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飛んでいけ
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「・・・え、どうしたの・・?」
謹慎があけて久々の部活。終わってから公園で待ち合わせ、やってきた真喜雄の顔を見て仰天してしまう。
左の頬と額に大きなガーゼ。恥ずかしそうに目をそらすと、転んだ、と小さな声で言われた。
「・・こ、転んだにしては、ダイナミックだね・・・」
「うん・・・ミニゲームしてて、転んで、相手も転んでもみくちゃになった」
「びっくりしたよ・・・・」
ちょっと心臓が冷えた。近づいてガーゼの上から触れると、ぷいっと背けられた。
「あ、ごめん」
「・・・ちょっと、触られるの嫌だ・・・」
「ごめん。痛いよね」
「・・・それもあるけど・・」
言いながら、ベンチに腰掛けた。顔の右側しか見えない。
「・・・見られたくないの?」
「・・・うん」
「どうして?」
「・・・ダサいじゃん」
「は?」
「ダサいだろ・・・。転んでこんな・・・鼻血も出たし」
別に、ダサいなんて思ってないんだけどな・・・。そもそもなぜ真喜雄がそういう風に思うのかが不思議だった。必死にボールを追いかけていれば誰だって起こりうる事故なはずなのに。
むしろかっこいいんじゃないかな。これだけ熱中できることがあるんだって、僕は羨ましいのだけれど。
「ダサくないよ。かっこいいよ」
「・・・だって顔、こんなんだぜ」
ぺろっとガーゼをめくると、痛々しい擦り傷が出てきた。僕の顔まで痛くなってくる。思わず顔をしかめ、そっとガーゼを貼りなおした。
「空気にさらしたら痛いよ。ちゃんと貼って。うーん、顔がムズムズしてきたよ」
「・・・透吾は卵みたいなきれいな肌なのに・・・おれ焼けてるし、傷ばっかだし・・」
そんなこと気にしていたのか、全然気にならないんだけどなあ。真喜雄は時々変なことを気にする。かっこいいなと思っていることをダサいというし、変なのと思っていることに対して肯定してみたり。もしかしたら僕と真喜雄は考え方がまるっきり逆なの名
かもしれない。あまりにも真逆すぎるから、惹かれたのかもしれない。
少し笑うと、じろっと睨まれた。
「何」
「真喜誰が気にしていること、僕は本当に気にならないんだけどなーって。夢中になってボールを追いかける姿を想像したらすごくかっこいいし、それで転んでも心配はするけどダサいなんて思わないよ。今だって顔を見て心臓バクバクしたよ。喧嘩したのかなとか、ぶつけたのかなとか、心配になっただけだから・・・ダサいだろって言われて、ちよっとびっくりした」
「・・・本当に?ダサくない?」
「うん。傷が残ったって、将来あの時の傷だなって思い出せるし、思い出せるってことは、僕が君の隣にちゃんといたんだって証明にもなる」
「・・・なるほど」
「だから、ダサいなんて思わないよ」
「・・・うん。じゃあ、おれもそう考えるの、やめる」
顔がこちらに向いた。やっぱり大きなガーゼ。撫でると、少し目元をひくつかせたけど、ぎこちなく笑った。やっぱ痛い、と言われてなぜかつられて笑ってしまった。
右側の口元に唇を押し付ける。キスは平気、と口の中でつぶやかれたと思ったら、もうしっかりと重なっていた。
謹慎があけて久々の部活。終わってから公園で待ち合わせ、やってきた真喜雄の顔を見て仰天してしまう。
左の頬と額に大きなガーゼ。恥ずかしそうに目をそらすと、転んだ、と小さな声で言われた。
「・・こ、転んだにしては、ダイナミックだね・・・」
「うん・・・ミニゲームしてて、転んで、相手も転んでもみくちゃになった」
「びっくりしたよ・・・・」
ちょっと心臓が冷えた。近づいてガーゼの上から触れると、ぷいっと背けられた。
「あ、ごめん」
「・・・ちょっと、触られるの嫌だ・・・」
「ごめん。痛いよね」
「・・・それもあるけど・・」
言いながら、ベンチに腰掛けた。顔の右側しか見えない。
「・・・見られたくないの?」
「・・・うん」
「どうして?」
「・・・ダサいじゃん」
「は?」
「ダサいだろ・・・。転んでこんな・・・鼻血も出たし」
別に、ダサいなんて思ってないんだけどな・・・。そもそもなぜ真喜雄がそういう風に思うのかが不思議だった。必死にボールを追いかけていれば誰だって起こりうる事故なはずなのに。
むしろかっこいいんじゃないかな。これだけ熱中できることがあるんだって、僕は羨ましいのだけれど。
「ダサくないよ。かっこいいよ」
「・・・だって顔、こんなんだぜ」
ぺろっとガーゼをめくると、痛々しい擦り傷が出てきた。僕の顔まで痛くなってくる。思わず顔をしかめ、そっとガーゼを貼りなおした。
「空気にさらしたら痛いよ。ちゃんと貼って。うーん、顔がムズムズしてきたよ」
「・・・透吾は卵みたいなきれいな肌なのに・・・おれ焼けてるし、傷ばっかだし・・」
そんなこと気にしていたのか、全然気にならないんだけどなあ。真喜雄は時々変なことを気にする。かっこいいなと思っていることをダサいというし、変なのと思っていることに対して肯定してみたり。もしかしたら僕と真喜雄は考え方がまるっきり逆なの名
かもしれない。あまりにも真逆すぎるから、惹かれたのかもしれない。
少し笑うと、じろっと睨まれた。
「何」
「真喜誰が気にしていること、僕は本当に気にならないんだけどなーって。夢中になってボールを追いかける姿を想像したらすごくかっこいいし、それで転んでも心配はするけどダサいなんて思わないよ。今だって顔を見て心臓バクバクしたよ。喧嘩したのかなとか、ぶつけたのかなとか、心配になっただけだから・・・ダサいだろって言われて、ちよっとびっくりした」
「・・・本当に?ダサくない?」
「うん。傷が残ったって、将来あの時の傷だなって思い出せるし、思い出せるってことは、僕が君の隣にちゃんといたんだって証明にもなる」
「・・・なるほど」
「だから、ダサいなんて思わないよ」
「・・・うん。じゃあ、おれもそう考えるの、やめる」
顔がこちらに向いた。やっぱり大きなガーゼ。撫でると、少し目元をひくつかせたけど、ぎこちなく笑った。やっぱ痛い、と言われてなぜかつられて笑ってしまった。
右側の口元に唇を押し付ける。キスは平気、と口の中でつぶやかれたと思ったら、もうしっかりと重なっていた。
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