Evergreen

和栗

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P-Day2-

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朝起きると、和多流くんもすでに起きていた。
眠たそうに目を細めておれを見ていた。
「あ、おはよ」
「おはよう・・・はぁ、」
「どうしたの?」
「ほとんど寝てない・・・」
「えっ?大丈夫?今日お客さんと会う日じゃなかった?」
「・・・頑張る」
つ、辛そう・・・。
大丈夫かな・・・。
朝ご飯を食べて、先に出る和多流くんを見送ろうと玄関まで行くと、目を擦りながら振り返った。
「大丈夫?」
「うん・・・。ね、お願いだからキスだけ・・・」
「えぇっ、・・・じゃぁ、手、出して」
「手?」
右手の甲に唇を落とす。
ぎゅっと握って手を離す。
「おれもしたいけど、ここで我慢ね」
「・・・ちょっと元気出た。帰ってきたら少し寝るよ」
「・・・あの、今日おれがご飯作るね。食べたいものあるし」
「うん。ありがとう。じゃぁ行ってきます」
いってらっしゃい、と言おうとしたら腕を引っ張られた。
耳に唇を押し付けられ、少しだけ耳たぶを啄んで、顔を離した。
体が熱くなる。
「ちょ、」
「これで我慢ね」
笑ってドアを閉める。
もー、おれだって頑張って我慢してんのに・・・。


*******************


「変な宗教はやめたと聞いたが」
「だから、ハマってないですってば!」
成瀬さんからビルの屋上で昼を食べようと言われたのでついてきたら、開口一番からかわれた。
ムッとしたまま、置いてあるパイプ椅子に座る。
今日はクリームパンにした。袋から出すと、少しだけ笑われた。
「え、なんですか?」
「弟もよくそれを食べていたなと」
「・・・弟さん、いくつなんですか?」
「17」
「わ、すごい離れてますね」
「今年受験だ」
「どこ行くんすか」
「さぁ。スポーツ推薦でどこでも行けるんじゃないか」
「へぇー。・・・あの、どこの高校か聞いていいですか」
成瀬さんはとある高校の名前を言った。
スポーツも勉強もこの辺じゃ上位クラスの学校だった。
おれが教えているクラスにもそこの生徒が何人かいる。
「あ、そういえば、おれのクラスにいた子が1人抜きん出て頭良くて、1個上のクラスに移動させた子がいたなぁ・・・。なんでおれのクラスにきたんだか」
「水出くんだろ」
「えっ。知ってんですか」
「弟と同じクラスの子だ。塾に入るのは初めてだったから、適当に選んで入ったそうだ」
「へぇー。めっちゃ頭いいですよね。おれ教えてて楽しかったですもん。すぐ理解してくれるから」
「・・・まだ関わり、あるか」
「え?はい。挨拶してくれるし、おれも声かけたりしますよ。なんかあの子、自分のこと追い詰めそうだなって、心配になるんす」
「・・・よく見てやってくれ。何かあったら、教えろ」
カチ、と小さく音を立てて、タバコに火をつけた。
弟の友達ってだけで、成瀬さんがここまで気にかけるなんて意外だった。普通、あまり干渉したくないんじゃないかなと思った。
タバコの煙が空に浮かぶ。
なぜか、和多流くんの背中を思い出した。
車の中で小さくなって、タバコを吸ってた。
どうしようもなく愛しくなって、ずっとそばにいたいって思った。
「珍しい、ですね。タバコ・・・」
「ん・・・。吸うか?」
少し悩んで、1本火をつけた。
途端にむせ込んだ。
「ぐえっ、な、なん、」
「ん、キツかったか?」
「にがぁ・・・!なんすかこれ」
「さぁな。母親に捨てとけって言われたタバコだから、父親のだろうな」
「よく吸えますね・・・」
「無理するな。・・・うーん、やっぱりサンドイッチ一袋じゃ足りないな」
「・・・えっ!?お弁当忘れたんだったら、外に行ってよかったのに・・・」
「いや、お前がそれで足りると言っていたから、どんなもんか試したかった。タバコで気を紛らわせてみたが・・・腹持ちは良くなさそうだな」
「なんでそんなことしたんですか?」
「シロもそのタイプだからな。試しにそれで過ごしてみようかと」
「あんまり食べないんですか?」
「面倒になったり、作業に没頭すると食べないこともある」
「それは心配ですね。倒れたりしないといいな・・・」
「・・・はっ。お前、自覚あんのか」
え?
鼻で笑った成瀬さんは、呆れた顔をしていた。
ぽかんと見つめると、おれの手からタバコを奪い口に咥えた。
あ、これ、シロさんと和多流くんが見たら怒るやつだ。絶対に黙っておこう。
短くなった方のタバコを携帯灰皿に押し込んで、おれの吸いかけを一気に吸い込んだ。
うわぁ・・・化け物・・・。
「あんまり藤堂さんに心配かけるなよ」
「へ?おれ?何でですか?かけてないけど・・・」
「お前が今自分で言っただろ」
「え?え?なんすか?」
「ガキ」
「あ、また、そうやってぇ!もー・・・シロさんもからかってきたし・・・2人してからかって・・・」
「・・・お前、意外と藤堂さんに対して雑なんだな」
雑?
チクッと胸が痛んだ。
時々、キツイ言い方するんだよなぁ・・・。
昼休憩が終わってデスクに戻る。成瀬さんが向かい側の席に座ってテキストを開いた。
少し穴の空いたペンケースからボールペンを取り出す。
あんなふうに使い込んだら、雑じゃなくなるのかな。


