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第二章 わたし、めりーさん
7.現状把握
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沢村が教室に一人、突っ立っているのが見えた。扉に手を掛け、「ここにいたのか沢村」と訊けば、パッと振り返った。沢村の目が丸くなる。
「黒川くん……何処にいたの?」
沢村にしては覇気のない声だ。
「俺は空き教室に誰もいないか確認してきた。月島たちはいるか?」
「月島くん? 見掛けてないわ。千堂くんも、何処に行ったのかしら。立川くんは多分帰ったと思うけど」
クラスメイトはみな、気味悪がりながらも帰宅した。大方、千堂も逃げ帰ったに違いない。どうせ立川の後をついて回っているのだろうな。
「千堂くんたちも呼ぶの?」
「情報はより多いほどが良い」
「確かに……今の状況で、メリーさんが誰か当てられないもんね」
「ああ、刻限が定まっている以上、今からでも行動した方が良い。月島のことは仕方ない。あいつと情報共有するのは明日でも良いだろう。お前だけでも構わない」
「じゃあ移動する?」
「いや。お前だけなら、移動しなくても良いだろ」
俺は教室へと足を踏み入れた。日の光がちょうど、色合いを変えようとしている。机に映る橙色へ影が交わり始めている。もう日が暮れる頃だ。
自分の机に腰を掛け、「勿論自宅まで送ってやる」と告げれば、「やだ、紳士的……」と返ってくる。もう何も言うまい。
「ともかく有難う。ルールでも確認する?」
「そうだな。一番の手掛かりはメールにある」
「えーと、『ゲームは簡単。私がこの中の誰か、探してみて。もし全部間違えたら、貴方たちの命を貰うわ。とっても楽しみよ。猶予は三日間。一日に、一度だけ。回答のチャンスを与えるわ。その代わり、一日ずつ貴方たちから一人の命を食べちゃう。でも泣かないで。ヒントだって与えちゃうから。占いが出来る人、守ることが出来る人、私たちを見届ける人、答えを知る人。貴方たちは頑張ってね。全部外したら、貴方たちの命は全部私のもの』。ううんと、とにかくメリーさんが誰なのかを探すのよね」
「ああ。このメールが教室にいた全員に行き渡っていることを考えるに、おそらくメリーのフィールドはこの教室にいる生徒たちだ。つまり、このクラスの中の誰かがメリーに……簡潔に言えば、憑りつかれている状態と言うべきか」
「憑かれている……?」
「鏡の怪異は展開と同時に、フィールド内にいた俺たちをターゲットにした。つまり俺たちはマーキングされていた状態だった。だが今回は違う。もしメリーが俺たちの誰かに憑りついているのであれば、俺たちはみなターゲットであると同時に、フィールドを展開するために必要なスポットでもあるんだ」
「なるほど……??」
沢村が分かっていないような顔で頷いている。
「お前が鳥頭だと知っている。無理に理解しなくて良い」
「ちょっと? 私の脳みそが小さいとでも?」
「違うのか」
意外そうに言えば、「黒川くん~~?」と声を跳ね上げた。じとりとした目で見られ、流石に弄り過ぎたかと思ったが、相手は沢村だ。まあいいか、と放置することにした。
「俺たちの中にメリーがいて、そいつが誰なのか突き止めるのが、一番の正攻法だな」
「猶予は三日間ってことは、今日も含めれば明後日の夜までがタイムリミットってことね」
「時間がかなり無いな。四十人の内の一人。人格も乗っ取られているのか不明だ。仮に本人にメリーだと言う自覚が無ければ、白も同然だからな。探すのは困難だ」
「……黒川くん。私、何にも対策が思いつかないのだけれど」
絶望した顔で言いきられても困るんだが。まあ、教室内の情報収集は沢村に適していない。自分に合わないことをしても仕方がない。
「まずは月島に情報を集めさせる。普段と言動がおかしい奴を洗い出すしかない。出遅れることにはなるが、明日月島に頼まないとな」
「そうね。明日の朝、月島くんに会ったら、私も頼んでみるわ」
「ああ、お前の言葉なら素直に受け取るだろうしな」
