些細な気持ち

「おうちが、もえちゃう。」

家から3分ほどしか離れていない幼稚園。
園の庭には、あひるの小屋と、色んな遊具。
隅の方に用務員さんがゴミを燃やす施設があるだけのちいさな地域の幼稚園。

泣き虫でママ大好きの『わたし』はここの先生たちにいろんな迷惑をかけていた。

殆どの事はあほの頭からは消えてしまっているが、忘れられない事がいまだにひとつ。

とはいってもことの始まりをはっきり覚えているわけではない。

ただ頭の中にぼうぼう燃える炎の映像が、いきなり現れたのだ。

「ママに電話して。おうち、もえちゃう」

泣きながらそう言ったのを、はっきり覚えている。

無論、家が火災になったわけではなく、そんな映画を見たわけでもなかったらしい。

なぜだ？

ではなぜ大火災の映像が記憶にあるのか？

わからないけれど、その記憶が消えないのだ。
いまだに『わたし』の記憶に居座っている。

何故だかわかる。
この炎は一生消えないのだろう、と。

それ以来「火」が怖くてしかたがない。
その事は決して悪い事ではないけれど。
料理がレンジ頼りになっている。