水色と恋

和栗

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嬉しい

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「あのさ、やり直したいんだけど、いい?」
「何を?」
あまりにも突然で、真喜雄が何を言ってるのか一瞬理解ができなかった。
パンの袋をくしゃくしゃにすると、告白、と小さく言った。
「・・・告白?」
「・・・透吾に、告白しなおしたい」
「なんで?」
「・・・かっこ悪かったから」
「かっこ悪くなんてなかったよ。嬉しかったし、すごく、」
「やり直したい」
強く言われて口を閉じる。
なんで急に、やり直したいなんて思ったんだろう。
あの時の真喜雄、かっこ悪くなかったのに。
僕の心を鷲掴みにしたのは確かなのに、なんでそう思うんだろう。
なにか変な発言をしただろうか。
真喜雄が気にしてしまうようなことを言ったかな。
考えても思いつかなかった。
姿勢を正して僕に向き直り、じーっと見つめてくる。見つめ返し、しばらく無言の攻防を続けたけど、無駄だった。
「・・・分かった」
「ん、じゃぁ・・・っと、えと、」
「でもその前に、ちゃんと理由を教えて」
考えてもわからないので、カマをかけてみた。
真喜雄はバツの悪そうな顔をすると、視線をそらして「聞かれたから、」と答えた。
「聞かれた?なにを」
「・・・どっちから告白したのかって」
「誰に」
「部のやつら・・・。みんなで飯食ってて・・・。おれからって言ったら、なんて言ったのって・・・」
「・・・それ別に、答えなくてよかったんじゃない?」
「・・・つい・・・。でも、なんて言ったのって聞かれて、普通にって答えたけど、よく考えたらすげーかっこ悪くて・・・やり直したいなーって、思って・・・」
なるほど・・・。
にしても、そんな話するんだなぁ。
まぁ、部活の話やサッカーの話ばかりじゃないよね。
多感な年頃なんだからそういう話くらい、するか。
僕だってたまに宮田くんとそういう話するしね。
「うーん。僕はすごく嬉しかったんだけどなぁ」
「・・・泣きながらとか、ダサいじゃん」
「・・・僕は、それで好きになったんだけどなぁ・・・」
「えっ」
「可愛いって思って、笑って欲しいなって思って・・・多分あの告白じゃなかったら、どう答えていたか分からないっていうか・・・」
俯いて黙りこくってしまったので覗き込むと、これ以上ないってくらい顔を赤くして汗をかいていた。
慌ててハンカチで額を拭いてあげると、手を握られた。
「・・・熱い」
「うん・・・真っ赤だもん。あの、大丈夫?」
「だいじょばない・・・初めて知った・・・」
「話したことなかったっけ。うーんと・・・て、いうかさ、真喜雄の告白がダサくてかっこ悪いなら、僕の返事も最低だったと思うんだけど」
「え?どこが?」
「だって無理やりホテル連れ込んでいきなり触って、もう付き合ってるよねとか言って、僕が真喜雄の立場だったら体目当てかな?って思うよ」
「・・・そうか?嬉しかったけど・・・」
「えっとね、真喜雄がそう思うように、僕も思ったんだよ」
きょとんとした顔になり、真喜雄はずりずりと近づいてきて僕の腕を引いた。
腰を支えられたので持ち上げると、そのまま膝に乗せられた。
少し見下ろす形になる。前髪を掻き上げてみると、くすぐったそうに目を細めた。
「真喜雄がかっこ悪いと思うことって、多分僕にとっては違うことだよ」
「・・・うん。透吾が最低だと思うこと、おれはそう思わないこと同じだな」
「うん。だからやり直しなんてしなくていいんだよ」
「・・・うん」
ふわりと笑って、真喜雄は僕の胸に顔を押し付けた。
そっと頭を撫でて、抱きしめた。
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