?」
おれは休みで、和多流くんは仕事部屋にこもっていたので、暇だしそばにいたくて、邪魔しないように仮眠用の布団の上で雑誌を読んでいる。
少し気になることがあって声をかけると、眼鏡をかけた姿がこちらに向いた。
「・・・か、」
「か??」
「・・・あ、や、」
かっこいい・・・!
メガネ、反則・・・!
多分、ブルーライトカットのやつだけど、破壊力すごっ・・・!
「もう少しやったら終わるから、待ってね」
「ん、あ、はい」
「午後は遊ぼ」
「ん」
「で、何?」
「え!?」
「え?あのさ、の続き」
「・・・後でで、」
「あ、いい?じゃぁ、後で」
うわー!うわー!メガネ反則!!
和多流くん、普段アクセサリーとかもつけないし、服とか髪型とかはこだわりがあるみたいだけど、部屋着は結構無頓着っていうか、気が抜けてるから顔とメガネのギャップが、ヤバい・・・。
おれしか見たことない姿だったらいいなぁ・・・。
チラチラと横顔を確認しながら雑誌を見るフリをする。
「ふふっ」
突然和多流くんが笑ったので顔を上げる。パソコンを見ていた。
「どしたの?」
「いや、なんでも」
「何?」
「先方から面白いメールが来ただけ」
「へー・・・。昼、外行く?」
「そうしようか?」
「おれ先に着替えてこようかな」
「うん。もうすぐ終わるから、おれも着替えるよ」
やったやった。ランチだ。
平日だし、オフィス街から外れればお店も少し空いてるかな。
何着ようかな。
そんなに服も持ってないけど・・・。
クローゼットを漁っていると、懐かしいパーカーが出てきた。
ライトブルーの薄手のパーカー。これ、昔よく着てたなー。捨てられなくて持ってきたんだった。
まだ着られるかな、と頭からかぶる。あ、いけるいける。
ていうか、おれ、そろそろいい年なのに10代に着てた服がまだ似合うって・・・童顔だよな・・・。
ちょっとほつれてるし、なんか、毛玉もあるし。
これ、やめよ。
「お待たせー」
ノックされてついそのままドアを開けると、グレーのTシャツにネイビーのジャケットを羽織った姿があった。ぐぅ、かっこいい・・・!
「あれ!?それ、」
「え?あ、覚えてる?おれ昔こればっか、」
「もちろん。だって初めて会った時も着てたもん。初めて一緒に出かけた時もそれ着てたし、あと、」
「いや、待って。よく覚えてるね」
「当たり前じゃない。わぁ・・・あ、でも結構くたくただね」
「くたくた?」
「え?言わない?服がくたくた。くたびれてるってこと」
「・・・んへっ、くたくた、んふ、ふ、」
「くたくた?」
「ふひっ!ひ、やめ、」
「くたくたのパーカー」
「あははは!やめて!あは、ははっ!」
変にツボに入って、笑ってしまう。
抱き寄せられて頬にキスされたと思ったら、耳元でも何度も囁かれて、膝が崩れ落ちるまで笑ってしまった。
和多流くんも笑っているおれを見て笑い転げて、笑い疲れてしまった。


********************


「涼くんて最近、濃いブルーの服を好んで着てるよね」
「え?あ、うん」
ランチをして、車に乗り込んでドライブをした。
手を繋いだまま、なんて事はない会話をするのが楽しかった。
「前は結構色々着てなかった?」
「着てたよ。て、いうか、貰い物が多かったかな。お金あんまり使いたくなかったし」
「そっか。だからか。体のラインに合ってない服も多かったから」
「・・・け、結構よく見てるよね・・・」
「え?うん。あの頃さ、本当はいろんなもの貢ぎたくて仕方なかったんだけど、ほら、困るじゃん?貢がれても」
み、貢ぐって・・・。
そういうのって、アイドルとか自分の推しに使う言葉じゃないの・・・?
和多流くんは悩ましげにブレーキを踏むと、赤信号を見つめながら言った。
「でも今なら貢いでもいいんだよねー・・・悩むなぁ」
「おれ意味もなく買ってもらうの嫌いだよ」
はっきり言っておかないと、見境なく贈り物をされそうな気がした。
すぐに微笑むと、知ってるよと返される。
「だからね、悩んでるんだよ」
「何を?」
「どうやって懐柔していくか」
「・・・んん?」
「だって素直に受け取らないでしょ?」
「誕生日とかイベントだったら受け取るけど、」
「おれにとってはイベントなんだけどさ、涼くんにとっては違うんでしょ?」
「今日は何もないじゃん」
「でもおれ、涼くんにプレゼントしたいんだよなぁ・・・」
「・・・何かあんの?」
「えー?何もないっていう日がある」
「そういうのはダメ」
「あーでもなぁ、買い物行きたいなぁ・・・。涼くんに似合うの、買いたいんだよなぁ・・・。おれが選んだ服を着てる涼くんが見たいんだよー」
「和多流くんて、ちょっと変態だよね」
「そうだよ?おれ変態だよ?いいこと思いついちゃった」
いきなり車が左折した。
体が大きく揺れる。腕をぐんっと引っ張られて、体勢が戻った。
「行き先変更しちゃお」
「どこ行くの?」
「いいところ」
しばらく走って着いたところは、いわゆる、男のロマンがたーくさん陳列されているお店だった。
ギョッとして縮こまる。
車を停めると、和多流くんは手を離した。
「行こう?」
「・・・な、何買うの?」
「ん?なーんだ」
「・・・和多流くんが使うもの?」
「うーん・・・おれは2人で使うものだと思ってるんだけどな」
「コンドーム?」
「あ、もうなくなりそうだったっけ?」
「いや、まだあると思う・・・」
「そうだよね。3箱も買ったもん」
「そんなに買ってたの!?」
「うん。ね、ほら。行こう」
お、男同士で・・・こんなお店・・・。
渋々降りて店内に入ると、女性に着せるコスチュームやたくさんのおもちゃが所狭しと並んでいた。
キョロキョロしながら進んでいくと、和多流くんはしゃがみ込んでこれこれ、と箱を手に取った。
変な形の器具だった。
「これ何?」
「エネマグラ」
「何それ?」
「前立腺刺激してくれるやつ。入れっぱなしにしても大丈夫だよ」
さらっとえらいことを言われて顔が熱くなる。ついしゃがみ込んで和多流くんの口を押さえると、ベロンと手のひらを舐められた。
「ふぎゃっ!?」
「あはは。猫みたい」
「そ、そんなの、どうすんの!」
「え?使うんだけど・・・大丈夫?顔真っ赤、」
「お、おれに、使うの?」
「うん」
おれ、いいよなんて、使うなんて、一言も言ってないんですけど!
嫌だ、という前に今度は口をそっと塞がれた。
人差し指で。
そっと添えられてるだけなのに、声が出せない。
「これね、入れておくと、気持ちいいよ」
「や、」
「もうお尻でいけるもんね。いつでもどこでも気持ち良くなれるように、買おうよ」
「やだって、」
「・・・お願い」
もう、性格悪い・・・。
和多流くんのお願いに弱いの、絶対分かってて言ってるんだ。
黙って視線を外し人差し指をつかむ。おれの爪を少し撫でると、嬉しい、と言った。
店内にいるのが恥ずかしくて、慌てて車に戻る。寄りかかって地面を見ていると、和多流くんが紙袋を持って戻ってきた。
「付き合ってくれてありがとう。後部座席にお茶、あるよ。飲もう」
「・・・おれジャスミン茶がいい」
「もちろんあるよ。ちょっと、どこ置いたかな・・・」
スライドドアを開けて和多流くんが乗り込む。
見当たらないのかと思って乗り込むと、自動でドアが閉まった。あれ?と思ったのすら遅くて、いつの間にか和多流くんが後ろにいて、おれをシートの背もたれに押しつけた。
背中に覆いかぶさるようにくっついてくる。
「え、な、なに!?」
「はい、手、ついて」
「あ、ちょ、何ってば!ここではしないよ!?」
「うん。これ入れたいだけだよ」
ガサガサ音がして、紙袋から取り出したのはさきほどのエネマグラ。
入れたいって、入れて、どうすんの。
一緒に買ったのであろうローションの蓋を歯で開けると、おれの目の前に持ってきてそっとエネマグラに垂らした。
「・・・や、いやだよ・・・」
口ではそういうけど、昨日の夜散々ほぐされどろどろに溶けたそこは、疼いていた。
かちゃ、とベルトを外されジーンズを降ろされた。
和多流くんにもらった浅履きのボクサーブリーフの上から、ゆるゆると秘部を撫でられる。
背もたれに額を押し付けて小さな抵抗をしてみたけど、和多流くんの喉の奥で少しだけ笑い声が聞こえて全身が熱くなった。
「いれるよ」
「っ・・・!」
「前立腺に当ててあげるからね」
「ひ、んっ!」
冷たいローションに包まれたエネマグラがゆっくりと入ってくる。
こり、と弱いところに当たった。こんなのじゃ、足りない。
そう思えてしまうくらい、和多流くんの愛撫が染み付いている。
「あっ、・・・ふぅ、う・・・」
「ふふ、可愛いよ。歩けそう?」
パンツを整え、ベルトをしっかり止めてくれる。
ノロノロ歩きながら助手席に座る。
和多流くんが運転席に座り、エンジンをかける。
「ふ、あぁ、・・・」
振動が、気持ちいい・・・。
「あー・・・おれ、我慢できるかなぁ・・・。手、繋ぐ?」
「む、り・・・ごめ、やり場、作りたいから・・・」
「・・・うん、分かった」
何度も手を握ったり、開いたり、足を動かして緩やかな快感をやり過ごす。
「和多流くん、これ、いつまで、するの・・・」
「えー・・・?涼くんが、いいよって言ってくれるまで」
「え・・・?あ・・・?い、い・・・?」
「うん」
「・・・んぁっ、」
車が大きく揺れるたびに、中が疼く。締め付ける。
奥、もっと、奥に欲しい。
呼吸が荒くなる。信号で停まるたびに隣の車線の車の視線が気になる。歩行者が、気になる。
お茶を何度も飲んで、なんでもないフリをした。
ペニスが痛いくらいに勃ち上がっている。
どのくらいドライブをしたのかわからない。
和多流くんは深くため息をつくと、トントンと肩を叩いてきた。
「あ、何?」
「・・・いいよって言ってほしいな」
「何を・・・?あ、セックス・・・?し、たい・・・したい、したい・・・」
「・・・ね、貢いでいいよって言って?」
あ・・・貢ぐって・・・。
おれに・・・?
おれに、貢ぎたいって、だから、こんなこと・・・。
「み、貢ぐって・・・おれ、和多流くんに、そんなことされたくない、」
「もー・・・いじっぱり・・・。やっぱ遠隔操作できるやつにすればよかった。そしたらもう絶対に、すぐ、うんって言ってもらえてたのに」
「おれ、対等が、いい・・・」
「じゃぁ、一着分だけ買わせて。ね?」
「や、だってば・・・」
「・・・涼くんの喜ぶ顔が見たいだけなんだけどなぁ・・・。おれからのプレゼントって、やっぱ嫌なのかな」
「違うよ、おれが、返せないから・・・やなんだもん・・・」
「返すの?なんで?」
「もらったら、返さなくちゃ・・・だって、不公平だもん・・・」
「・・・あー・・・そっか、そこからか・・・ちょっと、停めようか」
いきなり車が停まって、前につんのめる。
あたりを見渡すと、山の入り口だった。
小さな駐車スペースがあり、そこに車を停めていた。
汗を拭きながら和多流くんを見ると、後ろ行こう?と優しく微笑まれた。助手席から無理やり後部座席に移動する。
緩い刺激がずっと体にまとわりついていた。
「さっきみたいに背もたれに寄りかかれる?そう、お腹くっつけて、お尻こっちに出して・・・」
後ろにいる和多流くんが優しく耳元で囁く。膝で立ち、背もたれに体を預ける。
ジーンズをおろされ、パンツもおろされた。
濡れそぼったペニスが外気にさらされて震えている。
「涼くん・・・エネマグラ動いてる」
「あ、ふ、・・・」
「・・・気持ちいい?」
「あ、焦ったい・・・」
