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第二十八話 タマ様の髪型

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―はあ~、生き返ったミョウ~。ひゃっほーいだミョウ。

 ブーンと、羽音がして実験台を振り返ると、赤と緑と青のキラキラの虫が元気よく飛んだり着地したりしていた。

(……ただ虫が飛んでるだけなのに、はしゃいでるように見える……)
 オレ、頭おかしくなったかも。と、直太は目をこする。

「まずは礼を言わねばなるまい。エツランシャよ、私の可愛い、ムシムッシーを助けてくれたことに感謝する。この解毒剤はお前のカオスな四次元ポケットに入れておく」

「え? は?」
 クラゲ白衣を着た人は、すたすた直太のところまでやってきて、勝手にエメラルドグリーンの液体が入った小瓶を直太のズボンのポケットにグイグイ突っ込んできた。

「え、ちょ、ちょっと」
「それから、クラゲ白衣を着た人という名称は長いな。文字数の無駄遣いだ。私のことはタマ様と呼べ」
 偉そうに自分に「様」をつけたタマ様が、バサッと、クラゲ白衣のフードをめくった。

「うおっ! パンクな髪型!」
 右半分が目の覚めるコバルトブルーのロン毛で、左半分はサッカーグラウンドの芝生のような緑色の坊主になっている。
 随分と思い切った髪型の下の顔は、目鼻立ちが整った目の覚めるような美形。
 瞳の色がまたすごい。
 左目の瞳がエメラルドグリーン、右目が濃い紫がかった青色で宝石みたいにピカピカに輝いている。

(こういうの、オッドアイって言うんだっけ? そーいや、あの図書司書の先生もこんな感じの目だったような)
 同一人物? と思ったけれど、瞳の色が違った気がする。あの先生の瞳は、赤と緑だったはず。

 この人の両目を縁どるまつ毛は金色で、とにかくとてつもなく綺麗な人だけれど、女の人なのか、男の人なのか判然としない。
 声も喋り方も中性的で、どことなくエキゾチックな雰囲気が漂っている。

「パンクな髪型か」
 ジトっと、オッドアイが直太を見つめた。

(ヤベ! つい思ったことが口に出た)
「口に出そうが出すまいが、思ってしまえば私にはわかる。私は物語を統べるモノだからな」

 タマ様は、無表情に青いロングヘアと緑の坊主頭を手でいじっている。
 美人が怒ると怖いというけど、まさにそんな感じで凄みがある。
 これ、怒ってるのか? やっぱ怒ってるのか?

「ま、間違えました。パンクな髪型ではなく素敵な」
「イカす表現だな。採用」

「へ?」
「短い言葉ながら、うまく私のヘアスタイルの特徴を捉えた良い表現だ」

「……あ、ありがとうございます」
 よくわかんないけど、とりあえず礼を言っとこ。
 この人、ポーカーフェイスすぎて心が読めないんだけど。
 とりま下手なことは言わないようにしよう。

「それがいい。ページが勿体ないからな」
「え? オレ、今何も」

「そのくだりはもういい。これまでのストーリーから、読者はわかっているはずだ。あまりくどいと読む気が失せる。すっ飛ばして冒険の章へ突入するぞ」
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