101 / 114
嬉しい
しおりを挟む「あのさ、やり直したいんだけど、いい?」
「何を?」
あまりにも突然で、真喜雄が何を言ってるのか一瞬理解ができなかった。
パンの袋をくしゃくしゃにすると、告白、と小さく言った。
「・・・告白?」
「・・・透吾に、告白しなおしたい」
「なんで?」
「・・・かっこ悪かったから」
「かっこ悪くなんてなかったよ。嬉しかったし、すごく、」
「やり直したい」
強く言われて口を閉じる。
なんで急に、やり直したいなんて思ったんだろう。
あの時の真喜雄、かっこ悪くなかったのに。
僕の心を鷲掴みにしたのは確かなのに、なんでそう思うんだろう。
なにか変な発言をしただろうか。
真喜雄が気にしてしまうようなことを言ったかな。
考えても思いつかなかった。
姿勢を正して僕に向き直り、じーっと見つめてくる。見つめ返し、しばらく無言の攻防を続けたけど、無駄だった。
「・・・分かった」
「ん、じゃぁ・・・っと、えと、」
「でもその前に、ちゃんと理由を教えて」
考えてもわからないので、カマをかけてみた。
真喜雄はバツの悪そうな顔をすると、視線をそらして「聞かれたから、」と答えた。
「聞かれた?なにを」
「・・・どっちから告白したのかって」
「誰に」
「部のやつら・・・。みんなで飯食ってて・・・。おれからって言ったら、なんて言ったのって・・・」
「・・・それ別に、答えなくてよかったんじゃない?」
「・・・つい・・・。でも、なんて言ったのって聞かれて、普通にって答えたけど、よく考えたらすげーかっこ悪くて・・・やり直したいなーって、思って・・・」
なるほど・・・。
にしても、そんな話するんだなぁ。
まぁ、部活の話やサッカーの話ばかりじゃないよね。
多感な年頃なんだからそういう話くらい、するか。
僕だってたまに宮田くんとそういう話するしね。
「うーん。僕はすごく嬉しかったんだけどなぁ」
「・・・泣きながらとか、ダサいじゃん」
「・・・僕は、それで好きになったんだけどなぁ・・・」
「えっ」
「可愛いって思って、笑って欲しいなって思って・・・多分あの告白じゃなかったら、どう答えていたか分からないっていうか・・・」
俯いて黙りこくってしまったので覗き込むと、これ以上ないってくらい顔を赤くして汗をかいていた。
慌ててハンカチで額を拭いてあげると、手を握られた。
「・・・熱い」
「うん・・・真っ赤だもん。あの、大丈夫?」
「だいじょばない・・・初めて知った・・・」
「話したことなかったっけ。うーんと・・・て、いうかさ、真喜雄の告白がダサくてかっこ悪いなら、僕の返事も最低だったと思うんだけど」
「え?どこが?」
「だって無理やりホテル連れ込んでいきなり触って、もう付き合ってるよねとか言って、僕が真喜雄の立場だったら体目当てかな?って思うよ」
「・・・そうか?嬉しかったけど・・・」
「えっとね、真喜雄がそう思うように、僕も思ったんだよ」
きょとんとした顔になり、真喜雄はずりずりと近づいてきて僕の腕を引いた。
腰を支えられたので持ち上げると、そのまま膝に乗せられた。
少し見下ろす形になる。前髪を掻き上げてみると、くすぐったそうに目を細めた。
「真喜雄がかっこ悪いと思うことって、多分僕にとっては違うことだよ」
「・・・うん。透吾が最低だと思うこと、おれはそう思わないこと同じだな」
「うん。だからやり直しなんてしなくていいんだよ」
「・・・うん」
ふわりと笑って、真喜雄は僕の胸に顔を押し付けた。
そっと頭を撫でて、抱きしめた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
逃げられない罠のように捕まえたい
アキナヌカ
BL
僕は岩崎裕介(いわさき ゆうすけ)には親友がいる、ちょっと特殊な遊びもする親友で西村鈴(にしむら りん)という名前だ。僕はまた鈴が頬を赤く腫らせているので、いつものことだなと思って、そんな鈴から誘われて僕は二人だけで楽しい遊びをする。
★★★このお話はBLです 裕介×鈴です ノンケ攻め 襲い受け リバなし 不定期更新です★★★
小説家になろう、pixiv、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、fujossyにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる