盲いた王子と悪役令嬢

早乙女 純

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レガリア王国王都編

ヴァーデル領について

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 私は無心でサンドウィッチを貪った。そして、お腹が膨れて満足した気になっていると殿下が荷物の中から紙を取り出して言った。

「さて、昼食も取ったことだし僕たちの目的について話そう」

 殿下は紙を広げた。その紙にはこの世界の地図だったようだ。私は初めてこの世界をみた。どうやらこの世界は予期していた通り別の世界であった。つまり私は過去に来たのではなく、異世界で転生したのだ。この事実は私に少しショックを与えた。私が何も反応していないのを感じたのか殿下は

「そっか、これが何か説明していなかったね。これは地図といって国の場所や地形がわかるものなんだ。それでこれは戦争とかするときにバレると困るから国家秘密であり軍事秘密なんだ。だから、知らないのも当然だね」

 と私が地図を知らなくて困惑していると判断して言った。私は地図をじっくりと見た。この世界はどうやら大きい台形の形をした大陸が一つとその周辺にある島で構成されているようだ。私が生まれたレガリア王国は、台形の下底側の右端にあり、尖った部分を中心に扇状の形をしているようだ。その地図の線には凹凸があり殿下はその凹凸を指でなぞった。そして、あるところを指で示した。

「僕たちが目指しているのは、ここ辺りだよ」

 殿下が指をさした場所は、尖った部分であった。

「ここ辺りは、山が険しくほとんど平地がないようで開発が後回しにされていたんだ。で今回僕たちはここを開発しに行くだよ」

 殿下は楽しそうにそう言った。

(こんな不良な領地でなんでこんなに嬉しそうなのかしら……)

 私が不思議がっているのを察したのか殿下は言った。

「実は僕が僕の領地がここになるように仕向けたんだ。この国は険しい山や森に阻まれて、他国との交流がほとんどないんだ。こんな辺境な領地にやってくるのは君の祖父のような変わり者か他国から逃げてきた者くらいしかいない。僕はそれをずっと危惧していた。それで大きな港を作れる場所を探していたんだ。その結果このヴァーデル領だった訳さ」

 殿下はスラスラと自分の考えを話した。

「なるほど、それで私のお祖父様の力が役に立ちますね。お祖父様とは数回しか話したことがありませんが、レガリア王国の港は狭すぎるとおっしゃっていました」


「やっぱり、そうなんだね。だからこそ、ベルナール卿が認めた天才である君に手伝って欲しいんだ。でもこれは強制じゃない。僕がこれからやろうしていることはとても過酷なものになると思う。もし出来ないそうにないなら言って、君が何不自由しないような結婚相手を僕が用意するよ。もちろん、協力してくれても君に不便な思いをさせる気はないよ。どうかな?」

 殿下は少し不安気にそう言った。私は考えた。

(私の目標は幸せな人生を送ること。ここでどちらを選んでも殿下なら叶えてくれるだろう。そんな気がする。だけど、私は求める幸せな人生と掲げて頑張ってきたけど、それは窮屈な思いをしながら何も起こらないように生きることだっただろうか。例えば、食事だ。この国の食事は私の口に合わない。私に取って食事は苦痛だ。でも食事は生きている限り取り続けないといけない。そんな苦行をしながら生きることが果たして幸せと呼べるのだろうか。いや、呼べない!! じゃあ、どうすればいい? 自分で手に入れるしかない!! 誰かに与えられて窮屈な思いをして生きるなんて私が求めている幸せじゃあない! )

「天才なんて過分な評価でございます。私でよろしければ、ぜひ協力させていただきます」

 私は殿下をしっかりと見つめてそう言った。

「ありがとう。クリスが協力してくれたら百人力だよ。」

 殿下は嬉しそうにそう言った。

「ですが、その私が天才なんて誰からお聞きされたのですか?」

 私は疑問に思ったことを聞いた。社交界でそのような噂が流れているという情報はなかったはずだ。その話の出所が私は気になった。

「もちろん、ベルナール卿だよ。実は卿が我が国に来るたびに会っていたんだ。それでね。クリスの話になってベルナール卿は饒舌に話していたよ。我が商会は安泰だって。そのときだね」

 私は頭にハテナが浮かんだ。

「我が商会が安泰だとはどのようなことが存じ上げていますか?」

 殿下も首を傾げて言った。

「あれ? 卿からクリスが後継者だって聞いたけど、クリスは聞いてなかった?」

 私は知らされてない事実に呆然とした。

「そうだ。あと卿からクリスのことをよろしくと頼まれているから。僕が今日からクリスの教師兼婚約者だからよろしくね」

 殿下はなんてことないようにサラッと衝撃のことを言った。

 「えぇ~~~~!?」

 私は驚きのあまり大きな声を上げてしまった。衝撃な事実が私の頭を支配して、それ以外考えられなくなった。殿下は楽しそうに微笑んでいる。どうやら、第二王子の婚約者から第一王子の婚約者に私はジョブチェンジしたようだ。私は波乱に愛されているのかもしれない。これから起きることに私は思い馳せるのであった。
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