********************


なんとなく言葉が引っかかったまま、家に帰った。
今日は仕事をぎゅうぎゅうに詰め込むから、迎えに行けないと言われていた。迎えにきてもらったら車の中でいたしてしまいそうだから、ちょうど良かった。
玄関を開けると、和多流くんが靴を履いていた。
「ただいま。どこか行くの?」
「あ、おかえり。ごめん、コショウがなくなった。買ってくる」
「おれ明日、仕事の帰りに買ってくるよ?」
「や、ごめん、明日の昼使いたいんだ」
「明日の昼?」
「やー・・・美味しそうなラーメン買ってきちゃって・・・どうしても明日食べたいから、ごめん。行ってくる。コンビニだからすぐ帰るよ」
こういうとこ、可愛いんだよな。
いっぱい撫でて抱きしめたくなる感じ。
「・・・おれも、行こうかなぁ」
「行く?散歩がてら」
「ん」
鞄を背負ったまま、和多流くんの隣に立って歩き出す。
歩いて2分くらいのコンビニは、ひっそりと佇んでいた。
「おれ思ってたんだけど、あの物件てすごい条件のいい部屋だよね。4戸のアパートだし、全部角部屋でしょ。1階の部屋だし、駐車場もあるし。コンビニ近いし、スーパーも一本向こう側の道にあるし」
「そうだね。おれも初めて見た時びっくりしたよ。まさかこんなの持ってるなんてね」
「・・・持ってる?」
「うん。最初は中も汚かったからリフォームしてね、賃貸にしたんだ。全部屋埋まってよかったよ。隣なんておれの金持ちの友達が別荘代わりに借りてくれてるから、普段いないし。ラッキーだったよ」
「・・・えーっと・・・あの、」
「あった。コショウ。あ、遅くなっちゃうよね。晩御飯適当に買っていく?」
「あ、あ、うん・・・や、やっぱ作る!」
「そう?涼くんの手料理美味しいよね。昔から料理好きなの?ふふ、餃子作ってる時めっちゃ可愛いよね。背中丸めてせっせとつつむじゃない。しかも大量に」
「・・・あの、あの、あのアパートって、和多流くんの、なの?」
「え?うん。言ってなかったっけ。じいさんが元々持ってたんだけど相続したんだよ。おれ昔、不動産の仕事してたから。そろそろ自分の城を持ってもいいのかなーって思ってね。そしたら涼くんと付き合えることになって、しかも一緒に暮らせて、人生の幸せ街道まっしぐらなんだよねー。無理して貰っておいてよかった」
ま、マジで・・・!?
あれ、和多流くんの、家・・・!?
ど、どうしよう・・・!家賃とか、すっごい、安い金額しか渡してない・・・!
最初は断られたけど、無理矢理渡していた。
渋々受け取ってくれてるけど、本当はもっと渡さなきゃならなかったんだ。
相続税とか、ローンとか、いろいろあるんじゃないか。
それなのにおれは、家賃だけ払って満足していた。
恥ずかしい。
「涼くん」
「え、あ、はい!」
「あのアパート、一緒に大事にしてくれてありがとう」
「え!?おれ、そんな、」
「掃き掃除したりゴミ捨て場きれいにしたり、部屋も掃除してくれたり・・・ていうか、もう、一緒に住んでくれてるだけで感謝しかないんだけどね」
「・・・あの、家賃、もっと渡したい・・・ごめん。知らなかったとはいえ、」
