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第五章 アトルの街編
幕間 神々の女子会5
しおりを挟む──例の「誓約」そろそろ解除してくれませんか?もうカミリッカさんは俺だけの師匠ではなく、人々を導く愛の女神カミリッカ様なのですから。何かあってはこの世界の人達に申し訳ないです。よろしくお願いしますね。ちゃんと解除してくださいよ。本当にお願いしますからね。
『その必要はありません』
そう、そんな必要は無い。トキオ様が悪しきことに力を使うなど有り得ないのだから。
「・・・強情だね、夏ちゃんも」
「そもそも、創造神様はトキオ様に力を与えた時点ですべてを受け入れられているわ。トキオ様が何に力を使おうと、それは創造神様がお認めになったこと。悪しきことに力を使ったと判断されることはない。知ちゃんだってわかっているでしょ」
「勿論わかっているよ。だからこそ、解除してあげてもいいんじゃない?もしかして・・・私達は「誓約」で繋がっているとか思っているんじゃないの?」
「・・・・・・・・・」
「図星じゃん!」
くっ、流石はトキオ様の妹、普段はのほほんとしていても勘が鋭い。
「解除してあげなよ」
「嫌!知ちゃんは兄妹だからトキオ様とは切っても切れない縁があるけれど、私には何も無いもの」
「それ本気で言っているの?夏ちゃんはお兄ちゃんの師匠じゃん。それを認めていないのは夏ちゃんだけだよ」
「師匠なんて烏滸がましい。トキオ様は私なんかが指導しなくても、いずれお強くなられていたわ」
「そうかなぁ・・・夏ちゃんじゃなきゃお兄ちゃんはあそこまで強くなろうとしなかったと思うけど・・・あと、やっぱり、あの女神像は無いんじゃない?」
「あの女神像だけは絶対に譲れない!」
「はい、はい。加護、授けなくていいの?お兄ちゃん行っちゃうよ」
「そうだ!」
フッー、あぶない、あぶない。無事に加護を授けられた。これでまた、トキオ様と一つ繋がれた気がする。頑張ってください、トキオ様。
♢ ♢ ♢
──俺は愛の女神よりエロの女神の方がカミリッカさんには合っていると思うんですが、いかがでしょうか・・
「なっ、トキオ様、いったい何を・・」
「フフフッ、やっぱり夏ちゃんはお兄ちゃんにもエロいと思われていたんだ」
「私はエロくなんてない!」
拙い、拙い、拙い・・・まさかトキオ様がこんな手段に出られるなんて・・・甘く見ていたわ・・・
──リッカ教は始まったばかりですから、今なら愛の女神ではなくエロの女神カミリッカ様に変更も可能だと思いますよ。弟子である俺の強い希望だと言えば、デラクール神父も聞かない訳にはいかないんじゃないかと・・
「諦めなよ・・・本当に、エロの女神カミリッカ様になっちゃうよ」
うぅぅぅぅ、致し方ない・・・
『解除した・・・』
負けた。
もう、私のセクハラで顔を真っ赤にしていたトキオ様ではないのですね・・・少し寂しいけれど、それもトキオ様の成長と思えば嬉しいこと。
「なんで達観した表情なの?本当は悔しいんでしょ?」
くうぅぅぅぅ、無理矢理自分を納得させようとしているのに、知ちゃんめ・・・
「しょうがないでしょ!デラクールの性格なら、トキオ様に言われれば本当にエロの女神に変えかねないもの」
「それはそれで、有りだと思うけど」
「ないわよ!」
♢ ♢ ♢
──妹の友達になってくれて、ありがとうございます
何をおっしゃっているのですか、お礼を言うのは私の方です。神界で知ちゃんと出会わなければ、私は女神になどなれていません。
「・・・・・・・・・」
「どうしたの、知ちゃん・・・泣いているの?」
「泣いでなんでいなびもん・・・」
「いや、全然隠せてないから・・・」
「う、うるさい、エロ女神!」
「なによ、泣き虫女神!」
暫しの睨み合い。数秒後、同時に吹き出す。
「「アハハハハッ!」」
「今のは私の勝ちだね。夏ちゃんの方が先に反応したもん」
「えぇ、知ちゃんが先よ。私見ていたんだから」
「んー、じゃあ、同点でいいよぉ・・・」
「そういうことにしておいてあげる」
「フフフッ」
「ハハハッ」
くだらないことで笑い合える友が居る、幸福には欠かせない条件の一つ。やはり、感謝するのはトキオ様ではなく私の方だ。
「それにしても、夏ちゃんの想いを汲み取ってすぐに食堂を移築させるなんて、流石はお兄ちゃんだね」
「当然!トキオ様と私は心が繋がっているもの」
「「誓約」の解除、渋っていたくせに」
「だって・・・トキオ様との繋がりは、たとえリスクでも大切にしたいから・・・」
「そういうの、ヤンデレって言うんだよ」
「違うわい!」
「「アハハハハッ!」」
モニターに目を向けると、決意に満ちた瞳でトキオ様を見送るデラクールとニモが映し出されている。あなた達なら大丈夫、トキオ様が命名してくださった立花亭を守っていける。愛をもって、沢山の人々を救ってあげてね。もし、迷うことや困ったことがあれば、トキオ様を頼りなさい。必ず、正しい方向へ導いて下さるから。
「あの看板、超目立つね!」
「うん!きっと、あの赤い風船の女の子が沢山の子供達を救ってくれる」
トキオ様を乗せた馬車がアトルの街をでる。だけど寂しくなんてない。一度来た場所であれば転移魔法を使えるトキオ様ならいつでも来られるから。今は帰ってしまわれる寂しさよりもトキオ様の世界が広がった嬉しさの方が大きい。
世界が広がれば広がるほど、物語の内容も濃くなっていく。これからどのように物語が進んでいくのか楽しみでならない。だって、主人公は私の恩人で、私のヒーローで、私の友達のお兄ちゃんで、私の弟子なのだから。
神々の女子会は続く・・・
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