「やっぱり細かったかな。もう少し大きいのだったらいけてたかも・・・つらいよね」
「和多流くん、ひ、ぃい!?」
ぐちゃぐちゃと動かされ、腰がガクガク跳ねる。
革張りのシートにペニスを擦り付け、汚していく。
「んぅ、あっ!あ!いく、いく!」
「やっぱだめ」
「あ゛っ!?」
ずるんと引き抜かれた。秘部がぱくぱく動いているのが分かる。
膝が崩れそうになるのを必死で堪え、お尻を撫でる和多流くんの手を感じていると、緩く秘部を撫でられた。
「しっかりおれの、覚えたね」
「あ、あ、」
「おねだりできそう?」
「ん、うぅっ・・・!う、ふ、・・・!ください、和多流くんの、ください・・・!ほしいよ・・・!」
「・・・ね、おれね、涼くんのこと昔からずーっと好きだったでしょ」
「あ、あ、・・・おねが、いれて・・・!あとで、話し、」
「ずっとずっと、残るもの、何か渡したいなって思ってたんだけど、友達同士でそんなことしたら、絶対に嫌われるの、おれちゃんと分かってたんだよ」
「和多流くん、ねぇ、」
「褒めて欲しいな・・・。涼くんが仕事が辛くて大変な時も、お誕生日すっぽかされて泣いていた時も、浮気されて苦しんでた時も、おれだったらこんな思いさせないのにって、笑った顔が見たいって思いながら、食事に行くことしかできなくてさ・・・。しかも絶対割り勘じゃないと嫌だとか言うし。おれだってかっこつけたかったし、喜んでもらいたかった」
くるくると円を描くようにお尻を撫でたり、摘んだり、少しだけ叩いたり。
早く入れてほしくて中が疼いている。
「涼くんの心に残るもの、渡したかったんだ」
「和多流くん・・・」
「・・・何でもよかったんだよ。なんでも、よかった」
「ん・・・は、花・・・花束、嬉しかった・・・」
「え?」
「ちっちゃい、花束・・・前に、貰った・・・。すごい、嬉しくて・・・おれ、生徒に、押し花のやり方聞いて、とっといてある・・・」
「・・・嬉しかったの?」
「ん・・・!部屋着も、嬉しかったから、おれ、スマホのケース・・・」
「うん、あれ、もう、宝物。正直飾っておきたい」
「使ってよ・・・。おれ、和多流くんに、お金で買えないものいっぱい貰ってるから、もう、何もいらないよ・・・」
「・・・ほんとに?」
「うん、おれ、こんなに安心したの、初めて・・・ん゛!?あ゛、あぁあ!」
「そんなこと言われたら、もう我慢できない」
大きなペニスがゆっくり入ってきた。
中が収縮して自分でも引き込んでいることがわかる。和多流くんの呼吸が荒くなり、首筋に噛み付かれた。
「ひんっ!?」
痛いのに、気持ちよくて。
中にいるのが嬉しくて。
足も腰も震えて、勢いよく射精した。
更にシートを汚してしまう。
「は、あ゛ぁ~・・・!あ、あ、いっちゃ、」
「トコロテン、気持ちいいね」
「と、ところ、あ、これ、これ、ダメ、!知らな、あ、ぁあ!」
「嘘、トコロテンも初めて?さいっこー・・・おれ涼くんの初めていっぱい貰ってる・・・」
「んあ゛!あ゛!あぁ!強い、強いぃ!ダメ、」
ゴツゴツと骨と骨がぶつかるくらい強く、腰を叩きつけられる。
車が揺れてる。どうしよう、ここ、外なのに。
「誰もいないから、大丈夫だよ・・・気持ちいい?」
「あ、いいっ、いいっ・・・!あ~っ・・・!も、和多流くんが、いい・・・!」
「エネマグラ、じれったかったよね。ごめんね」
「あ、あ、あ!わ、和多流くんの、いれて、たい・・・!」
「え?」
「い、入れておくなら、和多流くんのが、いいよ・・・」
「・・・」
「・・・あ、ごめん、引いた・・・?」
動きが止まり、恐る恐る振り返る。
無表情でおれを見つめていた。と思ったら、ゆっくりと口角が上がって、手が伸びてきて押し倒された。
「うげっ!」
「入れたまま車運転してぇなー・・・入れたまま毎日、生活してぇなー・・・」
「・・・あ、や、やっぱなし」