「今ので十分。帰ろ。お腹すいたね」
コンビニを出て家に帰る。
モヤモヤしたままご飯を作って2人で食べた。
お金の話、しなくちゃ。
あ、でも、お金の話すると和多流くん機嫌悪くなるんだよな・・・どうしよう・・・。
成瀬さんに言われた、雑、という言葉が頭に浮かんだ。
うぅ・・・おれ、結構雑だ・・・。和多流くんに対して・・・。全部言われるがまま、深く考えもせずに一緒に暮らしてた・・・。
ううー・・・。
「ね、今日はキスしていいんだよね」
「え?あ、うん、」
「・・・なんか、悩んでる?」
腰を抱かれて引き寄せられる。
背中に手を回して抱き締める。
「ん。ちょっと・・・」
「・・・お金はね、今ので十分なんだよ。本当だよ。結構格安で他の人にも貸してるしね。このアパートを維持できればいいんだ」
「・・・でも、もう少し、渡したい。お願い。おれ、ちゃんとしたいから」
「・・・うーん・・・。でもさ、食材とか消耗品とか、おれは忘れちゃうけどこまめに買ってきてくれるでしょ?それでいいじゃん。だめかな」
「ダメ!」
「この前は恥ずかしいの我慢してコンドームまで・・・」
「わー!いいんだよ、それは!もう!」
「お金なんかいらないからさ、絶対にしてほしいことがあるんだけど、聞いてくれる?」
「え?何?」
「おれより長生きして」
真剣に言われて、言葉が詰まった。
手をぎゅっと握られる。
「涼くん、結構食事とか適当でしょ?おれ、それが心配なんだ。昔から、心配してた。倒れてないかなとか、また痩せちゃってないかなとか・・・。すっごく心配になるんだ」
あ、そういうことか。
成瀬んが言ってた、今自分で言っただろって、倒れてないか心配ってことか。
シロさんに言ったつもりだったけど、成瀬さんからしたらおれも一緒なんだ。
和多流くんもおれのことが心配なんだって、ことか。
わかんねぇよ、そんな遠回しな言い方じゃ。はっきり言ってくれないと・・・。
う・・・ガキだ、おれ・・・。ムカっとしてごめんなさい。ガキでした。認めます。
「わ、分かった・・・ごめんなさい」
「ううん。ちゃんとしっかり食べてね」
「・・・ん。あ、おれが太っても、笑わないでね・・・」
「え?笑わないよ?むしろ見てみたい。可愛いだろうな」
「・・・お金はもっと渡したいんだけど、」
「いらない。これでおしまい。さ、お風呂入ろう」
ほらほら、と急かされる。
もー、すぐかわすんだから。
だったらおれもかわしてやる。
「和多流くん先入っていいよ」
「え?」
「おれ今日はゆっくり入りたい気分だし・・・ちょっと、成瀬さんに怒られたから、反省会もしたいし」
「怒られたの?どうしたの?」
「大したことじゃないよ。でも、ね。先入って」
背中を押すと、名残惜しそうにドアを閉めた。
別に怒られていないけど、雑、の意味がわかったので反省会をしたいのは確か。
成瀬さんの言う通りでした。おれ、雑でした。
心配させてたし、長生きして、なんて言わせちゃったし。あんなこともう言わせないように、しっかりしなきゃ。
ペチペチと顔を叩く。やっぱ一緒に入ろうよ、とびしょ濡れになった和多流くんが出てきて、笑ってしまった。


