12 / 129
第一章 修行編
幕間 神々の女子会
しおりを挟む「ご苦労様でした、カミリッカ」
「ありがとうございます」
トキオ様がこの世界でも十分に活動できるまで成長され、私は神界に戻った。
「心のつかえは取れましたか?」
「はい。このような機会を与えていただき感謝いたします」
前世での人生を終え、この世界の創造神様にお声がけいただいたとき、私はすぐに答えを出すことが出来なかった。
自らの不注意で青年の人生を奪った。こんな十字架を背負ったまま女神になっていいとは思えなかったからだ。
「それにしても本当に素晴らしい魂を持った青年ですね。彼が私の創造した世界をどの様に変えてくれるのか楽しみでなりません」
「トキオ様ならばこの世界を良き方向へ導いてくださると確信しております」
力を得て喜ぶよりも先に責任をお考えになる。そんなお方が間違った力の使い方をする筈がない。
この世界はこれからの数十年で大きく変わる。
「改めて聞きます。この世界の女神になってもらえますか?」
「はい。不束者ですが宜しくお願い致します」
命と心、トキオ様に二度も救われた。
これから大きく変わるこの世界、トキオ様が変えるこの世界を女神として支えていけるのなら、これに勝る喜びはない。
「修行は厳しいですがあなたなら乗り越えられます。精進してください」
「はい」
トキオ様に厳しい修行を課したのだ。今度は私がどんなに厳しい修行だろうと乗り越えて見せる。
「そうそう、彼女が首を長くして待っていますよ。顔を出してあげてくださいね」
「かしこまりました」
♢ ♢ ♢
扉越しに声を掛ける。
「女神様、カミリッカです。只今戻りました」
ゆっくりと開く扉。その先にはトキオ様の妹、この世界最初の女神様が鎮座していた。
「お久しぶりです。女神様」
「・・・・・・・」
「女神様?」
「・・・・・・・」
「知ちゃん」
「久しぶり、夏ちゃん。さあさあ、こんな所で話すのもなんだから私の部屋に行こう。すぐにお茶を用意するから待っていて」
女神の間から強引に連れてこられた彼女の私室は、前世でいうところの普通の女の子の部屋。見慣れたスナック菓子まである。
「はい、座って」
「はぁ、失礼します」
「ちょっと、夏ちゃん。さっきからよそよそしくない」
「知ちゃ・・女神様に対して失礼な態度は・・・」
「そういうのいいから。同郷の友達に女神様とか勘弁してよ。今までどおり夏ちゃん知ちゃんでいいから」
「う、うん。わかった」
神界に来て出来た最初の友人、知ちゃんこと世良知世は女神になっても何も変わらない。
「それで、どうだったお兄ちゃんは?」
「一切穢れのない魂、想像以上に素敵な方だったわ」
「でしょー。最高なんだよ、うちのお兄ちゃんは」
スナック菓子をくわえながら上機嫌な知ちゃん。前世ではほとんど病院暮らしだった彼女にとって、普通の部屋、普通の暮らしこそが何より望んだものだったのだろう。
「ところで夏ちゃん、あれはないんじゃない」
「あれって?」
「夜伽の方はいかが致しましょう?って、やり過ぎでしょ」
「だって、トキオ様の反応があまりにも可愛らしいから、つい・・・」
「なんが、ついよ、お兄ちゃんがアレしようとする度に夜襲かけたりしてさー。お兄ちゃんだって男なんだよ、もしその気になっちゃったらどうするつもり」
「その時は身も心も捧げるつもりだったわ」
「エロいよ、エロ過ぎだよ、夏ちゃん。修行が終わったらエロの女神確定だね」
「嫌よ、そんなの。せめて愛の女神とかにしてよ」
「この世界の人達もびっくりするだろうね。まさか二人目の女神がエロの女神様なんて」
それだけはなんとしても阻止せねば。修行頑張ろう。
「そうだ、あれ見せてよ。お兄ちゃんに貰ったフィギュア」
「だーめ。あれは私の宝物だから、いくら知ちゃんでも駄目」
「えー、いいじゃん」
「駄目。あれだけは創造神様でも駄目」
あの時はあまりの嬉しさに固まってしまった。トキオ様に勘違いさせてしまったようで以後貰えなかったことを思うと、上手く喜びを表現できなかったことが悔やまれる。
「いいなー。しかも誕生日にプレゼントまで渡してさー。私、気付いているからね」
「何を?」
「あの本「カミリッカのレシピ」って、見る度に思い出してもらおうと思って、あえてタイトルに自分の名前入れたでしょ」
チッ、バレたか・・・
「あーその顔、やっぱり狙ってやっていたんだ。流石エロの女神」
「エロの女神じゃない。愛の女神よ」
「いいもんね、私もプレゼント送ったから」
「何を送ったの?」
「それは着いてからのお楽しみ」
「えー、教えてよ」
「だーめ。折角の物語なんだから、ネタバレしたら面白くないじゃん」
「それもそっか」
自然と二人の目が前世のテレビを模した画面に向く。そこには森を走る主人公の姿。
物語は始まったばかり。
神々の女子会は続く・・・
197
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
Age43の異世界生活…おじさんなのでほのぼの暮します
夏田スイカ
ファンタジー
異世界に転生した一方で、何故かおじさんのままだった主人公・沢村英司が、薬師となって様々な人助けをする物語です。
この説明をご覧になった読者の方は、是非一読お願いします。
※更新スパンは週1~2話程度を予定しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない
兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる