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しおりを挟む「ま、待って・・・!待って、!」
「うーん・・・もう、待ては無理だよ」
「こんなの、知らないっ、知らないっ!」
太い指先で、全身を撫でられた。
それはもう、くまなく。
優しく滑るように撫でられていたかと思ったら、とんとんと指先で叩いてきたり、指を置いてじっとしてみたり、爪の先で緩く引っ掻かれたり、とにかくいろんな触り方をされた。
体の芯から感じているのが分かる。
だけど、肝心なところは触れてくれない。
「どこが感じるのかなって、探してるんだ。もう少しだけ、触らせて」
「ふ、ぅ、ううっ・・・!」
背中に指が走る。
くすぐったいのか、気持ちいいのか分からなくなってきた。
枕を掴んで耐える。先程まで汗ばんでいただけの体は、もうびっしょり濡れていた。
呼吸が深く長く、繰り返されている。
「も、やだぁ・・・!」
「どこかな・・・」
「ぜ、全部!全部、気持ちいい!」
早く、早く、触って。言いたいのに、指の動きで止められる。
ペニスが小刻みに震え、布団に擦れるといきそうになる。
触れないように腰を上げると、いきなりお尻を叩かれた。軽く、ペチンと、可愛らしい音が響いた。
「ふわぁっ!?」
「あれ?スパンキング好き?」
「や、やだ!違う、怖い、」
「怖い?そっか・・・。ごめんね」
叩いたところを緩く撫でられる。
必死に顔だけで振り返ると、少し考え込む顔があった。
「へっ・・・?和多流くん・・・?」
「痛くはなかった?」
「・・・わ、分かんない。びっくりしたから・・・ひゃ!?」
ぺちん、とまた叩かれる。
口を抑えると、何度も何度も、優しく叩かれた。
「ひっ、いっ、・・・!んぅー・・・!」
「どうして、声、我慢するの?」
「ぅーっ・・・!」
「ねぇ、すっごい、垂れてるね」
今まで触ってこなかったのに、突然、ピンっとペニスを弾かれた。
ガクンっと大きく体が跳ねた。
下半身から背中まで快楽が駆け巡り、痙攣したように全身が震え始めた。
「ふぁ、あぁ~・・・!あぁん、ん~っ・・・」
「凄いね。上手上手」
「うぁっ、あぁ・・・!い、やだ・・・!」
焦らされ続けた体は、たった少しだけの刺激で絶頂へ持って行かれた。
ぼたぼたと精液を垂らして果てたのが分かる。
止まらない。いつまで続くのか分からない。
こんな快楽、初めてだ。
「う、うぁっ、うえっ、え、」
「涼くん?」
「こ、こんな、こんなの知らない~・・・!やだ~・・・!」
「気持ち良くなかった?」
「き、きもち、いいから・・・!やだよぉー・・・!」
「・・・かわいー・・・はー・・・お尻も、触りたいなぁ・・・。でも、涼くんが限界かなぁ・・・」
「お、お尻、やだ・・・!う、う、・・・!やだ、ばっかりで、ごめんなさい~・・・」
嫌われたらどうしようと思うのに、快楽に溺れるのが怖かった。
抜け出せなくなったら、和多流くんに溺れてしまったら、どうしたらいいか分からない。
「これから、やだって言えなくなるくらい気持ちいいことたくさん教えてあげるね」
「も、も、十分・・・です、いやだぁ・・・!」
「ちんちん震えてるね。可愛いね。触ってないのに跳ねてるよ」
「あ、ま、またいく、いくかもっ、やだ、なんも、してない!してないよ!」
「すっごく上手。可愛いなぁ・・・才能あるよ。開花させてあげるから、早くおれに堕ちてきて」
ぱちん、とお尻を叩かれる。
「あ゛っ・・・!?」
雷に打たれたように痙攣して、いった。
こんな快楽は知らない。
怖いのに、気持ちいい。
何度もいった気がする。
少し触られただけでだらしなく精液をこぼした気がする。
気がするのは、確かじゃないから。
途中から、おれの記憶はぽっかりとなくなった。
******************
「うん、うん。ありがとう。・・・うーん、気をつけるけど・・・でも、無理かなー。おれの恋人、可愛すぎてね・・・あははっ」
和多流くんの声が聞こえてきて、目を覚ます。
すっかり日は昇っていた。
スマホを耳に当てて、穏やかに電話をしている姿が目に映る。
おれが起きたことを確認すると、口に指を滑り込ませてきた。
舌を這わせて、軽く吸い付く。