********************


「やっぱり気持ちいいな」
「・・・気持ちいいけど生き地獄」
吹き出して笑うと、苦しくなるくらい抱きしめられた。
昨日と同じように裸のままベッドに滑り込んで、抱きしめ合う。
お風呂に入ってる時から和多流くんはずーっと苦しそうだった。
今日は各々体を綺麗にしたので、それもご不満のようだった。
だって触ったらしたくなっちゃうもん。
「和多流くん、おれが体洗ってる時見過ぎだよ」
「だって可愛いから・・・」
「恥ずかしいから控えて」
「・・・うーん・・・」
「・・・あの、変なこと聞くんだけど、今まで付き合ってた人にもそうだったの?」
「ん?何が?」
「こう、なんか、じっくり見たり、触ったり、いたずらしたり」
「まぁ、最初はね。でも長く続かなかったな。そもそもお付き合いも長く続かなかったし。面倒になっちゃって」
面倒かぁ・・・。
そう思われないようにならなくちゃな。
そう思った時、お尻を撫でられた。
「んぎゃ?!」
「つーかおれ、その頃もう涼くん好きだったし・・・涼くんが彼氏できるたびに寂しさ埋める感じで付き合ってたから、向こうもさ、わかるじゃん何となく。そうなんだなって。だからさ、少しの寂しさを埋めるならセフレとかの方がいいのかなって。変なこと言ってごめんね」
「聞いたのおれだし・・・。あの、もう寂しくない?」
「毎日楽しいよ。・・・あのー、そろそろいいですかね」
「え?何が?」
「・・・そーゆー変な所で天然だよね。何がって、キスでしょ?していいんでしょ?もー、おれが翻弄されるなんて考えたことなかった」
ムッとした顔で、ぶにっと頬をつままれた。
そうだった。キスだ。
和多流くんの上に乗ると、目がキラキラ輝いた。
可愛い。期待してるんだ。
「和多流くんは何もしちゃだめ」
「・・・ねぇ、それやっぱひどいよ。したいよ」
「・・・おれの言うこと何でも聞くって言ってくれたのに・・・約束したのに・・・」
「・・・分かったよ。じゃぁ、少しだけ。少しだけキス、させて」
「そのままエッチしちゃいそうだからダメ。おれだって我慢してんの」
和多流くんの顔が真っ赤になる。わ、レア。
いつも涼しい顔して飄々としてるのに。
可愛くてたまらなくてキスをすると、ガシッと頭を固定された。
「んぐ、」
「涼くん」
「ダメ、だってば!」
すかさず舌をねじ込んでこようとしたので耳を掴む。
すると、ビクっと肩が跳ねた。
「え?」
「・・・」
耳が真っ赤に染まる。試しにマッサージするように擦ると、パシっと手を払われた。
驚いた顔をしておれを見ていた。
「・・・気持ちいいの?」
「・・・さぁ?」
「・・・へぇー・・・」
「いや、ちょっと痛いかな。だからやめて」
「ね、耳にたくさんキスしたいな」
「や、だから、」
「どーしよ。和多流くんの可愛い耳、犯したいな。ちょっとルールと逸れちゃうかな。いいよね。耳、おれの舌で可愛がってあげる」
こんなふうに思ったの、初めてだ。
いつも受け身だったし、和多流くんにされるがままだったのに。
今日はおれがしたくて堪らない。
断られる前に唇を重ねて、言葉を塞ぐ。
耳を撫でると、少し呼吸が乱れた。
「手、出さないでね。おれがするんだから。いいよね。いつも和多流くんもしてるんだから」
