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第三章 学校編

第十二話 妹よ、俺は今二度目の襲撃を受けています。

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「お待たせしました」

 セイ ジョウデンの話で盛り上がっていた来客室に子供達の夕食準備を終えたマザーループとシスターパトリが現れる。

「マザーループ、シスターパトリ、遂に学校が完成しました」

 先に声を上げたのはシスターパトリだった。

「やったー!」

 拳を突き上げて喜びをあらわにするシスターパトリに、すかさずマザーループからお叱りが。

「パトリ!あなたにシスターとしての自覚は無いのですか。気持ちはわかりますがもう少し・・」

「御言葉ですがマザー、私は嬉しい時に喜びを素直に表現するのが悪いことだとは思いません。マザーだって心の中で喜びのあまり小躍りしているのが表情から丸わかりですよ」

「・・・・・・・・・」

 おお!シスターパトリがマザーループを言い負かすところを始めて見た。

「お二方とも席にお着きください。備品の搬入や子供達の引っ越し、教会移築の日取りなど決めなければならないことは沢山ありますよ」

「そうですよ、マザー。喜ぶのもいいですが、その前にすべきことがあるのですからね」

「パトリ、あなたがそれを言いますか・・・」

 あきれ顔のマザーループとニコニコしたシスターパトリが席に着き、ようやく全体会議が始まる。

「まず、子供達の引っ越しですが予定通り十日後に行いましょう。それまでに新居で使う備品の搬入を終わらせなければなりません。基本的には現在孤児院で使っているものをそのまま使いますのでシスターパトリが中心となって予定日前日までに荷物を纏めておいてください。予定日迄に使う予定が無い物は荷物が纏まり次第、随時俺が新しい寮の方へ運んでおきます。オスカーはシスターパトリの指示に従って荷物纏めを手伝ってくれ」

 今の季節に使わない物から始め、食器や寝具など移転当日まで使う物を除きできるだけ早めに運び出したい。マジックバッグがあるので運ぶには問題ないが、総勢四十名近い人数の生活用品は設置や片付けるだけで相当な時間が掛かってしまう。できることは前もってやっておく必要がある。

「これまでに準備していただいた学校で使う備品は俺とサンセラが搬入します。包装されている物などは品名を記載してわかるようにしておいてください」

 同時に学校で使う備品を設置するのにも時間が掛かる。図書室に本を並べるだけで一仕事だ。

「当日は子供達に制服を着せマザーループとシスターパトリが引率して移動をお願いします。その間に教会を移築しますので、集団行動の練習や社会見学だと思ってトロンの街をゆっくり回ってきてください。これは制服を着た子供は学校の生徒だと街の人に知ってもらうのも兼ねています。午後三時ぐらいの到着予定でお願いします。マーカス、警護は任せたぞ。オスカーも協力してくれ」

 当日は俺とサンセラで教会を移築する為、警護はマーカスが中心になる。若干の不安はあるが、ここはマーカスとオスカーを信じよう。S級冒険者のマーカスに喧嘩を売る輩がそうそう居るとも思えん。

「マザーループ。寮母をしていただける方にも連絡をお願いします。当日の夕食は俺が準備しておきますので、手伝いをお願いしたい。午後二時くらいまでにお越し願えればありがたいです。移転から三日後、始業式を行いますのでマザーループ名義で参加者への招待状もお願いします」

「わかりました」

 移転から二日間は新しい生活の準備。三日目が始業式の予定だ。始業式にはブロイ公爵やギルド長をはじめ街の有力者にも参加を呼び掛ける。子供は親や学校だけでなく地域全体で育てるもの。それと同時に協力的か否かを確認しておきたい。

「はい、はーい!」

「どうぞ、シスターパトリ」

「私にもっと仕事をください。居ても立っても居られません」

「ズルい、シスターパトリ。先生、それなら私をもっと使ってください」

 子供達だけでなく教える側の教師も楽しみにしてくれてなによりだ。

「安心してください。他にもやらなければならないことは山ほどあります。残り十日間、皆で頑張りましょう」

「「「はい!」」」

 いい感じで会議がしまったところでマザーループが手をあげる。

「マザーループ、何かありましたか?」

「はい、一つ大切なことを決めていません」

 んっ、何か見落としていたか・・・

「私とパトリ、あと冒険者ギルドの依頼という形を取っているマーカスさん以外のトキオさん、サンセラさん、オスカーさんの給金を決めていません」

 考えてもいなかった・・・そうだよな、俺はとサンセラはともかくオスカーをただ働きさせる訳にはいかない。流石はマザーループだ。

「そうですね、失念していました。オスカーの給金はどれ程が妥当なのか俺には想像もつきませんのでマザーループにお任せします。勿論、俺とサンセラには給金など必要ありません」

