伯父の赤いマフラー

唄うたい

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親戚付き合いというのは面倒なもので、たまたま血の繋がりがあるというだけで、年に数回、よく知りもしない大人の家に顔見せに行かねばならない。遊びたい盛りの幼い少年には退屈なイベントであった。

俺も例外ではなく、物心ついた頃には年に二度、盆の墓参りの時期と、正月の新年会の時期に、親族の集まりに連れ出されていた。

記憶に残っている中で最も古い新年会は、俺がまだ5歳の頃だったか。
俺が、父方の伯父である高村たかむら きよしと会うのは年に一度。祖母宅で行われる新年会の席のみだった。

伯父の澄は、いつも肩をすくめて地面か足元に視線を落としており、誰かが話しかけても反応を示さないか、てんで見当外れな回答を口にする。そしていつもいつも、首には赤いマフラーを巻いていた。「年季の入った」と言えば聞こえがいいが、年々すえた臭いを溜め込んでいく薄汚いマフラーは、祖母以外親族の人間を誰一人伯父に近寄らせなかった。
毎年会う季節が冬だという前提を無視しても、変わり映えのない同じマフラーを巻き続けているような、言ってしまえば「不気味」な男であったのだ。

「澄はなぁ、ばあちゃんらとちっとも話してくれんのよ。
たまに返事をしたかと思えば、てんで的外れなことばかり言うだに。困っちまうなぁ。」

幼い俺が伯父について訊ねた時、祖母は諦めを含んで返したっけ。

仕事一徹で社交的な俺の父とは似ても似つかない伯父。本当に血が繋がっているのかと疑いたくなるほどだ。
しかし、変な男であることが、幼い俺の興味を猛烈に引いたことは事実である。

幼い頃の俺は、親戚が寄り集まる長テーブルの隅でご馳走をちまちまと口にする伯父の、胡座あぐらをかいた足の間へ収まるのが好きだった。
何てことはない。伯父は俺が何をしても怒らないし、周りの大人達も、異質な伯父に易々と声を掛けるのを躊躇う。厳しい俺の実母でさえ、変人たる伯父には狼狽える。

大人同士の力関係を高みから見物するように、俺は伯父の大きな体をソファにして、悠々とご馳走を食べたものだ。
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