いい子、と口を動かしながら舌を撫でてくれた。
「うん、・・・本当にありがとう。今度またご飯行こうよ。今度はおれから連絡するね」
通話を終えると、指を抜いて手を滑り込ませ、胸の中心に触れた。
大げさに体が跳ねる。
「敏感になった?」
「な、なった、かも、・・・」
「ちょっと刺激が強かったかな。夜はすごく綺麗だったよ。今はすごく可愛いのに、不思議だね」
「・・・あんなの知らなかった・・・いつも、あんなふうにするの?」
いつも、は、他の人にもという意味合いで言った言葉だ。
和多流くんは少し驚いた顔をしたけど、顎に手を当てて考え始めた。
「・・・うーん・・・!答えるのが難しいなぁ・・・。えーっと・・・昔、付き合ってた子にしたことはあるけど・・・。ねちっこいって殴られたことが1回、泣きながら逃げられたことが1回・・・そのあと両方とも連絡取れなくなったのはもちろんの話なんだけどね」
「・・・それは、なんか、悲しいね・・・」
「もうやめようって思って、付き合うのもやめて、ずっと遊びでしてたけど・・・しつこいって言われることもあったよ。悦ぶ人もいたけど、セフレだからねぇ・・・本気にもなれないし・・・愛がないからそこまで丁寧にもできないし」
「そうなんだ・・・えっと、おれ、どうだったかな・・・」
いきなり抱きしめられた。
強く、強く。
苦しいのに、心地いい。
「最高だったよ」
「でも、和多流くんいってないよね?」
「もうね、心が満たされてしまって・・・全然いいんだ」
「あの、おれがしてあげるよ。いいでしょ?」
「あー、ダメダメ。順序があるから」
「え?ルーティンみたいな感じ?」
「まぁいいか、言っても。ほら、おれね、片想いが長かったでしょ。だからこれでもかってくらい涼くんに色々してたの、頭の中で。したいこといっぱいで、してもらうこと考えたことなかったんだ」
心臓が跳ねる。
うわ、心音が、伝わってしまう。
恥ずかしいのに心地いいのは、何という感情なんだろう。
ぎゅっと抱き返し、恐る恐る聞く。
「あ、あの、おれが、何聞いても、嫌いにならない?」
「ならないよ。ていうか、どっちかというとおれの方が嫌われること言ってるよ。だって涼くんのこと、ずーっと頭の中で犯してたんだよ?そっちこそ嫌いにならないの?」
「え、結構嬉しかった・・・」
足に突然硬くなったペニスが当たった。
びくりと体が跳ねる。
うわぁ・・・結構嬉しいかも・・・。おれに興奮してくれるんだ・・・。
和多流くんは照れたように笑うと、耳を撫でながら小さく言う。
「うん、おれもそうだよ」
「でもおれすごい面倒臭いこと聞くかもしれないよ?・・・独占欲、とか、結構強いし・・・」
「うん。独占してよ。涼くんになら束縛とかされても、めちゃくちゃ嬉しいよ。ニヤニヤしちゃう」
頬を撫でられて、胸が締め付けられる。
こんなに幸せでいいのかな。
こんなに嬉しいなんて、知らなかった。
顔を隠して早口で問う。
「電話誰?」
「え?あぁ、シロくん。おれいじわるだから無理させるなって釘刺された」
「部屋、余ってたけど、他の人と住んでたの?」
「まさか。ここに来たの、去年だから。涼くんと付き合うちょっと前だよ」
「・・・絶対、黙っていなくならないで」
「いなくならないよ。涼くんはいなくなったけど」
「・・・ごめん」
「いいよ。じゃぁおれも聞くけど、どこにいたの」
「いとこの家」
「もう家出はしないで、ちゃんと話そう」
「ん・・・。あと、何でパソコン慌てて閉じたの?」
「え?あぁ、昨日の?涼くんが気を遣って生活してるの分かったから、ちょっと気分転換に旅行とかいったら、もっと仲良くなれるかなーって思って」
「旅行・・・」
「ベタかなーって思ったんだけどね」
「好き、ベタなの・・・」
「よかった。こうやって、毎日いろんなこと聞いて話して、過ごしていこうね」
「ん。おれすっげーおしゃべりだから、嬉しい」
「知ってるよ。おれ、涼くんの話聞くの好きなんだ。まぁ、成瀬さんの話をされると時々妬くけどね」
「し、しないように、頑張る」
「それはそれで嫌なんだよなぁ・・・」
「え?難しいよ」
「はははっ。話して。聞きたいから。妬きそうになったら言うよ」
「・・・それもうすでに妬いてない?」
「あ、そうかぁ。うーん・・・まぁいいや。聞かせて。全部。妬いたら妬いたで夜に頑張ってもらうから」
「夜に?ご飯?あ、和多流くんの好物って何か聞きたかったんだけど、」
ガシッとお尻を掴まれる。力一杯揉みしだかれ、ビクビクと腰が跳ねた。
「ひゃいっ!?」
「どうしてご飯が出てくるのかなー。わざとかな?おれのことからかってる?」
「違う違う!ひえっ!あの、あの、昼から仕事だからもう、」
「夜って言ったらこっちでしょ?可愛いから許すけど、次間違えたらもうベッドから出さないからね」
「和多流、くんっ・・・もう、やめてよ、」
「お尻気持ちいいの?」
やばい、やばい。めちゃくちゃ勃ってる。
昨日散々いかされたのに、まだ勃つんだ。
柔らかくなるまで揉まれたお尻は、じんじんと熱くなっている。呼吸を乱しながら必死にしがみついていると、自分のペニスに和多流くんのペニスが重なった。
それだけで快楽が脳天に直撃する。
「やっ!」
「まだお尻だけだよ?」
「わ、和多流くんの触り方、ねちっこいから、」
「嫌い?」
「・・・す、すごい、好き、かも・・・!でも、おれ仕事だから、」
「お尻だけでいけるようにしちゃおうかなぁ」
肩が震える。恐る恐る顔を見ると、やらしい笑顔があった。
「お、お尻、って、どっち・・・?」
「え?」
「中・・・?外・・・?」
「・・・え?」
「お、お、おれ、ごめんなさい、中で、いったことなくて、だから、すごい、時間かかるかも・・・。ていうか、飽きるかも・・・」
「・・・」
「・・・ご、ごめんなさい、おれ本当に、つまんねーかもしれなくて、」
「そうなんだ・・・。なぁんだ・・・」
あ、やば・・・呆れてる・・・。
言わなきゃよかった。でも、最中にガッカリされるより、ダメージは、少ないかも・・・。
いや、やっぱ、悲しい・・・。
今まで元カレもそこまで丁寧じゃなかったし、自分でもあまりしなかったし、自業自得と言えばそうなんだけど・・・あからさま過ぎて、すっげー悲しい。言うんじゃなかった。
「それは考えたことなかったな・・・」
「・・・う、う、」
「泣いてるの?どうしたの?」
「な、なんでも、ないっ、」
「あ、ごめん。顔怖かった?ごめんね。泣かないで」
「見ないでよ!」
「見るよ。見たいもん。はぁ・・・おれ涼くんに殺されるかも。まさかだったなぁ・・・楽しみすぎて我慢できないかもしれない」
グルンっと体が持ち上がった。
驚く暇もなく、和多流くんの膝の上にいた。
体を起こした和多流くんはおれの胸に顔を押し付けると、ぐりぐりと擦り付ける。髭がくすぐったい。
「なんだよもー。もうそれは、前提だったから考えたこともなかったよ。あぁー、すっげー嬉しいー」
「・・・なんだぁって、言ったじゃん」
「いやもー、感情が振り切っちゃって・・・妄想しときゃよかったーって後悔が・・・」
「・・・本当に?」
「本当に。はー・・・今のでいけそうだ」
「えっ!?」
「もー、涼くんマジで調教のしがいあるよ。次の休みいつ?」
「・・・明後日」
「じゃぁ明日の夜からずーっとできるね。予定とかないよね?」
「な、ないよ。おれ友達本当に少ないし・・・あ、でもいとこのとこに、」
「日程ずらしてもらえるよね?」
「・・・あ、はい」
「楽しみだなぁ・・・嬉しいなぁ・・・今日から明日の夜まで我慢しなきゃならないのは大変だけど、まぁ、今まで我慢の連続だったからそれよりマシだ」
「・・・そんなに嬉しいもんなの?」
「嬉しいよ。初めてに翻弄される涼くんを見るの、楽しみだし。おれが涼くんを気持ちよくさせてるんだって満足感がすごいし、とにかくもう嬉しい」
「・・・中でいくって、そんなにいいもんなの?」
「それは明日の夜のお楽しみだね」
おれを抱いたまま立ち上がり、バスルームへ歩く。
怖くてしがみついてるだけなのに、可愛い可愛とベタ褒めされた。
ここまでストレートに愛情表現をされたことがないので、嬉しいのと恥ずかしいのでごちゃ混ぜになる。
「シャワー浴びようね」
「変なことしないでね」
「え?するよ?」
当たり前でしょ?と首を傾げられて体が熱くなる。
恋人にねだられて断れるはずもなく、厚い胸板に顔を押し付けた。
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