「ダメです。トキオさんとサンセラさんにも受け取っていただきます。教会が運営する学校でただ働きをさせるなど、慈悲の女神チセセラ様の教えに反します。オスカーさんは金貨五十枚、サンセラさんは金貨六十枚、トキオさんは金貨百枚でいかがでしょうか」

「も、貰い過ぎです。なんで俺だけ金貨百枚なんですか!そのお金は子供達の為に使ってください。お願いします」

「ダメです」

 勘弁してくれ。支援金が支給されるとはいえ人件費に金貨二百枚以上は使いすぎだ。いつ纏まった金が必要になるかわからない今、少しでも教会には貯えを残しておくべきだ。

「俺が採用をお願いした三人の分まで教会のお金を使う必要はありません。サンセラ、オスカー、マーカスには俺が払います」

「ダメです」

 面倒くせー。こうなったマザーループは厄介だぞ。ここは・・・値切るしかない!

「いくらなんでも金貨百枚は貰いすぎです。お気持ちだけ頂くということで俺の給金は金貨五枚で結構です」

「ダメです」

「金貨十枚!」

「ダメです」

 なんだこれ・・・値切っているのか値上げしているのかどっちだよ!

 その後サンセラとオスカー、マーカスまで依頼料の値下げ交渉を始め会議は踊る。一歩も譲らないマザーループに、それならば匿名で給金を全額教会に寄付すると言い出したオスカーの言葉が決め手となり、給金を寄付しない代わりになんとか最初に提示された半額、俺が金貨五十枚、サンセラが三十枚、オスカーが二十五枚まで値下げすることに成功した。

「フフフッ、給金の値下げ交渉なんて始めて見ました」

 傍観していたシスターパトリが笑みを漏らす。
 ですよね。なんだかもの凄く疲れた・・・

「まったく、本当に皆さん強情なのだから・・・」

 マザーループ、あなたがそれを言いますか・・・


 ♢ ♢ ♢


 荒れた職員会議を終え俺とコタローが丸太小屋に戻ったのは午後十時。少し遅めの夕食を摂りオスカーと約束したマジックアイテムをどうしようか考え始めるが、なかなか良い案が浮かばない。戦闘が本職ではないオスカーには武器や防具は必要ない。変わり者のオスカーを喜ばせるのも一苦労だ。あれこれ考えを巡らしているうちに気付けば日付は変わっていた。明日からも忙しくなるし、そろそろ寝るか・・・

 !?

「トキオ様!」

「ああ、七人。教会だ。行くぞ!」

 侵入者が俺とコタローの「索敵」にほぼ同時にかかる。コタローでも破れないと言った俺の結界を、しかも七人。間違いなく結界をどうにかできるスキルを持った敵がいる。
 二手に分かれた侵入者。四人がマザーループ、三人がシスターパトリの部屋に向かっている。

「コタロー、シスターパトリを頼む。敵に指一本触れさせるな。侵入者はできる限り生かして捉えろ。最悪、人間の姿で戦うことを許可する」

「御意」

 全力で駆ける。マザーループとシスターパトリを狙った輩は絶対に許さない。

『サンセラ、聞こえるか』

『はい、緊急事態ですか?』

『教会が襲撃された。今、俺とコタローが向かっている。お前は早急にこっちへ来て孤児院を死守しろ。子供達を頼む』

『了解しました』

 一瞬で教会に到着し二手に分かれる。俺の結界を破るほどのスキルを持った敵を野放しにはできない。

「キャァァァァー!」

 シスターパトリの叫び声が聞こえた。急げ、コタロー!




「キャァァァァー!」

「大人しくしろ!抵抗すれば五体満足ではいられ・・ごぉふ」

 シスターパトリの腕を掴もうとした男の鳩尾にコタローの体当たりが炸裂する。男は壁に激突して意識を失った。

「誰だ!」

 明かりは灯っているが残った二人の男達は「隠密」で急接近したコタローを視認できない。
 先に剣を抜き闇雲に構えをとった男の頭が大きく揺れその場に膝から崩れ落ちる。燕姿のまま己の体を弾丸よりも速いスピードで敵の顎にぶつけ意識を刈り取ると、シスターパトリの肩に優しく着陸する。

「コタローちゃん・・・」

 シスターパトリを安心させるように軽く耳たぶをつつき再び黒い弾丸となったコタローは低空に飛行して残った男の背後に回ると、股を潜り抜け上昇しながら一気に加速する。そのまま顎を打ち抜き意識を刈り取った。

 大男が小鳥の一撃に吹き飛ばされる瞬間を目の当たりにしたパトリが唖然としていると、コタローは優雅に宙返りしてベッドに座るパトリの膝に優しく着陸した。いつもの愛らしい姿が今日は少しだけ凛々しく見える。「安心しろ、お前は俺が守ってやる」と言わんばかりにパトリを見るコタロー。

