6 / 25
六話 ケモノたちの宴で起きる婚約破棄 side カミラ
しおりを挟む
森が茂り山がちな地形にぽっつんと建てられ、まさに森の要塞と呼ぶにふさわしい場所にエンツェンスベルガー城があった。いつもの夜なら、エンツェンスベルガー城周辺は静かで動物たちの鳴き声だけが響き渡る動物たちの領域であるが、今夜は多くの人がその城に出入りしており、今日に限れば人の領域のような賑わいようであった。
私ことカミラも今日行われるエンツェンスベルガー家主催のパーティーに来ていた。本来なら、婚約者であるバルトロメウス様がエスコートをしてくれるのが普通であるが、迎えにすら来ないとのことなので私は父上と一緒に来ていた。
エンツェンスベルガー家は元々武家であり力こそ至上であると唱える家であった。そんなエンツェンスベルガー家であったが、国境が隣り合う国が公国となってから一度も戦争は発生せず、力を発揮する機会は年々減り彼らの存在意義が失われていった。そんな彼らに残ったものは武家時代の悪しき風習『強き者は何をしても許される』といった考えであった。この考えは、戦争が頻発していた時代では国の守護者として許容されていたが、戦働きが減るとただの邪魔者となった。しかし、彼らはこのジャイアニズムとも言える主義を変えることはなかった。そして、彼らは帝都からも排除されるようになり、自領で閉じこもりお山の大将として君臨するようになった。
しかし、かの一族には領地を治めるという概念がなく広大である領地は荒れ果ていた。それを彼らは借金に借金を重ね踏み倒すを繰り返して何代もやり過ごした。しかし、商人の力が強くなった今の時代にそれができるほど甘くはなかった。まさに彼らは没落間際であった。そんなときに発令されたのが現皇帝が提案した婚姻政策であった。
私は運悪くこの悪名高きエンツェンスベルガー侯爵家嫡男バルトロメウス様と婚姻する羽目になってしまったのだ。バルトロメウス様のエンツェンスベルガー家の人間に恥じない力至上主義者であり傲慢な人であった。私は何回このバルトロメウスのせいで辛酸をなめた。我がエンデルス家も多額のお金を使わされた。今回の元公国国主ゴーティエ家一家をお迎えするパーティでもほぼ全てを我が家が用意した。しかし今回に限っては、嬉々として多額のお金を使い最上級のおもてなしができる環境にした。
私はお父様にエスコートされ、パーティーホールに向かった。周りはエンツェンスベルガー家由縁の貴族が集まっていた。ここにいる貴族はエンツェンスベルガー家と同じような状況にある貴族家ばかりであり、会場の雰囲気は私たちのような貴族家にとっては息苦しさを感じさせるものであった。少しすると、招待客が全員集まったのか音楽が鳴り響きパーティーの始まりを告げた。
私もお父様も特に挨拶すべき相手も居らず、ただ自分たちが手配させた料理を堪能していた。すると
「カミラ!! 早く出て来い!!!」
というよく知った声が聞こえた。そうバルトロメウスの声だ。貴族たちは会場のど真ん中に何かあるのか取り囲むようにいた。どうやらその真ん中にバルトロメウスがいるようだ。私はバルトロメウスのもとへ向かった。彼の周りにいる貴族は嫌らしい笑みを浮かべて私を見ていた。私が彼のもとにつくと、アレクサンドラは儚げな容姿をしており守ってあげたくなるような表情をしていた。まさにバルトロメウスの好みどストライクの美少女であった。私がそのように分析しているとバルトロメウスは大きな声を出した。
「カミラ!! お前との婚約は今日で破棄する! お前のような奴は俺様に相応しくない。代わりに俺様はこの公国家の姫であるアレクサンドラと婚姻することとなった。以上だ!! もうお前に用はない疾くと出ていけ」
バルトロメウスの周りを囲んでいた貴族はこの宣言に拍手と歓声を上げた。さらに彼の腕に抱きついているアレクサンドラは私のほうを見て勝ち誇ったような表情をしてきた。それに対して私は悲しい表情をして
「では、陛下にそのように報告させていただきますがよろしいでしょうか?」
と言った。するとバルトロメウスは
「あぁ、そのように陛下に伝えといてくれ。俺様は忙しい」
と言って彼に群がる他の貴族と会話を始めた。辺りから、「これでエンツェンスベルガー家は安泰だ!!」や「エンツェンスベルガー家に相応しい姫君を迎え入れることが今代に達成できた。これからエンツェンスベルガー家は勢いづくぞ!」などの声が聞こえた。バルトロメウスに媚びを売りろうと貴族たちは醜く押し合いなどをしながらバルトロメウスに近づこうとしていた。その姿は常夜灯に群がる蚊や蛾のような気持ち悪さがあった。
私は悲しい表情を維持しつつも、冷たい目でそんな彼らを見つめた。そして、私は体を翻してお父様と共に会場を後にした。
馬車の中に入ると私たちは笑みを溢した。お父様のこんなに爽やかな笑みを見たのは久しぶりのことで嬉しかった。私も多分今までの人生でしてきた笑みの中でも最高の笑みを浮かべているだろう。そうやって、二人で今までの苦労をお互いに吐き出しながらエンツェンスベルガー家と縁が切れたことを喜びあった。山奥で妖しく光を灯す山城を見つめつつ、私たちは馬車で人の住む領域へ向けて歩みを進めて行った。
私ことカミラも今日行われるエンツェンスベルガー家主催のパーティーに来ていた。本来なら、婚約者であるバルトロメウス様がエスコートをしてくれるのが普通であるが、迎えにすら来ないとのことなので私は父上と一緒に来ていた。
エンツェンスベルガー家は元々武家であり力こそ至上であると唱える家であった。そんなエンツェンスベルガー家であったが、国境が隣り合う国が公国となってから一度も戦争は発生せず、力を発揮する機会は年々減り彼らの存在意義が失われていった。そんな彼らに残ったものは武家時代の悪しき風習『強き者は何をしても許される』といった考えであった。この考えは、戦争が頻発していた時代では国の守護者として許容されていたが、戦働きが減るとただの邪魔者となった。しかし、彼らはこのジャイアニズムとも言える主義を変えることはなかった。そして、彼らは帝都からも排除されるようになり、自領で閉じこもりお山の大将として君臨するようになった。
しかし、かの一族には領地を治めるという概念がなく広大である領地は荒れ果ていた。それを彼らは借金に借金を重ね踏み倒すを繰り返して何代もやり過ごした。しかし、商人の力が強くなった今の時代にそれができるほど甘くはなかった。まさに彼らは没落間際であった。そんなときに発令されたのが現皇帝が提案した婚姻政策であった。
私は運悪くこの悪名高きエンツェンスベルガー侯爵家嫡男バルトロメウス様と婚姻する羽目になってしまったのだ。バルトロメウス様のエンツェンスベルガー家の人間に恥じない力至上主義者であり傲慢な人であった。私は何回このバルトロメウスのせいで辛酸をなめた。我がエンデルス家も多額のお金を使わされた。今回の元公国国主ゴーティエ家一家をお迎えするパーティでもほぼ全てを我が家が用意した。しかし今回に限っては、嬉々として多額のお金を使い最上級のおもてなしができる環境にした。
私はお父様にエスコートされ、パーティーホールに向かった。周りはエンツェンスベルガー家由縁の貴族が集まっていた。ここにいる貴族はエンツェンスベルガー家と同じような状況にある貴族家ばかりであり、会場の雰囲気は私たちのような貴族家にとっては息苦しさを感じさせるものであった。少しすると、招待客が全員集まったのか音楽が鳴り響きパーティーの始まりを告げた。
私もお父様も特に挨拶すべき相手も居らず、ただ自分たちが手配させた料理を堪能していた。すると
「カミラ!! 早く出て来い!!!」
というよく知った声が聞こえた。そうバルトロメウスの声だ。貴族たちは会場のど真ん中に何かあるのか取り囲むようにいた。どうやらその真ん中にバルトロメウスがいるようだ。私はバルトロメウスのもとへ向かった。彼の周りにいる貴族は嫌らしい笑みを浮かべて私を見ていた。私が彼のもとにつくと、アレクサンドラは儚げな容姿をしており守ってあげたくなるような表情をしていた。まさにバルトロメウスの好みどストライクの美少女であった。私がそのように分析しているとバルトロメウスは大きな声を出した。
「カミラ!! お前との婚約は今日で破棄する! お前のような奴は俺様に相応しくない。代わりに俺様はこの公国家の姫であるアレクサンドラと婚姻することとなった。以上だ!! もうお前に用はない疾くと出ていけ」
バルトロメウスの周りを囲んでいた貴族はこの宣言に拍手と歓声を上げた。さらに彼の腕に抱きついているアレクサンドラは私のほうを見て勝ち誇ったような表情をしてきた。それに対して私は悲しい表情をして
「では、陛下にそのように報告させていただきますがよろしいでしょうか?」
と言った。するとバルトロメウスは
「あぁ、そのように陛下に伝えといてくれ。俺様は忙しい」
と言って彼に群がる他の貴族と会話を始めた。辺りから、「これでエンツェンスベルガー家は安泰だ!!」や「エンツェンスベルガー家に相応しい姫君を迎え入れることが今代に達成できた。これからエンツェンスベルガー家は勢いづくぞ!」などの声が聞こえた。バルトロメウスに媚びを売りろうと貴族たちは醜く押し合いなどをしながらバルトロメウスに近づこうとしていた。その姿は常夜灯に群がる蚊や蛾のような気持ち悪さがあった。
私は悲しい表情を維持しつつも、冷たい目でそんな彼らを見つめた。そして、私は体を翻してお父様と共に会場を後にした。
馬車の中に入ると私たちは笑みを溢した。お父様のこんなに爽やかな笑みを見たのは久しぶりのことで嬉しかった。私も多分今までの人生でしてきた笑みの中でも最高の笑みを浮かべているだろう。そうやって、二人で今までの苦労をお互いに吐き出しながらエンツェンスベルガー家と縁が切れたことを喜びあった。山奥で妖しく光を灯す山城を見つめつつ、私たちは馬車で人の住む領域へ向けて歩みを進めて行った。
0
お気に入りに追加
2,460
あなたにおすすめの小説
愛する婚約者の君へ。
水垣するめ
恋愛
私エレナ・スコット男爵令嬢には婚約者がいる。
名前はレイ・ライランス。この国の騎士団長の息子で、次期騎士団長だ。
金髪を後ろで一束にまとめていて、表情と物腰は柔らかく、とても武人には見えないような端正な顔立ちをしている。
彼は今、戦場にいる。
国の最北端で、恐ろしい魔物と戦っているのだ。
魔物との戦いは長い年月に及び、この国の兵士は二年、最北端で魔物と戦う義務がある。
レイは今、その義務を果たしているところだ。
婚約者としては心配なことこの上ないが、次期騎士団長ということもあり、比較的安全な後方に置かれているらしい。
そんな私の愛する婚約者からは、毎日手紙が届く。
【完結】彼と私と幼なじみ
Ringo
恋愛
私には婚約者がいて、十八歳を迎えたら結婚する。
ある意味で政略ともとれる婚約者とはうまくやっているし、夫婦として始まる生活も楽しみ…なのだが、周囲はそう思っていない。
私を憐れむか馬鹿にする。
愛されていないお飾りなのだと言って。
その理由は私にも分かっていた。
だって彼には大切な幼なじみがいて、その子を屋敷に住まわせているんだもの。
そんなの、誰が見たってそう思うわよね。
※本編三話+番外編四話
(執筆&公開予約設定済みです)
※シリアスも好物ですが、たまには頭を空っぽにしたくなる。
※タグで大筋のネタバレ三昧。
※R18命の作者にしては珍しく抑え気味♡
※念のためにR15はしておきます。
この国の王族に嫁ぐのは断固拒否します
鍋
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢?
そんなの分からないけど、こんな性事情は受け入れられません。
ヒロインに王子様は譲ります。
私は好きな人を見つけます。
一章 17話完結 毎日12時に更新します。
二章 7話完結 毎日12時に更新します。
旦那様、私は全てを知っているのですよ?
やぎや
恋愛
私の愛しい旦那様が、一緒にお茶をしようと誘ってくださいました。
普段食事も一緒にしないような仲ですのに、珍しいこと。
私はそれに応じました。
テラスへと行き、旦那様が引いてくださった椅子に座って、ティーセットを誰かが持ってきてくれるのを待ちました。
旦那がお話しするのは、日常のたわいもないこと。
………でも、旦那様? 脂汗をかいていましてよ……?
それに、可笑しな表情をしていらっしゃるわ。
私は侍女がティーセットを運んできた時、なぜ旦那様が可笑しな様子なのか、全てに気がつきました。
その侍女は、私が嫁入りする際についてきてもらった侍女。
ーーー旦那様と恋仲だと、噂されている、私の専属侍女。
旦那様はいつも菓子に手を付けませんので、大方私の好きな甘い菓子に毒でも入ってあるのでしょう。
…………それほどまでに、この子に入れ込んでいるのね。
馬鹿な旦那様。
でも、もう、いいわ……。
私は旦那様を愛しているから、騙されてあげる。
そうして私は菓子を口に入れた。
R15は保険です。
小説家になろう様にも投稿しております。
すべてが嫌になったので死んだふりをしたら、いつの間にか全部解決していました
小倉みち
恋愛
公爵令嬢へテーゼは、苦労人だった。
周囲の人々は、なぜか彼女にひたすら迷惑をかけまくる。
婚約者の第二王子は数々の問題を引き起こし、挙句の果てに彼女の妹のフィリアと浮気をする。
家族は家族で、せっかく祖父の遺してくれた遺産を湯水のように使い、豪遊する。
どう考えても彼らが悪いのに、へテーゼの味方はゼロ。
代わりに、彼らの味方をする者は大勢。
へテーゼは、彼らの尻拭いをするために毎日奔走していた。
そんなある日、ふと思った。
もう嫌だ。
すべてが嫌になった。
何もかも投げ出したくなった彼女は、仲の良い妖精たちの力を使って、身体から魂を抜き取ってもらう。
表向き、へテーゼが「死んだ」ことにしようと考えたのだ。
当然そんなことは露知らず、完全にへテーゼが死んでしまったと慌てる人々。
誰が悪い、これからどうするのか揉めるうちに、自爆していく連中もいれば、人知れず彼女を想っていた者の復讐によって失脚していく連中も現れる。
こうして彼女が手を出すまでもなく、すべての問題は綺麗さっぱり解決していき――。
もううんざりですので、実家に帰らせていただきます
ルイス
恋愛
「あなたの浮気には耐えられなくなりましたので、婚約中の身ですが実家の屋敷に帰らせていただきます」
伯爵令嬢のシルファ・ウォークライは耐えられなくなって、リーガス・ドルアット侯爵令息の元から姿を消した。リーガスは反省し二度と浮気をしないとばかりに彼女を追いかけて行くが……。
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる