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第二十四話 エツランシャとクリスタルキー
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回るとか回らないとか以前に、鍵穴とまったく噛み合わない。
「だよなー」
そりゃそうだ。うちの鍵はうちの鍵だもんな。
右ポケットに家の合鍵を戻して、念のため左ポケットをまさぐってみる。
ごちゃごちゃした感触の中で、ひんやり薄い何かが手に触れた。
「なんだ?」
図工の時間に突っ込んだらしい画用紙やフィルムの切れ端と一緒に引っ張り出したら、赤、緑、青に輝く薄い金属製の鍵の形のしおりが出てきた。
「そういえば、本から落ちたしおりをポケットに入れたんだっけ」
―し、おり? 思い出した、ミョウ。クリスタルキーは、エツランシャが、持っているんだ、ミョウ。エツランシャの、持つ、聖なるシオリで、ムシムッシーの頭を三度、なぞるべし。……さすれば、クリスタルキーは、誠の姿を現すであろう、だ、ミョウ。
「え? なに? もう一回言って」
―タマ様のところへ行くには、まず、エツランシャを探さないと、ダメだった、ミョウ……ジ・エンド、だミョウ。
「エツランシャって、本にチラッと書いてた勇者的な人? とりま、その聖なるシオリはオレ持ってるみたいだぞ。だからさっきのもう一回」
―短い、人生だった、ミョウ……
それっきり、また声が途絶えた。
「おい、半吉、もう一回さっきのを」
―……
「マジか。オレもあんま記憶力いい方じゃねーんだけど。えっと。なんだっけ?」
直太は、さっきの半吉の言葉を必死に思い出す。
「えっと、確か、ムシムッシーを三度なぞるんだったよな」
試しに鍵の形のしおりで、半吉をスリスリなぞってみる。
―うふっ、く、くすぐったいミョウ。半吉の、おしりを、なでないでくれ、ミョウ。
半吉の長い脚がピクピクしただけで、鍵の形のしおりに変化はない。
「あれ? 違うのかな?」
とりあえず、もう一度挑戦。
―ぎゃっ、ぶはう……、や、やめて、くれだ、ミョウ。せ、背中が痒い、ミョウ。
「あっれー? 半吉ってムシムッシーだよな? 確かさっき、聖なるシオリで、ムシムッシーの……あ、そっか。頭だ。頭を三回なぞるのか」
今度こそ、と、半吉の頭らしき場所をスリスリスリと、鍵の形のしおりでなぞってみた。
ぱあ~!
「うわっ、まぶしっ」
しおりの内側から、金色のまぶしい光がぶわっと漏れだす。
そして。
ずしりと重さのある、立体的な何かが手の中に現れた。
無色透明な氷のように、さらさらと美しく透き通った……。
「クリスタルキーだ!!」
どす黒い紫色の悪魔のドアには、全く似つかわしくない天使のような鍵。
「つか、見た目、全然つりあってないけど。まだうちの鍵の方が合ってる気が」
半信半疑で、鍵穴に差し込んでみる。
カチャリ。
鍵が回る音がした。
ぱりん!!
氷が砕けるときみたいな甲高い音を立てて、どす黒い紫色のドアが粉々に割れていく。
その中から現れたのは、氷の彫刻でできたように無色透明に輝く、クリスタルの螺旋階段だった。
「だよなー」
そりゃそうだ。うちの鍵はうちの鍵だもんな。
右ポケットに家の合鍵を戻して、念のため左ポケットをまさぐってみる。
ごちゃごちゃした感触の中で、ひんやり薄い何かが手に触れた。
「なんだ?」
図工の時間に突っ込んだらしい画用紙やフィルムの切れ端と一緒に引っ張り出したら、赤、緑、青に輝く薄い金属製の鍵の形のしおりが出てきた。
「そういえば、本から落ちたしおりをポケットに入れたんだっけ」
―し、おり? 思い出した、ミョウ。クリスタルキーは、エツランシャが、持っているんだ、ミョウ。エツランシャの、持つ、聖なるシオリで、ムシムッシーの頭を三度、なぞるべし。……さすれば、クリスタルキーは、誠の姿を現すであろう、だ、ミョウ。
「え? なに? もう一回言って」
―タマ様のところへ行くには、まず、エツランシャを探さないと、ダメだった、ミョウ……ジ・エンド、だミョウ。
「エツランシャって、本にチラッと書いてた勇者的な人? とりま、その聖なるシオリはオレ持ってるみたいだぞ。だからさっきのもう一回」
―短い、人生だった、ミョウ……
それっきり、また声が途絶えた。
「おい、半吉、もう一回さっきのを」
―……
「マジか。オレもあんま記憶力いい方じゃねーんだけど。えっと。なんだっけ?」
直太は、さっきの半吉の言葉を必死に思い出す。
「えっと、確か、ムシムッシーを三度なぞるんだったよな」
試しに鍵の形のしおりで、半吉をスリスリなぞってみる。
―うふっ、く、くすぐったいミョウ。半吉の、おしりを、なでないでくれ、ミョウ。
半吉の長い脚がピクピクしただけで、鍵の形のしおりに変化はない。
「あれ? 違うのかな?」
とりあえず、もう一度挑戦。
―ぎゃっ、ぶはう……、や、やめて、くれだ、ミョウ。せ、背中が痒い、ミョウ。
「あっれー? 半吉ってムシムッシーだよな? 確かさっき、聖なるシオリで、ムシムッシーの……あ、そっか。頭だ。頭を三回なぞるのか」
今度こそ、と、半吉の頭らしき場所をスリスリスリと、鍵の形のしおりでなぞってみた。
ぱあ~!
「うわっ、まぶしっ」
しおりの内側から、金色のまぶしい光がぶわっと漏れだす。
そして。
ずしりと重さのある、立体的な何かが手の中に現れた。
無色透明な氷のように、さらさらと美しく透き通った……。
「クリスタルキーだ!!」
どす黒い紫色の悪魔のドアには、全く似つかわしくない天使のような鍵。
「つか、見た目、全然つりあってないけど。まだうちの鍵の方が合ってる気が」
半信半疑で、鍵穴に差し込んでみる。
カチャリ。
鍵が回る音がした。
ぱりん!!
氷が砕けるときみたいな甲高い音を立てて、どす黒い紫色のドアが粉々に割れていく。
その中から現れたのは、氷の彫刻でできたように無色透明に輝く、クリスタルの螺旋階段だった。
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