「コタローちゃん、凄く強かったんだね。流石はトキオさんの従魔」

 思わず話しかけたパトリに「当り前だ」と言わんばかりに胸を張るコタローを見てパトリは安堵する。ここにコタローが来ているということは、マザーのもとにはトキオが向かっているということ。こんな男達が何人来ようと彼の敵ではない。

『トキオ様、こちらは片付きました。結界破りのスキルを持った者はいません』

 戦いの最中「上位鑑定」で敵の能力を見たコタローはトキオに情報を伝える。

『わかった。しばらくシスターパトリの傍に居てやってくれ』

『御意』

 コタローはシスターパトリの顔を見ながら心を落ち着かせる。戦いの興奮ではない。この程度の人間が何人束になってかかろうとコタローにとっては羽虫を払う程度だ。コタローは怒りの心を落ち着かせようとしていた。主が大切に思う人間。自分自身も気に入っている人間が害されようとした。トキオの命令が無ければ間違いなく一瞬で命を刈り取っていただろう。シスターパトリの前でそんな姿を見せれば、今までのようにトキオと行動を共にできなくなっていたかもしれない。
 聖獣のコタローにとって人間の生涯は瞬く間に終わる。少しでも長くトキオと行動を共にしたい。トキオの護衛任務が女神様の命令だったことなど今のコタローには関係ない。コタロー自信が自らの意思でトキオと共に在りたいと思っている。コタローにとってトキオはそれ程に魅力的な人物だった。サンセラの気持ちがコタローにはよくわかる。自分も従魔の座を誰にも渡したくない。トキオのもとを離れなければならない。今のコタローにとってこれ以上の恐怖はない。



「キャァァァァー!」

 トキオから念話で連絡を受けたサンセラは一分とかからず孤児院に到着した。僅かだが聞こえたシスターパトリの叫び声に背筋が粟立つが、瞬時にコタローが対応したのがわかって胸をなでおろす。すでにマザーループの下へは師匠が駆けつけている。師匠が後れをとることなど万に一つ、億に一つもあり得ない。
 孤児院を背にサンセラは大きく深呼吸をする。意識を怒りに支配されてはならない。以前のサンセラはそんな考えを持つことはなかった。腹が立てばすべての怒りをただ相手にぶつければいい。ドラゴンとして生を受けた自分にはその権利があると思っていた。

 あの日、自分より強い人間に会いそれが勘違いだったと知った。知るのが遅すぎた。残り僅かな命を使ってでもサンセラはその人間と話をしたかった。何百年ぶりかの人語を使ってサンセラはその人間に話し掛けた。今でもサンセラはあの日勇気をだし、プライドを捨てて話しかけた自分を褒めてやりたいと思っている。
 その人間の話は兎に角面白かった。何百年もかけて培った価値観が一気に変わった。死にたくない、生きたい、もっとこの人間の話を聞きたい。気付けば弟子入りを志願していた。
 楽しい時間はすぐに終わりを迎える。師匠が旅立つ日がきた。自分は力が足りず師匠の旅に同行することができない。ならば、せめて師匠の役に立ちたい。そんな自分の気持ちをおもんぱかって師匠は大任を与えてくださった。大切な地を守れと言ってくださった。聖獣も怖くなかった。師匠との約束をたがえることの方が遥かに怖かった。
 人間の生涯は短い。師匠が約束の地に戻っても残された時間は僅かしかない。それでもまた師匠と話ができるのならかまわない。師匠が天寿を全うしても、自分は命ある限りこの地を守ると誓った。
 そんな自分を師匠が迎えに来てくださった。嬉しかった。こんな感情は師匠と出会わなければ経験できなかっただろう。自分に名誉ある名を与えてくださった師匠は、今度は足りない力を補うアイテム持って迎えに来てくださったのだ。
 毎日が楽しくて仕方がない。何百年も生きた過去より、師匠と出会ってからの数ヶ月は何倍も濃密な時間だ。残された師匠の時間を共に過ごしたい。もう離れたくない。だからこそ、自制しなくてはならない。師匠の日常に迷惑をかけるようでは共に在る資格がない。
 今回の敵は取るに足らない。こんなところでドラゴンの本能そのままに暴れていては一番弟子を名乗る資格はない。その力を使う時は師匠が危険な時のみ。師匠の身に危険が及ぶほどの相手に自分が敵う道理はない。師匠の傍にはコタロー様が控えている。自分は時間稼ぎの盾になればいい。師匠の為に死ねるなら喜んで命を差しだす。
 一度トキオとの別れを経験したサンセラにとって、トキオを守る以外の理由でトキオのもとを離れ以前のように意味のない生涯を送る生活に戻るなど、恐怖以外のなにものでもなかった。

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