「明日から、帰ってきたら即ハメしてあげる。あぁ、そうか。朝からほぐしておかないと。アナルプラグ入れて仕事してね」
「しないよ!しないからね!・・・あ、で、でも、即ハメは、ちょっと、したいかもしれない、けど・・・」
「はぁ・・・もう、涼くんすごく上手・・・。じゃぁ明日からしようね。ね?」
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「うんうん。そうだね」
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見上げながらぼんやり思っていると、ゴツっと腰が叩きつけられた。
「うぁ!?」
「すげー楽しみ・・・!玄関で即ハメ・・・!ローション買い足しといてよかったー・・・!スーツの涼くん犯すの夢だったんだ・・・。バックがいいかな、駅弁かな・・・。やべー・・・今も気持ち良すぎるのに明日も楽しみすぎる・・・!」
「は、ひ、ひぃ、いっ、あ、」
「大好き。おれ、涼くん相手だと堪え性ないみたいだ。今までたくさん頭の中で犯して、順番通りにしたかったのに、無理、だもんっ」
「あ、あ、あ、ぁあ!」
「大好き・・・ほんとに、大好き・・・」
も、いやだぁ・・・!
聞いてるだけでいきそうになる。
いや、いってる。
もう、何度も。
和多流くんの強烈な愛にぐっちゃぐちゃにされて、揺さぶられる。
気づいてるくせに動きは止めてくれなくて、ひたすらに腰を打ち付けてくる。
車の中なのに、何度も絶叫して達した。もうとっくに日が暮れて、辺りは薄暗いのに、やけにしっかりと和多流くんの顔は見えていた。


******************


「・・・おれいらないって言わなかった?」
「うーん?そうだっけ?」
車の中で気絶して、そのまま眠ってしまった。
気づいたらショッピングモールの駐車場で、和多流くんの上着がかけられていた。
ちょっと買い物してくるね、とメッセージが来ていたのでぼんやり車の中で待っていたら、大きなショッピングバッグを肩にかけて戻ってきた。
後部座席に滑り込むように座ると、ニコニコしながら中身を出した。案の定、おれに買ってきた服だった。
「これ、前に見てどうしても欲しくてね。絶対に似合うと思って」
「・・・おれ、」
「あのね、返してほしくてしてるんじゃないよ。間違えないで。おれは、涼くんに喜んでほしくて買ったんだよ。いらないなら、返せないからいらないじゃなくて、着ないからいらない、の方がいい」
「・・・着たい、けど・・・」
「着てほしいな」
「・・・あの、今回だけに、してね」
「うーん・・・。プレゼントってする方が楽しいじゃん?今回だけとかは無理だなぁ・・・。他にもしたいことあるしなぁ・・・」
「・・・結構貢ぎ体質なの?」
「涼くんにだけだね。どーしても我慢できなくなったら、プレゼントしてもいい?」
「どーしても?」
「うん。やばい、なんかしたい。なんかあげたい。って時。憂さ晴らしで買い物したい時とか。おれ趣味とかないし服も足りてるし、自分のを見るより涼くんの見たいし」
「憂さ晴らし・・・」
「あとやっぱねー、単純に喜んでもらいたいっていうのと、残るものを渡したいって、それだけ。自己満足なんだけどさ」
少し考え込んで、和多流くんは言った。
多分、本心なんだろうな。喜んでほしいって、心から思ってるんだろうな。
指先を握ると、首を傾げておれを見た。
「・・・ありがとう」
「・・・受け取ってくれる?」
「うん。・・・この色、好き・・・」
「よかった」
「・・・すごいや。サイズ合ってる」
「当たり前でしょ」
「・・・あのさ、」
念押しでもう一度、今回だけと伝えようと顔を見ると、和多流くんは今まで見たことのないような、嬉しそうな満たされたような、安心したような笑顔でおれを見ていた。
「ひ、あ、」
「え?どうしたの?」
「ぎゃー!」
「え?!何?顔真っ赤だけど、どうしたの」
「待って待ってこっち見ないで!」
