群青色の約束

和栗

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イエロー・ハッピー12

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「・・・採用だって」
家族がわっと歓喜した。僕はどっと力が抜けた。
「よかったねー!しかも市内だし、家から通えるじゃん!」
「うん・・・」
「今日の晩御飯、どこか食べに行こうか。お父さんには帰ってきてから伝えなさい。今連絡なんかしたら早退してきちゃいそうだし」
お母さんとお姉ちゃんはニコニコしていた。それを見て、僕もやっと実感が湧いてきた。
「あの、ちょっと出てきてもいいかな・・・」
「蓮二くんとこ?」
「うん。蓮ちゃんも今日なんだ」
メールをして家を出る。ぴゅうっと強く風が吹いた。顔、痛いな。
ドキドキする。蓮ちゃんは11月末に面接をした。
僕は10月に試験を受けた。
連絡は2人とも今日だった。
電話で聞けばいいし、伝えればいいことだけど、居てもたっても居られず歩き始めてしまった。
携帯が震えて慌てて画面を見ると、蓮ちゃんから電話だった。
「もしもし!」
『もしもし?もう外?』
「うん」
『今日雪って言ってたぞ。家にいろよ。おれが行くから』
「え・・あ、でももう、結構歩いてきちゃった・・。駅にいてもいい?」
『・・公園いて。おれバイクで行くわ』
通話が終わった。西口にある大きな公園へ目指す。空がどんより曇っていた。そっか、今日雪の予報なんだ。
ベンチに座ってそわそわしていると、バイクの音が聞こえた。慌てて駐輪場へ歩いていくと、前とは違うバイクに乗った蓮ちゃんがヘルメットを外していた。
「佑」
「蓮ちゃん、」
「・・・結果、きたのか」
「うん」
「おれもきた」
「・・・ど、どうだった?」
バイクを降りて、僕の前に立った。真面目な表情が一気に笑顔に変わった。胸が高鳴る。
「採用!」
「よかった!!嬉しい!!」
「佑は?」
「僕も!!ほら、これ・・・」
「やったぁ!!おめでとう、佑!!」
「蓮ちゃんもおめでとう!!」
強く抱きしめてくれる。抱き返すと、カランと杖が落ちた。
「めっちゃくちゃ緊張した。受かってるとは思ってたけどさ、変にドキドキしちまって・・・。さすが佑だな」
「僕も、蓮ちゃんなら絶対採用だって思ってたけどドキドキしてた・・。よかったぁ・・・。お祝いしようよ。何かしたいことない?ほしい物とか・・」
「めっちゃくちゃエッチしたいし、佑がほしいな」
子供みたいな笑顔でさらっとスケベなことを言うから、大笑いしてしまった。
頬を軽くつねると、痛いって、と眉を寄せた。でも、笑ってる。
「今日はちょっと、時間的に無理だけど・・・冬休みに入ったら、・・・」
「マジで?いいの?約束だからな」
「ん・・。蓮ちゃん、本当に本当に、おめでとう」
「佑も、おめでとう」
「・・・大人になっちゃうんだね、僕ら」
ちょっと不安がよぎった。
年が明けて春になったら、僕と蓮ちゃんはきっと会う回数が減ってしまう。
僕は土日祝日休みだけど、蓮ちゃんは不規則だ。研修が終われば夜勤もあるだろう。僕の不安が伝わったのか、蓮ちゃんは顔を寄せて唇を押し付けた。
「大人になったら、自分で稼いだお金でいろんなことできるぜ」
「そうだね」
「ホテル行き放題だしな」
「本当に、スケベだなぁ」
「旅行も行ける」
「そうだね。ほしい物なんでも買えちゃうや」
「家を出ることもできるな」
「あ、そうだね。蓮ちゃん出る予定なんだ?」
「そりゃ、ずっとあの家にいるわけにはいかないだろ。藤一が嫁さん連れてくるかもしれないし、店自体がなくなっちゃうかもしれないし」
「お店はなくならないでしょ・・・やめてよ、不吉だな」
「あはは!・・・佑」
「え?」
「・・家を出る時は、佑のこと連れて行くからな」
「・・・へ!?」
「離さねぇからな。覚悟しろよ。言ったろ、卒業したら時間くれって。いいよっつったもんな!」
2年生のころの会話を思い出す。確かあれは、野球部のマネージャーに誘われていて断った時に言われた言葉だった。
え、こういうことだったの!?
蓮ちゃんはにこーっと笑うと、またキスをした。



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