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第三十四話 『tag!!』

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「それは大変なんだミョウ!」
「へ?」
 すぐ隣で半吉が「大変だミョウ、ヤバイミョウ~。半吉が置いていかれたんだミョウ」とオロオロしている。

「いや、半吉いるじゃん」
「ん? あ、本当だミョウ。半吉はいたミョウ。あ、そうだったミョウ。半吉は今、直太のリード虫だから、直太が魔法で進めば半吉も一緒に進めるんだったミョウ。すっかり忘れてたミョウ」
 てへっ、と、半吉が頭を叩く。
「……」

「ついでにとっておきの近道を行くと、どうしてお師匠様に怒られるんだったか全部思い出したミョウ」
「いやそれ、もうわかってるから。体感で!」
「そうなのかミョウ?」
 言っているうちに、がさり。と、また目の前のシダが垂れ下がった。

 ぎょろり。
 枯れた松の葉の束が垂れ下がり、大きな二つの目玉が直太を見つめた。

「うわー!『tag』!!」
 ギュイーン。
 慌てて『tag』を繰り出して、トゲナナフッシーから逃れる。

「でも桐山直太、トゲナナフッシーは」
 半吉が言いかけた時。

 がさり。
 また目の前のシダが垂れ下がる。もちろんそこにはトゲナナフッシー。

「ぎょえええ~~『tag』!!」
 ギュイーン。
 ふう。

「ちょっと待つんだミョウ、桐山直太。トゲナナフッシーは」
 がさり。
 目の前のシダが垂れ下がる。やっぱりそこにはトゲナナフッシー。

「ちょ、今話しかけないで!!」
「でも」

 ぎょろり。
「うわ、『tag』!!!」
 ギュイーン。

 ど、どうだ! さすがにもう……

 がさり。
「どわわああああ『tag』~~!!!」
 ギュイーン。

「こ、これできっと……」
 がさり。
「うぉおおお『tag』~~~」

 …………

「あれ?」
 ギュイーン、という風圧が来ない。
 そんでもって目の前にはトゲナナフッシー。

 ぎょろり。
「うおっ!『tag』~~~~~」

 …………

 何も起こらない。

「桐山直太、『tag』が使える回数は五回だミョウ」
「そうだったー!」
 ビビッて『tag』を使い切ってしまった。

 すたん!

 ここぞとばかりに、目の前のシダにぶら下がっていたトゲナナフッシーが地面に降り立った。

 直太をぎょろりと見据えたトゲナナフッシーは、身体をふらり、ふらふら。ゆらり、ゆらゆらと左右に小刻みに揺らし始める。
 まるで、中国拳法の酔拳のような動き。
 これ、なんかヤバイんじゃ。

「ちょ、たんま、たんまー」
 もちろん、トゲナナフッシーは待ってくれない。

 ゆらり、ゆらゆら。ふらり、ふらふら。ゆらり、ふらふら。ふらり、ゆらゆら。

 十分に身体が揺れたところで、トゲナナフッシーは、枯れた松の葉のような前脚を、ゆっくりと持ち上げた。
 つぶらな瞳を光らせて、もったいぶるように、いたぶるように、じわじわ~と、直太の方へ詰め寄ろうとしている。

「うお~、どうすんだコレ~」
「桐山直太、こうなったら走るんだミョウ」
 ぶわんっと、半吉が空に舞い上がる。

「ぬおおおおおお」と、直太も弾かれたように、全速力で駆け出した。
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