水色と恋

和栗

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甘い甘い

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「今の透吾可愛い」
「可愛い、透吾」
「・・・可愛い。触りたい。いい?」
可愛い、可愛い、可愛い。
その言葉を最近頻繁に口にする。
無自覚だろうか。言ってる本人はひどく真面目で、だから突き放すことができない。
爪綺麗、可愛い、と小さく呟くと、ぱくりと口に押し込んだ。
「・・・お、美味しい?」
「ん?しょっぱいかな」
「・・・そう」
「・・・なぁ、明日うち来ないか?」
「え?部活は?」
「終わった後」
「・・・いいけど、珍しいね」
平日に家に呼ばれるなんて珍しいことだった。そっと顔を傾けると、優しく唇を重ねられる。
「嫌だったか?」
「え?ううん。・・・ただ、珍しいなって思っただけ」
「・・・最近気持ち的にも物理的にも透吾を独り占めしてない気がするから、来てほしい」
指先がピリピリと痺れた。
確かに僕も感じていた。
部活も勉強もそこまで忙しくないし、自主トレーニングだって一緒にしてるのに、なんだか物足りない。
理由はわかっている。
時々お昼に田所くんが加わったり、宮田くんや山田くんに声をかけられたり、忙しないこともある。多分普通の人は全然苦じゃない他人とのやりとりを、僕は苦にしてしまうから疲れてしまうし、余裕もなくなってしまうのだ。少なからず真喜雄もそうかもしれない。
真喜雄だけに集中していた僕のすべてが、今、分散されている気がするのだ。
「ごめん、ほったらかしていたかな」
「ううん。違う。・・・甘えたいだけ」
「・・・可愛い」
「・・・透吾・・・おれ透吾と付き合うまで、自分がこんなにヤキモチ妬きだって知らなかった」
「僕もだよ。ヤキモチって言葉、無縁だと思っていた」
「・・・可愛い」
「君だって可愛い」
「甘えていい?」
「いいよ。僕のことも甘やかしてね」
頭を撫でると、んふ、とやらしい笑い方。つい、つられて笑ってしまった。



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