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商機
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「あの時は本当にありがとうございました」
尚沃の前に座る初老の夫婦は頭を下げた。
彼は恐縮しながら、かつて目の前の夫人が妓楼に売られかけた時、自身の持ち金全てを払って彼女を買取ったことを思い出した。
あの時は清国相手の商売で初めて成功したのだった。彼はこれで商いのコツを得たのである。それゆえ、夫人が助けを求めた時も躊躇わず身請けしたのだった。金はこれからも稼げるが彼女は今しか救えないのだから。
「ずっと林大人には御礼をしたいと思っていたのです」
と言いながら夫は大きめの包みを尚沃に渡した。中には、あの時、尚沃が払った以上の金があった。
「どうぞお納め下さい」
夫婦が言うと尚沃は自分が出した分のみ受け取った。
尚沃の前に座る初老の夫婦は頭を下げた。
彼は恐縮しながら、かつて目の前の夫人が妓楼に売られかけた時、自身の持ち金全てを払って彼女を買取ったことを思い出した。
あの時は清国相手の商売で初めて成功したのだった。彼はこれで商いのコツを得たのである。それゆえ、夫人が助けを求めた時も躊躇わず身請けしたのだった。金はこれからも稼げるが彼女は今しか救えないのだから。
「ずっと林大人には御礼をしたいと思っていたのです」
と言いながら夫は大きめの包みを尚沃に渡した。中には、あの時、尚沃が払った以上の金があった。
「どうぞお納め下さい」
夫婦が言うと尚沃は自分が出した分のみ受け取った。
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