水色と恋

和栗

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パンツ

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「・・・おれ、勝手に、透吾って白ブリーフ履いてるんだと思ってた」
「・・・つねるよ?」
ビクリと肩が揺れた。そわそわしながらチラチラとこちらを見て、パンを食べている。
小学校の頃も、中学の頃も言われた事だった。
いわゆる、坊ちゃんに見えるらしいのだ。
だからってなぜ白ブリーフを連想するのか。白ブリーフに罪はないけど、腹立たしい。
「ご、ごめん・・・」
「許さない」
「え、それは困る。ごめん。ごめんな」
「・・・」
「・・・おれ、小6まで履いてたけど・・・」
「あ、そう」
「ついこの間までトランクスだったし・・・」
「・・・え?そうなの?」
「うん・・・」
それはそれでびっくりする。
擦れて痛くないのだろうか。
というか、フィット感とかどうなんだろう。トランクスをすっ飛ばしてボクサーブリーフを履いてしまったので、想像しかできないけど、スポーツには不向きじゃないだろうか。
真喜雄は少し顔を赤らめてパンをかじった。
「ここで、初めてした時も、その、トランクスだったし・・・」
「見てなかった。でもホテルの時はボクサーだったよね?」
「・・・周りからも、その、ボクサーの方がいいぞって言われてたんだけど、なんか踏ん切り付かなくて・・・。でも透吾が履いてるの見て、同じがいいなって思って、履いてみた・・・」
「・・・可愛い」
さっきの不機嫌なんて一気に消え去った。可愛い。すごく可愛い。
近寄ると、少し嫌がって顔を背けた。
首まで真っ赤。
「ね、見せてよ。パンツ」
「え!い、嫌だよ・・・」
「僕がブリーフ履いてたら、真喜雄もブリーフにしてたの?」
「多分・・・走る時とか、楽だし・・・」
「へぇー。ボクサーはどう?」
「結構楽・・・ちょっと圧迫感あるけど。トランクスは開放感あったから・・・」
「ふーん。どんなの履いてるの?参考までに、見せてほしいな」
「え?うん。・・・あー・・・おれ、ダメなんだよ、今みたいな流れ。危ねぇ・・・」
残念。思わず舌打ちをしそうになった。
真喜雄は顔を擦った。多分本当に、今みたいな流れが苦手なのだろう。素直で真面目すぎるのも考えものだ。
つんつんとベルトのバックルを突くと、大げさに腰が跳ねた。
「ちょ、」
「部室では脱いでるんじゃないの?」
「・・・部活は、別だし・・・」
「えー、僕には見せられないの?どうしてよ」
「え、ぅ・・・だって、透吾は、その・・・」
「・・・もういいや。無理言ってごめんね」
諦めたフリをして距離を取ると、ぐっと腕を掴まれた。
顔を真っ赤にして俯いたまま、真喜雄はもごもごと口動かした。
「・・・ちょっとなら、いい・・・」
「いいよ、無理しないで」
「・・・無理じゃない、けど、その、」
おずおずと、ベルトに手をかけた。あ、ゾクゾクする。
意地悪すると、なんだか、何かが、満たされる。嬉しくなる。意地悪してるのに、甘やかしたくなる。
「・・・あの、今、履いてるの、これ・・・」
「・・・いい色だね、似合ってる」
ジッパーを下ろして見えたのは、水色のボクサーパンツだった。
少し膨らんで見える。触りたい。ぞわぞわする。
「・・・あの、」
「もっとおろして」
「う・・・あ、あの、その、」
「勃ってるの?僕もだよ」
手を引いて触れさせる。厚い唇から短く、熱いため息が漏れた。我慢できずキスをする。次の授業までまだ時間はある。
貪るようにキスを繰り返し、肩を掴んで押し倒す。バランスを崩したように倒れこんだ真喜雄は、僕のベルトを外した。
「・・・グレーだ。似合う・・」
「真喜雄も水色似合うよ。好きなんだね。よく持ってるもんね」
「あ、ぅん・・・」
目をそらされた。恥ずかしそうに視線を漂わせると、またこちらを見る。
「・・・透吾の、イメージ、だから・・・水色・・・」
「え?苗字が水出だから?」
「違う・・・名前、知らない時から、水色だなって思ってた・・・。なんでだろ、イメージ」
「へぇー。真喜雄は緑かな」
目をパチクリ開いて、首を傾げた。
たしかに一番縁のない色かもしれない。ユニフォームは赤と黒だし、カバンは青か白だし、持ち物も緑なんて見たことないし。
いつもそこにいるって安心感があって、なんとなく、そう思ったんだ。
イメージって不思議だ。
「今度緑のパンツプレゼントするね」
「え、う・・・履けない、」
「なんで」
「もったいない・・・」
「これから何枚だってプレゼントするよ。だから履いてね」
唇を塞ぐ。パンツの上から硬くなりつつあるペニスを撫でると、ひくりと腰が跳ねた。きゅっと唇を結んで、僕の手の動きを見ている。もっと見て、興奮して欲しい。たくさん触れて、溶かしてしまおう。







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