「はっ・・・ぅ、おれのこと、煽ったの、忘れないでよ・・・?最終日、絶対に主導権あげないし、やめてって言ってもやめないからねっ、」
「・・・いらないよ?だって、最初にそう話したし。・・・可愛いな、和多流くん」
耳元で囁くと、カクッと腰が跳ねた。
舌先で縁を舐め、指の腹でマッサージする。
背中に痛みが走った。
「いた、」
「あ!ごめん、やべっ、」
「・・・気持ちいい?」
和多流くんが爪を立てたんだ。こんなこと初めてだ。
嬉しい。嬉しすぎる。おれの愛撫で感じてる。
「和多流くん」
「あっ、」
「嘘、可愛いー・・・」
「も、最悪・・・!おれの声なんて、気持ち悪いでしょ・・・」
「え?どうして?可愛いよ。好きな人の声、すっごい気持ちいいよ?和多流くんは違うの?」
顔を見ると、驚いたように目を開いていた。
キュンっとして啄むようにキスをする。
勃ちあがったペニスが震えた気がした。多分、垂れてる。
和多流くんのお腹を汚しているに違いない。
和多流くんのペニスも、ずっとお尻に当たっていた。
「や、違うことは、ない・・・でも、おっさんが喘いでも、」
「和多流くんはおっさんなの?おれの恋人でしょ?」
「あ、は、はい・・・」
「可愛いよ。すっごく」
「・・・あー、おれ、涼くん相手ならネコでもいいかもって思えてきた・・・可愛すぎる・・・」
「え。本当?」
「でも今じゃないからね。早くぶち込みたいの我慢してるんだから」
「へへ。じゃぁ約束ね。今度ね」
耳にキスをするとまた背中に手がまわって、強く抱きしめられた。
時々爪が立てられたけど、堪えて和多流くんに集中する。
苦しそうに、堪えるように声を殺していた。
どうしようもなく触れたくなって、脇腹に手を乗せる。ガクンと体が跳ねた。汗がびっしょりだった。
「和多流くん?」
「こ、れ・・・やばいかも・・・。もう、さっきから、結構きつい」
「・・・んと、やめる?ぎゅってするだけにする?」
「ん・・・あー、がまん汁だらけだ・・・なんか情けない・・・」
振り返って和多流くんのペニスを見ると、オレンジ色の明かりに照らされてやらしく光っていた。
ビクッと自分のペニスが跳ねる。
「あ、やば、・・・」
「涼くん、今興奮した?」
「・・・どうしよう。和多流くんのこと、すっごい可愛いって思って・・・いきそうになる」
「・・・ね、まだ2日目だけど我慢できるの?」
顎を撫でられる。したいけど・・・ルールは守りたかった。
深く息を吐いて和多流くんの隣に倒れ込む。
まだしてないのに、体が熱くて汗が次々と流れていく。
手を握って天井を見ていると、和多流くんがにじり寄ってきて抱き寄せてきた。
和多流くんの体も熱かった。
「・・・昼間、ずーっと涼くんのこと考えてる」
「・・・おれも。気が抜けると、考えちゃう」
「なんか、焦ったくておれには合わないセックスの仕方だと思ってたんだけど、焦ったいだけじゃないんだね」
「え?」
「おれのためにこんなに時間を使ってくれるんだって、胸が苦しくなる。嬉しいやら恥ずかしいやら・・・。ありがとう、涼くん」
「・・・おれも、わがまま聞いてくれてありがとう」
目を閉じてお礼を伝えると、頭のてっぺんに唇が触れた気がした。
幸福に包まれるって、こういうことを言うんだ。
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