アンダーサイカ -旧南岸線斎珂駅地下街-

唄うたい

文字の大きさ
上 下
21 / 39
第6章 嚇【おどす】

6-3

しおりを挟む
家に帰ってからの私はまだ立ち直れずに考えこんでいた。

なんでそんな事になったのか?私はなんでそんな中途半端なところで命を落としてしまったのか?考えれば考えるほど悔しくて堪らなかった。

そしてそれは本当に私?織田信長なのか・・

そう考えるともっと詳しく知りたいと思い始めた。
そんな時、机の上の(パソコン)が目に入った。
「そうだこれがあるじゃないか!」
歌奈に使い方は教えてもらったが文字がよく分からないので、もっと学んでから使ってみようと思っていたが、自分の名前くらいは憶えておこうと書き写していたのが役に立ちそうだ。

教わった手順通りに黙々と進め「のぶなが」といれてみる「変換」だよな・・「信長」でた!そして「検索」でた!思いもかけず沢山の「信長」が出てきた!
覗き込むが…そうだ!字が読めない!
でも諦めたくない!

「やっぱり歌奈に聞こう!」

私は自分の部屋を出て歌奈の部屋を叩き話しかけた。

「歌奈ごめん。ちょっと気になった事があるから教えて欲しいんだ。」

開いた扉の向こうの歌奈は心配そうな表情を浮かべていたが、ためらいながらも私が検索した内容を細かく読んでくれた。
その内容を聞いていて自分がどんどん落ち込んでいくのが分かった。
気まずい空気が漂う中、淡々と話していた歌奈は暫くすると「三郎もういいよね」と言って部屋を後にした。


何度聞いても、何を見ても同じ史実だ。
私はその織田信長だった。
何も考えられなかった。ただただ情けなくなり。聞かなきゃよかったとさえ思った。

しかし、今の自分も情けなくこの時代に逃げて来た愚か者なのに、未来でも志を達成できずに中途半端に死んでしまうとは情けない・・もうその言葉しか浮かばなかった。
「織田三郎信長はなんて馬鹿な奴なんだ・・」思わず呟いた。



周りの明るさに目が覚めた。

どうやら寝てしまったらしい。

窓の外に目を移すとまばゆいばかりの太陽が燦燦と輝いている。

太陽はいつの時代も同じなんだな・・そんな事を思いながら暫くその光を浴びていると昨晩の憂鬱はどこかに行ってしまったように穏やかな気持ちになった。

考えてみれば・・中途半端に終わってしまう私の人生だが、その中でこんな体験が出来るなんて、これこそが誰にも真似がが出来ない貴重な人生ではないのか?
そうだ!こんな事は他の誰もしたことなはないはずだ!
この人生の中でこんなにも貴重な経験をしてるんだ!なのに落ち込んでなんていたらバチがあたる。短い人生だ。もっと楽しまなくちゃもったいない!
そして思い出した。
今度またこの時代に戻れたなら、次は絶対にここに来た意味を、尻込みせずにちゃんと探そうと決めたはずじゃなかったのかと・・
そう思うと自然と笑みがこぼれ、何だか吹っ切れた!


気持ちが落ち着くとある疑問が頭をよぎる。
昨日の二人の態度からすると、もしかして、歌奈と秀一は私の正体に気付いているのかもしれない・・
(話してみようかな?)
ふと、そんな気持ちが湧いて来た。


気を取り直した私は別人のように勉強をし直した。
過去も現在もそしてこれから起こりうるであろう未来も・・
もちろん、歴史だけではない他の事も貪欲に吸収していった。
今度、私の世界に戻ったなら躊躇まよいなくこの未来の良いとこ取りで尾張を豊かにする為に・・

そうこうしているうちに、あっという間に2か月が過ぎ・・
また新たな疑問が湧いて出た。

(そういえば前回はちょうど3か月で尾張に戻ったよな?もしかすると今回も三か月で戻るとか?そんな事じゃないのか?)

もしそうだとしたら・・自分はこんなに悠長に過ごしていて良いのだろうか?と、焦りが出る。
そうだった・・この現象はいつ終わるか分からない。こんなにのんびり構えていたら折角の貴重な時間を無駄にしてしまう。この2か月間、確かに色んな事を学んだがまだまだ足りない。
そしてまた、三か月で尾張へ戻ってしまうのだとしたら、こんなにのんびりなんかしていられない!

考えた挙句・・やはり歌奈と秀一に真実を打ち明けようと私は決心した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...