俺から言っても、沢村の命が掛かっている以上、月島は動くだろう。だが奴には餌を与えた方が良い。沢村から頼む、と言う行為が重要だ。
「黒川くん……何処にいたの?」
沢村にしては覇気のない声だ。
「俺は空き教室に誰もいないか確認してきた。月島たちはいるか?」
「月島くん? 見掛けてないわ。千堂くんも、何処に行ったのかしら。立川くんは多分帰ったと思うけど」
クラスメイトはみな、気味悪がりながらも帰宅した。大方、千堂も逃げ帰ったに違いない。どうせ立川の後をついて回っているのだろうな。
「千堂くんたちも呼ぶの?」
「情報はより多いほどが良い」
「確かに……今の状況で、メリーさんが誰か当てられないもんね」
「ああ、刻限が定まっている以上、今からでも行動した方が良い。月島のことは仕方ない。あいつと情報共有するのは明日でも良いだろう。お前だけでも構わない」
「じゃあ移動する?」
「いや。お前だけなら、移動しなくても良いだろ」
俺は教室へと足を踏み入れた。日の光がちょうど、色合いを変えようとしている。机に映る橙色へ影が交わり始めている。もう日が暮れる頃だ。
自分の机に腰を掛け、「勿論自宅まで送ってやる」と告げれば、「やだ、紳士的……」と返ってくる。もう何も言うまい。
「ともかく有難う。ルールでも確認する?」
「そうだな。一番の手掛かりはメールにある」
「えーと、『ゲームは簡単。私がこの中の誰か、探してみて。もし全部間違えたら、貴方たちの命を貰うわ。とっても楽しみよ。猶予は三日間。一日に、一度だけ。回答のチャンスを与えるわ。その代わり、一日ずつ貴方たちから一人の命を食べちゃう。でも泣かないで。ヒントだって与えちゃうから。占いが出来る人、守ることが出来る人、私たちを見届ける人、答えを知る人。貴方たちは頑張ってね。全部外したら、貴方たちの命は全部私のもの』。ううんと、とにかくメリーさんが誰なのかを探すのよね」
「ああ。このメールが教室にいた全員に行き渡っていることを考えるに、おそらくメリーのフィールドはこの教室にいる生徒たちだ。つまり、このクラスの中の誰かがメリーに……簡潔に言えば、憑りつかれている状態と言うべきか」
「憑かれている……?」
「鏡の怪異は展開と同時に、フィールド内にいた俺たちをターゲットにした。つまり俺たちはマーキングされていた状態だった。だが今回は違う。もしメリーが俺たちの誰かに憑りついているのであれば、俺たちはみなターゲットであると同時に、フィールドを展開するために必要なスポットでもあるんだ」
「なるほど……??」
沢村が分かっていないような顔で頷いている。
「お前が鳥頭だと知っている。無理に理解しなくて良い」
「ちょっと? 私の脳みそが小さいとでも?」
「違うのか」
意外そうに言えば、「黒川くん~~?」と声を跳ね上げた。じとりとした目で見られ、流石に弄り過ぎたかと思ったが、相手は沢村だ。まあいいか、と放置することにした。
「俺たちの中にメリーがいて、そいつが誰なのか突き止めるのが、一番の正攻法だな」
「猶予は三日間ってことは、今日も含めれば明後日の夜までがタイムリミットってことね」
「時間がかなり無いな。四十人の内の一人。人格も乗っ取られているのか不明だ。仮に本人にメリーだと言う自覚が無ければ、白も同然だからな。探すのは困難だ」
「……黒川くん。私、何にも対策が思いつかないのだけれど」
絶望した顔で言いきられても困るんだが。まあ、教室内の情報収集は沢村に適していない。自分に合わないことをしても仕方がない。
「まずは月島に情報を集めさせる。普段と言動がおかしい奴を洗い出すしかない。出遅れることにはなるが、明日月島に頼まないとな」
「そうね。明日の朝、月島くんに会ったら、私も頼んでみるわ」
「ああ、お前の言葉なら素直に受け取るだろうしな」
俺から言っても、沢村の命が掛かっている以上、月島は動くだろう。だが奴には餌を与えた方が良い。沢村から頼む、と言う行為が重要だ。
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