「何で?え?ちょっと、涼くん」
「か、可愛すぎて無理!」
「は?誰が」
「和多流くんが!」
「・・・おれの?どこが?」
意味がわからないという顔をされる。
ショッピングバッグを抱きしめたまま、ドアに背中をぶつけた。
和多流くんが窓に手をついて顔を覗き込んでくる。
「な、なんだよ!もう、こんなの知らなかったのに!プレゼントとか、貰うの慣れてないし!贈るのだって、慣れてないし!こ、こんなの、こんなの・・・!めっちゃ、か、カップル、みたい、じゃん・・・!」
何言ってんの、おれ・・・。
カップルじゃん。おれと、和多流くん。もう、友達じゃないじゃん。
恋人なんだよ。もう、好き勝手していいんじゃん・・・。
「カップルでしょ?」
「・・・お、おれ、だって、なんか、あげたくなる・・・!でも、こーゆーことばっかしてると、飽きられ、」
「してよ。したいから。嬉しいな。分かってくれたんだ」
「え?」
「返せないって言ってたけど・・・返さないでいいんだよ。与えたいって思ってくれて、嬉しいな。愛ってね、与え合うものなんだよ。それで、受け取るものなんだ」
「愛・・・」
「うん。嬉しいなぁ。ようやく伝わった。嬉しい」
「・・・おれが、何かしても、困らない・・・?」
「困ったことあった?」
「・・・ない。・・・飽きない?」
「いやー、こんなことで飽きるならそもそも片想いだってここまでしてなかったよ。おれ片想いの玄人だよ」
「・・・そうだよね。未成年のおれに一目惚れだもんね」
「ちょ、その言い方やめて・・・。結構傷つく」
本当に落ち込んだので、少し笑ってしまった。
和多流くんは未成年に惚れたことに、未だに罪悪感があるようだった。ロリコンになったのかと悲しくもなったらしい。
おれは気にしないんだけどな。あの時からずっと、おれのことを子供扱いしないで接してくれたのは和多流くんだけだったし。
少し笑うと、お腹が鳴った。
「・・・あの、ご、ごはん、食べたい・・・」
「え?うん。食べよっか」
「・・・おれご馳走したい」
「あ!それずるいよ。ダメ。おれがする」
「なんで、」
「その代わり、帰りにさ・・・また、入れてもいい?それで、玄関でしちゃおうよ」
エネマグラを見せられる。
ぐわっと体が熱く震えた。
さっき、気持ちよかった。じれったいのが気持ちいいなんて、おれも変態だ。
黙って頷くと、和多流くんは持っていた別のショッピングバッグから何かを取り出した。
手にあったのはメガネだった。
ゾワッと腰が疼く。
「え、」
「最近夜の運転で、外が見えづらくなるんだ。メガネ、買ったんだよね。・・・好きだよね?メガネのおれ」
「あ、あ、・・・!なんで、」
「毎度、熱ーい視線を送られて気づかないわけないでしょ?机の上に鏡があるの、気づかなかった?ずっと見てたよ、やらしい顔。このまま食事して、お尻に入れて、帰ろうね。それで、しようね」
「う、あ・・・!」
「あーあ・・・これじゃぁ、お店は入れないね。・・・どうしようか?もう帰ろうか?」
エネマグラにキスをして、おれの頬に滑らせる。
ずくずくと疼いて、止まらない。ペニスがパンツの中で動いている。
勝手に口が動いた。
「し、したい・・・我慢、できない・・・」
「素直ないい子・・・。ほら、お尻出して?」
背中を向けてパンツごとジーンズをおろす。
ローションを垂らされた。ゾクゾクする。
「わ、和多流くん・・・お願い、声、我慢するから・・・一回だけ、したい・・・」
「・・・我慢しちゃうの?」
「だって、ここ、」
「絶対我慢できないのに・・・。じゃぁ、キスする?喘ぎ声も全部ちょうだい」
何度も頷いてキスをする。ゆっくり和多流くんのペニスが入ってきた。
喘ぎ声が、和多流くんの中に吸い込まれていった。
すごく、気持ちいい。



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