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1章 入部
10話 ゲリラフェスタ
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「ヒャッハー!! レースの時間だぜ!!」とは流石に言わないものの、学校中から生徒がグラウンドに集まり早速お祭り騒ぎの様相を呈していた。
「なんだか凄い早さで人が集まってきたわ……まるで事前に知っていたみたいに」
3年生の葉山美咲が蒼をちらりと見る。
「おい部長ー、事前にこれ知らなかったの絶対私達だけだろー」
麻矢も美咲に同調して、やれやれという顔をする。
「新入生の来る初日、派手な練習にしたいって麻矢も美咲も言ってたじゃないですか」
「あらまぁ、でもこれは少し予想を超えてきたわねぇ」
3年生達が話しているのを見て、本当に部長の独断だったのだと陽子達も察する。
「お前ら―! いつまでもぐだぐだ言ってないで準備しろー! こういうお祭り騒ぎ好きだろ? 私は好きだぞ! パリポリ」
姿を消していたロリ先生が戻ってきたが、何かを食べている。
そして手には……
「ちょっ、先生それビールじゃん! ポテチ食べてるし!」
「違うぞ! 私は勤務中に飲酒するような不良教師じゃないからな。これは理科部が試作した『ノンアルコールJKビール』だ! あとこっちは料理部名物の『ヘルシーさつま芋チップス』。……うま!」
「よこせー!」
綾乃が飛びついて若干の略奪をしている。
先ほどの放送が合図だったのだろう、事前に準備していたであろう屋台が続々とグラウンドに現れる。
「本当にお祭みたいになってきましたね……」
「あっちは園芸部の冷やしきゅうり! あ、国際交流部のトルコアイスだって!」
伊緒は屋台に目をキラキラとさせている。
何でもありかよ……と陽子が呆れていると、歌が解説してくれる。
「元々こういう校風らしいんだけど、うちの部長が生徒会長に就任してからはそれが加速してて……。たまにこうしてゲリラ的なお祭が開催されるの」
「部長、意外とやんちゃじゃないですか……よく先生達が許しますね」
「まぁ誰にも迷惑かけてないし、先生達も楽しんでるから。っていうのが本音だろうけど、一応各部の活動をアピールする場にもなるし、生徒会がしっかり運営してるから問題も起きてないんだよね」
新入生達も「なんだろ?」とグラウンドを覗きにやって来ては屋台に吸い込まれていく。
何人かはそのまま部活の勧誘を受けているようだ。
なるほど、体験入部を解禁した日にこうした催しをしてマイナーな部活にもスポットが当たるようにしているのか。と陽子は感心する。
「生徒会よりお知らせです。エントリーを締め切りましたので、出場チームはコース内へ集合してください」
校内放送で、準備が整ったことを知る。
1周300mのトラックの周りには、既に屋台の戦利品を片手にしたギャラリーが大勢集まっている。
吹奏楽部の派手な演奏とともに、校舎の壁にプロジェクションマッピングでエントリーチームが映し出された。
右下にはしっかりと「制作 映像研究部」の文字が入りアピールに余念がない。
「バスケにサッカー、ソフト部……運動部はあらかたエントリーしているようね。あ、ダンス部まで!」
「なるほど。文化部に会場を盛り上げさせ、運動部にレースを盛り上げさせるのか。賢いな」
腕を組みながら状況を見ていた瑠那も感心するほど、生徒会の手腕は見事だった。
後に明らかになるが、これが放課後のロリ先生と蒼の会話から僅か30分ほどで準備されたものとは誰も分からないほどの盛り上がりだ。
「あっエントリーチームの最後に陸上部ありました! 陸上部上級生チームと陸上部新入生チーム……私も新入生チームで走れるんですね! 先輩は走るんですか? 綾乃せんぱっ……あれ?」
花火がつい先ほどまで一緒にいた綾乃を探すが、姿はない。
「大丈夫?」と陽子達が花火に声を掛けるが、気付けば新入生4人のみを残して上級生達の姿は消えていた。
「あれ、先輩達とはぐれちゃったのかな。とりあえず花火ちゃんも一緒にスタート地点に行こうか」
「いや待て、スタート地点に先ほどまでいた運動部の姿が見えないぞ」
「というか、トラックの内側にいるの私達だけじゃ……?」
「あれれっどうしたんですかね!?」
陽子達が戸惑っていると、先ほどまで大音量で演奏していた吹奏楽がぴたりと演奏をやめる。
静寂の中でビーン……とスピーカーが鳴いた後、元気な声がグラウンド中に響き渡る。
「さぁレディースあんど……レディース! 今日も最高にアツいお祭がやってきたー! 夏の森名物ゲリラフェスタ、今回の目玉は部活対抗リレー! 実況は私、中村綾乃と!」
「解説の、かのん先生だぞー」
いつの間にか設営された矢倉の上に『実況席』と垂れ幕を掲げて座っているのは綾乃とロリ先生だ。
演劇部の大道具班が、矢倉の下で「いい仕事したな」といった顔をしている。
「早速、出場選手の入場だー! ゲートにご注目あれっ!」
「なんだか凄い早さで人が集まってきたわ……まるで事前に知っていたみたいに」
3年生の葉山美咲が蒼をちらりと見る。
「おい部長ー、事前にこれ知らなかったの絶対私達だけだろー」
麻矢も美咲に同調して、やれやれという顔をする。
「新入生の来る初日、派手な練習にしたいって麻矢も美咲も言ってたじゃないですか」
「あらまぁ、でもこれは少し予想を超えてきたわねぇ」
3年生達が話しているのを見て、本当に部長の独断だったのだと陽子達も察する。
「お前ら―! いつまでもぐだぐだ言ってないで準備しろー! こういうお祭り騒ぎ好きだろ? 私は好きだぞ! パリポリ」
姿を消していたロリ先生が戻ってきたが、何かを食べている。
そして手には……
「ちょっ、先生それビールじゃん! ポテチ食べてるし!」
「違うぞ! 私は勤務中に飲酒するような不良教師じゃないからな。これは理科部が試作した『ノンアルコールJKビール』だ! あとこっちは料理部名物の『ヘルシーさつま芋チップス』。……うま!」
「よこせー!」
綾乃が飛びついて若干の略奪をしている。
先ほどの放送が合図だったのだろう、事前に準備していたであろう屋台が続々とグラウンドに現れる。
「本当にお祭みたいになってきましたね……」
「あっちは園芸部の冷やしきゅうり! あ、国際交流部のトルコアイスだって!」
伊緒は屋台に目をキラキラとさせている。
何でもありかよ……と陽子が呆れていると、歌が解説してくれる。
「元々こういう校風らしいんだけど、うちの部長が生徒会長に就任してからはそれが加速してて……。たまにこうしてゲリラ的なお祭が開催されるの」
「部長、意外とやんちゃじゃないですか……よく先生達が許しますね」
「まぁ誰にも迷惑かけてないし、先生達も楽しんでるから。っていうのが本音だろうけど、一応各部の活動をアピールする場にもなるし、生徒会がしっかり運営してるから問題も起きてないんだよね」
新入生達も「なんだろ?」とグラウンドを覗きにやって来ては屋台に吸い込まれていく。
何人かはそのまま部活の勧誘を受けているようだ。
なるほど、体験入部を解禁した日にこうした催しをしてマイナーな部活にもスポットが当たるようにしているのか。と陽子は感心する。
「生徒会よりお知らせです。エントリーを締め切りましたので、出場チームはコース内へ集合してください」
校内放送で、準備が整ったことを知る。
1周300mのトラックの周りには、既に屋台の戦利品を片手にしたギャラリーが大勢集まっている。
吹奏楽部の派手な演奏とともに、校舎の壁にプロジェクションマッピングでエントリーチームが映し出された。
右下にはしっかりと「制作 映像研究部」の文字が入りアピールに余念がない。
「バスケにサッカー、ソフト部……運動部はあらかたエントリーしているようね。あ、ダンス部まで!」
「なるほど。文化部に会場を盛り上げさせ、運動部にレースを盛り上げさせるのか。賢いな」
腕を組みながら状況を見ていた瑠那も感心するほど、生徒会の手腕は見事だった。
後に明らかになるが、これが放課後のロリ先生と蒼の会話から僅か30分ほどで準備されたものとは誰も分からないほどの盛り上がりだ。
「あっエントリーチームの最後に陸上部ありました! 陸上部上級生チームと陸上部新入生チーム……私も新入生チームで走れるんですね! 先輩は走るんですか? 綾乃せんぱっ……あれ?」
花火がつい先ほどまで一緒にいた綾乃を探すが、姿はない。
「大丈夫?」と陽子達が花火に声を掛けるが、気付けば新入生4人のみを残して上級生達の姿は消えていた。
「あれ、先輩達とはぐれちゃったのかな。とりあえず花火ちゃんも一緒にスタート地点に行こうか」
「いや待て、スタート地点に先ほどまでいた運動部の姿が見えないぞ」
「というか、トラックの内側にいるの私達だけじゃ……?」
「あれれっどうしたんですかね!?」
陽子達が戸惑っていると、先ほどまで大音量で演奏していた吹奏楽がぴたりと演奏をやめる。
静寂の中でビーン……とスピーカーが鳴いた後、元気な声がグラウンド中に響き渡る。
「さぁレディースあんど……レディース! 今日も最高にアツいお祭がやってきたー! 夏の森名物ゲリラフェスタ、今回の目玉は部活対抗リレー! 実況は私、中村綾乃と!」
「解説の、かのん先生だぞー」
いつの間にか設営された矢倉の上に『実況席』と垂れ幕を掲げて座っているのは綾乃とロリ先生だ。
演劇部の大道具班が、矢倉の下で「いい仕事したな」といった顔をしている。
「早速、出場選手の入場だー! ゲートにご注目あれっ!」
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