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第四十七話 お師匠様の笑顔 その1

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「エツランシャ、よくやったアル。半吉も成長したアルな」
 カマタリ5についたヒトスジシマッカーの黒い返り血を丁寧に拭いながら、お師匠様が例の不敵な笑みを直太と半吉に向けている。

 ふと思う。
 もしかしたら、子どもだった頃の半吉を怖がらせないためにお師匠様は頑張って笑顔を作り始めたんじゃないだろうか。それがこの不敵な笑みなんじゃないだろうか。

 直太の後ろに隠れてもじもじしている半吉は、既にいつものサロペット姿の半吉に戻っていた。
 ちょい残念。

「おい半吉、お師匠様に褒められてんぞ。なでなでして貰えよ」
 このこの~と、ニヤニヤ囁く。

「い、いいんだミョウ」
 青ざめた顔で頭をブンブン振る半吉。
 変身が溶けた途端、すっかり弱腰になってしまった。

「どうしたアルか、半吉」
 やけにお師匠様から距離を取る半吉に、お師匠様が「ハッ!」と言う。
(半吉のあの「ハッ」はお師匠様のマネだったのか)

「まさか、お前も腹にアイツがいるアルか? そういえば、お前はずっと私と同じ獲物を食べていたアル。待っていろ。私がすぐにお前を助けて」
「ち、ちがうミョウ。それはもうタマ様にとってもらったミョウ」

「そうアルか? なら遠慮はいらん。今日のお前は頑張ったアル。特別に、なで……うほん、な、な、なでなでして、やってもいいアルヨ」
 お師匠様が顔を真っ赤にして「なでなで」と呟くので、直太はぶっと吹き出してしまった。

「……でも、でも半吉は……」
 直太の後ろで半吉がサロペットをぎゅっと握りしめた。

(まーだ、気にしてんのか)
 お師匠様の態度見てりゃ、半吉のことが大好きなのはわかりそうなものなんだけどな。
 そういや、祥太と冬美もはたから見れば相思相愛まるわかりなのに、本人たちだけ気づいてないんだよな。
 恋とは実に奥深いぜ。

「お、お師匠様もさっき見たミョウ。半吉はお師匠様の弟を殺したのと同じ種族なんだミョウ。お師匠様の弟を襲ったのは、ナミハンッミョウのオスだったんだミョウ。だからもう、半吉はお師匠様とは一緒にいられないんだミョウ」
「な……」
 言ったきりお師匠様はしばし固まった。
 鋭い目が半吉をマジマジと見つめている。

(え? やっぱ怒ってんの?)
 ズンズンとお師匠様が真顔で直太の方へ、いや半吉の方へと向かってくる。

 なに、これ? やばい感じ?
 うそ、マジ? オレの見立てが間違ってたのか?

「ちょ、ちょ、ちょ、たんま。待って。落ち着いて話し合えば、うお!!」
 半吉の前に立つ直太の上から、お師匠様のカマタリ5が振り下ろされた。
 たまらずしゃがみ込んだ直太。


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